著者
熊崎 博一
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.214-218, 2016-06-30 (Released:2017-07-03)
参考文献数
29

嗅覚機能は, 危険認識, 生殖活動の誘発をはじめ多岐にわたりそのいずれもが生命を営むにあたり重要な機能となっている。アルツハイマー型認知症や統合失調症では予後の予測因子として嗅覚は注目を集めている。自閉スペクトラム症 (Autism Spectrum Disorder: ASD) においてもDSM-5 (American Psychiatric Association 2013) において, 嗅覚をはじめとした感覚の問題が診断基準に取り上げられた。 現在までの質問紙を用いた嗅覚研究では, 質問紙を用いた感覚スコアと自閉症の程度との間に相関関係があることがわかっている。臨床場面において認めるASD 児の嗅覚特性は社会機能との関係が示唆される。 一方で自叙伝では嗅覚に関する記述は少なく, 生理的な指標を用いた嗅覚検査の結果も一貫したものとはなっておらず課題も多い。嗅覚特性を把握し, 支援を行うことでASD 者の大幅なQOL 改善につながる可能性があり今後の研究が待たれる。
著者
熊崎 博一
出版者
日本精神保健・予防学会
雑誌
予防精神医学 (ISSN:24334499)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.25-32, 2019 (Released:2020-12-01)
参考文献数
30

DSM-5(APA-2013)にて、感覚過敏や感覚刺激に対する低反応といった感覚の問題が初めて自閉スペクトラム症の診断基準の一つに取り上げられたことで、感覚の問題はさらに注目されることとなった。近年感覚の問題の中でもASD者の嗅覚は急速に注目を集めている。嗅覚の機能は、危険認識(食物の腐敗・煙・ガスから守る)、生殖活動の誘発(フェロモン)、興奮や鎮静(アロマ)、食事の好き嫌い・食欲、気分、自律神経・内分泌・免疫と多岐にわたっている。ASD児では感覚調節障害児や発達遅滞児、ADHD児と比べて嗅覚特性の重症度が高いとの報告があり感覚の問題の中でも嗅覚の問題はASD児にとってより本質的である可能性がある。現在までの実験室条件における研究では、1)香料の量の調節が難しく多量に嗅ぐために徐々に順応し濃度差を感じなくなる、2)空間に香りが残留するため徐々に嗅覚が麻痺してくることもあり、3)感度が低い、といった問題があった。また手間と時間がかかる問題もあり、幼児に行うことも困難であった。においの中でも体臭がASDの病態に関わることを示唆している報告がある。ASD者の嗅覚特性を把握し、特性に基づいた支援を行うことが望まれている。
著者
熊崎 博一
出版者
金沢大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2017-04-01

社交不安障害(以下SADと略す)患者の数は人口の約10%という高い有病率であり、大きな社会的問題となっている。SAD患者はヒトから見られているという意識が強く、人前での会話といった社会的場面において強い不安を呈し、職業面・社会生活面で大きな障害をきたす。SADはもっとも生活の質(QOL)を下げる精神疾患の一つとの報告もある。現在まで薬物療法や認知行動療法など効果的な治療もあったが、一方で難治なケースも数多く存在した。人の外観に酷似したヒト型ロボットであるActroid-Fは声の抑揚を調整することで感情的要素を軽減でき、状況・場面・体調・感情によって対応がぶれることもなく、不安が強く変化に敏感なSAD患者にとっても安心して関わることができ、向社会的態度を誘発することが期待できる。“暴露療法”は不安に慣れるための練習法で、敢えて自分が苦手とする状況をクリアしていく事によって少しずつ恐怖を取り除き、病気を克服していくという治療法である。多くのSAD患者にとって心地よく自然にかつ相互にインタラクションするように視線呈示やジェスチャといったActroid-Fの動きを改良し、ノンバーバルな表出を調整する。動きを改良し、Actroid-Fを用いた暴露療法を確立することが目的となった。平成29年度は精神科医の応募者が実験中の経時的変化を詳細に検討し、Actroid-Fに対するSAD患者の反応の分析に取り組んだ。SAD患者の長期的にインタラクションするうえで、Actroid-Fから受ける人間らしさの印象、心理的安心感を指標とした、SAD患者のインタラクションの質を上げる要因を評価し、Actroid-F の動きを改良することでSAD患者と自然にかつ相互にインタラクションするActroid-Fの実現を目指した。多くのSAD患者が適合するActroid-Fが設定することに成功した。
著者
越智 景子 井上 昂治 ララ ディベッシュ 河原 達也 熊崎 博一
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会研究会資料 言語・音声理解と対話処理研究会 99回 (2023/12) (ISSN:09185682)
巻号頁・発行日
pp.78-83, 2023-12-04 (Released:2023-12-04)

精神科デイケア(精神科リハビリテーション外来)における傾聴ロボットの「きくロボ」の有用性について検討する。利用者が発した言葉を繰り返すなどのカウンセリング技法に基づいて開発された傾聴ロボットが、精神科デイケアの環境でが効果的な活動を提供できるかどうかを評価するために、会話実験を行った。ロボットは、18名のデイケア利用者が最近印象に残った出来事について話すのを最長3分間傾聴を実施した。その結果、会話によって自己評価の覚醒度が高まることが示された。また対話システムの応答の分析により、きくロボの評価応答や相槌の頻度が頻度が高かった対話のほど協力者が対話後に気分が改善したことが分かった。
著者
吉川 雄一郎 松本 吉央 熊崎 博一 上出 寛子 内田 貴久
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

発達障害者の孤立が社会問題となっている.これに対し本研究では,人が遠隔地から操作するロボットの傍に別の自律型ロボットを配置し,これら2体のロボットが生み出す対話にロボットの周囲にいる人々を引き込むことで,発達障害者がコミュニティの人々と交流できる対話システムを実現する.このために,人々との過去の対話内容を基に新たな対話をし続けられる自律型ロボットを開発し,これを発達障害者が操作する遠隔操作型のロボットと連携させることで,継続的な対話を生み出す対話支援システムを開発する.そしてこれを発達障害者のコミュニティに設置し,継続的な交流支援を実現する.
著者
神崎 晶 小川 郁 熊崎 博一 片岡 ちなつ 田副 真美 鈴木 法臣 松崎 佐栄子 粕谷 健人 藤岡 正人 大石 直樹
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.3, pp.236-242, 2019

<p> 聴覚過敏を主訴とした患者に対して, ほかの感覚器の過敏症状を問診・質問票による検査をしたところ, 複数の感覚過敏を有する5例を発見した.「感覚過敏」と本論文では命名し, その臨床的特徴を報告する. 主訴に対する聴覚過敏質問票に加えて, 複数の感覚過敏に対する質問票「感覚プロファイル」を用いて過敏, 回避, 探求, 低登録について検査した. 同時に視覚過敏は5例で, 触覚過敏は4例で訴えたが, 嗅覚と味覚過敏を訴えた例はなかった. 病態には中枢における感覚制御障害が存在することが考えられる. 感覚過敏の検査法, 診断法, 治療についてはまだ確立されておらず, 今後の検討を要する.</p>
著者
神崎 晶 熊崎 博一 片岡 ちなつ 田副 真美 鈴木 法臣 松崎 佐栄子 粕谷 健人 藤岡 正人 大石 直樹 小川 郁
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.3, pp.236-242, 2019-03-20 (Released:2020-04-08)
参考文献数
15

聴覚過敏を主訴とした患者に対して, ほかの感覚器の過敏症状を問診・質問票による検査をしたところ, 複数の感覚過敏を有する5例を発見した.「感覚過敏」と本論文では命名し, その臨床的特徴を報告する. 主訴に対する聴覚過敏質問票に加えて, 複数の感覚過敏に対する質問票「感覚プロファイル」を用いて過敏, 回避, 探求, 低登録について検査した. 同時に視覚過敏は5例で, 触覚過敏は4例で訴えたが, 嗅覚と味覚過敏を訴えた例はなかった. 病態には中枢における感覚制御障害が存在することが考えられる. 感覚過敏の検査法, 診断法, 治療についてはまだ確立されておらず, 今後の検討を要する.
著者
米倉 竜次 苅谷 哲治 藤井 亮吏 熊崎 博 斉藤 薫 熊崎 隆夫 桑田 知宣 原 徹 徳原 哲也 景山 哲史
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.839-843, 2007 (Released:2007-10-03)
参考文献数
20
被引用文献数
4 5

岐阜県の椛の湖に定着した外来魚ブルーギルの生息個体数が,釣りによる駆除により抑制されるかを検討した。調査期間中,総計 15966 個体を駆除した。標識再捕法による個体数推定の結果,ブルーギルの生息数は 24231 個体から 10092 個体まで減少した。また,体サイズ分布の変化から,繁殖に寄与するであろう大型個体が減少することや新規加入が抑制されていることが示唆された。これらの結果から,釣りによる駆除はブルーギルの個体群を抑制するうえで有効であると考えられた。
著者
米倉 竜次 苅谷 哲治 藤井 亮吏 熊崎 博 斉藤 薫 熊崎 隆夫 桑田 知宣 原 徹 徳原 哲也 景山 哲史 RYUJI YONEKURA TETSUJI KARIYA RYOUJI FUJII HIROSHI KUMAZAKI KAORU SAITO TAKAO KUMAZAKI TOMONORI KUWADA TORU HARA TETSUYA TOKUHARA TETSUJI KAGEYAMA 岐阜県河川環境研究所 岐阜県河川環境研究所 岐阜県河川環境研究所 岐阜県河川環境研究所 岐阜県河川環境研究所 岐阜県河川環境研究所 岐阜県河川環境研究所 岐阜県河川環境研究所 岐阜県河川環境研究所 岐阜県河川環境研究所 Gifu Prefectural Research Institute for Freshwater Fish and Aquatic Environments Gifu Prefectural Research Institute for Freshwater Fish and Aquatic Environments Gifu Prefectural Research Institute for Freshwater Fish and Aquatic Environments Gifu Prefectural Research Institute for Freshwater Fish and Aquatic Environments Gifu Prefectural Research Institute for Freshwater Fish and Aquatic Environments Gifu Prefectural Research Institute for Freshwater Fish and Aquatic Environments Gifu Prefectural Research Institute for Freshwater Fish and Aquatic Environments Gifu Prefectural Research Institute for Freshwater Fish and Aquatic Environments Gifu Prefectural Research Institute for Freshwater Fish and Aquatic Environments Gifu Prefectural Research Institute for Freshwater Fish and Aquatic Environments
出版者
The Japanese Society of Fisheries Science
雑誌
日本水産学会誌 = Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.839-843, 2007-09-15
参考文献数
20
被引用文献数
1 5

We examined the effectiveness of removal by angling in order to control the population size of the invasive exotic bluegill in Hananoko Lake, Gifu, Japan. A total of 15, 966 individuals were caught by angling. Estimates based on a mark-recapture method revealed that the population size was reduced from 24, 231 to 10, 092 individuals over 15 months of population control. The change in the size distribution suggested that removal by angling not only reduced the number of potentially mature individuals but also decreased the recruitment of juvenile fish. This evidence indicates that removal by angling could control the population size of the bluegill, although a complete extermination by angling alone may be difficult.