著者
石田 もえこ 石川 麻夕子 工藤 幹彦 草間 かおる
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.211-219, 2021 (Released:2021-04-01)
参考文献数
20

本研究の目的は、初めて糖尿病と診断された患者に対する初回栄養食事指導記録から把握した食生活習慣と料理・食品群別摂取量の問題点(以下、アセスメント)および改善すべき点(以下、プラン)のキーワードを明らかにすることである。方法は、アセスメントおよびプランの文章から、キーワードを抽出した後、その出現頻度について検討した。さらに、1年後の血糖コントロール状況に着目した解析では、HbA1c 7.0 %未満達成群(84人)と未達成群(21人)におけるキーワードの出現頻度について比較した。出現頻度が高かったキーワードは、アセスメントにおいて「飲酒および嗜好飲料の過剰」、プランにおいて「飲酒の減少」および「主食計量」であった。注目すべき点としては、未達成群のアセスメントでは、「外食過剰」の出現頻度が達成群に比較して高かった(p=0.041)。これにより、初回栄養食事指導において把握したアセスメントおよびプランのキーワードが明らかとなった。
著者
山本 亜衣 新冨 瑞生 河野 光登 巴 美樹
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.149-158, 2021 (Released:2021-03-01)
参考文献数
29

70歳以上の高齢者を対象とし、「低脂肪豆乳(不二製油株式会社)」を食事(みそ汁)に2カ月間添加し、低脂肪豆乳摂取による栄養状態改善および抗炎症作用を検討した。被験者は軽費老人ホームに入所中の高齢者17人とした。2014年9~12月に実施し、試験食摂取期間は低脂肪豆乳(不二製油株式会社)85 mLを朝食のみそ汁に添加した。評価項目は身体計測、簡易栄養状態評価表(MNA®- SF)、喫食量調査、血液検査であり、九州女子大学倫理審査委員会の承認を得て実施した。MNA®-SFの合計は摂取期8週が後観察期との差分において有意に高値を示し、栄養状態は維持していた。摂取期4週、摂取期8週にたんぱく質の摂取量が有意に増加し、カリウムは目標量、マグネシウムは推奨量に近似した。推定糸球体濾過量は前観察期と比較して摂取期4週、摂取期8週に有意な差は見られなかった。TNF-αは摂取期8週で前観察期、後観察期より有意に低下した。低脂肪豆乳の摂取は70歳以上の高齢者へのたんぱく質投与を腎機能に負担を掛けずに可能とし、栄養状態の維持やTNF-α低下作用による抗炎症作用に寄与すると考えられた。
著者
中村 富予 家辺 愛子 今井 晶子 藤村 佳美 溝上 欣子 中山 紀子 長谷部 汐莉 小湊 英範
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.97-104, 2021 (Released:2021-02-01)
参考文献数
24

通所介護事業所では、定期的に利用者の体重測定を実施している事業所が少なく、栄養指標として最も重要な項目の1つである体重減少率を算出できない場合が多い。そこで本研究では、通所介護事業所における栄養スクリーニング項目としての体重減少率の有無が低栄養状態のリスク判定に与える影響を調べることを目的とした。通所介護事業所利用者92人を対象とし、体重減少率を含めて低栄養状態のリスク判定を行った場合と、体重減少率を除外した場合との差を比較検討した。本研究対象者の約4割が低栄養状態の中・高リスクに判定された。体重減少率を除外した場合、低リスクと判定された利用者のうち25.6%は体重減少率を含めると中・高リスクに該当した。栄養スクリーニング時に体重減少率が算出できない場合の低栄養状態のリスクは本来より軽く見積もられ、低リスクに判定された利用者の中に低栄養状態の利用者が含まれる可能性が示唆された。
著者
小島 佐紀子 奥 裕乃 松月 弘恵
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.89-96, 2021 (Released:2021-02-01)
参考文献数
28

本研究は調理学実習と給食経営管理実習で衛生教育を科目間連携し、手指の洗い残し部位の可視化と質問紙の調査から、手洗い教育の課題を明らかにすることを目的とした。対象は2017年度に本学の管理栄養士専攻2年に在籍し、2018年1月(調理学実習後)および7月(給食経営管理実習後)の調査に回答した44人で、両手および手のひら・甲における洗い残し22部位の観察と、手洗いに関する8項目の重要度と実践度を質問し、調理学実習後と給食経営管理実習後で比較した。手指の洗い残し調査からは、結果を可視化し洗い残しを認識することで、給食経営管理実習後の両手の洗い残しが減った(p <0.001)。22部位のうち特に改善が認められたのは、手首と小指の付け根(各p <0.001)であった。手洗いの実践度では、調理学実習ですでに身に付いている項目と、給食経営管理実習を通して実践度が高まる項目、および改善しない項目に大別できた。実践度が低い項目には衛生教育だけでなく、環境整備により改善される可能性が示唆された。
著者
吉村 弘太 小林 ゆき子 青井 渉 木戸 康博 桑波田 雅士
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.31-38, 2021 (Released:2021-01-01)
参考文献数
29

学童期の児童にとって、おやつは補食としての役割を担う。しかし、学童保育施設の運営指針ではおやつの具体的な内容や栄養価については提言されておらず、空腹感を和らげる目的でしかとらえられていない。本研究では、学童保育施設を利用する児童の栄養状態と習慣的な食事摂取量を調査し、施設におけるおやつ提供のあり方について検証を試みた。K市に所在する15の学童保育施設を利用する児童を対象に、小学生・中学生・高校生のための簡易型自記式食事歴法質問票を用いた食事調査を実施し、有効回答を得られた293人(有効回答率38.6%)を解析対象とした。その結果、①京都府平均と比較して痩身傾向と肥満傾向の割合が高い、②脂質と食塩の摂取量において食事摂取基準を逸脱した者の割合が高い、③低学年と比較して中学年または高学年でカルシウムや鉄等の栄養素が摂取不足の傾向にあることが明らかとなった。現状提供されているおやつ内容ではこれらの課題は解消されないこと、施設でのおやつ提供の内容再考と児童の成長に合わせた栄養価の確保が必要であることが示唆された。
著者
鶴田 浩子 田代 淑子 丸茂 貴子 加藤 京子 菅原 哲也 米山 淳子 川井 三恵 金子 昌弘 須賀 万智
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.673-680, 2020 (Released:2020-12-01)
参考文献数
9

公益財団法人東京都予防医学協会は、人間ドック受診者のサービスの一環として検査終了時に弁当を提供している。2013年度より、食育を目的として弁当のリニューアルと管理栄養士による講話を実施した。併せてアンケートを実施して、結果に基づきサービスを改善するPDCA サイクルを取り入れた。 評価指標は、「満足度」、「講話の参加有無」、「今後も本企画のある人間ドックを受けたいと思うか」の3項目とした。5年間の継続的な取り組みの結果、3項目とも上昇傾向が見られた。PDCA サイクルを回しながら改善の努力を着実に積み重ねたことが、受診者に受け入れられやすい食育の実現につながったと考える。
著者
西尾 由香 渡邊 浩幸 宮上 多加子 村上 尚 松田 幸彦
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.617-626, 2020 (Released:2020-11-01)
参考文献数
27

統合失調症入院患者は、一般成人と比べて低体重の割合が高いと報告されている。しかし、本疾患と低体重に関する要因は、明らかにされていない。そこで本研究は、細木ユニティ病院(現 細木病院こころのセンター)入院患者のカルテより60歳以上の高齢者で統合失調症およびその他の精神疾患を持つ患者を対象として、年齢・性別・入院時体重・現在の体重・入院期間・既往症等について、低体重とその要因との関連性を明らかにすることを目的とした。男女合算の解析では、入院期間20年未満(男性34人、女性74人)と同47年未満(男性37人、女性76人)において、体重変化率と有意な負の相関性が認められた。甲状腺機能低下症の患者を除した場合も同様の結果が得られた。精神科入院患者における体重減少において、入院期間の長期化との関連性が認められたが、栄養状態を示す血液データとの関連性は見出されなかった。今後、低体重化予防のために、入院期間を念頭に置いた対応を行うことが重要である。
著者
河野 公子 生和 良の 長洲 祐子 近藤 純子 鈴木 知子 浦川 由紀子 當銘 良也 本間 洋州 栁内 秀勝 石川 俊男
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.672-676, 2014 (Released:2014-08-23)
参考文献数
7

本研究の目的は、神経性無食欲症(AN)患者の実測した基礎代謝量(BEE)とHarris-Benedict の式(HBE)により算出したBEE および日本人の食事摂取基準2010(DRI)に示されている基礎代謝基準値により算出したBEE とを比較検討することである。AN患者23人[制限型(ANr)13人、むちゃ食い/排出型(ANbp)10人、性別男性3人、女性20人、年齢18~57歳]を本研究の対象とした。ANr症例では、BEE が300 kcal/day から1,000 kcal/dayと広い範囲であるのに対し、ANbp症例では600 kcal/dayから1,000 kcal/dayの範囲であった。 ANr症例では、チェスタックによる実測BEEと比べて、HBEにより算出したBEEでは、有意に高値を示した(P<0.025)。しかし、DRIから算出したBEEとの間には統計学的に有意な差は見られなかった。ANbp症例では、チェスタックによる実測BEEと比べて、HBEにより算出したBEEは有意に高値(P<0.025)を示したのに対し、DRIから算出したBEEでは統計学的に有意な差は見られなかった。これらの結果から、チェスタックによるBEEの実測が不可能なAN症例のBEEの推定にDRIにより算出したBEE値が利用できると考えられた。
著者
高橋 輝美子 神原 知佐子 佐々木 彩 高橋 まり 小田 弘明 野村 希代子 杉山 寿美
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.559-566, 2020 (Released:2020-10-01)
参考文献数
10

本研究では慢性腎臓病(CKD)患者の不安軽減に対する料理教室の効果を明らかにすることを目的として、CKDステージ3a~5の患者94名を対象に、管理栄養士が実施する料理教室への参加理由や食事療法への不安感等に関するアンケート調査を実施した。料理教室への参加状況により3年以上継続群:A群、3年未満継続群:B群、不定期・非参加群:C群の3群に区分し、Kruskal -Wallis検定と多重比較を行った。その結果、「食事療法の食事をおいしいと感じている」、「気軽に相談できる患者同士のつながりがある」の項目で3群の各群間に統計的有意差が認められた。料理教室への参加理由で、「同じ病気の患者さんと知り合いたかった、話したかったから」、「料理教室での食事が楽しみだから」でA群とC群の間に有意な差が認められた。料理教室に継続して参加することが、患者に「治療食をおいしいと感じること」と「患者同士のつながり」をもたらし、両者が疾病や食事療法への不安軽減につながることが示唆された。
著者
森脇 志織 楠 あかね 神原 知佐子
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.510-517, 2020 (Released:2020-09-01)
参考文献数
15

介護保険施設(介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護療養型医療施設)に勤務する管理栄養士・栄養士の職務満足度およびワーク・ライフ・バランス(WLB)の現状を把握し、それらに関連する要因を検討することを目的として、アンケート調査を行った。調査票は700施設に送付し、120施設から回答を得た。本調査に回答した者は193人で、上司や同僚とおおむね良好な関係であり、仕事での能力や専門性に関する自己評価もおおむね良好であった。給与に関する評価はやや低いものの、福利厚生制度に関してはおおむね良好であった。職務満足度の中央値(四分位範囲)は65点(40~80点) /100点で、重回帰分析の結果、最も影響を与えていた項目は「現在の仕事は、自分の能力を活かせる仕事である(β=0.249、p <0.001)」であった。WLBの満足度の中央値(四分位範囲)は70点(50~80点)/100点で、最も影響を与えていた項目は「現在の仕事は、自分の能力を活かせる仕事である(β=0.255,p =0.001)」であった。
著者
磯部 澄枝 諸岡 歩 焔硝岩 政樹 富川 正恵 新田 和美 齋藤 芸路 澁谷 いづみ
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.501-509, 2020 (Released:2020-09-01)
参考文献数
9

本研究は、地域包括ケアシステムの推進における行政管理栄養士の役割を明らかにするため、都道府県本庁、保健所および市町村の管理栄養士等を対象に、管理栄養士配置状況、地域包括ケアシステムへの関与状況等を把握する悉皆調査を実施した。介護保険・高齢福祉部門に管理栄養士を配置している都道府県および市町村は少なく、地域包括ケアシステムの推進に取り組んでいる都道府県本庁は7(15.9%)、保健所は24(8.0%)、市町村は190(19.9%)であった。保健所は医療・介護連携支援ツール作成、社会資源把握、管理栄養士・栄養士の育成と確保、食環境整備等を行っており、市町村はケース対応、教室の企画・運営、普及啓発、医療と連携した栄養食事指導体制の構築等を行っていた。市町村が保健所管理栄養士に期待することは、情報発信、リーダーシップ、組織体制整備等であった。地域包括ケアシステムの充実を目指すため、市町村管理栄養士は介護予防事業と保健事業を連動させた取り組みに積極的に関わることが望まれる。また、保健所管理栄養士は調整能力とリーダーシップを発揮し、栄養・食生活課題の見える化、地域栄養ケア拠点の整備、社会資源の活用、栄養・食生活改善に関する人材育成を行う必要があることが示唆された。
著者
齋藤 沙織 針谷 順子 塩原 由香 吉岡 有紀子
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.387-393, 2020 (Released:2020-07-01)
参考文献数
15

近年、和食はユネスコ無形文化遺産に登録される等注目されている。そこで、小学生に和食の配膳に関する食育プログラムを実施し、和食の配膳に関する学習の知識、態度、ならびにプログラム実施後の配膳の知識の定着度と実践状況を明らかにした。 本プログラムは2015・2016年度にK県S小学校の3年生146人を対象に実施した。プログラムは、児童が和食の成り立ちやその意味、配膳、箸や食器の扱い方について学び、和食を食べる、という内容とした。結果、プログラム実施直後、和食の配膳を正しくできた児童は2015年度97.6%、2016年度100.0%だった。プログラム実施1週間後に和食の配膳の知識が定着していた児童は2015年度34.9%、2016年度50.0%だった。日頃の食事時に和食の配膳ができていると答えた児童は2015年度74.4%、2016年度83.3%だった。今後は、知識が定着するような支援方法を検討していきたいと考える。
著者
那須 裕子 岡垣 雅美 小林 ゆき子 馬引 美香 重村 智栄子 練谷 弘子 中野 貴美子 市川 寛 吉川 敏一 東 あかね
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.919-926, 2010 (Released:2011-04-22)
参考文献数
23

[目的]透析未導入の慢性腎不全患者に対する減塩指導を効果的に実施するために、塩分味覚障害の頻度と食習慣や服薬状況との関連を明らかにすることを目的とした。[方法]集団食事指導に参加した透析未導入の慢性腎不全患者のうち、有効回答を得た50名を対象者とした。濾紙法による味覚検査と食習慣など46項目にわたる自記式アンケートを実施し、身体状況および血液生化学検査値に関してはカルテを参照した。[結果]対象者の味覚障害の頻度は36%であり、味覚障害と食べる速さ、降圧剤であるアンギオテンシンII受容体拮抗剤の服用が有意に多かった。[結論]慢性腎不全患者に対して、食べる速さや降圧剤内服に関連する味覚障害に配慮して減塩指導する必要性が示唆された。
著者
織本 智香 山田 五月 饗場 直美
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.322-327, 2020 (Released:2020-06-01)
参考文献数
7

本調査の目的は、療養高齢者の栄養・食生活支援上の課題を明確化し、課題解決に向けた必要な取り組みおよび体制構築に対する方向性を明らかにすることである。対象者は、東京都の西多摩圏域に所在する介護および看護関連事業所および各専門職(介護支援専門員、看護師、訪問介護員)である。調査方法は、自記式調査用紙を用いたアンケート調査および聞き取り調査である。 栄養・食生活支援上の課題があると90%以上が回答し、その中で、最も優先度が高い課題は、介護支援専門員が「適切な水分摂取量への対応」、看護師が「摂食・嚥下機能の評価」、訪問介護員が「栄養バランスのとれた食事への対応」と職種別に異なっていた。在宅高齢者の栄養管理の必要性について「必要がある」と回答した職種が多く、栄養・食生活支援の実施について困ったことがあるとの回答があった。しかし、相談先がないと回答する職種が各職種とも20%以上存在した。本調査は、今後、地域で多職種連携を行う際の参考となるデータであり、ひいては地域包括ケアシステム推進に向けた一助となる。
著者
竹林 尚恵 谷口 としえ 端 千づる
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.315-321, 2020 (Released:2020-06-01)
参考文献数
11

咀嚼・嚥下が困難な入院患者、老人福祉施設・介護保険施設療養者に対応した食種名と形態の実態について調査するため、福井県内の病院114カ所、老人福祉施設・介護保険施設181カ所の管理栄養士を対象に、質問紙票による調査を実施した。質問紙票では提供可能な主食の形態と名称、咀嚼・嚥下困難な患者・療養者に対応した食種(副食)の名称と形態を尋ねた。形態については食事形態スケールとしてIスケールを用い、その中からの選択とした。回答が得られた159カ所のうち、咀嚼・嚥下に対応した食事が必要な対象者がいないと回答した施設を除いた148カ所を解析対象とした。病院・施設での咀嚼・嚥下困難な患者・療養者に対応した食事は、主食、副食共にさまざまな名称が使用されていた。特に副食については、名称が主食に比べて多様であった。そのため、同一の名称が異なる形態を表している場合があること、病院と施設間で使用している名称のずれが大きいことが明らかとなった。
著者
吉池 信男
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.533-539, 2019 (Released:2019-10-22)
参考文献数
20

わが国の食事基準(dietary standard)は、旧来「栄養所要量」として策定・改定がなされてきた。米国でもRDA(recommended dietary allowance)として第10版(1991年)まで改定がなされてきたが、1993年ごろから拡張した概念枠組みの検討が開始され、1997年に米国・カナダ合同でDRIs(Dietary Reference Intakes)が発表された。ここで最も重要な点は、栄養素の必要量を正規分布と仮定し、個人に 対して不足のリスクをEAR(estimated average requirement)およびRDAを組み合わせて確率として示したことである。また、より適切な利用のために、AI(adequate intake)、UL(tolerable upper intake level)を含めた複数の指標のセットが提案された。これを受けてわが国でも「第六次改定」に向けて情報収集、検討が行われた。その結果、1999年に「第六次改定日本人の栄養所要量―食事摂取基準―」として、 DRIsの概念が一部とり入れられたが、十分なものではなかった。次の改定の「日本人の食事摂取基準(2005年版)」では、DRIsの概念がほぼ全てとり入れられ、さらに「生活習慣病の一次予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量」(tentative dietary goal for preventing lifestyle-related diseases)、すなわちDG(目標量)が、独自の指標として作られた。その後、EER等多少の変更はあったものの、この形が「2020年版」まで承継されている。DRIsが提唱されてから約20年が経ったが、米国でも正しい活用がなされていないとの指摘もあり、これはわが国でも課題であろう。
著者
森 直子 小柏 道子 山下 式部 藤井 わか子 上田 伸男 本間 裕人 鈴木 久雄 益岡 典芳 汪 達紘
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.191-200, 2020 (Released:2020-04-01)
参考文献数
44

野菜・果物摂取に関する心理社会的要因について性・年齢階級別の特徴をまとめた。 2011年10月-2013年6月の間、中国地方と近畿・九州地方の一部および関東地方に在住する18歳以上の男女3,179人を対象に自記式調査にて横断研究を行った。 高齢世代ほど野菜・果物の自己申告摂取量が多く、野菜の自己申告摂取量が多い者は、全年代とも「自己効力感」および「態度」の得点が高く、「障害」の得点は低いことが分かった。一方、果物摂取に及ぼす同要因として、全年代で「自己効力感」および「態度」、18-20歳代では「社会的支援」が重要要因であると推定された。同要因オッズ比を見ると「責任」、「自己効力感」、「態度」、「障害」、「態度」および「知識」は女性で世代差がある一方で、男性では「態度」および「知識」以外には差がなかったことから、性・年齢階級別に差があることを考慮し野菜・果物摂取量増加に向けた取り組みをする必要がある。
著者
青山 高 親川 拓也 村岡 直穂 飯田 圭
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.135-142, 2020 (Released:2020-03-01)
参考文献数
28

本研究は1日推定食塩摂取量(随意尿)と食事習慣上の課題を用いて虚血性心疾患を有するがん患者の栄養指導の効果を判定した。対象は静岡がんセンター循環器内科において2018年4月から2019年3月までに塩分摂取過多が疑われる患者のうち初めて心臓カテーテル検査(CAG)を受け、次回診察日に栄養指導を実施できた18症例とした。栄養指導方法は塩分計量を用いず、食事習慣上に塩分が含まれている食品の使用頻度の改善を指導した。1日推定食塩摂取量と塩分コントロールの必要のある区分(食材、調理、食卓)の頻度を比較した。全18例(男性14例)の年齢は74才(50-85)であった。1日推定食塩摂取量が改善していたのは11例に見られ、非改善症例に比して塩分コントロールの必要のある区分のうち食材の頻度に相対的な減少が認められた(p <0.05)。両群のがん病期stageと消化器系の部位別に差は見られなかった(p =0.56、p =0.63)。がん患者における虚血性心疾患では塩分計量を用いない食事習慣上の栄養指導に効果を得られる可能性がある。本研究は、がん病期stage に隔たりなく治療に向きあおうとしている患者のモチベーションを管理栄養士の視点から支持する取り組みであり、1日推定食塩摂取量が食事習慣に内在している食材の塩分コントロールに照らした指導法により効果が得られる可能性を示した。
著者
坪田(宇津木) 恵 笠岡(坪山) 宜代 渡邊 昌
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.1234-1241, 2008 (Released:2012-01-05)
参考文献数
12
被引用文献数
1

2007 年9 月、アメリカワシントンDC で食事摂取基準ワークショップ「食事摂取基準の進展1994~2004 年:課題と新たな挑戦」が開催され、1994 年より策定されているアメリカ・カナダ版食事摂取基準の、基準値の設定方法から活用までのさまざまな段階における現状と、今後の課題について議論がなされた。 本論文では、ワークショップに先駆けて公表された事前報告書、ならびにワークショップでの議論をもとに、アメリカ・カナダにおける食事摂取基準活用の現状と課題について解説する。 特筆すべきは以下の3 点である。1.アメリカ・カナダにおいて、食事摂取基準はあくまでエネルギー・種々の栄養素の摂取基準値を示した科学的根拠である。2.食事摂取基準活用における重大な問題は、その概念の難しさから食事摂取基準に対する概念や解釈に混乱が見られること、各指標の誤用が認められることである。3.実際の栄養活動の場においては、食事摂取基準を直接・間接活用したダイエタリーガイドラインやマイピラミッドなどの「明確」で「実用的」、「簡単」な媒体の使用が求められる。