著者
友田 五郎 松山 惇 長野 明子 生田目 光子 守田 勝昭
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.68-74, 1980

ブラジル・サントス種コーヒー生豆にγ線を照射(0, 0.05, 0.5および1.5Mrad)し,焙煎後それぞれ0, 0.5, 1.5, 3.0および6.0ヶ月貯蔵した各試料について,香味の変化を官能的に検査(カップテスト)すると共に,カルボン酸類の定量を行ない次の結果を得た。<BR>(1) 非照射,焙煎直後のカルボン酸組成は,クロロゲン酸:オキシカルボン酸:モノカルボン酸:その他=73:18:7:2で,カルボン酸の全量は約6,000mg/100g(焙煎豆)であった。<BR>(2) γ線の0.05Mrad照射では香味はほとんど影響がないが, 0.5Mrad照射では本来のものと異なる刺激的な酸味が現われ, 1.5Mrad照射では刺すような酸味に苦味が加わった。<BR>(3) 焙煎豆の貯蔵による品質の劣化は, 0.5ヶ月で主として香りに現われ,以後酸敗臭を伴なう執ような刺激的な酸味が遂次強くなった。あらかじめ生豆に適量のγ線を照射しておくとこの劣化は或程度抑制された。<BR>(4) コーヒーの品質の劣化に際しては一般に酸味に大きな変化が現われるが, γ線の照射では焙煎豆の貯蔵の場合とは明らかに異質の酸味の質的な変化が見られた。γ線照射コーヒーの品質には総酸量よりもオキシカルボン酸類とモノカルボン酸類の含有量比が関係が深いようである。
著者
板橋 雅子 高村 範子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.56-60, 1985-01-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
6

すんき漬種の代りに菌種とその含有量がほぼ一定であるプレンヨーグルトを用い,王滝蕪と小松菜を原料としてすんき漬処理をしたものを,すんき漬種を添加して同様に処理したものと比較考察し,以下の結果を得た。(1) 粗たんぱく質含有率はプレンヨーグルト処理物,漬種処理物共原料中の水溶性非たんぱく質の溶出によって原料より高い値を示すが,前者は後者よりやや低い。原料別に見ると王滝蕪の方が残存率が高い。(2) 漬物中の遊離アミノ酸は王滝蕪ではプレンヨーグルト処理物は漬種処理物よりもはるかに多く,甘味および旨味アミノ酸含有率が高く,官能検査でもすぐれている。小松菜では両者の間に顕著な差がない。(3) 全アミノ酸含有率は粗たんぱく質の場合と同様に,漬処理物が原料より高い値を示し,その増加率は王滝蕪の方が小松菜より多い。添加物による相違はプレンヨーグルト処理物の方が漬種処理物より含有率がやや高い。必須アミノ酸含有率は王滝蕪,小松菜共にプレンヨーグルト処理物と漬種処理物との間に大差は見られない。(4) プレンヨーグルトを添加した場合の漬汁のpHは,最初はプレンヨーグルトそのものの値を示し,時間の経過と共に葉菜中の水分の浸出によって高くなるが,3週間後より次第に低下し,乳酸発酵の進行を示す。
著者
板橋 雅子 高村 範子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.208-211, 1985-03-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
5

王滝蕪と小松菜とを用いて,最初から乳酸を加えてすんき漬処理を試み,同時に行なった漬種(乳酸菌源)処理物と諸性状を比較して以下の結果を得た。(1) 粗たんぱく質含量は原料よりも漬処理物の方が大きな値を示すが,その度合は乳酸処理物の方が漬種処理物よりも大きい。このことは乳酸処理ではたんぱく質の分解が少ないことを示す。(2) 漬処理物中の遊離アミノ酸含量は原料中のそれより減少しているが,減少度は乳酸処理物の方が漬種処理物より少ない。このことは,漬処理による原料葉菜の組織の破壊が乳酸処理の方が少ないためと考えられる。(3) 乳酸菌源を用いずに乳酸添加のみによってすんき漬を行っても同様な結果が得られる。(4) 乳酸処理によるすんき漬は葉緑素の鮮度が良好に保存され,味覚上においても良好であった。
著者
川染 節江 三木 英三 合谷 祥一 山野 善正
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.245-252, 1992-03-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
15
被引用文献数
1

スポンジケーキの生地の粘弾性と構造に及ぼすバター含量の影響を検討するため,バターを小麦粉に対し, 0~120%添加した試料について,レオメーターによる粘弾性の測定および走査型電子顕微鏡による観察により,次のような結果を得た.(1) みかけの粘度を反映する生地の流動量は,生地調製直後(放置前)では,バター含量の増大に伴い直線的に増加したが,放置10~30分後のものは, 120%では若干低下した.(2) 生地調製後, 25℃の恒温槽中で10~30分放置した生地の動的粘弾性(G',G")は,バター含量80%までは減少するが, 80%以上のバター含量では増大し,粘弾性の値とみかけの粘度を反映する生地の流動量との間に有意な負の相関性が得られた.また,バター含量による動的粘弾性の変化は,既報2)のケーキの圧縮試験による硬さ,ガム性およびそしゃく性の変化とほぼ同じ様相であった.(3) バター含量が増大するほど,損失正接(tanδ)は小さくなり,より弾性的な生地になった. tanδと生地の密度との間には有意な負の相関性が,また, tanδとケーキの比容積との間には有意な正の相関性が得られた.さらに,バター含量による損失正接の変化は,圧縮試験により得られているケーキのレオロジー特性を表すモデル式8)y=AnCeBnのパラメータ,C(変形のしやすさに対する抵抗力)の変化と類似していた.したがって,スポンジケーキ生地の動的粘弾性は,焙焼後のケーキの物性をよく表すといえる.(4) クライオ-SEMの写真から,調製直後の生地の気泡はバターを含まないものでは,主にやや大きな回転楕円体が多いが, 80%では小さいものが多く, 120%では大小の気泡が混在しており,いずれも,気泡は直径約100μm以下になると球形を呈することがわかった.(5) 生地の気泡の消失は,バター含量が多く放置時間が長くなるほど著しくなり,バターの添加により密度の増大をきたすことが,組織観察から明確になった.(6) 脂肪球は直径約20~60μmの球形をなし,表面に多くのひだが観察された.以上のように,ケーキ生地のみかけの粘度および動的粘弾性と生地の物性に大きな役割を示す組織のどちらにもバター含量が影響し,小麦粉に対し80%添加した試料が特徴的な様相を示し,既報のケーキのテクスチャー形成と官能評価が良好であったことを裏づけられた.
著者
宇佐美 昭次 桐村 光太郎 伊東 よし男 志村 進 上沼 敏彦 森 隆雄
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.479-481, 1989-06-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
12
被引用文献数
1

リパーゼ高生産菌を得るために,カカオ豆およびチョコレート工場周辺の土壌より菌株の探索を行った.その結果,菌体外に多量のリパーゼを生産する1菌株を取得し,菌学的検討を行い, Rhizopus oligosporusと同定した.本供試菌についてリパーゼ生産のための最適培養条件の検討を行い,ペプトン5% (w/v),グルコース2% (w/v),オリーブ油2% (v/v),レシチン0.2%(w/v)に微量の各種無機塩類を加えた最適培地を決定した.また培養経過から温度30℃, 5日間の条件を得た.これらの条件下で振とう培養することにより供試菌の菌体外リパーゼ活性は16.7U/mlに達した.
著者
小川 美江子 中嶋 睦安 名取 正彦 室岡 治義
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.303-309, 1986-05-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
18

腐敗した食用コンニャク中にコンニャク分解菌の存在を認め,これを純粋分離し,本菌をB. circulansと同定した.本菌はコンニャク粉のみから成る培地にも生育したが,さらにリン酸水素ナトリウム,硫酸マグネシウム,硫酸アンモニウムを添加した培地(F培地)に良好な生育を示した.本菌の生育におよぼすpHの影響を検討した結果,pH 5.5~10.5の範囲で生育が可能であり,pH 6.0~9.5では最も良好な生育が見られた.本菌をF培地で培養すると培養初期に,急激な培地の液化が見られ,菌の生育に伴い,還元糖が蓄積された.本菌の菌体外にコンニャク分解酵素の存在が認められ,その酵素の至適温度30℃,至適pH 6.4~7.2, 55℃で40分間の処理では安定であった.培養液中のコンニャク分解生成物は,薄層クロマトグラフィーにより,遊離糖としてグルコースとマンノースおよびその他分解中間生成物と患われるスポットが検出された.
著者
石田 欽一 岡田 安司 小山 吉人
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.109-115, 1968
被引用文献数
1

甜菜グラニュ糖および精製グラニュ糖を用いて,乾燥ゼリーを実験室的規模で試作し,その性状を調べた。<BR>(1) 生ゼリーの乾燥性は,甜菜グラニュ糖区のほうが良好であった。<BR>(2) 乾燥ゼリーの吸湿性は精製グラニュ糖区のほうがやや大きい傾向にあった。<BR>(3) 色素に及ぼす影響は,砂糖溶液の場合甜菜グラニュ糖区のほうが色素の安定性が良好であった。<BR>(4) 色素の安定性は赤色2号については,砂糖濃度が大きく関与し,砂糖濃度が高くなるに従って安定性が悪くなった.<BR>(5) 煮つめ状態,生ゼリーおよび乾燥ゼリーの物理的性質については,両試験区ともほとんど差が認められなかった。<BR>(6) 乾燥ゼリーの製造において,生ゼリーの乾燥速度は含水率の減少とともに急速に低下すること,また寒天濃度が乾燥ゼリーの見掛け粘度に関与し,寒天濃度が高いと見掛け粘度が大きくなることを認めた。
著者
野田 正幸 山本 晴敬
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.327-334, 1994
被引用文献数
2 10

滅菌処理植物脂肪クリームを用いて,クリームの物性変化におよぼす温度履歴の影響について検討し,以下の知見を得た.<BR>(1) 冷蔵開始温度より温度処理がクリームの粘度に大きく影響した.クリーム構成油脂の固体脂含量が温度処理後の粘度に影響し,固体脂含量が20%以下になると粘度が増加して最大値を示し,油脂が融解する温度以上では粘度の変化はなかった.<BR>(2) 温度処理後のクリームのホイップ特性は粘度の変化とほぼ対応し,処理温度が高くなるとともにホイップ時間とオーバーランの減少,硬さの増加,気泡径の減少がみられ,油脂が融解する温度以上では無処理と同等となった.温度処理によるホイップ特性の変化は,ホイップ時に増加した遊離脂肪が構造に寄与するためと推定した.<BR>(3) クリームの粘度とホイップ特性は温度処理における冷却速度にも依存し徐冷の方が影響が大であった.<BR>(4) 温度処理したクリームは,脂肪が融解する温度に再度温度処理することによって再生できた.
著者
薄木 理一郎 木村 俊明 金田 尚志
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.338-341, 1978
被引用文献数
3

シリコ-ン油(SO)の示すフライ油劣化防止効果の作用機構を知る目的でSOを大豆油に添加,添加濃度,重合度(粘度),加熱油の性状について検討し,つぎの結果を得た。<BR>(1) 180℃での通気加熱,およびじゃがいもフライ時とも,添加濃度は10ppmが適当と思われた。<BR>(2) 20, 200, 1000, 12500センチストークス(c/s)の4種のSO中,20および200c/sの両者により大きな効果を認めた。<BR>(3) 加熱油およびフライ油をケイ酸カラムクロマトで分画し,その特数を各々の無添加油の分画区分と比較したところ,各区分とも酸化の遅延を表わす特数値を示していたが,特にSO添加による顕著な変化は認めがたかった。これまでいわれているSOの種々の作用が各々に働き,全体として熱酸化を抑えているように思われた。
著者
宇佐美 昭次 桐村 光太郎 伊東 よし男 志村 進 上沼 敏彦 森 隆雄
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.479-481, 1989
被引用文献数
1

リパーゼ高生産菌を得るために,カカオ豆およびチョコレート工場周辺の土壌より菌株の探索を行った.その結果,菌体外に多量のリパーゼを生産する1菌株を取得し,菌学的検討を行い, <I>Rhizopus oligosporus</I>と同定した.本供試菌についてリパーゼ生産のための最適培養条件の検討を行い,ペプトン5% (w/v),グルコース2% (w/v),オリーブ油2% (v/v),レシチン0.2%(w/v)に微量の各種無機塩類を加えた最適培地を決定した.また培養経過から温度30℃, 5日間の条件を得た.これらの条件下で振とう培養することにより供試菌の菌体外リパーゼ活性は16.7U/mlに達した.
著者
山野 善正 江本 三男 福井 義明
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.20, no.12, pp.571-573, 1973

かまぼこの荷重による変形をテクスチュロメーターの硬さで追求したところ,かなりの荷重まで変形が生じず,その変形は経時的に増大し,ある時点で飽和点に達するようであるが,充分時間をとれば,その変形を回復することがわかった。これらのことから,かまぼこは,ほぼ完全な遅延弾性体として挙動すると考えられる。<BR>また,実際の商品の輸送,棚ざらしなどの間にかかる荷重程度ではかまぼこの変形はほとんど起らないといってよい。
著者
安部 章蔵
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.33, no.10, pp.693-700, 1986-10-15 (Released:2010-03-08)
参考文献数
10
被引用文献数
1

練り餡は伝統的手法で製造されており,この製造条件が品質に与える影響や,練り餡の品質評価法が確立されていない.そこで,国産小豆から生餡を作り,再現性を高めるためアミログラフを使用して一定温度,一定かくはんして餡練り時間を変えた3試料を調製して理化学的特性と官能特性との関係を検討した.(1) 餡練り時間と共にアミログラフによる粘度曲線はほぼ直線的に増加し,テクスチュロメーターで測定した硬さ,粘着性,遠心分離による保水力,餡の見掛けの体積は増加し,赤外線による乾燥速度,水分活性は低下した.その際,餡練り中に餡粒が膨化崩壊して遊離でんぷん含量も増加した.(2) 試作した練り餡を貯蔵した場合,遊離でんぷん含量が多いほど物性の変化量が大きく,練り餡の品質劣化には遊離でんぷんが関与すると推定した.そして,これを確認するため,でんぷんを添加してその挙動を調べたところ,餡練り過剰試料とよく似た挙動を示し,遊離でんぷんは練り餡の物性に大きく関与することが認められた.(3) 理化学的測定値から官能が推定できると極めて都合が良い.硬さ,赤外線による乾燥速度,遠心分離による保水力を測定することによりそれぞれ82%以上の寄与率で官能評価値が推定できた.しかし,練り餡には種類が多いので,目的に応じた検討が必要であると考える.
著者
慶田 雅洋
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.31-40, 1967-01-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
50
被引用文献数
1
著者
佐藤 仁一 栗栖 敏郎
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.161-165, 1986-02-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
1
被引用文献数
3
著者
高間 総子 石井 薄 村木 繁
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.14-18, 1984-02-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
10
被引用文献数
2 8

日本産と韓国産のマツタケの香気成分の差異,およびマツタケの貯蔵による香気成分の消長を調べた。(1) 香気成分の収量は日本産が146ppm,韓国産が80ppmであった。1-オクテン-3-オール,cis-2-オクテノールおよびメチルシンナメートが共通して主要な香気成分であった。他の香気成分の組成も両者はかなり似通っていた。(2) マツタケを室温(27℃)で66時間貯蔵することにより,香気成分の収量は約1/2へと減少した。メチルシンナメートの含有量が増加した以外は,主成分である1-オクテン-3-オール,cis-2-オクテノールは1/2以下になり,その他の多くの成分も殆んどが減少した。低温(7℃)で貯蔵をすることによって,香気成分の収量が変わらないことがわかった。しかし,組成的には3-オクタノール,オクタノール等の増加,cis-2-オクテノールの減少のような成分間の変化が若干みられた。
著者
山田 幸子 谷 喜雄 大辻 一義 中村 一郎
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.17-24, 1994
被引用文献数
1

(1) 冷凍パイ生地に発生する黒斑を光学および電子顕微鏡で観察したところ,微生物の繁殖によるものではなく,〓の存在部位に黒斑が認められた.このことから,〓中のPolyphenol oxidase が黒斑に関与しているのではないかと考えた.<BR>(2) 〓より得た粗酵素Polyphenol oxidase の活性はpH3.0, 4.0, 6.5で高く,数種の酵素が混在すると思われるが硫安分画による分離は困難であった.<BR>(3) 小麦粉を110℃で加熱してパイ生地をつくると黒斑は認められなかった.また〓を0.01%加えた小麦粉を用いると黒斑の数は著しく増加したが,110℃で加熱した麸を加えると黒斑増加は認められなかった.<BR>(4) 小麦PPOはpH6.5において,用いたすべての還元剤(亜硫酸ナトリウム,グルタチオン,ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム,アスコルビン酸,ジチオスライトール,パルミチルアスコルビン酸)(10mM)によって完全に阻害された.これらの還元剤をパイ生地に0.1%添加することによって,いずれの場合も黒斑形成は完全に抑制された.また食感にもほとんど影響はなかった.<BR>(5) アクリルアミドゲル電気泳動後のゲル上での活性染色により,小麦PPOには少なくとも6種のアイソザイムが存在することを確認した.<BR>(6) 制限量の還元剤存在下での活性染色により,黒斑形成に関与しているPPOアイソザイムは基質がDOPAであると仮定した場合,比移動度O.13のバンドであることが示唆された.<BR>(7) パイ生地の黒斑形成におよぼす他の因子にっいて検討したところ,システイン,にんにく汁(アリルメルカプタン)に阻害効果が認められた.逆にリジンは黒斑形成を促進した.
著者
棚田 益夫 内田 晴彦
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.21, no.7, pp.345-350, 1974
被引用文献数
1

抗菌力が認められている食品添加物および天然物25種類について,生めんまたはゆでめんに対する抗菌力を比較検討した。<BR>(1) エチルアルコールの抗菌力は生めん,ゆでうどんのいずれにおいても,試料中の水分に対する相対量に応じて増加し,約13%以上では微生物の増殖は認められなかった。<BR>(2) グリシンの抗菌力は生めん,ゆでうどんのいずれについてもおおよそ0.5%以上の添加で認められ,2%以上添加しても抗菌力はほとんど増加しなかった。<BR>(3) グリシンおよびエチルアルコールのゆでうどんに対する抗菌力は蒸気殺菌処理併用でかなり増加した。<BR>(4) 原料粉に添加されたグリシンのゆでめん中残存率はゆでうどんで26%,ゆでそば,ゆで中華めんでそれぞれ39%であった。<BR>(5) 有機酸では酢酸,DL-リンゴ酸の抗菌力がすぐれていた。<BR>(6) 以上の添加物およびその他の添加物の抗菌力を"抗菌力指数"として示した。<BR>(7) これらの添加物を併用したさいの効果は相加的とみなされた。