著者
荻本 真美 鈴木 公美 樺島 順一郎 中里 光男 植松 洋子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.57-62, 2012-02-25 (Released:2012-03-09)
参考文献数
15
被引用文献数
4 7

ベーキングパウダーを使用した菓子・パン類,ミョウバンを使用した食品として野菜加工食品,海産物などを中心とした105試料について,食品中のアルミニウム(Al)含有量調査を行った.菓子・パン類は57試料中26試料で0.01~0.37 mg/g,小麦粉調製品は6試料中3試料で0.22~0.57 mg/g,野菜加工食品は3試料すべてで0.01~0.05 mg/g,海産物は6試料中4試料で0.03~0.90 mg/g,即席めんは11試料中3試料で0.01~0.03 mg/g,春雨は4試料中3試料で0.04~0.14 mg/g,大豆は不検出,大豆加工食品は16試料中1試料で0.01 mg/gのAlが検出された(定量限界0.01 mg/g).週一度摂取すると体重16 kgの幼児のPTWIに相当するものが,菓子類2試料,小麦粉調製品2試料,くらげ1試料の5試料あった.以上の結果から,子供,特に幼児では製品や喫食量により,PTWIを超過する可能性があることが示唆された.
著者
谷山 茂人 諫見 悠太 松本 拓也 長島 裕二 高谷 智裕 荒川 修
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.22-28, 2009-02-25 (Released:2009-03-26)
参考文献数
30
被引用文献数
12 23

2007年9月~2008年1月に長崎県橘湾で採集した小型巻貝7種計66個体につき,マウス試験で毒性を調べたところ,キンシバイは供試した22個体すべてが有毒であった.毒力は極めて強く,特に2007年9月に採集したものでは,10個体中8個体の筋肉または内臓が1,000 MU/gを上回った.興味深いことに,22個体中13個体で筋肉の総毒力(725~9,860 MU/個体)が内臓よりも5.9~110倍高い値を示した.LC/MS分析により,毒の主成分は tetrodotoxin (TTX) であることが明らかとなり,加えて11-oxoTTXを含むことが示唆された.一方,同時期同海域で採取したその他の巻貝については,毒性は全く認められなかった(5 MU/g未満).
著者
宮崎 仁志 加藤 陽康 加藤 友香里 土山 智之 寺田 久屋
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.151-155, 2013-04-25 (Released:2013-05-15)
参考文献数
2
被引用文献数
7 14

東海地域の一日摂取量に基づいて名古屋市内で食品を購入し,調製したマーケットバスケット方式によるトータルダイエット試料について,ゲルマニウム半導体検出器付きガンマ線スペクトロメータにより放射性セシウム(Cs)濃度を測定し,被ばく線量を算出した.福島原発事故前の2006年に調製した試料から放射性Csは検出されなかった.事故から5か月後の2011年8月に調製した試料のうち,3群(砂糖,菓子類),8群(その他野菜,海藻,きのこ類)および10群(魚介類)から放射性Csが検出された.1年5か月後の2012年8月に調製した試料では,8群および10群からCs-137のみが検出された.放射性Csによる預託実効線量は,2011年が0.0015 mSv,2012年が0.00016 mSvであった.
著者
米谷 民雄 齋藤 博士
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.279-291, 2009
被引用文献数
4

1989年秋に米国で好酸球増多筋痛症候群(EMS)と呼ばれる事例が多数発生した。それが昭和電工が製造したL-トリプトファン(以後、トリプトファン)製品を多量摂取していた人に多発していることが明らかにされ、原因究明のための研究が主に日本と米国で開始された。わが国においては1990年に原因究明委員会が設置され、また、厚生科学研究班が組織された。この厚生(労働)科学研究の後半期は、今後の同様な食品中毒の発生を防止し、国民の安全な食生活に寄与することを目的として、文献調査が主に実施された。しかし、2004年度の研究課題「必須アミノ酸製品等による健康影響に関する調査研究」を最後にこの研究事業も終了し、2005年度には食品等試験検査費による調査として単年度のみ継続されたが、ついに2006年3月末をもって、16年間にわたり継続された研究事業が完全に終了となった。一方、米国で多発したEMSの症状が1981年にスペインで発生したアニリンで変性したナタネ油による有毒油症候群(TOS)に類似しており、また、EMSの原因物質候補として発見された化合物がTOSの原因物質とも関連するように思われたため、後半期の厚生(労働)科学研究の文献調査においては、EMSとTOSの両方にまたがる文献調査が行われた。筆者らは1998年から最後の8年間の研究を担当し、幕引きの場に立ちあったことから、このEMSとTOSについて、事件発生の概要と原因究明研究のあらましについて説明させていただくことにした。
著者
谷山 茂人 相良 剛史 西尾 幸郎 黒木 亮一 浅川 学 野口 玉雄 山崎 脩平 高谷 智裕 荒川 修
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.270-277, 2009
被引用文献数
16

1990年~2008年に,長崎県,宮崎県,三重県および鹿児島県でハコフグ類の喫食による食中毒が9件発生し,13 名が中毒, うち 1 名が死亡した. このうち 2 件の原因魚種は,中毒検体の形態からハコフグ<i>Ostracion immaculatus</i> と断定された.患者は共通して横紋筋融解症を呈するなど,本中毒の症状や発症/回復/致死時間はアオブダイ中毒に酷似していた.一方,西日本沿岸で採取したハコフグ129個体とウミスズメ<i>Lactoria diaphana</i> 18個体につき,マウス試験で毒性を調べたところ,いずれも約4割の個体が急性もしくは遅延性の致死活性(0.5~2.0 MU/g)を示した.有毒個体の出現率は,両種ともに肝臓を除く内臓で最も高く,次いで筋肉,肝臓の順であった.
著者
守安 貴子 斉藤 和夫 中里 光男 石川 ふさ子 藤沼 賢司 二島 太一郎 田村 行弘
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.59-63_1, 1996-02-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
11
被引用文献数
3 3

市販食品中のカフェイン (CF), テオブロミン (TB), テオフィリン (TP) の含有量調査を行った. 市販清涼飲料水中のCF及びTBの含有量は, コーヒー豆や茶葉を通常飲用する条件で抽出した場合より, 低いものが多かった. また, 菓子やアイスクリームなどから検出されたCF及びTBは特に高濃度のものはなく, その含有量から, 製品中に含まれるコーヒー, ココア及び抹茶に由来すると考えられる. また, 菓子類の中で, 眠気防止効果が表示されたあめやガムからは, CFが高濃度に検出された. 一方, 健康志向飲料の中には, CF添加の表示があるにもかかわらず, 10μg/g未満のものがあった.
著者
岸 美智子 佐藤 修二 土屋 久世 堀口 佳哉 和田 裕
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.318-323_1, 1975-10-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
17
被引用文献数
1 5

加熱食用油から発生する気化物質の吸入毒性について検討するため, ウサギを用いて, 循環呼吸系に及ぼす影響を調べた. 加熱食用油からの発生ガスを吸入させると, 著明な心拍数の減少と呼吸運動の抑制が発現し, 血圧上昇も認められた. 気化物質中, 比較的多く存在するエタン, ペンタン, アクロレインのうち, 発生ガスと同じ症状を発現させるのは, アクロレインのみであった. また, アクロレインを除去した発生ガスでは, 症状が現れず, これらの結果から, 加熱食用油からの発生ガス吸入によって循環呼吸系に現れる毒性症状の主たる原因物質は, アクロレインと思われる.
著者
谷山 茂人 相良 剛史 西尾 幸郎 黒木 亮一 浅川 学 野口 玉雄 山崎 脩平 高谷 智裕 荒川 修
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.270-277, 2009-10-25 (Released:2009-11-07)
参考文献数
29
被引用文献数
7 16

1990年~2008年に,長崎県,宮崎県,三重県および鹿児島県でハコフグ類の喫食による食中毒が9件発生し,13 名が中毒, うち 1 名が死亡した. このうち 2 件の原因魚種は,中毒検体の形態からハコフグOstracion immaculatus と断定された.患者は共通して横紋筋融解症を呈するなど,本中毒の症状や発症/回復/致死時間はアオブダイ中毒に酷似していた.一方,西日本沿岸で採取したハコフグ129個体とウミスズメLactoria diaphana 18個体につき,マウス試験で毒性を調べたところ,いずれも約4割の個体が急性もしくは遅延性の致死活性(0.5~2.0 MU/g)を示した.有毒個体の出現率は,両種ともに肝臓を除く内臓で最も高く,次いで筋肉,肝臓の順であった.
著者
浅見 敬三
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.75-80, 1971-04-05 (Released:2010-03-01)
参考文献数
45
著者
横谷 馨倫 中西 朋子 千葉 剛 佐藤 陽子 梅垣 敬三
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.183-187, 2014-08-25 (Released:2014-09-11)
参考文献数
13
被引用文献数
3 4

グルコサミン(G)とコンドロイチン硫酸(CS)がワルファリンの抗凝固能に与える影響を肝CYP系に着目してマウスのin vivo実験系で検討した.GとCSは飼料中に0.3%および1% (w/w)で添加し,マウスに2週間摂餌させ,最後の2日間ワルファリンを投与した.GとCSの一日摂取量は,0.3%群では443 mg/kgと464 mg/kg,1%群では1,523 mg/kgと1,546 mg/kgであった.その結果,GとCSはいずれもワルファリンの抗凝固能を増強せず,肝CYP系にも影響しなかった.以上の結果から,GとCSは,それら自身では肝CYP誘導を介したワルファリンの抗凝固能の増強は起こさないことが示唆された.
著者
佐藤 常雄 溝井 理子 木村 凡 藤井 建夫
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.490-494, 1995-08-05
参考文献数
8
被引用文献数
2 3

新島, 大島及び父島のくさや汁を用い, これらくさや汁中のヒスタミン (Hm) 量, Hm生成菌及びHm分解菌の存在並びにその菌種を調べた. その結果, 各くさや汁ともHm生成菌はほとんど検出されなかったこと, Hm分解菌が10<sup>4</sup>~10<sup>6</sup>cells/ml程度存在したこと, 更にpHがHm分解活性至適域であったことから, くさや汁中ではHmが蓄積されにくい環境であることが分かった. 各くさや汁のHm分解菌として <i>Alcaligenes</i> がいずれの試料からも多数認められた. しかし, くさや汁中のHm分解菌のほとんどは, くさや汁の優勢菌種ではなかった.
著者
新藤 辰二 佐々木 義幸 三木 啓道 江口 通 萩原 清和 市川 富夫
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.419-422_1, 1988-12-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
15
被引用文献数
23 34

新しい天然甘味料として期待されるエリスリトールのイオン交換樹脂カラム CK 08SHを使用した, 示差屈折計付き高速液体クロマトグラフィーによる迅速, 簡便な定量法を検討し, 良好な結果を得た. この方法により, 清酒, ワイン, しょう油, みそそしてビール中の含量を測定した. この結果エリスリトールは清酒, ワイン及びしょう油0.015~0.09w/v%, みそ0.13%, ビールには微量含まれていることが分かった.
著者
中島 英夫 山中 洋之 鮫島 隆 秋山 茂 鈴木 昭
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.27-31_1, 1989-02-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
15

生ハムの製造工程における微生物叢の変化を水分活性及び食塩濃度との関連で調査した. 製造工程が進むにつれて食塩濃度の上昇及び水分活性の低下が起こり, 原料肉の微生物叢は塩漬終了後, グラム陰性菌, Micrococcus, Streptcoccus 及び Lactobacillus など多様なものから Micrococcus からなる単純な微生物叢へと変化した. また, 一般生菌数は, 原料肉で104cells/gであったものがスモーク工程から乾燥工程へ進むに従って徐々に減少し, 乾燥終了後は 80cells/gまで低下し, 大腸菌群, 腸球菌も陰性となった. 生ハムの製造工程における微生物学的特性と水分活性の変化を表す CTEA system を提唱し, 製造中の品質管理及び最終製品の品質評価に利用し得ることの可能性を示した.
著者
野村 千枝 昌山 敦 山口 瑞香 佐久間 大輔 梶村 計志
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.132-142, 2017-06-25 (Released:2017-07-07)
参考文献数
34
被引用文献数
12

日本では毎年,有毒キノコの誤食による食中毒が数十件発生している.食中毒の原因究明のために行われるキノコの肉眼・顕微鏡観察による形態学的鑑別法は,高度な菌類学の専門知識を要するうえ,キノコが原形をとどめていない食中毒検体(喫食残品や患者吐物)には適用が困難である.そこで,種の同定に有用とされるDNAバーコーディング法(塩基配列解析による種同定)を応用した種特異的プライマーの設計によるキノコのスクリーニング法について検討した.日本で食中毒事例のあるキノコのうち,5種類のキノコ(オオワライタケ,オオシロカラカサタケ,ニガクリタケ,スギヒラタケ,カキシメジ)について種特異的なプライマーを作製した.本法は調理および人工胃液による処理の影響を受けず,湿試料100 mgのキノコ(DNA 10 ng)を,約2時間半で検出可能であった.キノコによる食中毒疑いが発生したとき,本法によるスクリーニング検査と同時に,ITS1領域の塩基配列解析による確認検査を行う.塩基配列解析には約9時間以上要することから,本法と塩基配列解析を併用することにより,検査精度を担保するとともに,保健所や衛生研究所等において,より迅速な食中毒対応が可能になると考える.
著者
落合 敏秋 臼井 章夫 松本 清司 関田 清司 内藤 克司 川崎 靖 降矢 強 戸部 満寿夫
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.605-616_1, 1985-12-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
18
被引用文献数
1 2

緑青の主成分とされる塩基性炭酸銅の急性及び慢性経口毒性試験をSlc: Wistarラットを用いて行った. 急性毒性試験で, LD50値は雄: 1350mg/kg, 雌: 1495mg/kgであった. 慢性試験では0, 70, 220, 670及び2000ppm塩基性炭酸銅添加固型飼料を12か月間投与した. 2000ppm群で体重増加抑制 (雄, 雌), 血清GOT,GPT, LDHの上昇が実験期間を通して観察された. 組織学的には, 雌雄2000ppm群で肝臓の単細胞壊死の発現数が有意に増加した. 以上, 塩基性炭酸銅の2000ppmはラットに肝臓障害を起こすものと結論された.