著者
石井 博
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.151-167, 2008-11-30 (Released:2016-09-17)
参考文献数
107
被引用文献数
2

植物が複数の花を咲かせるとき、個花をとりまく送受粉環境は、花序(または株内)の他の花の存在に影響を受ける(=花間相互作用)。すなわち、株内の個々の花は、花間の資源競争、局所的配偶者競争、局所的資源競争、隣花受粉、花粉減価、複数の花が同時に咲くことによる誘引効果の増大や定花性への影響などを通じて互いに影響を及ぼしあう。これまでこうした花間相互作用は、株サイズ依存の資源分配戦略や、植物の繁殖様式の進化を説明する上でしばしば引き合いに出されてきた。最近の幾つかの研究はさらに、花や花序のあらゆる形質(例えば個々の花の性比、花の寿命、花の大きさ、花形態、花序形態など)の進化が、花間相互作用の影響とは無関係でありえないことを示している。このような意味において、多様な花序や花が進化してきた背景を理解するためには、たとえそれが個花の形質であっても、実はそれが花序全体のパフォーマンスを高めるように進化してきた形質なのではないかと疑う視点が、今後ますます重要となるだろう。
著者
松良 俊明 野村 一眞 小松 清弘
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.27-36, 1998-04-25 (Released:2017-05-25)
参考文献数
22
被引用文献数
4

As a part of a research program on the ecology of odonate larvae inhabiting artificial ponds, we surveyed outdoor swimming pools of primary schools in Kyoto City every late spring. During a 4 year period, 11 species of odonate larvae (Libellulidae, Aeshnidae, Gomphidae and Coenagrionidae: 7, 1, 1 and 2 species, respectively) were collected. Only larval Sympetrum striolatum imitoides predominated at most swimming pools. We took samples from 4 schools every late spring for 4 years and obtained the annual changes in the numbers of their larvae. This survey revealed that while larval S. striolatum imitoides was common in the school pools in Kyoto City, density varied from year to year. To clarify why only larvae of S. striolatum imitoides were dominant in the pools, their life cycle was examined at one pool. Larvae of chironomids, mayflies (Cloeon dipterum), water bug (Anisops ogasawarensis) and diving beetles as well as larval S. striolatum imitoides coexisted among detritus on the bottom. Especially chironomid larvae, which are preferred by larval S. striolatum imitoides, were present at high density. Most eggs of S. striolatum imitoides laid in Autumn hatched by mid winter, then the larvae rearched the final instar in late May. We estimeated that one third of them became adult before mid June, when the water was drained for pool-cleaning. As a reason for the dominance of larval S. striolatum imitoides, the following three traits may have been responsible: (i) their life cycle coincides with the off-season for the pool, (ii) females oviposit directly into the water, and (iii) larval S. striolatum imitoides prey on smaller larvae of other species of dragonflies because their eggs hatch earlier than other species.
著者
持田 浩治 香田 啓貴 北條 賢 高橋 宏司 須山 巨基 伊澤 栄一 井原 泰雄
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.177, 2020 (Released:2020-12-24)
参考文献数
139

試行錯誤をともなう個体学習に比べ、他者やその産出物(例えば音声や匂いなど)の観察を基盤とする社会学習は、学習効率が高く、獲得された行動が集団内に迅速に伝わる。また社会学習の存在は、昆虫類などの無脊椎動物から霊長類まで幅広く知られており、近年、キイロショウジョウバエが学習モデルとして導入されたことで、その神経生理基盤や遺伝基盤が解明される日が急速に近づいている。しかしながら、社会学習やそれにともなう集団内での行動伝播が生態学的現象に与える影響は、ほとんど明らかになっていない。とりわけ、種間交渉を通して、社会学習が他種や種間関係、生態系に与える影響について、ほとんど議論されていない。そこで本総説は、昆虫類、魚類、両生類、爬虫類、鳥類における社会学習の実証研究を紹介し、その課題を取りあげる。また実証研究として紹介した社会学習に関する三つのテーマについて、数理モデルを取り入れた理論研究を紹介する。これらを通して、生態学的現象における社会学習の役割とその重要性を理解し、当該分野の今後の発展に貢献することができれば幸いである。
著者
渡辺 伸一 野田 琢嗣 小泉 拓也 依田 憲 吉田 誠 岩田 高志 西澤 秀明 奥山 隼一 青木 かがり 木村 里子 坂本 健太郎 高橋 晃周 前川 卓也 楢崎 友子 三田村 啓理 佐藤 克文
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.9-22, 2023 (Released:2023-04-21)
参考文献数
33

バイオロギング(biologging)とは、動物に様々なセンサーを取りつけて動物の行動や生態およびその周辺環境を調べる手法である。今世紀に入り、バイオロギングデータを共有するウェブ上の電子基盤システムとなるプラットフォームが世界各国で次々と構築されている。一方、日本国内で取得されたバイオロギングデータの共有は立ち後れている。本稿では、日本国内のバイオロギングデータを保存・管理・利用するために新たに開発したプラットフォーム(Biologging intelligent Platform: BiP)について紹介する。BiP の仕様を決めるにあたり、既存の12 のプラットフォームが格納するデータの種類や解析機能に関する特徴6 項目を3 段階で評価し、格納するデータ量の増大に寄与する特徴について考察し、その結果をもとにBiP の仕様、ならびに今後発展すべき方向性について検討した。既存プラットフォームを比較した結果、格納するデータ量の増加には、データ公開レベルとデータタイプの自由度が高く、データ解析ツールの充実度が高いという特徴が寄与していた。これらの特徴を踏まえてデータ公開レベルとデータタイプの自由度を高めるようにBiP を設計した。さらに次に示すBiP 独自のウェブ解析システム(Online Analytical Processing: OLAP)を搭載した。BiP のOLAP は次のような機能を持つ:1)バイオロギング機器によって得られたセンサーデータ(Level 0)をBiPウェブサイトへアップロードし、個体や装着時のメタデータを入力すると、動物の放出前や機器の回収後の不要部分を除去して、標準形式へ変換したLevel 1 データを作成する。2)GPS データをもとに、海流・風・波浪といった海洋物理情報(Level 2 データ)を抽出できる。3)登録者が公開設定したデータの場合、利用者はLevel 1, 2 データをCSV 形式およびネットワーク共通データ形式(Network Common Data Form: NetCDF)でダウンロードできる。今後は、海洋物理情報をグリッド化したLevel 3 データを生成する機能を付与し、対象種を海洋動物から陸生動物まで、対象地域も全世界へと広げて、収集するデータの質と量を増大させる計画である。
著者
山下 麗 田中 厚資 高田 秀重
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.51-68, 2016 (Released:2016-06-01)
参考文献数
104
被引用文献数
5

プラスチックの生産量は増加傾向にある一方で、廃棄量も増加しており、適切に処理されないものは最終的に海洋へと流出していく。プラスチックは難分解性であるため長期間にわたって海洋中に存在し、鯨類やウミガメ類など様々な海洋生物に摂食されている。特に、海鳥類では高頻度のプラスチック摂食が確認されている。プラスチック摂食による影響は、物理的な摂食阻害とプラスチック由来の化学物質が体内へ移行して起こる毒性の2 つが考えられる。近年、プラスチックに吸着するポリ塩化ビフェニル(PCBs)と難燃剤として添加されているポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDEs)がプラスチック摂食によって外洋性海鳥の体内に移行する証拠が出された。また、動物プランクトンなどの低次栄養段階の生物にもマイクロプラスチックと呼ばれる微小なプラスチックと化学物質が取り込まれていることが報告され始め、海洋生態系全体に汚染が広がっていることが明らかになってきた。このようにプラスチックが汚染物質のキャリヤーとしてふるまうことから、海洋生物のプラスチック摂食が生態系内での新たな汚染物質の暴露ルートとな。 今後、海洋へのプラスチック流出量の増加に伴って海洋生物への汚染物質の負荷量が大きくなり、海洋生態系全体へ脅威が増すと考えられる。

8 0 0 0 OA 論文詩

著者
多田 満
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.59-63, 2018 (Released:2018-04-06)
参考文献数
13
著者
森田 健太郎 森田 晶子
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.13-24, 2007-03-31 (Released:2016-09-10)
参考文献数
100
被引用文献数
7

サケ科魚類の生活史には、川で一生を過ごす残留型と海へ回遊する降海型の二型がある。本稿では、イワナを中心に生活史二型と個体群過程について解説し、サケ科魚類に見られる生活史二型の普遍的特長について論じた。個体群内に見られる生活史二型は、川での成長条件に依存した条件戦略であり、川で十分に成長できなかった場合に降海型になると考えられる。降海型は海洋で大きな成長を得るが、生存率は河川にいる残留型の方が高い。河川は資源が限られているため、海洋よりも密度依存的な死亡や成長が強く作用する。大型化した降海型が中心に産卵する場合、稚魚の密度が高いため川での成長条件が悪く、遺伝的要因だけではなく表現型可塑性によっても降海型になりやすいと考えられた。このようなフィードバックはサケ科魚類の個体群維持や回遊行動が進化する上で重要な役割を果たすと考えられた。
著者
宮崎 佑介
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.237-246, 2016 (Released:2016-06-01)
参考文献数
62
被引用文献数
8

新興の学術領域であるCitizen Science(市民科学)の発展は、情報科学技術の発展と不可分の関係にある。生物多様性に関連する分野においても、その可能性はとみに高まっている。本稿では、市民科学に関連する生物多様性情報データベースの現況と課題を、国内外の事例から概観することによって、今後の生物多様性情報データベースを活用した市民科学の在り方を考える。
著者
鎌内 宏光 小川 安紀子
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.131-136, 2008
被引用文献数
2

2007年12月20〜21日に総合地球環境学研究所(以下、地球研)にてワークショップ「生態学関連データベースにおける最近の動向と今後の展望」を関催した。このワークショップでは近年生態学分野においても普及してきたデータベースを更に活用する方策として、データベースを自動的に連結して利用することを可能にするための技術的な可能性と課題を話しあうことを目的とした。本稿ではこのワークショップの模様を報告するとともに、今後の展望について論じたい。
著者
深澤 遊
出版者
日本生態学会暫定事務局
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.311-325, 2013
被引用文献数
4

菌類は枯死木の分解において中心的な役割を果たしている。枯死木の細胞壁を構成する有機物であるリグニンとホロセルロースに対する菌類の分解力に基づき、大きく分けて3つの「腐朽型(decay type)」が知られている。白色腐朽では、リグニンが分解されるため材は白色化し、繊維状に崩壊する。褐色腐朽では、リグニンが変性するだけで分解されずに残るため材は褐色化し、ブロック状に崩壊する。軟腐朽は含水率の高い条件で起こり、主に材の表面が泥状になる。異なる腐朽型の材では、物理化学性が異なるため、枯死木を住み場所や餌資源として利用する様々な生物群集に影響を与えることが予想される。本稿では、細菌、菌類、植物、無脊椎動物、および脊椎動物の群集に対する材の腐朽型の影響について実証的な研究をレビューする。細菌については、褐色腐朽材に比べ白色腐朽材で窒素固定細菌の活性が高いことが知られている。腐朽型が菌類に与える影響に関しては研究例が非常に少ないが、腐朽菌や菌根菌が材の腐朽型の影響を受けることが示唆されている。植物についても研究例が非常に少ないが、種により実生定着に適した腐朽型が異なるようだ。無脊椎動物については、特に鞘翅目およびゴキブリ目の昆虫に関する研究例が多く、種により好む腐朽型が異なることが知られている。脊椎動物についてはほとんど研究例がなかったが、腐朽菌の種類によってキツツキの営巣に影響があることが示唆されている。腐朽型が生物群集に影響する理由としては、材の有機物組成や生長阻害物質、pHが腐朽型によって異なることが挙げられている。このように菌類には、ハビタットとしての枯死木の物理化学性を変化させることで他の広範な分類群の生物群集に強い影響を与える生態系エンジニアとしての働きがあると考えられる。ただし、その一般性については今後さらに多くの分類群の生物に対する菌類およびその腐朽型の影響を検証していく必要がある。
著者
高岡 貞夫
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.69-82, 1993-09-03 (Released:2017-05-24)
参考文献数
49
被引用文献数
3

The vegetation history for the last ca. 100 years was reconstructed, and the influence of disturbance on the structure of vegetation mosaics was examined in an area of 100 km^2 in the Soya Hills, northern Hokkaido, Japan. The age structure of stands, charcoal fragments found beneath the litter layer, and documented evidence suggest that the forests in the study area have been disturbed severely by fires and logging since the mid-1800s. In particular, a fire that occurred in 1911,which burned almost all of the forest in this area, had a major effect on the structure of the present vegetation. While birch forest developed soon after the fire in the southern part of the study area, no forest developed in the northern part ; a large Sasa grassland (ca. 6000 ha) formed, except in valleys. One of the reasons for this difference in regeneration after the fire of 1911 was the difference in disturbance history before and after 1911. In the northern area, the forest has been disturbed by small fires and logging during the last 100 years, whereas in the southern area there has been no major disturbance since 1911 and probably before that. In addition, strong wind, which is a potential adverse factor for forest establishment in this area, has probably contributed to the formation of the Sasa grassland. Most of the relic stands and reestablished stands occupy north-facing slopes. This unique distribution of forest stands has resulted from spatial heterogeneity of disturbance operations and microsite conditions : fires did not destroy all the stands on north-facing slopes, and microsite conditions on the north-facing slopes are more suitable than those on south-facing slopes for forest regeneration after disturbance.
著者
船越 公威
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.125-140, 1977-06-30 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
2

Female P.jenynsii deposits prepupa on the host-roosting quarter except host-hibernating quarter. Intervals between depositions were about 5 days. Pupal period was about 20 days. Both the interval and period of prepupal deposition became shortened with the rise of experimental temperature. After the bat died away, the majority of flies also died within 24 hours. This indicates that blood-sucking is necessary at least once a day. Wintering flies sucked blood intermittently and lived for at least 4 months, but did not propagate. Average infestation number per host was 0.1-0.3 in winter and 0.2-0.7 in the other seasons. The low density per host throughout the year may primarily be due to host-predation and secondly due to density effect of fly. Periodic fluctuation of the average infestation number from April to September is largely caused by synchronization with the breeding cycles starting soon after awakening. The more bats grew, the more they were infested, its tendency being marked in adult females. Infestation degree corresponded presumably with the degree of hosts' activity at their roost. It was considered that specific and adaptive host-parasite relationship was ecologically influenced by duration of bats' roost utilization, activity at roost, size of cluster and flying pattern, together with the life history of flies.
著者
潮 雅之
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.339-345, 2017 (Released:2017-12-05)
参考文献数
28
被引用文献数
4

マキ科・ナンヨウスギ科樹木は熱帯では貧栄養土壌や高標高域でしばしば優占する。このことはマキ科・ナンヨウスギ科樹木の根が土壌からの養分獲得において同所的に共存する他の被子植物と比べて何らかの優位性を備えている可能性を示唆している。本論文ではマキ科・ナンヨウスギ科樹木の根の形態・共生する菌根菌・土壌養分獲得能力に着目して過去の研究をレビューする。マキ科・ナンヨウスギ科樹木は根に根粒様構造(nodule-like structure)を持っており、野外においてその構造の内部にはアーバスキュラー菌根菌(AM菌)が共生している。このマキ科・ナンヨウスギ科に特徴的な根粒様構造の機能は、これまでに主に窒素固定活性に注目して研究されてきた。窒素固定活性は主にアセチレン還元法によって定量され、先行研究によるとマキ科・ナンヨウスギ科の中で弱い窒素固定活性が認められた属(例えば、Agathis, Dacrydium, Podocarpusなど)も存在する。しかし、その活性はマメ科やカバノキ科ハンノキ属の植物など代表的な窒素固定植物と比べると極めて弱い。また、根の周囲の土壌(根圏土壌)を丁寧に除去すると活性が大きく低下することから、現在のところ、マキ科・ナンヨウスギ科樹木で検出される弱い窒素固定活性は根(もしくは根粒様構造)が直接保持しているものではなく、周囲の土壌に生育している自由生活型(非共生型)の微生物によるものと考えるのが妥当である。しかし、現在までのところ、マキ科・ナンヨウスギ科樹木の根に関する研究はその多くがオーストラリア・ニュージーランドなど南半球温帯に生育する特定の樹種に関してのものである。熱帯に分布するマキ科・ナンヨウスギ科に関しては研究例・研究者が少ないこともあり、まだ不明な部分が多く、新たな発見の余地が大いに残されている。例えば、近年大きく発展している分子生物学の技術を活用して共生している菌根菌や根圏土壌の微生物を調べることで新たな展開が期待される。
著者
鈴木 時夫 鈴木 和子
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.252-255, 1971-02-25 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
4

Im groβten Teil von Japan wird der Bereich des Meeresspiegels durchs regenreiche Klimamit Maximalsommerregen warm temperiert. Dadurch liegt der Punkt des kaltesten Monats, Januaroder Februar, in der Ecke des Schemas links unten, dagegen derjenige des warmsten Monats, Julioder August, in der Ecke rechts oben. Also entwickelt sich das Schema zwischen den beiden Punkten. Die von links unten bis rechts oben beinabe diagonal gezeichnete Figur ist fur den pazifischen Kustenstrich allgemein charakteristisch. (Abb. 1A) Das Wetter im Kustenstrich vom Japanischen Meer besteht dagegen im sehr schneereichen Winter. Der Wintermonsun ist ursprunglich eine kalte trockne Luftmasse, aber diese nimmt uberdem Japanischen meer eine groβe Menge Wasser-dampf auf und laβt uber dem Kustenstrich vom Japanischen Meer heftgen Schnee herabfallen. Dadurch geht sich der Punkt des kaltesten Monats im Schema rechtswarts fort. Die Figur des Hythergraphs zeigt im Kustenstrich vom Japanischen Meer damit einen geknickten Zustand. (Abb. 1B) Im Bereich des pazifischen Klimatypus in Sudwestjapan zeigt das Setouti-Gebiet einen besonderen Subtypus, weil die Hochsommertrockenheit auch dort vorkommt. Im Schema bildet also der Punkt des warmsten Monats einen nach links unten neigenden Haken. Vom Index des Japanischen Meers handelt es sich um die GroBe der Neigung der Linie, die im Hythergraph den kaltesten Monat mit dem warmsten Monat verbindet. Wenn diese Linie nach rechts (<90°) neigt, so kommt ein pazifischer Klimatypus vor, und wenn sie nach links (>90°) neigt, so erscheint ein Klimatypus vom Japanischen Meer. Im Setouti-Index handelt es sich um eine relative Stellung von den drei Punkten : d.h. der Punkt des warmsten und trockensten Augustes, der des regenreichsten Junis oder Septembers und der des kaltesten und schneereichsten Januars oder Februars. Ein Scheitelpunkt sei im kaltesten Monat, dann wird der Index durch die Groβe des Winkels zwischen der Linie, die den trockensten Monat mit dem regenreichsten Fruhsommer-oder Herbstmonat verbindet, und derjenigen, die den warmsten Monat mit dem kaltesten Monat verbindet, geschatzt. (Abb. 1C) Der Bereich vom Saseto-Fagetum crenatae, das eigentumlich zum Klimatypus des Japanischen Meers gehort, schlieβt sich mit der Linie von 90°um (s. Abb. 2), und daβ die Pittosporo-Quercetum phillyraeoides Hartlaubwalder im Setouti-Kustenstrich und entlang der Hoyo-Meerstraβe vorkommen, liegt mit der Linie, die der Setouti-Index mehr als 28°zeigt, zusammen. (s. Abb. 3)
著者
藤木 庄五郎 龍野 瑞甫
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.85-90, 2021 (Released:2021-08-17)
参考文献数
16
被引用文献数
1

現在、生物多様性の保全が世界的な課題となっている。筆者らは、実用的な生物多様性広域モニタリング手法の開発を目指し、市民が撮影した位置情報付きの生物画像を収集する取り組みを実施してきた。生物データ投稿機能とAI画像解析を組み合わせたアプリ「Biome(バイオーム)」を2019年4月に日本国内を対象に公開し、これまで(2020年6月25日時点)に2万種を超える生物の分布データが65万件以上投稿されたことを確認した。この成果は、モバイル端末を用いた市民参加型生物調査の有用性を示し、市民科学が網羅的な生物分布の広域モニタリングに活用できる可能性を示唆する。一方で、一般市民からデータを集める市民科学の性質上、データ精度において課題が残った。精度検証の結果、種レベルの誤同定率:9.0 - 10.6%、属レベルの誤同定率:6.6 - 7.1%、科レベルの誤同定率:3.8 - 3.9%、目レベルの誤同定率:2.1 - 2.2%であることが分かった。類似する取り組みと比較して特段低い精度ではないものの、改善の余地があるものと思われる。大量のデータを扱う市民科学において、実用性と精度を両立させるためには、データの精度向上を市民や専門家の労力に依存させるのではなく、システム自体が精度を担保するべきである。深層学習などの技術を活用し、生物の同定AIの開発を強化することが、データ精度を高め、市民科学や生物多様性モニタリングの今後の発展に大きく寄与するものと考える。
著者
山尾 僚 深野 祐也
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.93-98, 2019 (Released:2019-08-08)
参考文献数
21
被引用文献数
1

つる性の植物の地上部は、他の植物に巻きつくために垂直・水平方向に大きく展開し、様々な種類の植物と接触する。つる植物にとってどの植物に巻きつくかは、その後の生長を左右する極めて重要な決定である。つる植物の特徴的な旋回運動や巻きつき反応に関する研究はダーウィン以来多くなされているものの、つる植物のホスト選択における識別能力についてはこれまでほとんど研究されていなかった。近年われわれは、つる植物のなかでも巻きひげのもつ識別能として、自己識別能力(自株と同種の他株を見分ける能力)と同種識別能力(同種と他種を見分ける能力)のふたつに注目し、検証を行った。本稿では、これまでの巻きひげの応答研究について概説しつつ、著者等が明らかにしてきた巻きひげのホスト選択に関する研究を紹介する
著者
佐藤 俊平 森田 健太郎
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.209-217, 2019 (Released:2019-12-24)
参考文献数
33
被引用文献数
2

サケの野生魚と放流魚で遺伝的特徴に違いがあるのかを調べるため、北海道内の放流河川および非放流河川に生息するサケ13水系16河川25集団についてSNP43遺伝子座の分析を行った。遺伝標本は、遡上したサケ親魚またはサケ稚魚の体組織から採集した。また、耳石も採集し、耳石温度標識が確認されたふ化場由来の放流魚は分析から除外した。放流魚の比較対象として既報の北海道サケ放流魚26集団を加え、集団遺伝学的解析を行った。遺伝的多様性を野生魚と放流魚で比較したところ、放流魚で低くなる傾向を示した。一方、野生魚についても河川間では遺伝的多様性にばらつきが見られ、自然産卵が可能な非捕獲河川の方が遺伝的多様性は高い傾向にあった。野生魚の遺伝的集団構造は、既知の北海道放流魚の5地域集団に区分されたが、野生魚はその5地域間よりも地域内の集団間の方で高い遺伝的分化を示した。石狩川水系に属するサケ調査河川集団間でその遺伝的特徴を調べたところ、3つのグループに分かれ、同一水系内でも弱い遺伝構造が存在することが分かった。特に、野生魚で構成されている千歳川後期群のサケ集団は他のグループとは遺伝的に異なっていた。以上の結果から、北海道に生息するサケ野生魚は放流魚とは異なる遺伝的特徴を持つことが示唆された。
著者
小山 耕平 福森 香代子 八木 光晴 森 茂太
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.91-101, 2013-03-30 (Released:2017-04-28)
参考文献数
47
被引用文献数
4

スケーリング関係とは、生物の体または器官のサイズと、それらのサイズに伴って変化する構造や機能との関係のことである。スケーリング関係は「べき乗則」で表されることが多い。本稿では、動植物の体サイズと表面積および代謝速度(個体呼吸速度または個体光合成速度)のべき乗則で表されるスケーリング関係について述べる。とくに、動物や植物の個体呼吸が個体重の3/4乗に比例するという「クライバーの法則」を中心に解説する。次に、これらのスケーリング関係を定量的に説明するための基本となる考え方として、相対成長(アロメトリー)、相似則およびフラクタル成長の3点について述べる。最後に、フラクタル成長に基づいたモデルの先駆例として代謝スケーリング理論(WBE理論)を解説し、スケーリング研究の今後の展望を述べる。
著者
松林 圭
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.171-182, 2019 (Released:2019-12-24)
参考文献数
78
被引用文献数
3

種分化とは、生物の多様性を生み出す原動力であり、“潜在的に交配可能な集団間に、交配を妨げる遺伝的機構(=生殖隔離)が進化すること”と定義できる。生物学的種概念を基礎とするこの種分化の定義は、広く進化生物学において受け入れられてきたが、実際の生物にこの基準を適用することには困難が伴う場合が多い。異なる個体群が、果たして異なる種にあたるのか否かは、進化生物学、生態学のみならず、分類学的にも重要な問題であった。この“種のちがい”を定量化する試みは、遺伝子マーカーを使用するものや形態的相違を判別形質とするものなど、様々な手法が使われてきた。これらはどれも、生殖隔離の存在やその強度を間接的に推定するものである。最近では、野外観察や行動実験を通して生殖隔離を直接測定する手法が普及しており、隔離障壁の進化やメカニズムに関する理解が大きく進んでいる。本総説では、種のちがいを量る方法として生殖隔離の定量化に着目し、近年になってこの分野で得られた知見を紹介する。
著者
山中 裕樹 源 利文 高原 輝彦 内井 喜美子 土居 秀幸
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.601-611, 2016 (Released:2016-12-28)
参考文献数
58
被引用文献数
19

大型水棲動物を対象とした環境DNA分析は、野外調査時には水を汲むだけで済むという簡便性から、広域的かつ長期的な生態学的調査や生物相調査への適用が期待されている。環境DNA分析は種の分布や生物量、そして種組成の解析にまで利用され始めているが、大型水棲生物を対象とした研究が行われるようになってからまだ日が浅く、野外調査などへの適用に当たっては当然知っておくべき基礎情報の中にも、環境DNAの水中での分解や拡散の過程など、未だ明らかとなっていないブラックボックスが残されているのが現状である。本稿ではこれまでの多くの野外適用例をレビューして、環境DNA分析の野外調査への適用の場面で想定される様々な疑問や課題について解説し、今後の展望を述べる。環境DNA分析から得られる結果は採捕や目視といった既存の調査で得られた知見との比較検討の上で適切に解釈する必要があり、この新たな手法が今後各方面からの評価と改善を繰り返して、一般的な調査手法として大きく発展することを期待したい。