著者
山本 佳世子 葛西 賢太 打本 弘祐
出版者
学校法人天理よろづ相談所学園 天理医療大学
雑誌
天理医療大学紀要 (ISSN:21876126)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.13-23, 2021-03-31 (Released:2021-08-16)
参考文献数
27

日本では終末期医療を中心に,スピリチュアルケアの議論と実践の蓄積がされてきたが,それは宗教的ケアとは切り離した形で進められてきた。では,非信者に対して宗教者による宗教的ケアは不要なのか。本稿では,宗教系病院における死亡した非信者患者及びその家族へのケアの一端を明らかにし,病院における宗教者による非信者患者や家族へのケアの意義や可能性,さらには「無宗教」と言われる日本人の死生観や宗教性の一端について示唆を得る。 天理よろづ相談所病院,キリスト教系病院A及びB,あそかビハーラ病院で活動する宗教者計23名に対し半構造化面接を行った。非信者患者の死後の「死者へのケア」としては,天理よろづ相談所病院およびあそかビハーラ病院では宗教者によるお見送りが,キリスト教系病院A・Bでは希望に応じたチャプレンによる葬儀の司式が行われていた。また,その家族へのケアとしては,キリスト教系病院Aでは月1回の遺族の分かち合いの会が,キリスト教系病院Bでは遺族カウンセリングが行われており,あそかビハーラ病院には院内の仏堂への遺族によるお参りの例があった。 これらの実践からは,「無宗教」を自認する多くの日本人とって,死後の世界や故人の魂につながるために必要な存在が「宗教」ではなく「宗教者」であることが示唆される。これまで地域コミュニティにおいてなされてきた宗教者による「死者へのケア」及び悲嘆者である遺族が「死者へのケア」をできるように宗教者が関わる「『悲嘆者の死者へのケア』をケアすること」が,病院付き宗教者に新たに求められるようになっていることが明らかになった。
著者
片山 めぐみ 木戸 環希 足利 真宏 朝倉 卓也 河西 賢治 田村 康宗 本間 耕 土佐 貴樹 向井 猛 伊藤 真樹 吉野 聖 伊藤 哲夫
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.17, no.35, pp.289-292, 2011-02-20 (Released:2011-02-18)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

The Hokkaido brown bear house in Sapporo Maruyama Zoo was designed with the concept of “environmental enrichment”. To consider the environmental elements which enrich bear’s behavior ‘Evaluation grid method’ was used to draw wide range of ideas from zoo keepers. In the outside exhibition area all ground is covered by soil and there are a hill, a pond, caves, many natural plants and dead trees for bear’s play. In the two observation spaces visitors can see the bear at close range and hear and smell of the bear through the pipes fixed in the wall. Many characteristic behaviors of the bear and visitors were observed including their communication through the window with a large and thick acrylic resin.
著者
大西 賢治 山田 一憲 中道 正之
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 = Primate research (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.35-49, 2010-06-20
参考文献数
31
被引用文献数
1 3

We observed 4 cases of aggressive response of Japanese macaques (<i>Macaca fuscata</i>) toward a Japanese giant flying squirrel (<i>Petaurista leucogenys</i>) at the feeding site of the Katsuyama group.<br>When a Japanese giant flying squirrel glided over to a tree at the feeding site, almost all the adult and subadult monkeys resting around the tree mobbed the flying squirrel with threatening sounds. Immature monkeys aged &le; 2 years screamed, and the mothers retrieved their infants immediately on spotting the flying squirrel. Several peculiar high-rank adult males and females chased, threatened, and attacked the flying squirrel for 25-114 minutes, but mothers with infants seldom approached the flying squirrel. High-ranking adult males had a greater tendency to perform agonistic displays toward the flying squirrel than low-ranking adult males and females.<br>Our observation and previous reports about interspecific encounters suggest that Japanese macaques recognize the Japanese giant flying squirrel as being in the same category as raptors, which prey on Japanese macaques. This explains why the monkeys respond aggressively, which is typical of antipredator behavior, to the common behavioral features of the flying squirrel and raptor-gliding and descending nearby. However, this aggressive response does not seem to benefit monkeys in terms of avoiding predators because the flying squirrel is not actually a predator. There are 2 other possible benefits. Their sensitivity to behavioral features that resemble those of the raptors may improve their efficiency in terms of antipredator behavior towards actual predators such as raptors. In addition, adult or subadult male monkeys may display their fitness to potential mates by performing agonistic displays in response to the Japanese giant flying squirrel.<br>In order to better understand the relationship between Japanese macaques and other species, it is necessary to establish a system for collecting and sharing data on rarely observed cases.
著者
明星 敏彦 李 秉雨 橋場 昌義 神原 辰徳 大藪 貴子 大神 明 森本 泰夫 西 賢一郎 角谷 力 山本 誠 轟木 基 水口 要平
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
産業医大誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.163-171, 2011
被引用文献数
1

ナノマテリアルを取り扱う作業では, 防じんマスクを着用する必要がある. しかし, 防じんマスクで気中に浮遊しているナノ粒子(1〜100nm)を確かに捕集除去できるか, 取り扱っている衛生管理者や作業者は不安に思っている. 本研究では, 15〜220nmの粒径範囲の二酸化チタンナノ粒子を試験粒子に用いるフィルタ捕集効率測定システムを作成した. DS1防じんマスク2種類とDS2防じんマスク4種類をこのシステムに設置して, 粒子捕集効率を計測した. ここで試験した防じんマスクは日本の国家検定に合格したものである. 試験した中では, 検定合格に相応する捕集効率(DS1では80%, DS2では95%)以下の性能を示す防じんマスクはなかった.
著者
大西 賢人 大西 賢人
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.102, pp.6-10, 2015

<p>API (Application Programming Interfaces)は開発者がTwitter,Flickr,Instagram,Vimeo,FacebookなどのWebサイトのコンテンツやサービスにアクセスするためのツールである。APIは図書館Webサイトとコンテンツを関連づけたり,SEO(検索エンジン最適化)を通してコンテンツをより発見しやすくする方法を提供してくれる。APIを使用すれば,開発者は外部のWebサービスとコンテンツをやりとりすることができる。例えば,画像とメタデータをFlickrにアップロードしたり,Instagramから画像とメタデータを取得すれば,図書館のWebサイトで表示させることができる。APIを使えば,図書館のコンテンツをWeb上で人々が訪れる場所へ引き出すことが可能になる。本稿では,APIの技術的な解説と,APIが図書館にとってどのような価値があるか,また,マイアミ大学図書館(Miami University Libraries)がアウトリーチとコミュニケーションを拡大するためにどのようにAPIを活用してきたかについて紹介する。</p>
著者
百永 眞士 大西 賢 矢澤 久豊
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.553-561, 1992-09-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

充填性や流動性の良い粉体特性を有したセファゾリンナトリウム (化学式 : C14H13NaN8O4S3) の多形β形結晶を晶析することを目的として実験条件の検討を行った.その結果, 物理的, 化学的に安定なβ形の結晶を取得するためには, 水-ソルミックス (EtOH-IPA-アセトンの混合溶媒のことで, 各々の比は85%, 5%, 10%) 混合溶媒系で晶析温度の違いによる結晶の溶解度差を利用した晶析法が有効であることを見いだした.また, セファゾリンナトリウムに構造が類似したジアミノモノカルボン酸構造を有した化合物, またはL-リジン, L-アルギニンのようなアミノ酸を微量添加することによって, 板状結晶から針状晶が凝集した球形の凝集結晶に晶癖を調整する方法が確立できた.本晶析法によって医薬品のバイアル充填, カプセル充填に好適な結晶を得ることができた.さらに, 浮遊撹絆動力比Z因子をパラメータとして用いることによって, 粒径と粒径分布制御およびスケールアップが可能なことを明らかにした.
著者
葛西 賢太
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.3-27, 2016

<p>依存症は、食のあり方の異常が、生き方や人間関係、人としての責任能力の上での問題として現れることが多い病理である。薬物依存からの回復を目指す仏教的なアプローチを検討する。米国の瞑想指導者ノア・レヴァインは、青少年時代の非行・犯罪と薬物・アルコールの濫用から回復するため、キリスト教の儀式から学んだ依存症回復プログラム「十二のステップ」と、仏教瞑想とを学び、両者を統合するプログラムを工夫、彼同様に苦しむ若者に瞑想を伝える努力を払っている。人としての困難に向き合わず困難を避け麻痺させる行為(薬物使用)の反復が依存とみる。依存は仏教でいう苦であり、仏教の三宝(仏—現実と向き合う仏の智慧、法—十二のステップや四諦八正道、僧—回復を目指す共同体)への帰依(尊重)が回復への道であると説く。パンクロック音楽を愛好する彼は、既存の価値観を問いなおす仏教とパンクロックとの間に共通点も見いだしている。</p>
著者
葛西 賢太
出版者
東京大学文学部宗教学研究室
雑誌
東京大学宗教学年報 (ISSN:2896400)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-17, 1992-03-30

Christian Science is one of the much influencial religious sects in the modern United States, especially in the field of publishing and medicine. However, there can we find only few researches about its healing practice even in the United States, and, as a matter of course, in Japan. This is a study about the transition and development of the idea and the arts of the healing from the Harmonialism to Christian Science. In harmonialism I include mesmerism, homeopathy, hydropathy, etc. Harmonialism is defined as an unorganized religious movements, which understands that a person's harmonial rapport with cosmos (or God) has much influence on his/her spiritual composure and physical health. But other than "rapport", one more important motief of harmonialism can I show you. It is the conceptions of half-materialistic fluid (for example, "spiritual matter") as the media of rapport. Many students refer to Christian'Science as one of the cases of harmonialism. Perhaps it is true to their ideas of the psychosomatic causes of diseases, but Christian Science has neither conceptions of "rapport" nor that of materialistic fluid. The materialistic conceptions of fluid changes into a metaphysical conception of "divine Mind" of Christian Science. We can show you another same change as the transition of the conception of the fluid, in that of healing arts. The commonest arts of healing of harmonialism, especially in the case of mesmerism, are "therapeutic touch" or "rubbing", which is done to transmit the fluid into the affected body organ. But in Chrisitian Science, they had no conceptions about such fluid so there are no arts to pass the fluid. These two points also show where Christian Science is to the strand of harmonialism. And my study can be some critic to the tendency of the contemporary research of faith healing, which is apt to focus only on the thought or cause of healing.
著者
安藤 仁介 芹田 健太郎 小原 喜雄 三宅 一郎 木村 修三 五百籏頭 真 西 賢
出版者
神戸大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

本研究は, 第二次世界大戦後における日本の対外関係の特質を究明するために, その原点となった占領期における基本的な問題をいくつか選び出し, その各々について日本がいかに自主的にかかわっていったかを分析することを目的とした. そして従来この分野の研究が二次的資料に頼りがちだった事情を反省し, 国立国会図書館(現代史資料室)が最近に米国の国立公文書館(National Archives)秘蔵の膨大な一次資料をマイクロ・コピーで入手したなかから, GHQ/SCAP文書を中心に上記の基本的な問題に関係するものを複写・整理し適宜インデックスを作成したうえ, それに基づいて個別および共同の研究を進めた.基本的な問題の第一として, 占領軍の権限の国際的評価が挙げられるが, これについては, 連合国の日本占領はドイツに見られる無条件降伏の場合と異なり, ポツダム宣言に列挙された諸条件を実施するためのものであって, 占領軍は日本の非軍事化と民主化のために適切と認める措置をとる強大な権限を有していたことが判明した. 第二に, 占領下における対外関係の処理については, 占領の初期に対外関係処理の権限が占領軍の手に集中されたが, 占領方針の転換と日本側の要請によってこれが徐々に緩和され, 対外郵便業務の再開, 国際会議・国際機構への参加, 駐日外交代表部との接触, 出入国管理事務と対外公的通信の再開, 在外事務所の設置をもたらしたことが跡づけられた. 第三に, 国内問題についても, まず財閥解体・独禁法の制定が日本の特殊事情を考慮に入れるようにとの日本側の要請にも拘らず, 対独方式と同様に進められたこと, だが選挙法の改正には日本側の自主性が尊重されたこと, 総じて, 連合国の占領政策のうち, 日本側が実質的なイニシャティヴをとりえたものや, 政策の日本人受益者層が着実な拡がりを見せたものが, 定着したことが実証された.