著者
長谷川 聡 大島 洋平 宮坂 淳介 伊藤 太祐 吉岡 佑二 玉木 彰 陳 豊史 伊達 洋至 柿木 良介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.De0029, 2012

【はじめに、目的】 生体肺移植は,健康な二人の提供者(ドナー)がそれぞれの肺の一部を提供し,これらを患者(レシピエント)の両肺として移植する手術である.生体肺移植ドナーは肺の一部をレシピエントに提供することで呼吸機能が低下することは知られているが,手術における呼吸器合併症の発症や術後の呼吸機能,運動耐容能および健康関連QOLの中期的経過に関する報告は世界的にもあまりみられない.本研究の目的は,生体肺移植ドナーが手術を受けることによる術後の呼吸機能および身体機能,生活の質に与える影響を明らかにし,本手術施行におけるドナーの予後を検証することである.【方法】 2008年6月から2010年12月までの期間に当院で施行された生体肺移植術におけるドナー28名(男性9名、女性19名)を対象とした.尚,全症例に対して,術前後のリハビリテーションを実施した.術後の短期成績として,術後呼吸器合併症の発症を検証した.さらに,呼吸機能の評価として,術前, 3ヶ月,6ヶ月に努力性肺活量(以下FVC),1秒量(以下FEV1),肺拡散能(DLCO)を測定した.また,術前,術後1週,3ヶ月における6分間歩行距離(以下6MWD),および咳嗽時疼痛をNumerical Rating Scale (NRS)を用いて測定し,術後経過を検証した.手術における健康関連QOLに与える影響を検証するために,術前,術後3ヶ月,6ヶ月にMOS 36-item Short Form Health Survey (SF-36)を用いてQOL評価を行なった.測定値の各評価時期における平均値を算出するとともに,反復測定一元配置分散分析およびScheffe's法による多重比較検定を用い,各時期における平均値の比較を行なった.統計学的有意水準は危険率5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には口頭および文章にて本研究の主旨および方法に関するインフォームド・コンセントを行い,署名と同意を得ている.本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究であり,京都大学医学部医の倫理委員会の承認を得ている.【結果】 術後呼吸器合併症(肺炎・無気肺)の発生症例は無かった.FVCは,術後3ヶ月,6ヶ月においてそれぞれ術前の79.4±6.4%,86.1±7.0%の回復であった.FEV1は,術後3ヶ月,6ヶ月においてそれぞれ術前の81.8±7.8%,85.7±9.7%の回復であった.DLCOは,術後3ヶ月,6ヶ月においてそれぞれ術前の80.0±1.0%,85.2±9.7%の回復であった.呼吸機能は,術後3ヶ月において有意に低下しており,術後6ヶ月経過しても完全には回復しなかった.術後3ヶ月における6MWDは,術前の101.2±7.7%まで回復し,咳嗽時疼痛はNRSで0.4±1.1とほぼ消失し,術前と比較して統計学的な差を認めなかった.QOLに関しては,SF-36の下位尺度は,術後3ヶ月では十分に改善せず,術後6ヶ月では,全項目で国民標準値を超えていたが,術前の得点にまでには改善しない項目がみられた.【考察】 呼吸機能は術後6ヶ月の時点においても術前と比較して機能低下は残存するものの,切除肺区画量から算出される予測機能低下よりもはるかに良好な値であった.運動耐容能は術後1週で,呼吸機能の回復よりも高い回復率を示し,術後早期から良好であり,さらに術後3ヶ月の時点で術前レベルに回復することが明らかとなった.これらの結果より,ドナーは少なくとも術後3ケ月経過すれば,呼吸機能低下の残存に関わらず,運動耐容能の結果からも術前の生活レベルには復帰できるが,健康関連QOLの観点からみるとまだ不十分であり,6ヶ月経過してもQOLの改善は完全ではないことが示唆された.本研究の結果より,術前後のリハビリテーションを実施した生体肺移植術ドナーは,術後呼吸器合併症を発症することなく,安全に術前の運動耐容能を取り戻すことが出来るが,健康関連QOLは術後半年経過しても完全には回復しておらず,継続的かつ包括的な治療介入が必要であることが示唆された.【理学療法学研究としての意義】 生体肺移植手術は,脳死肺移植手術とともに,難治性の呼吸器疾患患者の生命予後を改善する非常に有用な先端医療であり,本邦においても今後様々な施設において手術施行例が増加すると思われる.レシピエントに対するリハビリテーションにおける臨床研究は,無論,重要であるが,ドナーに関しても,臨床研究を進めるとともに,手術における身体機能やQOLへの影響を検証し,我々理学療法士がエビデンスに基づき適切に介入していく必要がある.本研究はこのような新たな視点を示した点で意義深く,重要な研究である.
著者
山岸 益夫 中村 英生 鈴木 正治 長谷川 聡 中野 雄一
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.383-390, 1990-03-01 (Released:2011-11-04)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

Morphological and immunohistochemical examinations were performed on the olfactory mucosa of eight patients with olfactory disturbances caused by the common cold (viral infection). The results of olfactory testing and of follow-up examinations were analyzed.H. E. staining revealed three patterns of degeneration. In Group 1 (3 patients) the olfactory epithelium had adequate thickness and a basic arrangement of supporting cells, olfactory receptor cells, and basal cells, but slightly fewer than normal receptor cells. In Group 2 (3 patients) olfactory receptor cells were greatly decreased. Group 3 (2 patients) had olfactory epithelium which was thin and atrophic with no receptor cells or olfactory vesicles, and only the supporting and basal cells remained. Group 1 patients had Grade 2, Group 2 patients Grade 3, and Group 3 patients Grade 4 damage according to our classification of degeneration proposed in 1988.Immunohistochemically, neuron-specific enolase (NSE) immunoreactivity was found in a number of receptor cells in Group 1 with Grade 2 damage and in some in Group 2 with Grade 3 damage. In Group 3 with Grade 4 damage, there was no NSE-immunoreactivity in the epithelium. Glia-specific S-100 protein immunoreactivity was found in Bowman's glands and olfactory nerve bundles in the lamina propria of Group 1 and 2 patients with Grade 2 and 3 damage. Cytokeratin immunoreactivity was found in the basal cells on the basement membrane in all three groups.Seven patients were found to be anosmic with T & T olfactometry, but the three patients in Group 1 responded well to Alinamin- intravenous injection test, and two of them recovered.These results indicate that there is a strong relationship among the appearance of the olfactory epithelium, results of the Alinamin- test and the outcome of olfactory disturbance caused by the common cold. When an olfactory mucosall biopsy performed at the first visit of the patient shows enough functional receptor cells and the Alinamin- test is positive, it is possible that the olfactory disturbance may improve.
著者
山内 大士 長谷川 聡 中村 雅俊 西下 智 簗瀬 康 藤田 康介 梅原 潤 季 翔 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1031, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】野球選手は肩関節の内旋や水平内転方向の可動域が制限されることが多く,またこうした可動域制限と投球障害との関連も報告されている(Wilk;2011)。可動域制限の要因としては肩関節後方の軟部組織の伸張性低下が大きな要因として考えられており,一般的に肩関節後方タイトネスと呼ばれている。肩関節の内旋・水平内転可動域制限に対するストレッチング(以下ストレッチ)方法としては,水平内転方向へのcross-body stretchと,内旋方向へのsleeper stretchが多く用いられる(McClure;2007)。近年Wilk(2013)らによって,これらのストレッチを改良したmodified cross-body stretch(以下mCS)と,modified sleeper stretch(以下mSS)が提唱された。しかし,実際にこれらのストレッチ方法が関節可動域に及ぼす効果を比較・検討した報告は見当たらない。また,これまでは個別の筋の柔軟性を測定することはできなかったが,近年開発されたせん断波エラストグラフィー機能を用いることで各筋の弾性率を測定することができ,ストレッチが各筋の柔軟性に及ぼす効果を明らかにすることができるようになった。本研究の目的は,mCSとmSSによる肩関節内旋・水平内転可動域制限の改善効果と,各筋の弾性率の変化を比較検討し,これらのストレッチが及ぼす即時効果を明らかにすることである。【方法】対象は大学硬式野球部員24名の投球側24肩とし,無作為に12名ずつmCS群とmSS群とに群分けした。mCSは,投球側を下にした側臥位になり,投球側肩甲骨を固定した状態での水平内転方向へのストレッチである。mSSは,投球側を下にした側臥位から体幹を30°後方に回旋させることで肩関節の圧迫を減じつつ,投球側上腕の下にタオルを敷くことで水平内転角度を確保した状態での内旋方向へのストレッチである。ストレッチは各群とも投球側に対して30秒を3セット行い,ストレッチ前後に測定を行った。可動域計測にはデジタル角度計を用い,背臥位で肩甲骨を固定しながら2nd内旋と水平内転可動域を計測した。各筋の弾性率の計測には超音波診断装置(SuperSonic Imagine社製)のせん断波エラストグラフィー機能を用い,測定肢位は座位肩関節90°外転・40°内旋位(2nd内旋位)と座位肩関節110°水平内転位(水平内転位)とし,測定筋は棘下筋・小円筋・三角筋後部とした。各測定項目について,対応のあるt検定を用いて介入前後の値を比較した。有意水準は5%とした。【結果】介入前後で比較すると,各群共に内旋可動域は介入後に有意に増加した(mCS群;49.1±6.2°→55.8±5.5°, mSS群;51.8±6.7°→ 59.7±7.4°)。水平内転可動域はmCS群のみ有意に増加した(mCS群80.5±10.5°→83.9±8.1°, mSS群;85.7±8.8°→85.6±7.2°)。筋の弾性率は,mCS群では2nd内旋位の小円筋(15.5±4.5kPa→13.1±4.2kPa),水平内転位の小円筋(19.6±5.3kPa→15.8±4.1kPa),三角筋後部(30.5±6.5kPa→26.4±6.8kPa)において有意に減少した。一方mSS群では,2nd内旋位の棘下筋(9.7±2.9kPa→8.9±2.3kPa)のみ有意に減少した。【考察】mCS群とmSS群は共に内旋可動域の改善率は同程度であり,2nd内旋位での筋の弾性率はmCS群では小円筋が,mSS群では棘下筋が低下した。一方,水平内転可動域はmCS群でのみ改善が見られ,水平内転位での筋の弾性率はmCS群の小円筋・三角筋後部のみ低下した。以上の結果から,mCSでは小円筋と三角筋後部に対するストレッチ効果が,mSSでは棘下筋に対するストレッチ効果が得られていたと考えられる。2nd内旋可動域に関しては,過去に棘下筋や小円筋に対するマッサージにより内旋可動域が改善するという報告がされており(Poser;2008),本研究の結果からも,これらの筋の柔軟性が増加したことにより内旋可動域が改善したと考えられる。一方,水平内転可動域に関しては,小円筋と三角筋後部の弾性率が低下したmCS群でのみ可動域が改善していたことから,水平内転可動域制限と関連が深い筋は三角筋後部と小円筋であり,mSSではこれらの筋が効果的にストレッチされなかったため水平内転可動域が改善されなかったと考えられる。【理学療法学研究としての意義】本研究により,野球選手における投球側肩関節の内旋可動域制限に対してはmCSとmSSの両方法が効果的であり,水平内転可動域制限に対してはmCSが効果的であることが示唆された。また,mCSでは小円筋と三角筋後部,mSSでは棘下筋のストレッチ効果が得られやすいことが示唆された。
著者
西下 智 簗瀬 康 田中 浩基 草野 拳 中尾 彩佳 市橋 則明 長谷川 聡 中村 雅俊 梅垣 雄心 小林 拓也 山内 大士 梅原 潤 荒木 浩二郎 藤田 康介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【目的】肩関節は自由度が高く運動範囲が広いが,関節面が小さいため回旋筋腱板(腱板)の担う役割は重要である。肩関節周囲炎,投球障害肩などに発生する腱板機能不全では棘上筋,棘下筋の柔軟性低下が問題となることが多く,日常生活に影響を及ぼすこともある。柔軟性向上にはストレッチング(ストレッチ)が効果的だが,特定の筋の効果的なストレッチについての研究は少ない。棘下筋に関してはストレッチの即時効果を検証する介入研究が行われているが,棘上筋ではほとんど見当たらない。棘上筋の効果的なストレッチは,複数の書籍では解剖学や運動学の知見をもとに,胸郭背面での内転(水平外転)位や伸展位での内旋位などが推奨されているが定量的な検証がなされていないため,統一した見解は得られていないのが現状である。棘上筋のストレッチ肢位を定量的に検証したのはMurakiらのみであるが,これは新鮮遺体を用いた研究であり,臨床応用を考えると生体での検証が必要である。これまで生体における特定の筋のストレッチ方法を確立できなかった理由の一つに,特定の筋の伸張の程度を定量的に評価する方法が無かったことが挙げられる。近年開発された超音波診断装置のせん断波エラストグラフィー機能を用いることで,計測した筋の伸張の程度の指標となる弾性率を求める事が可能になった。我々はこれまでに様々な肢位での最大内旋位の弾性率を比較する事により「より大きな伸展角度での水平外転・内旋もしくは,最大伸展位での内旋」が棘上筋の効果的なストレッチ方法であると報告(第49回日本理学療法学術大会)したが,最大内旋を加える必要性については未検証であった。そこで今回我々は,効果的な棘上筋のストレッチ方法に最大内旋が必要かどうかを明らかにすることを目的とした。【方法】対象者は健常成人男性20名(平均年齢23.8±3.1歳)とし,対象筋は非利き手側の棘上筋とした。棘上筋の弾性率の計測は超音波診断装置(SuperSonic Imagine社製)のせん断波エラストグラフィー機能を用い,棘上筋の筋腹に設定した関心領域の弾性率を求めた。計測誤差を最小化できるように,計測箇所を肩甲棘中央の位置で統一し,2回の計測の平均値を算出した。弾性率は伸張の程度を表す指標で,弾性率の変化が高値を示すほど筋が伸張されていることを意味する。計測肢位は,上腕の方向条件5種と回旋条件2種を組み合わせた計10肢位とした。方向条件は下垂位(Rest),胸郭背面での最大水平外転位(20Hab),45°挙上での最大水平外転位(45Hab),最大水平外転位(90Hab),最大伸展位(Ext)の5条件,回旋条件は中間位(N)と最大内旋位(IR)の2条件とした。統計学的検定は各肢位の棘上筋の弾性率について,方向条件と回旋条件を二要因とする反復測定二元配置分散分析を行った。なお統計学的有意水準は5%とした。【結果】全10肢位のそれぞれの弾性率(平均±標準偏差,単位:kPa)はRestNが8.9±3.1,RestIRが7.3±2.5,20HabNが11.9±5.3,20HabIRが10.9±4.3,45HabNが27.1±11.0,45HabIRが28.0±13.8,90HabNが22.6±7.8,90HabIRが27.3±10.8,ExtNが31.0±7.2,ExtIRが31.8±8.4であった。統計学的には方向条件にのみ主効果を認め,回旋条件の主効果,交互作用は認めず,中間位と最大内旋位に有意な違いがなかった。方向条件のみの事後検定ではRestに対して20Hab,45Hab,90Hab,Extの弾性率が有意に高値を示し,更に20Habに対して45Hab,90Hab,Extの弾性率が有意に高値を示した。【考察】棘上筋のストレッチ方法はこれまでの報告同様,Restに比べ20Hab,45Hab,90Hab,Extが有意に高値を示した事,また,20Habに比べ45Hab,90Hab,Extが有意に高値を示した事から,伸展角度が大きい条件ほどより効果的なストレッチ方法であることが再確認できた。しかし,回旋条件の主効果も交互作用も認めなかったことから最大内旋を加えることでの相乗効果は期待できない事が明らかとなった。この結果は新鮮遺体での先行研究が推奨する最大伸展位での水平外転位を支持するものであった。このことから書籍などで推奨されていた胸郭背面での水平外転位のストレッチについては水平外転や内旋よりも伸展を強調すべきであることが明らかとなった。【理学療法学研究としての意義】本研究では弾性率という指標を用いる事で,生体の肩関節において効果的な棘上筋のストレッチ方法が検証できた。その肢位はより大きな伸展角度での水平外転もしくは最大伸展位であったが,最大内旋を加えることによる相乗効果は期待できないことが明らかとなった。
著者
清水 厳郎 長谷川 聡 本村 芳樹 梅原 潤 中村 雅俊 草野 拳 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】肩関節の運動において回旋筋腱板の担う役割は重要である。回旋筋腱板の中でも肩の拘縮や変形性肩関節症の症例においては,肩甲下筋の柔軟性が問題となると報告されている。肩甲下筋のストレッチ方法については下垂位での外旋や最大挙上位での外旋などが推奨されているが,これは運動学や解剖学的な知見を基にしたものである。Murakiらは唯一,肩甲下筋のストレッチについての定量的な検証を行い,肩甲下筋の下部線維は肩甲骨面挙上,屈曲,外転,水平外転位からの外旋によって有意に伸張されたと報告している。しかしこれは新鮮遺体を用いた研究であり,生体を用いて定量的に検証した報告はない。そこで本研究では,せん断波エラストグラフィー機能を用いて生体における効果的な肩甲下筋のストレッチ方法を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は健常成人男性20名(平均年齢25.2±4.3歳)とし,対象筋は非利き手側の肩甲下筋とした。肩甲下筋の伸張の程度を示す弾性率の計測は超音波診断装置(SuperSonic Imagine社製)のせん断波エラストグラフィー機能を用い,肩甲下筋の停止部に設定した関心領域にて求めた。測定誤差を最小化できるように,測定箇所を小結節部に統一し,3回の計測の平均値を算出した(ICC[1,3]:0.97~0.99)。弾性率は伸張の程度を示す指標で,弾性率の変化は高値を示すほど筋が伸張されていることを意味する測定肢位は下垂位(rest),下垂位外旋位(1st-ER),伸展位(Ext),水平外転位(Hab),90°外転位からの外旋位(2nd-ER)の5肢位における最終域とした。さらに,ExtとHabに対しては肩甲骨固定と外旋の有無の影響を調べるために肩甲骨固定(固定)・固定最終域での固定解除(解除)と外旋の条件を追加した。統計学的検定は,restに対する1st-ER,Ext,Hab,2nd-ERにBonferroni法で補正したt検定を行い,有意差が出た肢位に対してBonferroniの多重比較検定を行った。さらに伸展,水平外転に対して最終域,固定,解除の3条件にBonferroniの多重比較検定を,外旋の有無にt検定を行い,有意水準は5%とした。【結果】5肢位それぞれの弾性率(平均±標準偏差,単位:kPa)はrestが64.7±9.1,1st-ERが84.9±21.4,Extが87.6±26.6,Habが95.0±35.6,2nd-ERが87.5±24.3であった。restに対し他の4肢位で弾性率が有意に高値を示し,多重比較の結果,それらの肢位間には有意な差は認めなかった。また,伸展,水平外転ともに固定は解除と比較して有意に高値を示したが,最終域と固定では有意な差を認めなかった。さらに,伸展・水平外転ともに外旋の有無で差を認めなかった。【結論】肩甲下筋のストレッチ方法としてこれまで報告されていた水平外転からの外旋や下垂位での外旋に加えて伸展や水平外転が効果的であり,さらに伸展と水平外転位においては肩甲骨を固定することでより小さい関節運動でストレッチ可能であることが示された。
著者
長谷川聡 鹿内菜穂 八村広三郎 泉朋子 仲谷義雄
雑誌
第76回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, no.1, pp.599-601, 2014-03-11

義務教育においてダンスが必修化され, その中でも現代リズムダンスとしてHIPHOPやLOCKダンスに注目が集まっている. しかし, ダンスを教える立場である教師のほとんどがストリートダンスの未経験者であるという問題が発生している. プロのダンサーによる教師への講習会の機会が非常に少ないため, 教師が十分な指導が受けられていない現状がある. そこで本研究では, 熟練者のダンスの映像を手本として, 教師どうしで互いに教え合うピアエデュケーションの場を設定し, そこで支援するシステムを検討する. また, 著者らの先行研究である初心者と経験者のストリートダンス動作の解析結果を参考にして, 教師どうしでチェックしあう際のポイントを明示化し意識させる.
著者
平林 泰 長谷川 旭 長谷川 聡
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.57-64, 2007-03-31 (Released:2019-07-01)

安全で安心な大学を目指すうえで,大学キャンパス内の災害時・緊急時の避難経路に関する情報が,学生や教職員に十分に周知されることが不可欠である.本稿では,名古屋文理大学のWebサイトで携帯電話向けのキャンパス避難経路情報を提供するための,アニメーションによるビジュアルな避難経路情報コンテンツについて報告し,あわせて,災害・防災情報の携帯電話での提供の可能性と問題点について検討する.
著者
齊田 高介 大塚 直輝 小山 優美子 西村 里穂 長谷川 聡 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101218, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】 膝前十字靭帯(以下ACL)損傷は着地やカッティング動作時のknee-in(膝外反)で発生することが多く,この受傷起点には股関節外転筋力の低下が関係していると言われている。またACL損傷は試合の終盤に発生することが多く,疲労がACL損傷の一要因であると考えられている。これらのことから疲労による外転筋の筋力低下がACL損傷に繋がる可能性があると考え,我々は股関節外転の主動作筋である中殿筋に注目した。しかし,これまでの所,中殿筋単独の疲労が動作に及ぼす影響を調査した研究はなく,中殿筋の疲労とACL損傷リスクとの関連は不明である。そこで本研究では,骨格筋電気刺激(以下EMS)装置を用いて中殿筋を選択的に疲労させ,その前後での片脚着地動作の変化を調査した。本研究の目的は,中殿筋の選択的な疲労が片脚着地動作に及ぼす影響を検討することである。【方法】 対象は健常男性8名(年齢20.9±1.9歳)とし,利き脚(ボールを蹴る脚と定義)側を測定肢とした。まず疲労課題としてEMS装置(ホーマーイオン社製,AUTO TENS PRO)を用い,最初の10分間は痛みを感じない強度で,その後の20分間は耐えられうる最大強度で中殿筋に対して電気刺激を実施した。中殿筋の選択的な筋力低下を確認するために,最大等尺性随意収縮(以下MVC)時の股関節外転・屈曲・伸展筋力をEMS前後で測定した。筋力測定には徒手筋力計(酒井医療製,mobie)を用いた。動作課題として30cm台からの利き脚片脚による着地動作を行った。疲労課題の前後で動作課題を3試行ずつ計測し,三次元動作解析装置(VICON社製)と床反力計(KISTLER社製),表面筋電図(Noraxon社製,TeleMyo2400)を用い,運動学的・運動力学的データと筋電図学的データを収集した。筋電図は外側・内側広筋,大腿直筋,外側・内側ハムストリングス,大腿筋膜張筋,大殿筋,中殿筋に貼付した。解析では,着地動作中の利き脚の矢状面,前額面における股・膝・足関節角度および外的関節モーメント,動作中の床反力の鉛直成分を算出した。筋電図は50msec毎の二乗平均平方根を算出し,MVC時の値で正規化した。筋電図の解析区間は着地の前後50msec,50~100msecの4区間とし各区間の平均値を求めた。各関節角度,外的関節モーメントの解析には着地時点,床反力最大時点,最大膝関節屈曲時点での値を用いた。床反力鉛直成分と股関節外転筋力の解析には最大値を用いた。各パラメータは3回の試行における平均値を算出した。統計学的処理では,疲労前後での運動学的・運動力学的データ,筋力データを対応のあるt検定,筋電図データをWilcoxonの順位和検定で比較した。有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には,実験の目的および内容を口頭,書面にて説明し,研究参加への同意を得た。【結果】 EMS後に股関節外転筋力は有意に減少(p<0.05)したが,股関節屈曲・伸展筋力に有意な変化は認められなかった。着地時点では股関節屈曲角度(p<0.05)および膝関節屈曲角度(p<0.01)が有意に増加した。床反力最大時に股関節屈曲モーメント(p<0.05),股関節内転角度(p<0.05)および膝関節屈曲角度(p<0.01)が有意に増加した。最大膝関節屈曲時点では股関節屈曲角度(p<0.01)および膝関節屈曲角度(p<0.01)が有意に増加した。床反力鉛直方向の最大値は有意に増加(p<0.05)した。他の関節モーメントおよび関節角度,筋電図データに有意な変化は認められなかった。 また,有意な差は認められなかったが着地時点の股関節内転角度(効果量r=0.65),床反力最大時点の股関節屈曲角度(効果量r=0.61)および膝関節外反角度(効果量r=0.64)で効果量大が示された。【考察】 疲労課題前後における筋電図データに有意な差はみられなかったが,筋力が有意に低下していることから,股関節外転筋をEMSにより選択的に疲労させられたと考える。疲労課題後の床反力最大時点での股関節内転角度の増加は,中殿筋の筋疲労のため床反力最大時に反対側の骨盤が下降したと考えられる。また有意な差はなかったものの,床反力最大時点の膝関節外反角度の増加は効果量大であり,中殿筋の筋疲労によって股関節が内転し,膝関節が外反方向に誘導されたと考える。 本研究の結果より中殿筋の筋疲労は片脚着地動作時のknee-inを誘導し,ACL損傷のリスクを高める可能性があると考えられる。【理学療法学研究としての意義】 本研究結果より,中殿筋の選択的な疲労によって着地時のACL損傷リスクが高まる可能性があることが示唆された。これはACL損傷の発生機序を解明する一助となると考えられる。
著者
長谷川 聡 山住 富也 小池 慎一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.1180-1183, 1998-04-15

初心者に対してプログラミング教育を行う際に,制御構造の理解が十分でないためにプログラミング全体の理解が困難な学習者の存在に気付く場合がある.そこで,我々は,プログラミングの実行時の動作を正しくイメージできるかどうかが,制御構造の理解度に関係していると考え,プログラミングの学習者を対象に,制御構造のイメージと理解度について調査を行った.その結果,制御構造のイメージと理解度の間に回帰関係が認められた.また,調査に用いたイメージテストはプログラミングの潜在的能力の指標になるものであるとの結論を得た.
著者
長谷川 聡
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.185, 2012 (Released:2012-06-11)

インターネットを通じリアルタイムであらゆる情報を入手できる現代の生活環境は場所性を薄れさせ、デザインにおけるグローバリゼーションをもたらした。それは、独自の技術や材料といった国際的競争力を持つことが不可欠だ。そして、大きなパイではなくとも、特異なデザイン資源を引き立てる製品のデザインは土着的なデザインの考え方や在り方が必要且つ、重要になってくるのではなかろうか。ここでは、絹織物を取り扱う企業が、ものづくり企業としてとりまとめ、自らの商材を引き立てるために木工製品としての試作を行い、展示会や専門家の評価を受けるとともに、ビジネスとしての可能性を検証した。
著者
長谷川 聡 菊池 亮 五十嵐 大 濱田 浩気 千田 浩司
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. IOT, [インターネットと運用技術] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.27, pp.1-7, 2015-05-14

近年,プライバシを保護しながら統計分析を行うことができる技術として,データを撹乱してプライバシを保護し,その後データの分布を推定して得る (再構築と呼ぶ),撹乱再構築法が注目されている.従来の撹乱再構築法では,元データに対する一切の仮定をおかず,元データの分布を推定することから,精度良く再構築を行うためには大量のデータを必要としていた.しかしながら,実際には再構築に十分なデータ数がない場合も多く,そのような際でも精度よく再構築したいニーズがある.そこで,十分にデータがない場合でも精度よく再構築を行えるよう,分布の推定によく用いられる有限混合モデルと呼ばれる確率分布を仮定した新たな再構築法を提案する.
著者
長谷川 聡 安井 明代 山口 宗芳
出版者
名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.51-58, 2013-03-31

SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の教育利用の可能性とソーシャルラーニングシステムの教育効果について名古屋文理大学における実践を通して述べる.SNS は iPad を使った講義や講演で講師と学生間のコミュニケーションに利用した.また,ソーシャルラーニングシステムは,モバイルシステム開発の授業で利用したもので,パソコン上で電子教科書にコメントを書きこむものである.コメントは,ネットワークを介して,教員,SA(学生アシスタント),授業の受講者だけでなく卒業生などからも書き込まれて共有された.本論文では,SNS やソーシャルラーニングシステムが大学教育でどのように利用されたかを紹介する.
著者
久保田 文人 江川 尚志 日野 浩志 長谷川 聡 長谷川 亨 加藤 聰彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.437, pp.55-60, 1999-11-19
被引用文献数
4

多様な要求に応じてユーザにカスタマイズしたサービスを提供するためには、ルータやスイッチ等のネットワーク機器の振舞いをユーザがプラグラミングすることを可能とするアクティブネットワークが有望な技術の一つである。これに対して、筆者らはネットワークの高品質化やユーザに提供するQoS (Quality of Service)の差別化への適用を目的として、ストリームコードと呼ぶアセンブリ言語をベースにしたアクティブネットワーク処理系を開発した。開発したアクティブネットワーク処理系は、ストリームコードのアセンブラならびにパケット毎に付加されたストリームコードを実行するストリームコードエンジンから構成される。本稿では、本処理系の実装概要および本処理系を輻輪制御に適用した結果について述べる。