著者
小松崎 明 末高 武彦
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.834-841, 2001
参考文献数
19
被引用文献数
6

健常歯列者およびブリッジ装着前後の第一大臼歯1歯喪失患者を対象として,複数の咬合平衡に関する評価法について比較検討し,次の結果を得た。1.健常歯列者を対象とする評価から,透過レーザー法による歯冠相当部体積の重心偏値率の平均値が8.1%だったのに対し,感圧紙法のWタイプの咬合力重心価値率では20%を超えて有意(p<0.01)に大きく,咬合力の重心の価値量は大きく表示される。また,前・後基準点との距離関係から重心位置の比較を実施したところ,透過レーザー法は感圧紙法Wタイプに比較して重心-後基準点間距離が有意(p<0.01)に長く,重心がより前方に位置していることがわかった。2.ブリッジ装着患者を対象とする評価から,透過レーザー法によるブリッジ装着前の価値率の平均値は44.3%だったが,装着後には同8.1%と有意(p<0.01)に減少し,ブリッジ装着による咬合平衡状況の回復が観察できた。ブリッジ装着後の摂取障害食品の有無と,装着後の価値率の大小とを比較した結果,摂取障害食品の有無と,健常歯列群の偏値率を超える者,以下の者の割合について関連が認められた(p<0.05)。以上のようなことから,口腔の恒常性維持の観点から,透過レーザー法による歯冠相当部体積の重心を用いた咬合平衡状況から,咀嚼機能の適正な評価がなされる可能性が示唆された。
著者
筒井 昭仁 瀧口 徹 斎藤 慎一 田村 卓也 八木 稔 安藤 雄一 岸 洋志 小林 秀人 矢野 正敏 葭原 明弘 渡辺 雄三 小林 清吾 佐久間 汐子 野上 成樹 小泉 信雄 中村 宗達 渡辺 猛 堀井 欣一 境 脩
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.329-341, 1994-07-30 (Released:2010-10-27)
参考文献数
35
被引用文献数
4

著者らは, 日本における飲料水中フッ素濃度とエナメル斑の発現状況の関係を明らかにすることを目的に, 1978年以来, 東北, 関東, 甲信越地方で飲料水中フッ素濃度の測定を継続的に行ってきた。その結果, フッ素濃度の変動が少なかった7つの天然フッ素地域を確認した。水道給水系は26あり, フッ素濃度は0から1.4ppmの範囲に分布していた。フッ素濃度を確認してきた地域に生まれ, 当該の水道水を利用して育った小学5, 6年生1,081名を対象に, 1987年歯牙フッ素症検診を行った。歯牙フッ素症の分類にはDeanの基準を使用した。また, 非フッ素性白斑についてもDean基準の白濁部面積算定基準を準用して分類した。確認された歯牙フッ素症はいずれもmild以下の軽度のものであり, very mild以上のフッ素症歯所有者率と飲料水中フッ素濃度との間に有意な正の相関関係 (r=0.485, p<0.05) が認められた。また, 非フッ素性白斑歯所有者率と飲料水中フッ素濃度との間には有意な負の相関関係 (r=-0.429, p<0.05) が認められた。全エナメル斑発現状況と飲料水中フッ素濃度の間には特別な傾向は認められなかった (r=-0.129, ns)。CFIは0.04から0.30であり公衆衛生上問題のない地域と判定された。この度の研究結果は, わが国の歯牙フッ素症に関する疫学研究において不足しているとされていたデータ部分を補うものであり, わが国の至適フッ素濃度研究に寄与するものであると考察した。
著者
中山 佳美 森 満
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.265-272, 2011
参考文献数
34
被引用文献数
1

8020運動が提唱されてから20年以上経過しているが,いまだに多くの者が達成できておらず,北海道でも同様の状況である.今回,高齢者が歯を20本以上保つ要因について,北海道道東地域において調査を行った.町広報誌による一般応募から参加した現在歯数19本以下の高齢者79人(男性19人,女性60人)をケースとし,十勝地域高齢者歯のコンクール被表彰者である現在歯数20本以上の高齢者85人(男性60人,女性25人)をコントロールとして,身長,体重,治療中の疾患の有無,食習慣,口腔保健行動など全38項目について調査した.これらの38項目を説明変数,現在歯数を目的変数として,男女別に単変量ロジスティック回帰分析を行った.その結果,男性においては,現在歯数が20本未満と関連があった要因は,年齢が78歳以上などの8要因であり,女性においては,BMIが高いなどの8要因であった.これらの単変量解析で有意であった変数を用いて,stepwise法による多変量解析を行った結果,現在歯数が20本未満と関連があった要因は,男性では年齢が78歳以上,飲酒をほとんどしない,加工食品をほとんど食べないおよびかかりつけ歯科医がいないことで,女性ではBMIが23以上,運動が30分未満および糸ようじや歯間ブラシを使用していないであった.これらの結果を活用して,北海道道東地域の自治体の健康計画を推進する必要がある.
著者
小松 義典 仙道 悦子
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.38-47, 2003-01-30 (Released:2017-12-15)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本報告は,著者らが昭和60年代まで重度のう蝕有病者率を示した地域において,昭和60年度以降乳幼児を対象にして口腔保健活動を行った10数年間の地域保健活動の取り組みと,その成果を述べたものである.活動の内容は1)3食をしっかり取る,2)砂糖を含むお菓子とジュース類の制限などの間食を含む食習慣の見直し,3)就寝前の保育者による仕上げ磨きの励行という生活習慣の見直し,4)可能な限り乳臼歯の予防填塞を行うことである.活動を行っている過程で,3歳児のう蝕有病者率は平成5年度に,一人平均う歯数は平成4年度に大幅な改善を示した.3歳児のう蝕有病者率は,活動前に80%以上だったものが平成10年度には40%以下に,3歳児の一人平均う歯数は,活動前に6.1本だったものが平成10年度には2.2本に改善した.これは1)間食を規則的に与えるようになったこと,2)飲み物が牛乳・お茶および水の割合が増加したこと,3)仕上げ磨きの実施率が増したことによる影響が大きいと考えられる.さらに,平成10年度の小学6年生におけるう蝕有病者率および一人平均う歯数は,活動前に比較しともに改善を示した.地域の特性を把握し,それに即した活動を行っている過程で,地域の口腔環境は改善できることを明らかにした.この活動の中心的役割を担ったのは歯科衛生士である.歯科医師は口腔保健活動の計画を作成し行政の理解を得られるように努力するべきである.
著者
川口 陽子 大原 里子 矢沢 正人 武井 啓一 鶴本 明久 米満 正美
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.132-138, 1982 (Released:2010-10-27)
参考文献数
19
被引用文献数
12

昭和54年4月から7月の間に, 東京都中央区管内7保育園, 岩手県平泉町, 沖縄県南大東村の1~5歳の幼児1,132名の歯科検診を行った。う蝕罹患者率, 1人平均う歯数, 重度う歯所有者率, 1人平均重度う歯歯数, う歯処置率, 乳歯う蝕罹患型の割合によってこの三地域を比較検肘したところ, いずれの指標でも南大東村の幼児のう蝕擢患状況が最も悪く, 平泉町はほぼ全国平均値に近く, 中央区が一番よいという結果であった。この結果は, 最近都市部より郡部の方がう蝕は多いという報告と一致している。また, 乳歯のう蝕罹患状況が悪い地域では第1大臼歯は早期に出醸し, う蝕に罹患する率も高いことが明らかになった。乳歯う蝕蔓延の著しい地域では, 第1大臼歯の早期出銀, 早期う蝕罹患, さらに永久歯のう蝕蔓延につながることが憂慮されると考えられた。
著者
松平 文朗 北村 中也 山田 秀則 藤本 泉 荒井 美香 軽部 裕代 柳田 顕郎
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.230-235, 1998
参考文献数
11
被引用文献数
2

リンゴ未熟果実抽出物(ポリフェノール)の歯垢抑制効果をみるため,洗口液を使ったランダム化比較対照試験を行った。対象は19〜20歳の女性20入で,3日間の歯磨きを禁止し,4日目に歯垢の付着を検査した。歯垢付着はDebris Indexの変法で点数評価した。試験法は試験液と対照液を参加者にランダムに割り付け,試験参加者にも検査者にもマスク化した二重マスク法で,さらにクロスオーバー試験として比較検討した。その結果,対照液での洗口と比較して,試験液での洗口には歯垢付着の抑制効果を認めた(p<0.05)。
著者
高橋 雅洋 岸 光男
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.137-147, 2006-04-30 (Released:2018-03-23)
被引用文献数
5

85歳高齢者,歯周組織の健全な若年成人(以下,健常者)およびその中間年齢層にあたり,歯周治療後のメインテナンスのために定期受診している者,合計292名から舌苔を採取し,菌種特異的PCR法により,4種の歯周病原性細菌と2種のミュータンスレンサ球菌を検出し,検出率を比較した.また,85歳高齢者と健常者においては歯科疾患関連細菌の検出と口腔内状況との関連を検討した.結果を以下に示す.1.無菌顎者の舌苔からの4種の歯周病原性細菌の検出率は低かった.また,有歯顎高齢者を含むその他の被験者群中では,健常者からのPorphyromonas gingivalis, Treponema denticolaの検出率が有意に低かった.これらより,歯周病に罹患していない者,歯周病感受性がない者の舌苔は,歯周病原性細菌の棲息部位となりにくいことが示された.2.健常者において舌苔と歯垢からの歯科疾患関連細菌の検出状況を比較したところ,T. denticola以外の細菌で,舌苔と歯垢からの検出に関連が認められた.さらに歯周病原性細菌に関しては,舌苔からの検出率が歯垢より高く,いずれか一方から歯周病原性菌が検出された場合には,主として舌苔からであった.これらの結果から,舌苔は口腔他部位への細菌の供給源であると同時に受容部位としても働き,さらに口腔他部位の細菌叢と相互に関連し合って,口腔全体の細菌叢を構成しているものと考えられた.
著者
小島 登喜子 末高 武彦
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.663-674, 1997-10-30 (Released:2017-10-20)
参考文献数
32
被引用文献数
1

歯科衛生士の職業寿命や需要供給量について明らかにするため,17都府県に在住する歯科衛生士1,712人を対象として「歯科衛生士の業務従事状況調査」を実施した。回答者は749人であり,歯科衛生士免許取得後の既婚率は6〜10年目で57%, 16〜20年目で88%である。歯科衛生士業務への従事率は,未婚者では1〜5年目で94%, 6〜10年目で88%,11〜15年目で82%, 16〜20年目で77%であり,既婚者ではそれぞれ61, 50, 48, 55%である。このうち,フルタイム従事者は,未婚者では1〜5年目で98%で,その後徐々に低下し16〜20年目で87%となり,既婚者では1〜5年目で92%で,その後次第に低下し16〜20年目で68%となる。日本人女性の将来生命表に基づく死亡率と上記の既婚率,業務従事率,フルタイム従事率をもとに,歯科衛生士免許取得者1万人の免許取得後40年目までの業務従事率を推計すると,フルタイム従事率は10年目で58〜66%,20年目で37〜44%, 40年目で35〜42%となる。また,パートタイム従事者も加えた総従事率は10年目で64〜71%,20年目で54〜60%,40年目で52〜58%となる。歯科衛生士養成数が現在の入学定員で今後も推移すると仮定したとき, 2020年における業務従事歯科衛生士推計数は,フルタイム従事者が約126,000〜145,000人となり,パートタイム従事者も加えると約160,000〜177,000人となる。
著者
郡司島 由香
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.281-291, 1997-07-30 (Released:2017-10-20)
参考文献数
36
被引用文献数
2

18歳から31歳までの陸上自衛隊員を対象として,フッ化物を応用した齲蝕予防効果について介入疫学研究を行った。対象者はフッ化物洗口群(洗口群:0.05%NaF,週5回法),フッ化物配合歯磨剤群(歯磨剤群:950ppmF)および対照群の3群に分け,各群の2年間における齲蝕増加量を比較検討した。主な結果は以下のとおりである。1.視診型診査における新生DMFS-indexは洗口群1.96,歯磨剤群2.22,対照群3.17であった。洗口群の新生DMFS-indexは対照群に較べ38.2%小さく,有意な差が認められた(p<0.05)。また,歯磨剤群は対照群より30.0%少なかったが,有意性は認められなかった。2.部位別に齲蝕増加量をみると,臼歯部平滑面において洗口群は対照群に較べ47.5%少なく,その差は有意であった(p<0.01)。3.臼歯部隣接面齲蝕の咬翼法X線評価における新生DeMFS-indexは洗口群0.64,歯磨剤群1.05,対照群1.21であった。洗口群は対照群に較べ47.1%小さく,有意性が認められた(p<0.01)。歯磨剤群と対照群との差13.2%は有意でなかった。以上のことより,成人の齲蝕が増加しているわが国では,成人におけるフッ化物洗口法は非常に効果的な齲蝕予防法であることが示唆された。
著者
エカナヤケ リラニ メンディス ランジット 安藤 雄一 宮崎 秀夫
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.771-779, 1999-11-30
参考文献数
15

ここ10年以上,スリランカでは児童・生徒の口腔の健康増進を目指して,プライマリーヘルスケアアプローチに基づく数多くの保健計画を実施してきた。また,厚生省は文部省との協力のもと,小学校教師に対し口腔保健の基礎を教育し,口腔保健教育のやり方を訓練してきた。さらに,国民の口腔健康増進のためにマスメディアも重要な役割を担ってきた。しかしながら,これらすべての計画や活動の目標が望ましい行動をもたらすための,口腔保健に関する基礎知識を与えることであるにもかかわらず,児童・生徒の口腔保健知識やその実践の現状を評価することはほとんどなされてこなかった。そこで,この研究は青年を評価対象とし,口腔保健に関する知識,意識,行動の様相を把握し,あわせて,歯磨き頻度に影響を与える要因を調べることを目的に行われた。無作為に抽出された2市および8村の公立学校に在学する11年生(平均年齢15.7歳)492名が,担任の監督下にアンケートを回答した。生徒の大部分はう蝕と歯同病の予防に関する知識は持っていたが,これらの原因についてはいくらかの考え違いがあった。知識と意識に関する平均スコアは,いずれも村の生徒より市内の生徒のほうが有意に高かった。ロジスティック回帰分析の結果,性,居住地,口腔保健知識,および口腔保健に関する情報を受けたかどうかの4項目は,(保健行動の1つである)歯磨き頻度と有意に関連していることが示された。以上の所見より,村の生徒の口腔保健に関する知識,意識,行動は市内の生徒より劣っている,したがって,村の生徒向けに口腔保健計画を改善することによって,口腔保健に関する知識と行動のレベルを高める努力がなされるべきであるという結論を得た。
著者
山田 茂 久野 敏行 中村 清隆 小原 正紀 加文字 幸雄 郷 義明
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.51-56, 1979

小学校5学年男女, 78名を, 2群に分け, A群41名に, a歯みがき剤を, B群37名に, b歯みがき剤を, 1ヵ月間使用させ, その間における歯面清潔度と, PMA指数を, 調査した。<BR>実験集計終了後, A群は2.5% Chlorhexidine digluconate (以下CHDGと略称) 含有歯みがき剤, b群はPlaceboであることが判明した。使用歯みがき剤は, スイスHawe-Noes Dental社製のもの (商品名Plak Out) である。<BR>歯面清潔度は, 日数の経過と共に, 改善の傾向を示し, 15日後と, 30日後は, 1%の危険率でCHDG含有パスタ使用群が勝っていた。PMA指数は, 歯面清潔度ほど明確でなかったが, 日数の経過と共に, いくぶんCHDG含有パスタ使用群が優る傾向を示し, 30日後では, 5%の危険率で勝っていた。<BR>実験期間中は副作用を認めなかった。
著者
吉野 浩一
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, 2003-08-30
参考文献数
1
著者
遠藤 浩正
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.665-674, 1994-10-30 (Released:2010-10-27)
参考文献数
21
被引用文献数
5

咀嚼機能の問題は, 摂食機能の基礎となるものとして, 幼児期から老年期の各ライフステージにわたって考慮されなければならない。そこで今回, 著者は発達期の児童および生徒の咀嚼能力の評価法の確立のために, 小学生と中学生を対象に口腔内診査, 咀嚼値の測定ならびに咬合の発達と咀嚼能力の関連についての解析を実施した。調査対象は埼玉県下の小学生1年生から6年生までの児童513名 (男子249名, 女子264名) と, 中学校1年生から3年生までの生徒387名 (男子193名, 女子194名) であった。口腔内診査では現在歯数とう蝕の状態について診査を行った。咀嚼能力の測定は乾燥したピーナッツを用いた篩分法によって行った。さらに咬合の発達状態を総咬合力, 平均咬合力および咬合接触面積を用いて測定・解析を行った。今回の研究の結果より, 以下の結果を得た。1. 咀嚼値は小学校5年生あるいは6年生で低下し, 中学生ではほぼ一定となる傾向がみられた。2. 総咬合力, 咬合接触面積は増齢とともに増加する傾向がみられたが, 小学校5年生あるいは6年生で一時的に低下する傾向が認められた。3. 咀嚼能力に影響を与える因子として, 永久歯現在歯数, 総咬合力および咬合接触面積との関連性が示唆された。4. 本研究の結果から, 学齢期における食生活指導を行う際には, 咀嚼能力の発達に考慮した指導内容とする必要性が示唆された。
著者
中尾 俊一 森田 十誉子 安井 利一 田中 園治 小野沢 裕彦 田中 入 大高 義文 菅沼 信夫 徳光 史彦 山本 瑞哉
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.643-653, 1991
被引用文献数
6 4

The purpose of this study was to investigate the clinical effect of dentifrice R containing 0.05% tranexamic acid and 0.05% dipotassium glycyrrhizinate on the improvement of periodontal disease compared with dentifrice T containing 0.05% tranexamic acid.<BR>Subjects were 148 adults who had no serious oral or systemic diseases. They were divided into two groups equally and performed toothbrushing twice a day for four weeks with dentifrice R or T.<BR>The PMA index, redness, swelling, and plaque score were selected as indices for clinical evaluation of periodontal condition.<BR>The results obtained were as follows.<BR>1) Dentifrice R was significantly superior to dentifrice T in the improvement of PMA index (p<0.01), redness (p<0.01) and swelling (p<0.05). There was no significant difference in the improvement of plaque score between dentifrices R and T.<BR>2) The mean improvement rates of dentifrice R and dentifrice T were 37.0% and 26.3% in PMA index, 40.7% and 25.2% in redness, and 36.7% and 29.9% in swelling, respectively.<BR>3) No particular side effects were observed during this clinical study.
著者
西川 真理子 西 一也 川野 留美 山本 啓子 小林 洋子 原田 由加 渡邊 達夫
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.682-688, 1992-10-30 (Released:2010-10-27)
参考文献数
21
被引用文献数
2 2

The purpose of this study was to evaluate the plaque removal effect of a dentifrice containing granulated zeolite. Fifteen volunteers, who were nurses, dental hygienists and dentists between the ages of 21 and 42 years participated in the experiments. Following professional toothbrushing, the subjects refrained from toothbrushing for 3 days. Then daily professional toothbrushing was performed by trained dental hygienists with the experimental dentifrice for 5 days. No oral hygiene procedure was performed for 3 days after the first clinical trial. The second trial with the control dentifrice was done for 5 days. During each trial, the subjects stopped all personal oral hygiene procedures. The plaque removal effect was evaluated using plaque scores before and after toothbrushing. At 24 and 72 hours after toothbrushing, the inhibitory effect on plaque formation was calculated. The results showed that the experimental dentifrice was significantly more effective in removing plaque on the lingual surfaces and gingival margins and the interproximal gingival margins of the teeth than the control dentifrice. Significant difference was also found between the two dentifrices in removing plaque in pits on the occlusal surfaces. There was no significant difference in the inhibitory effect of the two dentifrices on plaque formation. This suggests that the dentifrice containing granulated zeolite improved the effect of toothbrushing. A questionnaire survey indicated that many subjects preferred the dentifrice containing granulated zeolite. No clinical side effects were observed in the two dentifrices.
著者
佐藤 節子 水枝谷 幸恵 日野 陽一 於保 孝彦
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.117-125, 2007-04-30 (Released:2018-03-23)
参考文献数
19
被引用文献数
2

容易に入手できるペットボトルや缶入り飲料の種類は多岐にわたる.われわれはう蝕予防の観点から62種類の飲料のう蝕誘発性に関する4つの要因,すなわち飲料のpH,中和に要するアルカリ量,う蝕細菌Streptococcus sobrinusによる酸産生および接着性不溶性グルカン合成を評価した.その後,4つの評価で得られたスコアを統合してう蝕誘発性リスクのレーダーチャートを作成した.その結果,炭酸飲料,スポーツドリンク,果・野菜汁および乳飲料のpHは,エナメル質脱灰の臨界値5.5より低かった.それらの飲料の中和には多量のアルカリが必要であり,特に果・野菜汁の中和には最も多くのアルカリを必要とした.また, S. sobrinusとの反応の結果,天然水飲料,無糖茶飲料および無糖コーヒー以外の飲料は, 5.5以下のpHを示した.さらに調査した飲料の半数が,接着性不溶性グルカンを産生した.レーダーチャートの評価により,全飲料は4つの特徴的なパターンに分類された.このレーダーテャートを用いて,茶飲料や天然水飲料等の低う蝕誘発性飲料とその他の高う蝕誘発性飲料を容易に区別することが可能であった.以上の結果から,われわれは飲料の潜在的なう蝕誘発性について認識する必要があること,そしてそのリスクについてのレーダーチャートは飲料の特徴を認識するのに有用であることが示唆された.
著者
五月女 さき子 船原 まどか 川下 由美子 梅田 正博
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.190-197, 2018 (Released:2018-11-10)
参考文献数
16

頭頸部がんの放射線治療時にしばしばみられる有害事象の一つに重症の口腔粘膜炎があるが,有効な予防法は確立していない.本稿では,MASCC/ISOOガイドラインに示されている頭頸部がん放射線治療時の口内炎対策とそれに対する著者らの知見を示し,含嗽剤やステロイド局所投与について,関連する情報と著者らの基本的考え方について述べる. さらにわれわれが行っている有害事象バンドル(①感染源になる歯の照射前抜歯,②スペーサー作製,③口腔ケア,④塩酸ピロカルピンの投与,⑤デキサメタゾン軟膏+オリブ油の塗布,⑥保清と保湿,ステロイド塗布などの皮膚ケア,⑦フッ化物局所応用の予防策)についても紹介する. 周術期口腔機能管理が保険収載され数年が経過し,多くの医療機関で放射線治療時の有害事象の予防が歯科に求められるようになったが,管理方法の標準化や有効性に関するエビデンス検証は今後の課題である.多施設共同臨床研究などにより,放射線性口腔粘膜炎の重症化予防方法を確立していくことが重要である.
著者
石黒 幸司
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.607-616, 1991-10-30 (Released:2010-10-27)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

There is little information about the pattern of fluoride distribution in human bones relative to sex and age. The present study is the first of its kind to be undertaken to determine in detail the fluoride distribution profile in human bone.Human ribs were obtained from 119 patients (M: 72, F: 47) aged 20 to 93 yrs. The fluoride distribution from the periosteal to the endosteal was determined in each specimen using the abrasive micro-sampling technique. Fluoride was determined using the fluoride electrode as previously described by Hallsworth, Weatherell and Deutsch (1976), and phosphorus was determined by the colorimetric procedure of Chen, Toribara and Warner (1956).The concentration of fluoride was highest in the periosteal layer and then decreased gradually towards the interior of the tissue. The amount of fluoride leveled off and then rose again just before the endosteal surface. The difference between periosteal and endosteal fluoride increased with age. Overall, fluoride concentrations increased steadily with age in male subjects but leveled off until the age of 55 yrs and then increased markedly in female subjects over the age of 55 yrs.