- 著者
-
G. K. Menon
- 出版者
- Yamashina Institute for Ornitology
- 雑誌
- 山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, no.1, pp.1-12, 1984-03-30 (Released:2008-11-10)
- 参考文献数
- 69
- 被引用文献数
-
5
9
本論文は,まだあまり注目されていない鳥の皮膚の腺機能について,得られた情報を総合しようと試みたものである。鳥の皮膚において形態的にはっきりした腺は尾腺,外耳管の中の耳道腺及び肛門(総排泄口)の皮膚腺である。これらのうち,尾腺のみがいろいろの方法で研究されてきたが,他の2つの分類と機能は,現時点では不明確である。全分泌腺は類脂質を分泌するが,その構造および機能は尾腺と非常に異っている。そして肛門腺は鳥の皮膚に見られる唯一の粘液分泌腺である。このように鳥の皮膚は,大まかな調査では,他の脊椎動物の皮膚と比べて腺機能が貧弱であるかのように見える。しかし,鳥体の表皮細胞は独特の脂肪生成の可能性を持ち,ケラチン及び類脂質に似た皮脂分泌物を出すのである。くちばしや脚指の皮膜のように特殊化した部分だけでなく,皮膚の無毛の部分における表皮細胞は,皮腺硬蛋白細胞の名の如く,非常に高度な脂肪分泌活動を示す。この表皮類脂質分泌は次の諸点-すなわち,皮膚の水反発性を高めること,皮膚面からの著しい水分消失の防止,有害放射線の遮断,皮膚への色の伝達等-に関係していると思われるので,これを論じた。表皮類脂質分泌の一般的性質と,いろいろな種の鳥の特殊な形態の羽毛の多くが,装飾的な目的に使用される粉末様物質,油性物質を生成しその供給を維持しているという知識を踏まえて,分泌活動の概念について再検討した。一般に認められた腺の概念にそぐわないところもあるが,機能を基準に考えれば,分泌腺を有する表皮と特殊化した羽毛は,皮膚の腺構造単位のものであると見なすことができると提案したいのである。