著者
高橋 徹
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ロボットによる,音源定位,音源追跡,音源分離,分離音声認識の精度を改善した.これらの改善により,ロボットの動作により音源の方向変化に追従した音源分離が可能になった他,ロボット動作に起因するロボット自身の動作音の影響を受けにくくなり,ロボット動作中の分離音声認識が可能になった.つまり複数音源下でのアクティブオーディションのための身体動作制約が,ほとんどなくなった.音源に近づき信号対雑音比を改善し,複数音源間の方向角度差を広げるように移動し,分離音声認識精度を改善可能になった.音源とマイクロホン間に身体が入り込むような特別な場合を除き,動作中の認識精度を低下させることなく,分離音声認識が可能になった.
著者
高橋 徹 武田 英明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.1244-1255, 2001-08-01
参考文献数
9
被引用文献数
12

本論文では, 非同期型コミュニティシステムのインタフェースとしてアニメーションエージェント(avatar-likeエージェント)を用いることの効果を述べるとともに, 我々の実装したシステムTelMeAの説明と, そのテスト運用の結果を述べる. 心理実験の結果, エージェントは単に発話者を代弁するだけではなく, 複数の発話者の識別に対して効果をもつことがわかった. そのためエージェントを用いることでコミュニティ内の人間関係等の状況を会話内容から把握しやすくなり, 会話文脈へのアウェアネスが高まるものと考えられる. 更にエージェントはアニメーションや画面上の移動により, 表情, ジェスチャー, 接近, 指差しといった非言語表現を行うことができる. TelMeAは, Webページ上に表示させた各々のエージェントに, 前記のような表現のマルチモーダルな振舞いを記述するスクリプトを交換することで, 複数人数による非同期会話を行うためのシステムである. TelMeAを9日間試験運用した結果, 全発言の中には17%の非言語表現が見られ, アンケートの結果からは, TelMeAの機能が利用者に高く評価されたことがわかった.
著者
奥乃 博 尾形 哲也 駒谷 和範 高橋 徹 白松 俊 中臺 一博 北原 鉄朗 糸山 克寿 浅野 太 浅野 太
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2007

音環境理解の主要機能である混合音の音源定位・分離・認識技術を開発し,ロボット聴覚ソフトウエアHARKとして公開し,国内外で複数の講習会を実施した. HARKを応用し,複数話者同時発話を認識する聖徳太子ロボット,ユーザの割込発話を許容する対話処理などを開発し,その有効性を実証した.さらに,多重奏音楽演奏から書くパート演奏を聞き分ける技術,実時間楽譜追跡機能を開発し,人と共演をする音楽ロボットなどに応用した。
著者
佐藤 篤司 和泉 薫 力石 國男 高橋 徹 林 春男 沼野 夏生
出版者
独立行政法人防災科学技術研究所
雑誌
特別研究促進費
巻号頁・発行日
2005

日本各地に甚大な被害をもたらした平成18年豪雪について、本研究では、大気大循環場と降雪特性、積雪特性の広域分布と雪崩災害、生活及び建築関連雪害、予測技術と軽減方策の四つの研究課題を設定し調査研究を実施した。大気大循環の調査からは、寒気の南下は38豪雪に次ぐ規模であり、特に12月は冬季モンスーン指標が過去50年で最大となったこと、それには熱帯域の影響も示唆されることなどの特徴が明らかになった。その結果、1月初旬に既に最深積雪に近い積雪を各地で記録した。この時点の広域での積雪分布を調査したところ、新潟県上中越から長野、群馬両県境にかけての山間部を始め、東北、中部、中国地方でも特に山間地域に多量の積雪が集中していたことがわかった。山間地での降積雪は必然的に雪崩を誘発し、数多くの乾雪表層雪崩の発生をみた。本研究では死者の出た秋田県乳頭温泉での雪崩を始め、多くの現地調査を行いその発生要因を調査した。また、広域の一斉断面観測により、早い時期からの積雪増加が高密度で硬い雪質をもたらしたことが観測され、それが生活関連雪害にも反映したことが推測された。生活関連雪害では、死者(交通事故を除く)の圧倒的多数(3/4)は雪処理中の事故によるものであった。その比率は56豪雪時(1/2)と比べて増加していること、多くは高齢者で全体の2/3をしめ、70歳代が群を抜き、高齢者が雪処理に従事せざるを得ない状況などが読み取れた。また、56豪雪と比べて家屋の倒壊による死者が多く、老朽家屋に高齢者が住んでいて被害に遭遇するという構造がうかがえた。さらに本研究では、積雪変質モデルを使った雪崩危険度予測を行い、実際の雪崩発生と比較検討するとともに雪崩の危険性によって長期間閉鎖された国道405号線に適用する試みや冬季のリスクマネジメントに関する調査等を実施し、雪氷災害の被害軽減に有効な手法についての研究も行った。
著者
入野 俊夫 河原 英紀 西村 竜一 高橋 徹 津崎 実 津崎 実 高橋 徹 ロイD. パターソン
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

初期聴覚系における「寸法・形状知覚理論」の検証とその応用を行った。そのための心理実験を実施し、理論を支持する実験結果を数多く得た。fMRI実験によって、音節情報処理の脳内部位を推定し、寸法・形状情報処理の部位特定のための制約条件を与えた。「ガンマチャープ聴覚フィルタ」等のモデルをさらに洗練化した。 高品質音声分析合成法STRAIGHTの性能改善や、劣化音声の知覚実験と自動音声認識実験の対比も行い、音声知覚の計算理論構築の足がかりを得た。
著者
今岡 浩一 井上 栄 高橋 徹 小島 保彦
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.74-80, 1993
被引用文献数
8

古くから漢方薬の一つとして用いられ, また, 食生活にもなじみの深いシソ (Perilla frutescens) には, インターフェロン誘起能, 抗ウイルス作用および抗腫瘍作用があることが明らかにされている。今回, その抽出エキス (PFE) を作成し, IgE抗体産生に及ぼす影響を検討した。DNP-ovalbuminをアラムアジュバントとともにマウスに免疫し, DNPに対する抗体を測定した。免疫の前日にPFEを投与し, 一次免疫応答に及ぼす影響を検討した。PFE投与により, 抗DNP抗体産生が抑制された。次に, 追加免疫の前日にのみ, PFEを投与し, 二次免疫応答に及ぼす影響を検討した。PFEの濃度依存性に, 抗DNP-IgE抗体および総IgE抗体の産生が抑制されたが, 抗DNP-IgGはほとんど影響を受けなかった。PFEは, I型アレルギーの予防・治療に対して効果を持つと考えられた。
著者
藤井 恵介 岡田 安弘 兼村 晋哉 高橋 徹 山本 均 山下 了 松本 重貴
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究の目的は、LHCの結果を踏まえ、テラスケールの物理の全容解明のため電子・陽電子リニアコライダー(ILC)が果たすべき役割を明確化しILCが取るべき具体的物理研究戦略を確立、もってILC計画早期実現に供することにある。本研究によって、ILCでは、3つの主要プローブ:ヒッグス、トップ、新粒子直接探索により、LHCから得られる知見を質的に新しい段階へと押し上げる重要な情報を提供する研究が可能となることが明らかになった。本研究で得られた成果は、ILC技術設計書物理の巻の中核をなし、欧州戦略、米国戦略(スノーマス研究)の策定のための入力として重要な役割を果たし、ILC計画実現に向け大きく貢献した。
著者
堤 裕昭 木村 千寿子 永田 紗矢香 佃 政則 山口 一岩 高橋 徹 木村 成延 立花 正生 小松 利光 門谷 茂
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.165-189, 2006-03-05
被引用文献数
6

有明海では,近年,秋季から初冬に大規模な赤潮が発生し,ノリ養殖漁業に大被害をおよぼしている。水産庁九州漁業調整事務所がまとめた過去の赤潮記録を用いた解析によって,冷却期(10月〜12月)に有明海で発生した赤潮は,1998年以降規模が急に大型化したことが判明した。しかし,赤潮の大規模化を招くような陸域からの栄養塩流入量の増加は,有明海奥部に注ぐ一級河川からの栄養塩負荷量や有明海沿岸での公共用水域水質測定の過去のデータには見られない。本研究では,2002年4月〜2003年4月に,有明海で全域にわたる精密な隔月水質調査を行なった。奥部では7月および10月〜12月において,流入した河川水が表層の塩分を低下させて成層化し,その表層で栄養塩濃度が急上昇して,大規模な赤潮が発生していた。2002年4月〜5月の諫早湾潮受け堤防の開門操作期間には,島原半島側に顕著な湾口流出流が観測された。本研究の調査結果は,1997年の潮受け堤防締めきりが有明海奥部の河口循環流を変化させ,塩分の低下した表層水を湾外へ流出し難くして,1998年以降,毎年冷却期に奥部で大規模な赤潮を起こしてきたことを示している。
著者
吉田 有里 森勢 将雅 高橋 徹 河原 英紀
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.282, pp.31-36, 2007-10-18
被引用文献数
3

数分にわたる曲全体を一括して分析することのできる新しく開発されたTANDEM-STRAIGHTを用い、プロ歌手によるポップス系歌唱を分析して得られた歌唱音声中の母音スペクトルの統計的性質を調べた。分析には、男女各一名による歌唱音声が用いられた。STRAIGHTスペクトルから求められたMel帯域フィルタ出力とMFCCの主成分分析の結果は、いずれも第5主成分までに全分散の90%以上が含まれることを示した。また、求められた固有ベクトルとMFCCの基底関数の張る空間が類似する傾向が認められた。歌唱音声は、話声と比較して、基本周波数、発声のパワー、歌唱法などによるスペクトル変動が大きく、各母音の分布は元のパラメタ空間においても、低次の主成分で張られる空間においても、大きく重なっている。これらの結果が、母音情報に基づく音声変換法においてどのような意味を持っかについて議論する。