著者
橋本 裕之
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.263-286, 1991-03-30

Once there were two Narazaka Slopes. There are two passes passing through Narayama Mountain (though it is only small hill) that extends from the east to the west on the frontier between the Province of Yamato and that of Yamashiro, one on the western ridge is called Utahime Pass and another on the east, Hannya Pass; they are both important roads connecting Yamato with Yamashiro. In this paper, I wish to pay attention to Narazaka Slope on the Hannya Pass.After passing the period when Heiankyo was the capital, in the Middle Ages when the center of Nara moved to the east, and even in the present time, the image of Narazaka Slope seems to be always spun from the bundle of the collective memory twining about this region. Such Narazaka seems to offer a very effective clue for someone who seek for circumstances of how the new memories about the scene are being born. This paper has a character of, so to speak, a preliminary study for the matters mentioned above.Thus, the interest of this paper is directed first to elucidate the character of the border given to Narazaka. While we continue to try to grasp the meaning of various messages about a peculiar “scene” called Narazaka, it is certain that the external image buried in Narazaka as the border will gradually surface to our eyes.However, the memory about the scene is not single. This paper seeks for the circumstances about the generation of various memories traveling through Narazaka in history from the antiquity to the contemporary period, by being led by the clue that gave us a strong impression, out of various memories that must have been accumulated in Narazaka, of its being as the border.Perspective that obtained in this paper wakes up our interest in the performing arts in wider sense of the word, played once around the Narazaka. The separate article entitled “Salvation as the performing art” will be elaborated for discussing such a subject.
著者
橋本 裕美子 飯島 博 鷲谷 いづみ
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.29-43, 2001-07-20 (Released:2018-02-09)
参考文献数
18
被引用文献数
2

1998年5月に茨城県潮来町(現潮来市)に開園した実験的なビオトープ「水郷トンボ公園」に導入されたオニバスとミズアオイの管理計画策定に資することを目的として,両種の生育状況と基本的な繁殖生態的特性を,現地でのモニタリングと調査,室内実験および制御条件下での栽培実験によって調べた.オニバスについては,本栽培条件下での面積あたりの生産種子数の上限は約250個/m^2であること,過密により株の大きさが制限された場合には開放花をつけないこと,種子はある種の低温で休眠が誘導されることが明らかにされた.ミズアオイについては,初夏の耕起がミズアオイの生育にとって有効であること,生育が良好な場所(被度75%以上)における面積あたりの生産種子数は約36万個/m^2であること,種子は水中でよく発芽し,水深15cmまでであれば冠水条件でも実生の出現に支障がないことが示された.両種ともに,季節に応じた適切な水位の管理,季節を選んでの耕耘機による耕起および種子や実生の段階での間引きなどの比較的簡単な管理によって,植生におけるこれらの種の優占状態を維持できる可能性が示唆された.
著者
橋本 裕子 高田 真希 坂巻 たみ 久保 暢宏 村嶋 恵 大堀 菜摘子
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.293-294, 2011
参考文献数
1

東北大震災により引き起こされた原子力発電所の放射線漏れに対し,関東地方でも子育て中の母親を中心に不安が蔓延した.連日報道される科学情報の量は非常に多いことから,このような漠とした不安や被災者に対する風評被害の原因は,科学情報の量ではなく,それらに対する理解の不足であると仮定し,理解の深まりが不安の解消あるいは軽減につながることを目的に大人向けイベントを開発・実施した.本イベントでは,放射線の基礎知識を理解するために,放射線の観察や計測の体験,不安や疑問の質問時間を設けるなど,体験性と双方向性を重視したプログラムとなるよう工夫した.約一ヶ月間で,関東地方の児童館を中心に15回開催し,311名の参加者があった.そのうち約200名のアンケートを解析した.その結果,参加者の中心は20〜30代の女性であり,印象に残った内容は,会場の放射線量の測定,簡易実験,基礎講義,Q&Aの順に続き,観察や体験の重要性が示唆された.また,本イベントにより,放射線の基礎理解が進み,不安はある程度軽減されたものの,子どもを対象とした同様のイベントと比較すると,軽減量は少なく,大人に対する科学教育において,変化や影響を促すためには,知識習得以外にも必要な要素があることが,課題として明らかになった.
著者
橋本 裕子
出版者
公益財団法人 国際全人医療研究所
雑誌
全人的医療 (ISSN:13417150)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.46-53, 2019-03-25 (Released:2019-05-09)
参考文献数
1

医療が進んでも永遠のテーマであり続ける身体と心の痛み.線維筋痛症患者の痛みはなぜ理解されにくいのか.患者であろうとなかろうと,人は身体を使っての表現者である.患者はまず自分が表現者であること,そのためにはまず自分について知らなければならない.これまで,「1:患者の本音」「2:患者と医療者とのミスコミュニケーション」「3:患者の実態」について調べてきた.それらを踏まえ,本稿では「患者力」の要諦を以下の5つに分け,それぞれの段階について考察したい.1:表現者としての自分について学ぶ力.大事な情報(事実・Fact)と物語は当事者が持っていること,複雑性,多様性である以上,正解はないということを理解する.2:自分の症状を医師に伝えるコミュニケーション能力.3:周囲の人に自分の状況を伝え,助けを求める力.4:自分の状況を判断して,自分で乗り越える力.セルフマネジメント力と成長モデル.5:持続的に自分の状況を把握し,実存的意義を見失わずに生きる力.レジリエンス.
著者
田上 正明 橋本 裕充 角田 修男 椿下 早絵 加藤 史樹
出版者
獣医麻酔外科学会
雑誌
獣医麻酔外科学雑誌 = Japanese journal of veterinary anesthesia & surgery (ISSN:09165908)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.1-11, 2004-01-31

症例はサラブレッド種競走馬228頭であった。関節鏡手術を実施した関節数は244関節、骨折部位は320ヵ所で主な部位は橈骨遠位外側139(43.4%)、中間手根骨近位43(13.4%)、橈側手根骨遠位48(15.0%)、第3手根骨近位48(15.0%)ヵ所であった。全体の競争復帰率は89.9%で、競争歴のある症例の競争復帰率は92.8%であった。休養日数の平均は239.3日、出走回数の平均は12.5回、収得賞金の平均は1382.0万円であった。術後成績は、競走復帰率、出走回数、収得賞金において非常に良好であった。
著者
橋本 裕之
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.80, pp.363-380, 1999-03-31

本稿は後世の人々が古墳をいかなるものとして解釈してきたのかという関心に立脚しながら,装飾古墳にまつわる各種の伝承をとりあげることによって,装飾古墳における民俗的想像力の性質に接近するものである。そもそも古墳は築造年代をすぎても,その存在理由を更新しながら生き続けるものであると考えられる。古墳は多くのばあい,今日でも地域社会における多種多様な信仰の対象として存在しているのである。といっても,こうした位相に対する関心は考古学の領域にとって,あくまでも周辺的かつ副次的なものであった。だが,後世の人々が付与した意味,つまり土着の解釈学を無知蒙昧な妄信にすぎないとして,その存在理由を否定してしまうことはできない。それは古墳にまつわる民俗的想像力の性質に接近する手がかりを隠しており,古墳の民俗学とでもいうべき未発の課題にかかわっている。とりわけ特異な図文や彩色を持つ装飾古墳は,その存在が古くから知られているばあい,民俗的想像力を触発するきわめて有力かつ魅力的な媒体であったらしい。本稿はそのような過程の実際をしのばせる事例として,虎塚古墳・船玉古墳・王塚古墳・重定古墳・珍敷塚古墳・石人山古墳・長岩横穴墓群(108号横穴墓)・チブサン古墳などにまつわる各種の伝承をとりあげ,民俗的想像力における装飾古墳の場所を定位する。こうした事例は考古学における主要な関心に比較して,あまりにも末梢的なものとして映るかもしれないが,現代社会における装飾古墳の場所を再考して,装飾古墳の築造年代以降をも射程に収めた文化財保護の理念と実践を構想するための恰好の手がかりを提供している。地域社会における装飾古墳の受容史を前提した装飾古墳の民俗学は,そのような試みを実現するためにも必要不可欠であると思われるのである。
著者
橋本 裕
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本プロジェクトでは、胃がんにおいて異常DNAメチル化により発現が低下している複数のmiRNAが、がん関連遺伝子発現制御を協力的に行っているかどうかを調べる事を目的とした研究を行った。解析の結果、dihydropyrimidinase-like 2(DPYSL2/CRMP2)遺伝子が胃がんで発現増加し、miR-224クラスター(miR-224/452)がDPYSL2を含めた複数の標的遺伝子の発現制御に関与している事がわかった。またmiR-224クラスターはDNAメチル化により発現低下することを明らかにした。さらに原発性胃がん組織においてmiR-224のメチル化はDPYSL2の発現増加に寄与し、DPYSL2は胃がんにおいて細胞増殖に関連するがん関連遺伝子である事を示した。一方、miR-340/181cも同様にDNAメチル化により発現低下し、協力的に複数の癌関連遺伝子の発現調節を行っていることを示した。また胃がん細胞の増殖抑制に関与する可能性も示した。以上より、エピジェネティックな発現制御を受けているmiRNAは協力的に標的遺伝子を発現調節している可能性が高く、胃がんにおいて、複数のmiRNA発現低下は癌関連遺伝子の発現増加に大きく影響する事が推測される。さらに、このようなmiRNAの発現調節機構の研究は胃がんの発症機構解明並びに、新規治療薬の開発にも役立つと考えられる。以上の内容は原著論文として2013年5月、国際学術誌PLoS Oneに掲載された。また、昨年度はスペイン・ベルビッチェバイオメディカル研究所にてDr.Manel Estellerのグループと共同研究を行った。大腸がんにおいて異常脱メチル化により発現低下する長鎖非コードRNA(1ncRNA)を探索したところ、ヒトがんで発現異常が報告されているmiRNA(仮称:miR-Y)の発現と相関する1ncRNA(仮称:lnc-X)を見つけた。さらにlnc-Xは原発性ヒト大腸がん組織だけでなく、肝がん組織においても高頻度のがん特異的メチル化が検出された。これまでのところmiR-Yの発現は様々ながんで発現低下が報告されているものの、その発現調節機構については不明な点が多く、今後はmiR-Yの調節制御にlnc-Xが関与している事を明らかにするつもりである.
著者
山本 真鳥 棚橋 訓 豊田 由貴夫 船曳 健夫 安井 眞奈美 橋本 裕之
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

・研究実施計画は、平成11年度については、若干の変更の後に、ほぼ予定通りに遂行された。平成12年度は、日程調整を行い、調査の足りない部分を補いながら全体の計画が遂行された。・芸術祭の事前に各国を訪れることによって、準備状況を観察し、また異なるジャンルの芸術の全体的な存在様式を観察することができた。・ポリネシアでは、「伝統」芸術の様態が観光と深く関わる部分がある一方、人々にとってそれらはアイデンティティに関わるものとして、社会生活のなかでも大きな意味をもつ。しかし、それぞれの社会で細部の事情は異なる。・パプアニューギニアでは、もともときわめて多様なエスニック文化が存在するなかで、それら伝統文化を織り交ぜながら、新しいアイデンティティのよりどころとなる「伝統の創造」が生じている。ダンスのみならず、多様な芸術の分野でも、ニューギニアらしさを出しながら、しかも特定の部族に直結しない芸術の創造が好まれる。・ミクロネシアは、芸術祭では後発のパフォーマーであり、ダンスの演技が観光と必ずしも結びついていない。その意味で、伝統的なダンスとは何か、伝統的な芸術とは何か、それらを芸術祭でいかに見せるかを、現在追究している段階である。・各国の芸術祭のリプリゼンテーション、つまり送り込む代表団をどのように選定するか、それら代表団がいかなる演技を見せるか、ということは、それぞれの国の国内事情や文化状況、国家としての様態などとさまざまな絡まり方をしていることが解釈できる。それらを明らかにするのは、個別社会の事情に通じた研究である。既に明らかになったことは、研究成果報告書のなかで論じている。・さらに芸術祭を主催すること自体が、それぞれの国の国内事情や文化状況と深く関わっている。それらが、個々の芸術祭のあり方を規定する大きな要因である。ニューカレドニアの第8回芸術祭に関していえば、フランスからの独立の可能性の生じてきている今、カナク文化をニューカレドニアのアイデンティティの正面に据えることは、先住民であるカナクにとって大きな意味を持っていた。
著者
橋本 裕行
出版者
奈良県立橿原考古学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は、温泉成分中に含まれる塩化ナトリウムに着目し、温泉と遺跡との有機的な関係性を明らかすることを目的として実施した。その結果、日本列島の内陸部に形成された縄文遺跡と温泉源との間には、有機的な関係性を有する事例があることを指摘できた。また、古代における牛馬の飼育と温泉源(化石海水)との間にも同様の事例が存在することを確認した。
著者
橋本 裕之
出版者
日本オーラル・ヒストリー学会
雑誌
日本オーラル・ヒストリー研究 (ISSN:18823033)
巻号頁・発行日
no.4, pp.19-33, 2008-10-11

The absolute confidence in the effective use of orality is the essence of the fieldwork in human sciences and social sciences. In other words, the questions and answers in the fieldwork constructs the major part. However, this seems to reflect the limits of orality also in the current conditions of fieldwork. I have in the past implemented a fieldwork in Ohashi of Matsudo city in Chiba prefecture about the dance of three lions (shishi) and experienced a very strange happening with the horns that adorn the head of the lion. With this report on the episode, I have been led to examine and provide the limits of the effective use of orality. I can present the key to the innovation of a cognitive model of the fieldwork that has been acknowledged as being dependent on orality. Actually the potential model is not dependent on the unnatural cognitive expansion based on the conversational dialogue model. What I mean is that not only the knowledge as in "knowing that," the knowledge as in "knowing how" is also considered as important. And finally, I provide the necessity of understanding the discourses presented by those who are involved in the context of the rehearsal process.
著者
橋本 裕之 寺井 賢一 田村 忠司 木場 政生 中間 保利
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響
巻号頁・発行日
vol.94, no.464, pp.21-28, 1995-01-27
被引用文献数
2

航空機、列事等のオーディオサービスは、従来、ヘッドホン、イヤホン再生が主であるがシートのヘッドレストの両側にスピーカを埋め込んだニアホンタイプも一部試みられている。今回適応フィルタを応用したディジタル信号処理技術により、隣接席のスピーカの音漏れとエンジン、モータなどの騒音を自席のスピーカによる制御音で低減するアクティブ騒音制御システムを搭載したシートオーディオシステムを開発した。これによって、従乗の音響的な手法では困難であった100〜500Hzの低周波領域に対して、隣接席の音漏れを制御するアクティブクロストークコントロール(ACC)において20dB以上の効果を得た。ここではさらに、一般のアクティブ騒音制御システムにおいて、誤差検出マイクから離れた位置のノイズ低減を可能とするアルゴリズムについて提案する。
著者
菅野 卓治 橋本 裕之 大谷 登蔵
出版者
東北大学
雑誌
東北大學選鑛製錬研究所彙報 (ISSN:0040876X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.53-57, 1978-09-16

The ion-exchange properties of cesium and strontium into zeolite from sodium salt solution has been studied in zeolite A, zeolite X, zeolite Y, mordenite and clinoptilolite. The distribution of cesium into mordenite from about 1〜2 M sodium chloride and sodium hydroxide solutions is considerably larger than that into zeolite A. The distribution coefficient for 2 M solution of sodium salts was about 300. Therefore, the seperation of cesium from sodium salt solution is possible by using mordenite. The distribution of strontium into zeolites from 1〜2 M solutions of sodium chloride and sodium nitrate were in the order of zeolite A>zeolite X>zeolite Y≃mordenite. The distribution coefficient of 230 was obtained for 1 M solutions of sodium salts. The anion in solutions had no effect on the distribution of cesium and strontium into zeolite from sodium salt solution.