著者
永井 晋 野口 実 鈴木 哲雄 高梨 真行 角田 朋彦 野村 朋弘 橋本 素子 実松 幸男 佐々木 清匡 北爪 寛之
出版者
神奈川県立金沢文庫
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

中世に下総国下河辺庄という広域荘園が形成された地域にについて、各分野の研究者や自治体の文化財担当者と意見交換を行い、現地での確認調査・聞き取り調査を行った結果、鎌倉時代に地頭として下河辺庄を治めた金沢氏が河辺・新方・野方と三地域に分割した経営形態が地域の実情に即した適切な統治の形態であったことを確認することができた。すなわち、下河辺庄は荒川・利根川・大井川(太日川)の三本の河川が集まる水上交通の要衝という物資輸送の利便性を持つが、それは同時に、肥沃な土壌が継続的な供給される生産性の高い水田地帯という経済的優位性と水害に弱い洪水常習地帯という豊凶の落差の激しい中下流部の低地帯(新方・河辺)と、鎌倉街道中道の通る猿島台地・下総台地上の耕地帯に大きく分かれていることが明らかになった。金沢氏は、一律の基準で支配できない広域荘園に対し、本家が直轄する所領と一族や被官を郷村の地頭代(給主)に補任して治める所領に細分化し、それらを公文所が統合することで全体の管理を行っていた。本科研では、下河辺庄の成立過程を探るために、摂津源氏の東国進出と秀郷流藤原氏下河辺氏の成立に始まり、江戸時代に語られていた下河辺庄の記憶で調査年代を終えることにした。成立期の下河辺庄は秀郷流の本家小山氏との関係を重視したので野方の大野郷に拠点があったと推定される。下河辺庄の地頭が下河辺氏から金沢氏に交代すると、金沢氏は鎌倉の館に置かれた公文所が直轄して管理する体制をつくったので、下河辺庄は鎌倉の都市経済に組み込まれた。この時期に、下河辺庄赤岩郷は鎌倉に物資を輸送する集積地として発展を始めたと考えられる。南北朝時代になると、下河辺庄赤岩郷は金沢家の菩提寺称名寺の所領として残されたので、称名寺が任命した代官や現地側の担当者と称名寺がやりとりする書状や書類が多く残されるようになった。また、称名寺のリスク管理の中で年貢代銭納が行われ、上赤岩には年貢として納入するために保管されていた出土銭が発掘されている。享徳の乱によって古河公方が成立すると、下河辺庄は古河公方側の勢力圏の最前線となり、簗田氏や戸張氏といった公方側の武家が庄域を管理し、扇谷上杉側の岩槻大田氏と境界を接するようになる。この時期に、称名寺と赤岩郷の関係が確認されなくなる。江戸時代になると、下河辺庄新方は武蔵国に編入され、新方領とよばれるようになる。この地域は『新編武蔵国風土記稿』や『武蔵国郡村誌』といった詳細な地誌が残るので、地域で語られていた下河辺庄の記憶を知ることができる。本科研は、歴史学を中心とした地域総合研究として、荘園史の枠組みを超えた地域研究を行おうとしている。調査の編目は、後述する報告書掲載論文から明らかになるし、調査の詳細は報告書の本文をご覧いただきたい。
著者
内田 芙美佳 木村 愛子 堀江 貴文 元廣 惇 稲垣 杏太 鈴木 哲
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.905-909, 2017 (Released:2017-12-20)
参考文献数
16
被引用文献数
1

〔目的〕経験の浅い理学療法士のキャリア発達を促す支援策としての基礎資料を得ることを目的に,キャリア・アダプタビリティの現状を調査し,かつキャリア・アダプタビリティとメンターとの関係性について検討した.〔対象と方法〕対象は,経験年数が1年から5年までの理学療法士149名とした.質問紙にて,基本属性,キャリア・アダプタビリティ尺度,メンターの有無を調査した.〔結果〕メンターを持つものは,持たないものと比べ,キャリア・アダプタビリティの関心因子,コントロール因子,自信因子の得点が有意に高かった.〔結語〕理学療法士のキャリア発達にメンターが関与する可能性が示唆された.
著者
鈴木 哲也
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.8-13, 2017-01-01 (Released:2017-01-01)

ICTが高い利便性を持つことは疑いない。しかし,学術サーキュレーションの電子化が,教育・研究に負の効果をもたらすという研究もあるように,必ずしも,ICTは,光明ばかりを与えてくれないことを,我々は意識すべきである。その上で,電子化の限界や問題点をどう補完するか,どんな性格のものであればICTが効果を発揮するのかという問題意識のもとに,研究内容や成果発表の目的に応じてメディアを仕分け,コスト/効果,採算性も見極めつつ,学術成果公開にICTを導入すべきである。本稿では,京都大学学術出版会におけるリッチコンテンツ型電子書籍の実験的取り組み,特にiPadアプリ型電子書籍『わくわく理学』の経験をもとに,学術書籍の電子化の持つ問題点と当面の課題について,具体的に考える。
著者
鈴木 哲也
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.664-672, 2004-12-10 (Released:2010-08-10)
参考文献数
52
被引用文献数
8 3

フルバランスドオクルージョンがリンガライズドオクルージョンよりも機能的に優れていることを示すエビデンスとなる文献はみつけることはできなかった.最近では全部床義歯の咬合様式として, リンガライズドオクルージョンにおいてもフルバランスドオクルージョンと同様に, 片側性平衡咬合ではなく, 両側性平衡咬合を与えることが一般的であった.咀嚼時における非咀嚼側の咬合接触は, 咀嚼側より早く, 第二大臼歯第一大臼歯, 小臼歯の順に起こり, 義歯の転覆を防ぐと同時に, 中心咬合位への誘導という重要な役割を担っていた.そのため, 咀嚼時においても両側性平衡咬合は義歯の安定に有効であった.現代の無歯顎者は高齢であり, 顎堤の吸収や粘膜の菲薄化がすすみ, 顎機能に異常が認められる者もいる.下顎位が不安定で, 義歯装着後に変化する場合がしばしばある.そのような症例には, 嵌合関係が厳しく規制されるフルバランスドオクルージョンよりも, 変化に対応しやすく咬合調整の簡便なリンガライズドオクルージョンのほうが適している.ただし, 日本人の食文化を考えると, 咀嚼感覚という点でリンガライズドオクルージョンが適しているかどうかの疑問は残された.咀嚼感覚を評価する手法の確立が望まれる.
著者
河田 道子 石川 勝規 鈴木 哲
出版者
[東北農業試験研究協議会]
巻号頁・発行日
no.55, pp.153-154, 2002 (Released:2011-03-05)
著者
鈴木 哲 田邉 賢一
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.79-83, 2022 (Released:2022-02-10)
参考文献数
6

東芝エネルギーシステムズと富士電機が共同開発している小型モジュール高温ガス炉は,固有安全性を活用して原子炉格納施設を簡素化すると共に,プラントを4モジュール構成とすることで大型軽水炉並みの電気出力を得るコンセプトである。また,早期実用化のため成熟技術である蒸気タービンを採用し,蓄熱設備との接続により電力需給変動を吸収する機動的運用を検討している。本稿では本高温ガス炉のプラント概要と,実用化に向けた取り組みについて紹介する。
著者
鈴木哲雄著
出版者
吉川弘文館
巻号頁・発行日
2012
著者
吉田 悠鳥 香川 正幸 後藤 眞二 鈴木 哲 栗田 明 小谷 英太郎 新 博次 高瀬 凡平 松井 岳巳
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.SUPPL.1, pp.S1_4-S1_10, 2011 (Released:2012-12-05)
参考文献数
11

人体にやさしい小電力のマイクロ波レーダーを使用して, 高齢者を対象とした非接触かつ非拘束な呼吸·心拍数モニタリングシステムを開発した. このシステムを実際に特別養護老人ホームで評価し, 高精度の呼吸·心拍数モニタリングシステムの実現とその有用性を確認した. 本論分では, 特に心拍信号の実時間上での迅速抽出について述べる. 寝具用マットレスの下部に周波数の異なる2つのレーダー装置を設置し, 呼吸·心拍に伴う体表面の微振動をドプラレーダーにより計測する. 得られる生体信号には, 呼吸動, 心拍動, 雑音が混在している. この中で安静時に, 最も振幅の大きな信号として現れる呼吸信号に着目し, 実時間上における信号平滑化の移動平均法を用いて呼吸信号を推定し, 原信号からその呼吸信号を減算することにより心拍信号, 心拍数を高精度に抽出した. 一方で, 高齢者の介護では, 在宅の場合も施設介護の場合も高齢者の状態変化の早期検出と介護者の身体的精神的負荷の軽減が求められている. 高齢者にとって拘束感, 違和感がない本システムは, 新しい高齢者見守り支援システムとして期待される.
著者
鈴木 哲司
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.990-994, 2021-11-01

■救急救命士が活動する“場”の拡大病院前救急医療体制の充実を図る救急救命士制度 救急救命士制度は,1991(平成3)年に病院前救急医療体制のさらなる充実を図り,わが国の救命率の向上を目指すことを目的として整備された制度である.制度発足以前は,救急用自動車の中での救急隊員による医療行為が禁じられていたため,傷病者の搬送を主体とした業務であり,助かるはずの命が失われていたという悲しい歴史があった.それらをいち早く解消するために公的養成機関,専門学校,短大,大学において救急救命士の養成が行われ,量的充実が図られてきた. 改正前の救急救命士法第44条第2項によって「救急救命士は,救急用自動車その他の重度傷病者を搬送するためのものであって厚生労働省令で定めるもの(「救急用自動車等」という.)以外の場所においてその業務を行ってはならない.ただし,病院又は診療所への搬送のため重度傷病者を救急用自動車等に乗せるまでの間において救急救命処置を行うことが必要と認められる場合は,この限りではない.」と救急救命士が業務の行う場所の厳格な規定と制約がなされ,今日まで救急救命士の活躍する場は,消防機関が主たる職域であった.
著者
鈴木 哲也 織田 展輔 内田 光春 早川 巖 高橋 英和
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.165-170, 2002
参考文献数
20
被引用文献数
4

本研究の目的は光重合型レジンが上顎全部床義歯の基礎床用レジンとして有用であるか,常温重合型基礎床用レジンと比較し,検討することである.市販の光重合型基礎床用レジン3種類と常温重合型基礎床用レジン2種類を用い,曲げ特性,ヌープ硬さ,寸法変化率,フィラー含有量および模型への適合性を測定した.光重合型レジンの曲げ特性とヌープ硬さは各製品間で異なり,さらに厚さの違いが性質に影響する製品も認められた.光重合型レジンのヌープ硬さと曲げ特性,特に弾性係数は常温重合型レジンより有意に大きかった.光重合型レジンの浮き上がり量は常温重合型より模型中央部で有意に大きかった.以上の結果から,光重合型レジンは適合性については常温重合型レジンよりやや劣るものの,十分な機械的特性を有し,かつ操作性に優れていることから,上顎全部床義歯の基礎床として有用であることが示唆された.
著者
奥平 麻里子 鈴木 哲 小野田 和夫
出版者
[東北農業試験研究協議会]
雑誌
東北農業研究 (ISSN:03886727)
巻号頁・発行日
no.56, pp.143-144, 2003-12

岩手県で栽培されているリンゴ品種は、晩生種に偏重した構成となっている。また、早生種収穫以降及び中生種収穫前の9月下旬に収穫できる優良品種が無いことから、この時期に収穫できる品種の開発が望まれていた。さらに、県北部及び高標高地帯ではジョナゴールドやふじの熟期が遅れることから、中・晩生の優良品種開発への期待は大きい。そこで、品質及び栽培特性に優れた中・晩生の岩手オリジナルリンゴ品種の育成を目標とし、交雑育種並びに選抜を行った結果、9月下旬に成熟する黄色品種を獲得したので報告する。
著者
鈴木 哲 松井 岳巳 安斉 俊久 孫 光鎬 菅野 康夫
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では,マイクロ波を用いた完全な非接触での生体計測手法を応用し,血圧変動を推定する手法の確立を目指すことを目的とした.手法の有効性の確認のための,①推定法の理論的検討,②システムの試作,③実験室内における試作したシステムの評価実験,を実施した.さらに,臨床的知見の蓄積とシステムの問題点の確認のため,④医療現場における心不全患者へ適用した実証実験,の4点の実施を目標とした.結果として,理論構築およびシステム試作,さらに評価実験を行い,ある程度良好な結果を得た.一方で,臨床的知見の蓄積のための調査については,安全性と精度に課題があったため十分な実施が出来ず見送る結果となった.