著者
小林 悦子 佐藤 陽子 梅垣 敬三 千葉 剛
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.93-98, 2018-04-25 (Released:2018-04-25)
参考文献数
11
被引用文献数
3 8

海外の健康食品をインターネットで購入できる状況において,健康被害を未然に防止するには,国内だけでなく海外の被害情報を把握することが重要である.「健康食品」の安全性・有効性情報サイトでは,国内外の行政機関から発信された健康食品の注意喚起情報を収集・掲載している.今回,2010から2016年に収集した2,124件の注意喚起情報の特徴を分析した.製品の特徴として,医薬品成分混入が85%を占め,性機能改善および痩身を標榜した製品が68%を占めた.多くは買上調査や自主回収情報であったが,健康被害事例も181件含まれ,痩身および疾病治療を目的とした利用で被害が多く見られた.日本国内では,10~30代女性,痩身目的の利用,インターネットでの購入という特徴が認められた.これらの特徴を,健康被害の未然防止のための適切な情報提供に役立てる.
著者
佐藤 常雄 溝井 理子 木村 凡 藤井 建夫
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.490-494_1, 1995-08-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
8
被引用文献数
3 3

新島, 大島及び父島のくさや汁を用い, これらくさや汁中のヒスタミン (Hm) 量, Hm生成菌及びHm分解菌の存在並びにその菌種を調べた. その結果, 各くさや汁ともHm生成菌はほとんど検出されなかったこと, Hm分解菌が104~106cells/ml程度存在したこと, 更にpHがHm分解活性至適域であったことから, くさや汁中ではHmが蓄積されにくい環境であることが分かった. 各くさや汁のHm分解菌として Alcaligenes がいずれの試料からも多数認められた. しかし, くさや汁中のHm分解菌のほとんどは, くさや汁の優勢菌種ではなかった.
著者
中根 邦彦 伊藤 寛将 磯谷 健治 板倉 裕子 糟谷 慶一 小林 慎一
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.252-255, 2015
被引用文献数
6

ジビエなどの肉および肝臓の生食あるいは加熱不十分な状態での摂食によるE型肝炎感染事例が各地で報告されている.そこで2010年4月から2014年11月までに愛知県岡崎市内および近郊で捕獲されたイノシシ439頭およびシカ185頭から採取された肝臓についてHEV感染状況を調査した.その結果,イノシシ49頭(11.2%)からHEV遺伝子が検出されたが,シカはすべて陰性であった.また,イノシシにおける推定体重40 kg未満の個体群でのHEV遺伝子の検出率は13.0%(28/216),一方40 kg以上の個体群では2.7%(3/111)と,40 kg未満の個体群で有意に検出率が高かった.分子系統樹解析により,検出されたHEVの遺伝子型はすべてgenotype4であり,4型愛知静岡株と同一のクラスターを形成したが,1株を除き48株はさらに小さなクラスター(Okazaki strain)を形成していた.
著者
中瀬 崇 駒形 和男
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.346-352_1, 1977
被引用文献数
5

欧米産の市販輸入チーズ12点のうち5点から10<sup>6</sup>~10<sup>8</sup>/gの酵母が検出された. カビ熟成チーズの St. Clemens, Roquefort, および Valencay では <i>Debaryomyces hansenii-Torulopsis candida</i> が酵母フローラの独占的構成菌種であり, Plumrose では90%が <i>D. hansenii-T. canctida</i>, 10%が <i>Candida zeylanoides</i> であった. 非熟成チーズの Geror では10<sup>5</sup>~10<sup>8</sup>/g の <i>Candida lipolytica</i> が検出された. この他に少数菌種として6属9種が分離された. 細菌熟成チーズには酵母は少なかった.
著者
登田 美桜 畝山 智香子 豊福 肇 森川 馨
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.105-120, 2012
被引用文献数
49

自然毒による食中毒発生リスクを効率的に低減させるためには,過去の発生状況およびリスク因子等に基づく重点的なリスク管理が必要である.本研究では,厚生労働省監修の全国食中毒事件録(平成元年~22年版)の自然毒食中毒事例を基に,わが国における中毒発生の傾向を検討した.平成元年以降の22年間を通じて自然毒食中毒の発生件数に経年的な減少傾向は見られず,発生を低減するために予防のための継続的な取り組みが必要であると考えられた.動物性および植物性いずれの自然毒においても主な原因施設は「家庭」であり,食中毒の発生状況および予防策,対応等について消費者向けの広い啓蒙・広報が重要である.また,食品の国際的な流通拡大や地球温暖化による海水温の上昇に伴い,これまで国内で食中毒が発生していない自然毒への対策も重要である.
著者
菅野 陽平 坂田 こずえ 中村 公亮 野口 秋雄 福田 のぞみ 鈴木 智宏 近藤 一成
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.113-123, 2017-06-25 (Released:2017-07-07)
参考文献数
15
被引用文献数
8

ツキヨタケは,シイタケやヒラタケ,ムキタケと誤認されやすい毒キノコの一種で,日本でのキノコによる食中毒の主要な原因キノコである.本研究では,ツキヨタケを迅速に判別する分子生物学的手法としてPCR-RFLPを用いた判別法を構築した.Sau96I, Bpu10I, SfcI, DrdI/HincIIの4組の制限酵素を用いたPCR-RFLPにより,有毒のツキヨタケと食用キノコのシイタケ,ムキタケ,ヒラタケを明確に判別することに成功した.また,加熱調理や消化によりDNAの一部が断片化した試料でも判別可能な200 bp程度の領域を対象としたShort PCR-RFLPも構築し,リアルタイムPCRによる確認試験法についても検討した.これらは,ツキヨタケが疑われる食中毒事例の原因究明に有効な検査法として有用と考えられた.
著者
宮澤 啓輔 浅川 学 野口 玉雄
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.35-41_1, 1995

麻痺性貝毒により毒化したカキの食品としての有効利用を図るため, 毒性が30MU/9程度のむき身を原料として現行の加工処理による減毒試験を行った. 各処理段階の毒性と毒組成をマウス生物試験とHPLCにより測定した. 燻煙油漬け缶詰と水煮缶詰製品では, HPLCにより毒性成分の一部が検出されたが, 残存毒性はすべて2.5MU/g以下と規制値を越えることはなかった. オイスターソースでは原料 (解凍液と缶詰製造時の煮沸液, 2~4MU/g) の毒性の約90%が消失し, マウス生物試験法では不検出となった. 乾燥カキでは規制値以上の毒性 (7MU/g) があった. 缶詰とオイスターソース製造では加熱条件を十分に考慮すれば食品としての利用が可能であると考えられた.
著者
池ケ谷 賢次郎
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.254-257, 1989-06-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
21
被引用文献数
1
著者
上井 恵理 寺田 岳 秋山 純基 一色 賢司
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.276-280, 2011-10-25 (Released:2011-12-27)
参考文献数
14
被引用文献数
1 2

精油成分蒸気を利用したヒスタミン産生菌の制御の可能性を検討した.14種類の精油成分蒸気のヒスタミン産生菌 で あ るMorganella morganii NBRC3848お よ びRaultella planticola NBRC3317の2菌株に対する最小発育阻止量(MID)を測定し,精油成分蒸気がヒスタミン産生菌の制御に利用可能か検討した.14種類の精油成分のうちアリルイソチオシアネート(AIT)およびサリチルアルデヒド(SA)の2種類が両者に対して高い抗菌効果を示した.M. morganii NBRC3848 および R. planticola NBRC3317を接種したメバチマグロおよびサバをAITおよびSAを充填して貯蔵したところ,魚肉中の一般生菌数の増殖,ヒスタミン産生菌の増殖および魚肉中に蓄積するヒスタミン量が抑制された.ヒスタミン食中毒を防ぐためには,食品の基本的な温度管理が重要であるが,食品中のヒスタミン産生菌の制御にAITおよびSAを利用することが,ヒスタミン食中毒を防止するために有効であると考えられた.
著者
鍋師 裕美 堤 智昭 蜂須賀 暁子 松田 りえ子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.65-70, 2013-02-25 (Released:2013-03-08)
参考文献数
5
被引用文献数
5 13

食品摂取による内部被ばく状況の推定・把握,さらに食品中放射性セシウムの低減法の提案に有用となる,食品中の放射性物質量の調理変化に関する科学的データを集積することを目的に,乾しいたけおよび牛肉を用いて放射性セシウム量の調理変化を検討した.その結果,乾しいたけ中の放射性セシウム量は,水戻しにより約50% 減少した.牛肉中の放射性セシウム量は,焼くことで約10%,揚げることで約12%,ゆでることで60~65%,煮ることで約80% 減少した.牛肉においては加熱方法により減少率が大きく異なり,“焼く,揚げる” よりも “ゆでる,煮る” のほうが,放射性セシウムの減少率を8倍程度高められるという結果が得られた.
著者
石田 恵崇 大内 仁志 菅 敏幸 篠原 秀幸 中島 克則 長岡 由香
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.79-84, 2022-04-25 (Released:2022-06-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

ドクササコの有毒成分であるアクロメリン酸A, Bおよびクリチジンの3成分について,それぞれキノコ子実体から単離精製する手法について検討を行った.シリカゲル,ODS,イオン交換樹脂を固定相としたカラムクロマトグラフィーおよび分取TLCを組み合わせることにより各成分を高純度で得ることに成功した.続けて,得られた精製物を用いてLC-MS/MSの測定条件を最適化し,多成分同時分析法を新規開発した.本分析法の精度を確認するため,添加回収試験を実施したところ,回収率が80.8–112.4%,併行精度が1.4–3.8%と良好な結果が得られ,定量限界はいずれの成分も0.25 µg/gと推定された.以上を踏まえ,ドクササコ中毒発生時,本分析法により原因キノコを迅速かつ高精度に特定可能であると判断した.
著者
野口 玉雄 高谷 智裕 荒川 修
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.146-149, 2004-06-25 (Released:2009-01-21)
参考文献数
13
被引用文献数
17 12

1990年から2003年にかけて,日本各地の囲い養殖(網生簀養殖,陸上養殖)場から養殖トラフグ計4,515尾を採取し,肝臓,ならびに一部の個体については筋肉,皮,内臓,生殖巣などの毒性を調査した.食品衛生検査指針・理化学編のフグ毒検査法に準じてマウス毒性試験を行ったところ,いずれの検体からも全く毒性は検出されなかった.また,一部の肝臓につき,フグ毒(tetrodotoxin, TTX)〔(M+H)+=m/z 320〕を対象として液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)を行ったが,いずれの個体からもTTXは検出されなかった(0.1 MU/g未満).この結果,囲い養殖で無毒の餌を用いて飼育された養殖トラフグは無毒であることがわかった.
著者
笠原 義正 板垣 昭浩 久間木 國男 片桐 進
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.1-7_1, 1996-02-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
14
被引用文献数
2 5

毒茸のツキヨタケをマウスに投与したときの消化器系に与える影響を検討し, 塩蔵による毒抜き操作の有効性を調べた. その結果, 餌摂取量の減少, 体重の減少, 胃の膨満, 便重量の減少などの異常な状態はツキヨタケを塩蔵後塩抜きすることによって消失することが分った. また, 胃を膨満させる毒性物質として illudin S を単離した. 更に, この物質がツキヨタケの中毒症状の一つである嘔吐の原因物質であることもカエルを用いた動物実験により明らかにした.