著者
森本 哲司
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.70-75, 2013-04-15 (Released:2013-10-15)
参考文献数
18

腎臓は,水・電解質の調節機構の主役として,さまざまな生理的役割を果たしているが,胎生期は,その役割の多くの部分を胎盤が担っている。しかし,出生とともに著しい体外環境変化が生じるため,腎機能はこれにすばやく対応する必要がある。例えば,出生時の体表面積あたりの糸球体濾過率(GFR)は成人の20%,生後2週間で40%,生後2か月には50%となり,1~2歳ごろにほぼ成人レベルに達することが知られている。この急速なGFRの増加は1)出生後の腎血管抵抗低下,2)ネフロン数の増加,3)ネフロンサイズの増大によると考えられている。このGFRの増加に加え,離乳期にみられる尿濃縮力の成熟や水・電解質輸送の変化などが,体外環境への適応とともに成長と発達を保証するために腎臓内で起こる。本稿では,生後に起こるこれら腎機能(GFR,Na排泄能,尿濃縮機構など)の発達について概説する。
著者
榊 寿右 森本 哲也 星田 徹 中瀬 裕之 米澤 泰司
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.11, pp.777-785, 1997-11-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
21

傍矢状洞髄膜腫は,頭蓋内に生じる髄嘆腫のうちでも比較的頻度の高いものであり,遭遇する機会も多い.したがって,その手術に関しては多くの成書に記載されているところであるが,その手術の問題点ともいうべき皮質静脈,ならびに上矢状静脈洞に対する対処,ならびにそれらが損傷された時の合併損傷について述べられたものは少ない.本文では,この腫瘍の発生部を傍矢状静脈洞部の前1/3,中1/3および後1/3に発生したものについて,症状や手術法を簡単に記述し,特に皮質静脈損傷時の合併症について症例を呈示しながら,静脈温存の重要性について述べた.皮質静脈には多くの側副血行路が存在しているので,仮に損傷されても大きな障害が発生することは比較的少ないが,この静脈内に血栓が生じ,それが広範に広がったならば重篤な合併症を呈するので,その部に浸潤した腫瘍の摘出には注意を払うことを強調する.また上矢状静脈洞については,脳血管撮影で閉塞しているようにみえても,術中に静脈洞造影をすると,なお開存しているので,安易な切除はたいへん危険である.もし,こうした静脈系がなお開存しているにもかかわらず犠牲となった時には, saphenous veinを用いた血行再建を行うべきと考える.
著者
高橋 誠 森本 哲介
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.170-172, 2015-11-20 (Released:2015-12-05)
参考文献数
10
被引用文献数
3 6

The present study developed a Japanese version of the Strength Knowledge Scale (SKS: Govindji & Linley, 2007), and investigated its reliability and validity. The participants were Japanese university students. An exploratory factor analysis showed a one-factor structure. Internal consistency and test–retest reliability were sufficient. The SKS was associated with subjective well-being, self-esteem, characteristic self-efficacy, character strength, and identity. The findings showed that the Japanese version of the SKS had substantial reliability and validity. Furthermore, in this study the SKS was related to holding strengths and identity.
著者
森本 哲司
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.g7-g8, 1994

コンポジットレジン直接修復法 (以下直接法と称する.) では, レジンの重合方式が光重合型であれ化学重合型であれ, 窩洞内での重合過程で, レジン部に大きな重合収縮を生じる. これによって, 辺縁漏洩を生じたり, 術後の不快症状を呈したりする. 一方, コンポジットレジンインレー間接修復法 (間接法と称する.) では, レジンインレー体の重合収縮が口腔外の技工操作の過程で完了しており, 介在する少量の接着用レジンセメントが収縮するのみであるため, 窩壁適合性や辺縁封鎖性が直接法より著しく改善されるといわれてきた. しかし, 現在市販されている間接法のセメント接着システムは, 窩洞の一部または全部を酸処理して, 機能性モノマーを含むレジンセメントで接着する第二世代の象牙質接着方式をとっている. ところが現在の直接法では, コンポジットレジンの重合収縮によるコントラクションギャップの減少や辺縁封鎖性の向上や象牙質接着性向上のため, 第三世代といわれる優れた接着システムが導入されてきた. そこで著者は, 辺縁封鎖性の観点から, 現在の間接法と新しく開発された優れた接着システムをもつ直接法と比較して, 間接法の位置付けを検討するとともに, 優れた象牙質接着システムを間接法に応用した場合, 辺縁封鎖性にどのように効果がみられるかを蛍光色素ローダミンBをトレーサーに用いて比較検討した. さらに, 現在のところ接着性レジンと象牙質とのかかわり合いが, 各種分析機器 (例えばエックス線アナライザーやFT-IRなど) で捕捉できない状況にあるが, ローダミンBをトレーナーとして応用した辺縁漏洩実験の過程でみられた特異的な現象を観察した. 実験材料および方法: ウシの下顎前歯を用い, 近遠心に唇面隣接面にわたる複雑窩洞を形成し, 間接法はシリコン印象採得後, 硬石膏模型を作製した. 仮封して1週間の水中保存後, 業者指定の方法でコンポジットレジンインレーを作製し, インレー体をセメント接着した. セメント接着に際し, プライマー処理やボンディング剤やプロテクター処理を行った場合についても検討した. 直接法は業者指定の方法で修復した. いずれも修復24時間後に5℃と60℃の 0.6% ローダミンB水溶液に60秒間ずつ20回浸漬する色素漏洩試験を行った. 修復物中央で歯軸に直行した切断面を, 紫外線発生装置下で, 新しく考案した評価法を用いて色素漏洩の評価を行った. 結果および考察: 1) 最近の直接法で辺縁封鎖性が優れている第三世代の接着方式を応用する LBS (ライナーボンドシステム) と比較して, 第二世代の接着方式の間接法 CRI (CRインレー) が同等の辺縁封鎖性を示した. 2) CRI に LBS を応用する CRI-T は最も優れた辺縁封鎖性を示した. 3) LFI (ライトフィルインレー) は CRI と同等の辺縁封鎖性を示した. LFI に IPS (インパーバボンドシステム) を応用しても辺縁封鎖性は変わらなかった. 4) SR (イソシットインレー/オンレー) にポリウレタン系ライナー DP (デンチンプロテクター) を用いても, 辺縁封鎖性の効果はなかった. 5) GI でインレー体内面に付属の Pr (プライマー) を塗布すると辺縁封鎖性は向上し, CRI や LFI と SR の中間の辺縁封鎖性を示した. 6) ローダミンBを用いて紫外線下で観察すると, 接着性レジンシステムが象牙質へのトレーサーの漏洩の阻止効果を明瞭に観察できることが判明した.
著者
高橋 誠 森本 哲介
出版者
河原学園 人間環境大学
雑誌
人間と環境 (ISSN:21858365)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.23-35, 2022-03-31 (Released:2022-09-28)
被引用文献数
1

キャリア教育で育むべき性格特性的強み(CS)について明らかにするために,社会人の持つCSと経済的・心理的な要素との関連を検討した。社会人231名を対象にオンライン調査を行った。年収,年齢,勤務年数に性差が見られたため,男女ごとに相関分析を行った結果,男女とも全CSのうち9割以上に職務満足度やワーク・エンゲージメントの間に有意な正の相関がみられた。年収との間に有意な正の相関がみられた CS の多くが,男性では「業務を円滑に遂行するために必要な強み」であり,女性は「対人関係を円滑化させるような日本特有の強み」であった。年収により3群に分けてCS得点の差を検討した結果,330万円未満群と695万円以上群との間に有意な差が見られ,「積極的に現状を打開するために必要な強み」が多くみられた。
著者
儀保 翼 森本 哲司 吉田 圭 森内 優子 小川 えりか 高橋 悠乃 鈴木 潤一 石毛 美夏 渕上 達夫 高橋 昌里
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.87-91, 2017-04-01 (Released:2017-05-02)
参考文献数
12

集団食中毒で,急性脳症を合併した腸チフスの小児例を経験した.海外渡航歴はなく,発熱や消化器症状を主訴に入院.便・血液培養からSalmonella typhi が同定され,腸チフスと診断した.入院後みられた急性脳症は,後遺症なく治癒した.急性脳症発症時の髄液でIL-8,monocyte chemoattractant protein-1 が高値をとり,脳症発症にこれらのサイトカインの関与が示唆された.
著者
森本 哲 古川 裕 和田 紀子 澤田 淳
出版者
日本小児保健協会
雑誌
小児保健研究 (ISSN:00374113)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.718-723, 1995-11-30
参考文献数
13
被引用文献数
3
著者
森本 哲介 高橋 誠 並木 恵祐
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.181-191, 2015
被引用文献数
1

本研究では, 高校生女子の自己形成意識を高めることを目的に, 自己の強みを日常生活の中で活用する自己形成支援プログラムを実施し, その効果を検証した。プログラムは, 第1週目に参加協力者の"性格的な強み(Character Strengths : 以下CSとする)"を測定し, 第2週目に参加協力者自身の中で上位5つのCSを個人毎にフィードバックした。そしてその後1週間の日常生活で, 各参加協力者がフィードバックされたCSを自分なりの新しい方法で活用するよう促す, という手順で行われた。効果検証のために, 「可能性追求」と「努力主義」からなる自己形成意識尺度を測定した。また実験群では, 自己の上位5つの強みについての主観的な感覚を測定した。群(実験群・統制群)×test時点(pre・post)の2要因分散分析の結果, 実験群ではプログラムの前後で可能性追求と努力主義の得点が有意に上昇したが, 統制群では得点に有意な変化はみられなかった。さらに実験群の参加協力者は, 自己の強みをより意識し重要であると感じやすくなり, また自己の強みを活用しているという感覚が有意に高まっていた。これらの結果から, 自己の強みを活用する自己形成支援プログラムが高校生女子の自己形成意識を高めるために有効であることが示された。
著者
高橋 誠 森本 哲介
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.94-99, 2015-01-01 (Released:2015-04-11)
参考文献数
18
被引用文献数
1 4

The study of using strengths seems hampered by the lack of a validated measure in Japan. This study aimed to develop and validate Japanese version of Strength Use Scale (SUS: Govindji & Linley, 2007). Participants were 429 Japanese university students. The exploratory factor analysis showed one factor structure. SUS had adequate internal consistency and high test-retest reliability. The measure is associated with subjective well-being, self-esteem, characteristic self-efficacy, and feeling of depression. Japanese version of SUS showed an adequate reliability and validity, and may be considered as a promising tool for future research and practice of strengths in Japan.
著者
高橋 誠 森本 哲介
出版者
JAPAN SOCIETY FOR RESEARCH ON EMOTIONS
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.94-99, 2015
被引用文献数
4

The study of using strengths seems hampered by the lack of a validated measure in Japan. This study aimed to develop and validate Japanese version of Strength Use Scale (SUS: Govindji & Linley, 2007). Participants were 429 Japanese university students. The exploratory factor analysis showed one factor structure. SUS had adequate internal consistency and high test-retest reliability. The measure is associated with subjective well-being, self-esteem, characteristic self-efficacy, and feeling of depression. Japanese version of SUS showed an adequate reliability and validity, and may be considered as a promising tool for future research and practice of strengths in Japan.
著者
建林 正彦 村松 岐夫 森本 哲郎 品田 裕 網谷 龍介 曽我 謙悟 浅羽 祐樹 大西 裕 伊藤 武 西澤 由隆 野中 尚人 砂原 庸介 堤 英敬 森 道哉 藤村 直史 待鳥 聡史
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、現代の民主主義における政党組織の共通性と各国固有の特徴とその規定要員を明らかにするために、日本の民主党、自由民主党の政党本部、各地の地方組織(都道府県連合会)に対する聞き取り調査と、都道府県議会議員に対するアンケート調査を行い、これらの情報・データをもとに国内比較、国際比較の観点を加えつつ、研究会を積み重ねながら様々な分析を行った。
著者
白濱勝太 三神山駿 森本哲郎 西田純二 上善恒雄
雑誌
研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP)
巻号頁・発行日
vol.2014-EIP-63, no.2, pp.1-6, 2014-02-14

近年急速に普及しているスマートフォン等の Wi-Fi 通信機能を持つ機器は、Probe Request という管理パケットを定常的に発信している。その管理パケットから端末の MAC アドレスを得て、情報端末を持つ人の移動履歴情報を収集することが可能である。使い方を誤れば個人のプライバシ侵害にもつながるが、十分な配慮をすれば地下街や建物の中でも人々の流れをセンシングし、都市での人々の活動を知る重要なビッグデータのソースとして活用できる。我々は、街中に大量に存在する情報端末から MAC アドレスを取得直後に一方向ハッシュ関数等で処理するセンシングデバイスと統計解析システムを開発した。当面の応用として、デジタルサイネージの広告効果や節電を考えた動的な広告管理システムの開発を目標にしている。本論文では、Probe Request を利用して得た人流の傾向に従う動的デジタルサイネージに関する基礎的な実験について報告する。
著者
森本 哲夫 大内 義典 芳之内 正幸
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.90-98, 2005 (Released:2006-06-07)
参考文献数
23
被引用文献数
2 4

本研究は,ニューラルネットワークを利用して,温州ミカンの収穫時期における品質(糖度とクエン酸含量)の値を,それまでの品質および気象の時系列データから予測するモデルを開発した.学習およびモデル検証用のデータは,7年間,8~11月にかけて収集された七つのデータセットであり,各データは4点(8~11月)の時系列からなる.このうち六つを学習用に,一つをモデル検証用に用いた.品質に大きな影響を与える気象要因は降雨量と日照時間であり,とくに降雨量が顕著であった.それで2入力(降雨量と日照時間)-2出力(糖度とクエン酸含量)モデルを構築した.入力(気象要因)と出力(果実の品質)の関係は,非線形特性が強く,また実測データのばらつきが大きいので数式によるモデル化は困難であるが,3層のニューラルネットワークを用いて,入力と出力の現在および過去の時系列データを使用し,最適な学習回数,システムパラメータ数,中間層ニューロン数を選ぶことにより,精度の高いモデルを構築できた.