著者
森岡 美帆 久保田 賢 中山 健夫
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.272-277, 2014 (Released:2014-06-02)
参考文献数
8

本報告は、高齢者施設に勤務する管理栄養士・栄養士が、栄養ケア・マネジメントにおけるデータベース作成に要するパソコンスキルを学ぶために行われた研修会の成果を述べたものである。研修会のプログラムを開発するに当たって、まず栄養ケア・マネジメントのデータベース作成に必須と考えられる10のパソコンスキルを抽出。そのプログラムを用いて、高齢者施設勤務の管理栄養士・栄養士を対象にパソコンスキルアップ研修会を実施した。研修会後に、パソコンスキルの習得度、習得したパソコンスキルの業務への活用度、フォローアップ研修の希望などを調査した。12施設から14人の管理栄養士・栄養士が研修会に参加した。データベース作成に必要な10スキルの既習得者はファイルコピーが最多(3人)であり、シリアル値、PHONETIC関数、リストから選択は0人であった。研修直後の調査では、ファイルのコピー(12人)以外の9スキルを全員(14人)が理解したと回答した。研修後、業務に生かしたいと回答したスキルは、基本情報の入力に関わるスキル(シリアル値、DATEDIF関数・TODAY関数、PHONETIC関数)で、参加者14人中10人と最も多かった。3週間後の追跡調査で9施設がデータベースを作成し始めていた。研修前の栄養管理ソフトの使用の有無と、研修後の新たなデータベース作成には関連は無かった。データベースを作成し始めた9施設を含む10施設がフォローアップ研修を希望した。以上から栄養ケア・マネジメントにおけるデータベース作成のための、パソコンスキルを習得するのに研修会は有用であることが示唆された。
著者
宮崎 純一 中川 幸恵 藤井 文子 原 純也 渡辺 啓子 石川 祐一
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.327-335, 2017 (Released:2017-09-26)
参考文献数
5

医療・介護における栄養情報の連携は十分とは言えない一方、適切な食形態での食事提供は、栄養状態の改善につながるとの報告があり、栄養管理情報を積極的に発信することが患者のQOL向上に寄与すると考えられる。そこで、栄養情報提供書の作成および研修会による認識の統一を図り、平成29年2月から平成29年3月までに 「医療栄養情報提供書」 を使用した13人を対象に、業務負担軽減への影響と栄養状態の推移を調査し、医療栄養情報提供書の有用性を検証した。栄養情報提供書の作成は普及しているとは言えず、必要性・有用性を実感した回答が得られたものの研修会後の作成率の上昇は見られなかった。しかし、医療栄養情報提供書の活用により、栄養管理計画・栄養ケアプランの作成時間が有意に短縮し、業務負担の軽減が認められた。さらに、栄養状態が改善した患者が46%と、栄養状態の維持のみならず改善も認められ、管理栄養士の記載に特化した標準化した医療栄養情報提供書の有用性が示唆された。
著者
伊藤 薫 Wolf Kay N.
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.422-427, 2009 (Released:2011-12-29)

アメリカにおける管理栄養士(registered dietitian;RD)教育制度を学ぶため、オハイオ州立大学で研修を行っている筆者が、現在のアメリカでの教育制度と日本における制度の相違を報告する。アメリカでのRD 養成プログラムには、学外実習900 時間(2009 年度からは1 , 200 時間に延長)が組み込まれており、アメリカでは実践教育を重要視している。アメリカのRD 教育には、アメリカ栄養士会(ADA)の関連機関である2 つの組織が関わっている。RD 養成大学についてはCommission on Accreditation of Dietetic Education(CADE) が大学教育について認定、管理運営を行い、資格認定試験と卒後教育はCommission on Dietetics Registration(CDR)が行っている。認定試験の内容は学外実習で実践して学んだ内容が主となっているため、実践活動を身につけることが大学教育では必要なことであり、アメリカの高いレベルの実践教育制度は、卒業後のRD としての即戦力と社会的地位の高さを保証しているあり方へもつながる。アメリカでは学生の段階でRD の実務を多く経験できることが、将来の就職先の選択や即戦力としての実務能力の向上に非常に重要である。
著者
酒井 理恵 山田 志麻 二摩 結子 濱嵜 朋子 出分 菜々衣 安細 敏弘 巴 美樹
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.28-37, 2014 (Released:2014-01-30)
参考文献数
32

通所利用在宅高齢者のMini Nutritional Assessment( MNA®)による栄養状態評価と身体状況(日常生活動作、体重、ふくらはぎ周囲長など)、現病歴・既往歴との関連について調査を行い、これらの関連を明らかにすることを目的とした。対象者は通所利用する要介護在宅高齢者78 名、平均年齢81.0 ± 7.29 歳。摂取栄養素量はエネルギー、たんぱく質を含む10 項目で有意に低値であり、体重の維持は低栄養状態の予防に繋がるため、食事量の維持が必要であると考える。また、体重とふくらはぎ周囲長は男女ともに正の相関関係にあり、筋肉量の維持には適度な運動を取り入れサルコペニア予防とともに低栄養予防に繋げる必要がある。さらに、在宅高齢者は定期的に栄養状態評価のスクリーニングを実施し、低栄養の指標となる体重低下やふくらはぎ周囲長の減少を早期発見し重症化を予防することが必要である。
著者
中川 美恵 栢下 淳
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.465-471, 2023 (Released:2023-09-01)
参考文献数
28

介護老人保健施設入所者を対象に、身体計測、食事形態、握力や歩行能力、口腔機能調査を行い、常食摂取と関連のある要素について検討を行った。本研究は横断研究である。対象者73人の属性は平均年齢82.3±8.2歳、男性20人(27.4%)、女性53人(72.6%)であった。常食群と形態調整食群の2群に分けて検討を行った結果、常食群でBMI、上腕三頭筋皮下脂肪厚(Triceps Skinfold Thickness;TSF)、握力が高く(p<0.05)、咀嚼能力が良好な者の割合が高かった(p<0.05)。歩行能力別の比較では、歩行能力が低下するにつれて、常食摂取者の割合が低下し、形態調整食摂取者の割合が増加した。常食摂取と関連のある要素として、咀嚼力や舌圧値等の口腔機能と握力および歩行能力が示唆された。また、ADLの低下に伴い、食事形態も軟食化傾向となり、栄養状態の低下につながることから、多職種と連携して、口腔機能や筋力の維持に努める必要がある。さらに、形態調整食群ではエネルギー摂取量やたんぱく質量を確保する必要性が示唆された。
著者
佐藤 ななえ 吉池 信男
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.809-816, 2011 (Released:2011-12-13)
参考文献数
33
被引用文献数
1

日本人小児における咀嚼行動にかかわる食育の効果を評価する指標として、何が適切かを明らかにするため、昭和58 年~平成22 年に発表された論文について、データベース「医学中央雑誌」および「MEDLINE」を用い、系統的に収集・分析した。最終的に選択された13 件の論文を精査し、エビデンステーブルとして整理した。咀嚼行動の評価には、(1)自記式質問紙による咀嚼習慣の把握、(2)小児用簡易咀嚼回数計を用いた測定(咀嚼回数、食事に要した時間)、(3)ビデオ観察の3 種類が、咀嚼能力の評価には、(4)咬合力測定、(5)ガムを用いた咀嚼テストの2 種類が用いられていた。集団に用いる場合、これらの評価指標は、妥当性や適用性(経費、労力、時間)といった点で、それぞれ長所と短所がある。したがって、実施可能性および妥当性の許容範囲から、食育プログラムを実際に行う諸々の状況においては、(1)と(2)を組み合わせて用いる方法が最良の選択肢と考えられた。また、本論文において、筆者らは、咀嚼行動(噛まない)と咀嚼能力(噛めない)の本質的な違いを明確に示したが、小児の咀嚼にかかわる食育の適切な介入プログラムの開発においては、この2 つの点をどちらも考慮に入れる必要がある。
著者
石澤 幸江 小熊 隆夫 今井 信行 斎藤 トシ子
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.501-506, 2022 (Released:2022-09-01)
参考文献数
28

丸呑み・早食い・詰込み食い等摂食嚥下に課題を有する統合失調症女性患者1人を対象に、管理栄養士が定期的な咀嚼練習に介入し、栄養状態、喫食に要した時間、咀嚼回数、食事満足度の変化を検証した。3カ月間、週3回、1回15分間の舌運動と食品を用いた咀嚼練習を昼食前に行い、開始時、4週目、8週目、12週目に各項目を測定した。栄養状態は、Alb値が開始時3.6g/dLから12週目には4.0g/dLへ、GNRIは90から96へと上昇した。喫食時間および咀嚼回数は開始時に比べ4週目には急激に増加し、それ以降の増加はほぼ横ばいであった。食事満足度は、聞き取り調査に変化は見られなかったが、食事中の表情(フェイス・スケール)は、開始時1点(無表情、口角が曲がる)から12週目は5点(笑顔、口角が上がる、口を開く)となった。統合失調症患者への咀嚼練習は、噛むことへの意識付け強化となり、喫食時間および咀嚼回数が増加したことで、栄養状態の改善につながった可能性がある。
著者
岡本 梢 井上 裕匡 堤 仁勢 才本 由美 石野 真輔 辻 吉郎
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.25-31, 2020 (Released:2020-01-10)
参考文献数
28

回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハ病棟)は低栄養患者が多いとされ、本研究では当院回復期リハ病棟で提供される食事が栄養学的に適正か否かを検討した。 入院後2週間の食事摂取量から計量した1日平均摂取エネルギー量、たんぱく質量をそれぞれ標準体重で除しEおよびPとした。入院時BMIからUW群(BMI<18.5kg/m²)、NW群(18.5≦BMI<25kg/m²)、OW群(BMI≧25kg/m²)に3分類し、入院2週間後で体重が1.5%以上減少したD群、体重が1.5%未満減少もしくは増加したND群に細分類した6群間のE、P、平均年齢、FIM効率等を比較した。 E、PはOW-ND群で有意に高く、平均年齢はUW-D群で有意に高かった。 FIM効率はNW-ND群で高い傾向を示した。 FIM効率の観点から、肥満傾向の患者には入院直後から標準体重を目標とした減量が望ましい。一方、高齢の患者には摂取量低下を考慮した上で必要エネルギー量を確保する必要がある。
著者
有村 恵美 中熊 美和 四枝 晧二
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.393-399, 2022 (Released:2022-07-01)
参考文献数
24

外来血液透析患者34人(男性20人、女性14人)を対象に、透析導入前の栄養食事指導歴を含むアンケート調査を実施した。男性は女性に比べて透析歴が有意に低値を示し、透析導入年齢と腎所見指摘年齢および喫煙歴有の割合、糖尿病合併者の割合が有意に高値であった。腎所見指摘から透析導入までの期間が5年以上群は5年未満群に比べて調査時体重、調査時BMI(Body Mass Index)、最高体重、最高体重時BMI、腎所見指摘年齢が有意に低値であった。喫煙歴無群は喫煙歴有群に比べて腎所見指摘から透析導入までの期間が有意に高値を示した。透析導入前の栄養食事指導歴有は58.8%であり、約4割の患者は栄養食事指導未指導で透析導入に至っていた。慢性腎臓病の進展を予防するためには、肥満指導や禁煙指導、栄養食事指導(食塩制限・たんぱく質制限)等の生活指導をより充実させる必要性があると示唆された。今後もわれわれ管理栄養士・栄養士は栄養食事指導(食塩制限・たんぱく質制限)を含めた生活指導率の向上に努め、慢性腎臓病の進展予防のために貢献すべきであると考えられた。
著者
青山 高
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.679-686, 2017 (Released:2017-11-29)
参考文献数
31
被引用文献数
1

病院食における異物混入インシデント・アクシデント報告を縦断調査し業務改善の実際を明らかにする。静岡がんセンターの2011年4月から2016年3月までの異物混入インシデント・アクシデント報告とした。年ごとに病院食1食当たりの異物混入発生率と混入物、混入元を調査した。全てインシデント報告であった。発生率は2011年より0.006%、0.003%、0.003%、0.006%、0.004%であった。混入物は、毛の混入が最多であり報告件数は厨房内(外);7(1)、5(0)、5(2)、3(6)、7(3)であった。厨房内(外)の混入元の別は21(2)、12(0)、8(2)、9(13)、8(8)であった(p=0.0001253、Fisher's exact test; R)。経年の異物混入状況より業務改善が認められた。異物混入の縦断調査は潜在因子と再発を探索するために有用である。
著者
福岡 梨紗 五味 郁子
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.277-284, 2022 (Released:2022-05-01)
参考文献数
25

本研究は、訪問診療利用高齢者の栄養状態の評価・判定を行い、「低栄養」または「低栄養のおそれあり」に判定された者かつ、「食べることに対する義務感がある」者を「摂食困難」と定義し、在宅療養高齢者の摂食困難の実態として、対象者の属性や身体計測値、栄養・食事に対する自己評価との関連を検討した。対象者は、A市内の診療所Bの訪問診療を月1回以上利用している65歳以上の療養者28人であった。MNA®-SFにて、「低栄養」および「低栄養のおそれあり」と判定された者は21人(75.0%)、「栄養状態良好」と判定された者は7人(25.0%)であった。前者のうち、「食べることに対する義務感がある」摂食困難群に該当する者は10人(35.7%)、「食べることに対する義務感がない」非摂食困難群に該当する者は11人(39.3%)であった。摂食困難群の平均年齢は78.5±7.1歳であり、3群間に有意な差は認められなかったが、非摂食困難群86.3±7.5歳と比較し、有意に低値を示した(p=0.025)。BMI、%AMCは、3群間に有意な差が認められ(p=0.043)(p=0.027)、摂食困難群は良好群と比較し有意に低値を示した。訪問診療利用高齢者は、低栄養のリスクが高いことが明らかになった。 また、摂食困難群が持つ食べることに対する義務感は、在宅療養高齢者の年齢が低いことが関係していることが示唆された。
著者
佐藤 ななえ 吉池 信男
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.809-816, 2011

日本人小児における咀嚼行動にかかわる食育の効果を評価する指標として、何が適切かを明らかにするため、昭和58 年~平成22 年に発表された論文について、データベース「医学中央雑誌」および「MEDLINE」を用い、系統的に収集・分析した。最終的に選択された13 件の論文を精査し、エビデンステーブルとして整理した。咀嚼行動の評価には、(1)自記式質問紙による咀嚼習慣の把握、(2)小児用簡易咀嚼回数計を用いた測定(咀嚼回数、食事に要した時間)、(3)ビデオ観察の3 種類が、咀嚼能力の評価には、(4)咬合力測定、(5)ガムを用いた咀嚼テストの2 種類が用いられていた。集団に用いる場合、これらの評価指標は、妥当性や適用性(経費、労力、時間)といった点で、それぞれ長所と短所がある。したがって、実施可能性および妥当性の許容範囲から、食育プログラムを実際に行う諸々の状況においては、(1)と(2)を組み合わせて用いる方法が最良の選択肢と考えられた。また、本論文において、筆者らは、咀嚼行動(噛まない)と咀嚼能力(噛めない)の本質的な違いを明確に示したが、小児の咀嚼にかかわる食育の適切な介入プログラムの開発においては、この2 つの点をどちらも考慮に入れる必要がある。
著者
境田 靖子 岩橋 明子 辻本 洋子 福村 智恵 由田 克士
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.101-110, 2022 (Released:2022-02-18)
参考文献数
29

妊娠期の食品摂取状況と児の出生体重への影響を検討するために、大阪府・奈良県・福岡県の3地区において、2015年4月~2016年8月の間に3~4カ月児健康診査を受診する予定の母親1,302人を対象に、母親の身体状況と喫煙、飲酒習慣、食品摂取状況等および児の身体状況について質問紙調査を実施した。出生体重2,500g以上と低出生体重児の2群で比較すると、低出生体重児群は母親の非妊娠時および出産時体重、非妊娠時BMI、体重増加量、出生児の身長と在胎週数が低く、喫煙率が高かった。さらに、食品摂取頻度と摂取目安量から算出した摂取得点では、妊娠前と妊娠中の両期間で低出生体重児群は野菜料理摂取得点が低く、妊娠前の野菜料理摂取得点および牛乳・乳製品摂取得点が低い群は低出生体重児が出生するオッズ比が1.69、1.58と高かったことから、低出生体重児の抑制に妊娠前からの適切な食事管理、特に野菜摂取の指導の必要性が示唆された。
著者
八木 寿子
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.35-40, 2022 (Released:2022-01-07)
参考文献数
12

本研究の目的は、経腸栄養剤の投与エネルギーを減量することによる体重変動から高齢者の適正エネルギー量を確認するための検証である。対象は経腸栄養剤を投与している寝たきり高齢者8人(男性4人、女性4人)である。方法は、1年以上900 kcalを継続し体重が安定している対象者に対して、3カ月間エネルギーを900 kcalから800 kcalに抑えて体重変動を確認した。結果は、体重減少が3人(男性2人、女性1人)、体重増加が2人(女性)、変化なしが3人(男性2人、女性1人)である。男性は体重が減少しやすいため適正エネルギー量はあまり低く設定しないほうが適切であると推測できる。一方で女性は体重が減少しにくいため適正エネルギー量はより低く設定可能であると推測できる。
著者
片山 夕香 吉池 信男 政安 静子 平野 孝則 佐藤 明子 稲山 貴代
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.482-491, 2011 (Released:2011-12-13)
参考文献数
12

本研究は、身体障害者施設成人入所者の栄養アセスメントに活用できる、性・年齢階級別のパーセンタイル値を含む身体計測値の基準データを提示することを目的とした。調査時点で正式登録のあった全国の身体障害者入所全施設(470 施設)に対し、年齢階級(30 歳代から50 歳代)、性、原疾患、日常生活自立度、身長、調査時点の体重、1 年前の体重、5 年前の体重のカルテ調査を依頼した。最終的に49 施設から1 , 217 名分の回答が得られ、調査内容に欠損のない1 , 059 名(男性597 名、女性462 名)を解析対象とした。日常生活自立度は、男性、女性ともに生活自立は10% に満たず、準寝たきりが約30%、寝たきりが約60% を占めた。調査時点での身長、体重データから、男性では過体重(BMI≧25 kg/m2)12%、低体重(BMI
著者
小野 美咲 今井 克己 安武 健一郎 渡邉 啓子 岩本 昌子 大和 孝子 竹嶋 美夏子 森口 里利子 上野 宏美 中野 修治
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.641-648, 2021 (Released:2021-11-01)
参考文献数
8

大学付属医療施設を利用した参加型臨床実習が受講者の意識に及ぼす影響について、独自に設定した科目の到達目標に対する教育効果評価指標を用い評価した。実習内容は大学付属医療施設に通院している患者の栄養支援の見学と、グループワークによる担当症例の検討、および栄養支援計画の立案とした。効果の検討はアンケートにより行った。アンケートは本科目受講により認識の変化が期待される管理栄養士の能力としてのコミュニケーションおよび専門的知識に関する10項目とし、項目に対する受講者の重要性の認識の変化と、自己評価の変化を把握した。受講前後および栄養支援見学後に実施したアンケートの継時変化をFriedman検定にて解析した。重要性の認識では、身だしなみ、態度、対話力、想像力、記録力、聴き取り力、意思疎通力、調理および食材の知識の8項目が受講により上昇傾向を示した(全てp <0.05)。栄養学の専門的知識の重要度は変化しなかった(p=0.064)。自己評価では10項目全て上昇傾向に変化した(p <0.001)。大学付属医療施設を利用した参加型臨床実習は、コミュニケーションおよび専門的知識に対する重要性の認識の強化および自信の向上に貢献する可能性がある。
著者
入山 八江 稲村 雪子 渡辺 優奈 川村 美和子 久志田 順子 牧野 令子
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.511-523, 2021 (Released:2021-09-01)
参考文献数
26

日本は世界に類を見ない速さで高齢化が進み「超高齢社会」を迎えている。本研究の目的は、訪問栄養指導が在宅高齢者のQOL、BMI、疾病の改善に及ぼす効果を検証し、さらに、介護度や依頼元別の依頼内容の違いや特徴の実態を明らかにすることである。対象は2012~2020年の8年間に訪問栄養指導を受けた211人。栄養介入は、初回にアセスメントを行い最終回で評価した。主観的情報のQOLは、記録から事象を6カテゴリーに分類し、分析した。また、客観的情報が事前事後でそろう79人については、目的別に低栄養を回避し体重増加を目指す群、適正体重を維持する群、肥満の改善を目指す群の3群に分け分析した。その結果、増加群、減少群は共に体重に有意な改善が見られ、群間差が認められた。QOLの向上には、栄養と調理、行動変容が要因として有意に関連していた。訪問栄養指導の効果は、QOL、BMI、疾病の改善に有効であることが示唆され、介護度別、依頼元別に依頼内容の特徴が認められた。
著者
片山 夕香 吉池 信男 政安 静子 平野 孝則 佐藤 明子 稲山 貴代
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.25-35, 2011 (Released:2011-12-27)
参考文献数
21
被引用文献数
1

本研究は、知的障害者施設成人入所者の栄養アセスメントに活用できる、性・年齢階級別のパーセンタイル値を含む身体計測値の基準データを提示することを目的とした。調査時点で正式登録のあった全国の知的障害者入所全施設(1,950施設)に対し、年齢階級(30歳代から50歳代)、性、原疾患、日常生活自立度、身長、調査時点の体重、1年前の体重、5年前の体重のカルテ調査を依頼した。最終的に188施設から5,371名分の回答が得られ、調査内容に欠損のない4,903名(男性2,643名、女性2,260名)を解析対象とした。日常生活自立度は、約88%が「自立」から「A1」のおおむね1人で活動できる者であった。調査時点での身長、体重データから、男性では、過体重(BMI≧25kg/m2)16%、低体重(同<18.5)13%、女性では過体重27%、低体重12%であった。てんかん、精神遅滞・発達障害を原疾患に持つサブグループのBMI分布は、全体のBMI分布と比べ大きな差は見られなかった。5年前の体重を用いた後ろ向きデータから、中年期において男女いずれも体重が5年間で3%前後減少する傾向が見られ、健常者中年期の年齢変化による体重推移とは対照的であった。これらの結果から、知的障害者に対する栄養支援の重要性が示唆された。
著者
吉江 明広 澤田 歩実 澤﨑 円香 田邊 公一 朝見 祐也
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.451-457, 2021 (Released:2021-08-01)
参考文献数
29

本研究は、取り扱いの簡易な食物アレルゲン検出キットを大量調理機器の洗浄終了の確認に活用することを試みた。食物アレルゲン検出キットは「牛乳(カゼイン)」用および「小麦」用を用いた。大量調理機器は、ブレージングパンを一定条件の料理の調理後に、その料理を取り除いた状態のものを用いた。洗剤の有無で2種の洗浄を行い、食物アレルゲンの除去までに必要な洗浄水量の比較を行った。食物アレルゲンの種類による比較では、洗浄水量の差は認められなかった。一方、洗剤の有無の比較では、洗剤を用いることで有意に洗浄水量が少なく、洗剤による食物アレルゲン除去の効果を示すことができた。ブレージングパンに目視で汚れが確認できない状況だとしても、食物アレルゲン検出キットで「陽性」となることがあった。そのため、目視だけで洗浄の終了を判断することは、食物アレルゲン除去の観点から不十分であると確認された。大量調理機器の洗浄の際に食物アレルゲン検出キットを使用することは、食物アレルゲンの残存の確認に有効であり、さらに食物アレルゲン除去に必要な洗浄水量を算定し、洗浄方法の標準化に有用であると考えられた。以上より、大量調理機器の洗浄終了の確認において、食物アレルゲン検出キットの活用の可能性を示すことができた。
著者
河野 真莉菜 藤井 京香 安武 健一郎
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.391-397, 2021 (Released:2021-07-01)
参考文献数
19

本研究の目的は、介護職員が献立作成を担う認知症対応型共同生活介護の実施献立を評価し、栄養学的課題を検討することである。福岡県内のグループホーム5施設を対象に、4週間分の実施献立を収集し、食品摂取多様性スコアと1日当たりの使用食品数のカウントを行った。その結果、それらの全施設の中央値はそれぞれ6.0 点/週、25.0品目/日であった。食品摂取多様性スコアでは、卵、牛乳・乳製品の使用頻度とそれらの合計点(p = 0.023)において施設間で有意差を認めた。また、1日当たりの使用食品数では、卵、牛乳・乳製品、緑黄色野菜、淡色野菜、きのこ類、果物、油脂類、菓子類とそれらの合計数(p < 0.001)で施設間差を認めた。グループホームの実施献立は、使用食品数に偏りを認め、施設によって献立の質が異なっていた。このような栄養学的課題を解決するためには、管理栄養士・栄養士の関わりが必要であり、介護職員への栄養教育が重要と考えられる。