著者
石井 智恵美 鈴木 敦子 倉田 元子 表 美守
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.984-987, 1990-12-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
22
被引用文献数
2

アントシアニン色素の熱安定性を明らかにするため,ナス果皮の凍結真空乾燥粉末およびこの粉末より0.1%塩酸-メタノールで抽出した粗色素液を用いて検討した.色素抽出液のアントシアニンの熱分解は50℃と60℃で,また凍結乾燥粉末のそれは100℃, 120℃で行い,経時的なアントシアニンの残存率を測定した.得られた結果はアントシアニンの分解の速度論的データ(k, 4△G≠, Ea, △艾H≠, △S≠)を用いて示した.1) 0.1%塩酸-メタノール液中の総アントシアニンの褪色は,熱安定性を検討する上で変化が明確であり再現性も良い.特にナスニンは光の影響を受けにくかった.2) 凍結真空乾燥粉末を用いた場合は, 100℃, 120℃加熱とも60分までは総アントシアニン残存率,反応速度とも大きな変化が見られなかった.加熱時間が120分になると, 120℃加熱において速やかなナスニンの分解が観察された.
著者
五十嵐 喜治 吉田 哲哉 鈴木 恵津子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.138-143, 1993-02-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
15
被引用文献数
29 40

長者ナス(小ナス)から単離したナスニン,および他の2~3のアントシアニン色素が,リノール酸-リポキシダーゼによるβ-カロチンの退色,およびリノール酸の自動酸化に及ぼす影響について,それぞれ,カロチン退色法,ロダン鉄法を用いて検討した.pH 7においてカロチン退色法で測定した抗酸化効果はナスニンで最も強く,次いで,マルビン,ルブロブラッシンの順であった.pH 2.8においてロダン鉄法で測定した抗酸化効果も同じ傾向を示した.また,抗酸化効果はアグリコンのディルフィニジン,マルビジンおよびシアニジンにも認められたが,後2者の活性はそれらの配糖体と大差がなかった.ナスニンはディルフィニジンに比べて高い活性を示した.この結果はリノール酸の自動酸化系におけるナスニンの強い活性にそのp-クマール酸部分が関わっている可能性を示した.
著者
衛藤 知子 松本 清 筬島 豊
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.55-60, 1990
被引用文献数
1

プロテアーゼのたん白質消化力測定の,ろ過および発色操作をフローインジェクション分析法(FIA)によって自動化した.たん白質消化力は,カゼインを基質としてトリクロロ酢酸可溶性低分子分解産物をフォリン試薬で発色させることによって測定した.自動ろ過装置はフラクションコレクターにろ過管供給器を取り付けて製作ラクションコレクターにろ過管供給器を取り付けて製作し,測定データの取り込みおよび処理にはコンピューターを導入した.サンプルのインジェクション量を200μlとしたとき,サンプリング回数は20h-1であった.また,チロシン濃度10~50μg/mlの範囲では検量線は直線であり,繰り返し測定の結果は, 25μg/mlのチロシン標準液200μlを用いた場合, CV=2.35%(n=10)であった.同一サンプルをバッチ法と本法とで発色させ,たん白質消化力の値を求めたところ,相関係数r=0.998と良好に一致した.
著者
香西 みどり 島田 淳子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.360-364, 1985-05-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
16
被引用文献数
14 10

ジャガイモ煮熟時の最適加熱時間を予測する方法を開発することを目的とした。(1) 軟化の官能評価に良く対応するテクスチュロメーターの硬さを軟化のパラメーターとした。軟化率xは以下のように表わした。y0:硬さの初期値;ye:硬さの平衡値;y:硬さの測定値(2) 軟化は1次の速度式に従い,速度定数kは次式によって示された。k=7.49×1019exp(-1.74×104/T) [min-1]T:絶対温度(°K)(3) 試料の中心から表面までの距離の0.55倍の位置を全体の代表点とし,その位置で軟化率が0.9となる時間を最適加熱時間としたところ,官能評価と良く一致した。更に,0.2~5cm立方のジャガイモ試料を仮定し最適加熱時間と大きさの相関を調べると次式が得られた。Θ=0.98LL2+0.67L+6.15Θ:最適加熱時間(min);L:立方体の1辺の長さ(cm)である。この式で求めたθはL=1~4.6cmの範囲で官能評価と良く一致した。
著者
小原 忠彦 大日方 洋 唐沢 秀行 松橋 鉄治郎
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.39, no.7, pp.586-595, 1992
被引用文献数
6

豆乳に塩化カルシウム溶液を添加した際,その反応系の粘度変化を連続計測できるトルク計測システムを使い,「豆乳に対する凝固剤適量」におよぼす豆乳の成分の影響を検討した.<BR>(1) 各種大豆から同一条件で豆乳を調製し,トルク計測システムから得られる最高トルク到達時間(<I>MVT</I>)と豆乳成分の分析値との相関関係を検討した.その結果,最大トルク到達時間は豆乳の蛋白質,灰分,リンおよびカリウムとの問に,それぞれ正の相関関係が認められた.また,豆乳の電気伝導度との間には正の相関関係が,大豆浸漬液の電気伝導度との間に負の相関関係があった.<BR>(2) 市販脱脂大豆より脱脂大豆水抽出液,酸沈澱蛋白質溶液およびホエーを調製し,モデル凝集試験を行った.蛋白質濃度の増加は最大トルク到達時間を増加させた.脂質の添加は最大トルク到達時間には影響を及ぼさないが最高トルク(<I>MV</I>)を増加させた.豆乳のpHが減少すると最大トルク到達時間が減少し平坦トルク(<I>FV</I>)も減少したが,最大トルクは一定であった,脱脂大豆水抽出液を透析すると,透析時間とともに最大トルク到達時間は減少した.一方,酸沈澱蛋白質溶液にホエーを添加すると最大トルク到達時間は増加した.このような最大トルク到達時間の増減から,凝固剤を消費する成分割合は蛋白質区分が65%,ホエー区分が35%であることがわかった.分画分子量の異なる膜を使い,電気透析したホエーの添加試験から,ホエー中の凝固剤を消費する成分因子の分子量は約300~1000と分った.また,化学分析の結果,クエン酸やリンを含む窒素化合物であることが確かめられた.<BR>(3) 大豆の浸漬液中及び豆乳中のリン,クエン酸を数点の大豆について定量し,最大トルク到達時間との関係を考察した.
著者
瓜谷 郁三 バイロン グレイシア L サモンテ ジョセフ L アルバレ アンへリーナ M アルマリオ メリーアン R フローレス ドゥルセ M メンドーサ エヴェリンメイ T ガルシア バーヒリオ V
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.37, no.9, pp.730-736, 1990

バナナつぼみ中のポリフェノール成分は主要成分としてフラバナンタンニン(縮合型タンニン),副次成分としてカテキン,そのオリゴマー,ドパミン及びドパから成っていた.数品種のつぼみのうち,調理用バナナである'サバ'品種のつぼみにおいて,フェノール全量やバニリン陽性フェノール量は最も少なかった.ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)活性の品種間差異は著しくはないが,つぼみ中の部位による差は顕著であり,又その活性は果実の場合よりもかなり大きかった.つぼみのPPO活性は, 0.13M食塩で約20%抑制された.なおフィリピンにおいて,'サバ'品種つぼみを加熱・調理する際に,その薄片に約10%(1kg当り約1.71M)の食塩を加え,汁液をしぼりとるが,これは食塩によりPPO活性を抑制して加熱後の色を鮮やかな淡赤色にするためであり,他には食塩添加により膨圧を失わせ,渋味・苦味の原因となるポリフェノ―ルを除くためであることが分かった.他の品種の場合には,食塩添加,搾汁,加熱によっても渋味・苦味は十分に除去されなかった.
著者
板橋 雅子 高村 範子
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.56-60, 1985

すんき漬種の代りに菌種とその含有量がほぼ一定であるプレンヨーグルトを用い,王滝蕪と小松菜を原料としてすんき漬処理をしたものを,すんき漬種を添加して同様に処理したものと比較考察し,以下の結果を得た。<BR>(1) 粗たんぱく質含有率はプレンヨーグルト処理物,漬種処理物共原料中の水溶性非たんぱく質の溶出によって原料より高い値を示すが,前者は後者よりやや低い。原料別に見ると王滝蕪の方が残存率が高い。<BR>(2) 漬物中の遊離アミノ酸は王滝蕪ではプレンヨーグルト処理物は漬種処理物よりもはるかに多く,甘味および旨味アミノ酸含有率が高く,官能検査でもすぐれている。小松菜では両者の間に顕著な差がない。<BR>(3) 全アミノ酸含有率は粗たんぱく質の場合と同様に,漬処理物が原料より高い値を示し,その増加率は王滝蕪の方が小松菜より多い。添加物による相違はプレンヨーグルト処理物の方が漬種処理物より含有率がやや高い。<BR>必須アミノ酸含有率は王滝蕪,小松菜共にプレンヨーグルト処理物と漬種処理物との間に大差は見られない。<BR>(4) プレンヨーグルトを添加した場合の漬汁のpHは,最初はプレンヨーグルトそのものの値を示し,時間の経過と共に葉菜中の水分の浸出によって高くなるが,3週間後より次第に低下し,乳酸発酵の進行を示す。
著者
板橋 雅子
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.356-361, 1987
被引用文献数
5

すんき中に見出されている乳酸菌の単菌数種を用いてすんき漬を行ない,すんき漬種を用いた場合と比較して,以下の結果を得た.<BR>(1) 漬物中の粗たんばく質の量は,単菌使用のものがすべて漬種使用のものより多い.<BR>(2) 漬物中の遊離アミノ酸中,旨味アミノ酸であるアスパラギン酸およびグルタミン酸の和の値は<I>B.coagulans</I>使用のものが,最大で,このものは官能試験でも最高に評価された.<BR>(3) 漬汁中の乳酸含量の測定結果により,菌種により乳酸菌発酵能が大きく異なることが知られた.すなわち,<I>L. buchneri</I>は非常に大で<I>S. faecalis</I>は非常に小さい.
著者
板橋 雅子 高村 範子
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.208-211, 1985

王滝蕪と小松菜とを用いて,最初から乳酸を加えてすんき漬処理を試み,同時に行なった漬種(乳酸菌源)処理物と諸性状を比較して以下の結果を得た。<BR>(1) 粗たんぱく質含量は原料よりも漬処理物の方が大きな値を示すが,その度合は乳酸処理物の方が漬種処理物よりも大きい。このことは乳酸処理ではたんぱく質の分解が少ないことを示す。<BR>(2) 漬処理物中の遊離アミノ酸含量は原料中のそれより減少しているが,減少度は乳酸処理物の方が漬種処理物より少ない。このことは,漬処理による原料葉菜の組織の破壊が乳酸処理の方が少ないためと考えられる。<BR>(3) 乳酸菌源を用いずに乳酸添加のみによってすんき漬を行っても同様な結果が得られる。<BR>(4) 乳酸処理によるすんき漬は葉緑素の鮮度が良好に保存され,味覚上においても良好であった。
著者
能岡 浄
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-6, 1975
被引用文献数
39

フィリッピン産の緑熟健全バナナ果実を6℃に貯蔵したもの,6℃に9日間置いた後20℃に昇温貯蔵したものおよび20℃に貯蔵した果実(対照区)についてデンプン,還元糖および非還元糖の変化と,見かけのG6Pase,PFKおよび見かけのF1, 6DPase活性の変化を調べて次の結果を得た。<BR>対照区において,4日目までは初めとほとんど変らないが,6日および8日目になるとデンプンが著しく減少し,それに見合うだけの糖の急増が認められ,同時にPFK活性も急増する。また8日目以後還元糖が急増し,見かけのG6Pase活性も8~10日目まで直線的に急増する。10日目以後デンプンはほとんど含まれなくなり,PFK活性は次第に減少するが,見かけのG6Pase活性は急増し,糖はさらに増加する。見かけのF1, 6DPase活性は貯蔵日数とともに少しずつ増加し,10日目には約3倍に急増するが,以後半減する。<BR>6℃に4日間貯蔵した果実は対照区と大差ないが,6日および9日間貯蔵した果実および6℃に9日間置いた後20℃に昇温すると1日および3日目では,デンプンの減少はほとんど認められないが,それ以上に糖,特に非還元糖が増加する。また見かけのG6PaseおよびPFK活性は対照区よりも低いが,見かけのF1, 6DPase活性は著しく高い。<BR>6℃に9日間置いた後20℃に昇温して5日および7日目の果実ではデンプンが急減し,それに見合うような糖の著しい増加が認められ,対照区の6日および8日目と同じような傾向を示す。しかし酵素レベルで対照区の8日目と比較すると,見かけのG6Pase活性は高いが,PFK活性はかなり低い。いっぽう見かけのF1, 6DPase活性は著しく高い。<BR>以上の結果に基づき,糖の代謝経路を考察した。
著者
辻 昭二郎
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.61-65, 1984
被引用文献数
1 5

食感の変化を機器によるバラメーターで表現することを検討した。測定にはテンシプレッサーを使用した。<BR>(1) そばとうどんの食感の基本的な違いも両者のfract.特性の差として示せる。<BR>(2) 測定や解析が簡便で再現性のよいパラメーターとして,新たにfract. indexを導入して検討した。<BR>(3) Fract. indexはそばのfract.特性および"のび"にともなう食感の変化を数字的に表現するのに極めて有用であった。<BR>(4) Fract. indexの値で0.74近辺がそばの食感として最適なfract.であり,これよりある程度高くなるとうどんに類似し,逆にこれよりある程度低くなると"のび"たそばの食感に類似するものと考えられる。<BR>(5) そばの放置にともなうテクスチャーの変化においてadhesivenessの変化がかなり大きく,これも"のび"にともなう食感の変化と大きく関係している。
著者
佐伯 明比古
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.191-198, 1990-03-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
9
被引用文献数
2 11

固定化酢酸菌の食酢製造の工程に利用し,製造期間の短縮および生産効率の向上を図ることを目的として,アルギン酸カルシウムによる酢酸菌の固定化条件および流動層型カラムリアクターを用いた連続酢酸発酵条件について検討し,次のような結果を得た. (1) アルギン酸カルシウムによる酢酸菌の最適固定化条件は,最終アルギン酸ナトリウム濃度1.0~1.5%,塩化カルシウム濃度2~3%,ゲル直径1.1~1.5mmであった, (2) 固定化酢酸菌による連続発酵では,希釈率0.32h-1の時,酢酸生産速度は最大となり7.2g/(l・h)であり,従来法と比較すると生成酸度と生産速度はともに2倍となった. (3) 固定化酢酸菌による連続発酵では,リアクターを二槽式とすることにより,単槽式よりも効率的に食酢を生産することができた.
著者
渡辺 英夫 鈴木 修
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.287-292, 1990-04-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1

数種類のα-アミラーゼ阻害剤の効果, α-アミラーゼ作用を抑制した場合の発芽処理麦の特性について実験を行い次の結果を得た. 1) 従来の色素でん粉法に若干の改良を加えた簡便方法によりα-アミラーゼ活性の測定を行い,阻害剤の影響を比較した.硝酸銀,硝酸銅, EDTA,硫酸ヒドラジンは, 0.1Mでα-アミラーゼに対し高い阻害効果を示した.特にEDTAは, α-アミラーゼそのものに対する阻害剤で取り扱いも容易なことから,利点が認められた. 2) 発芽処理麦から調製した小麦粉,小麦でん粉のアミログラム特性,フォーリングナンバー値は阻害剤を添加することにより健全麦からのものに類似したものとなったことから,発芽処理麦ではでん粉そのものはそれ程障害を受けていないが生地等になって初めて活性化したα-アミラーゼの作用を受け糊化特性の劣化を呈することが確認された. 3) EDTA等の阻害剤を使用することにより,発芽小麦の潜在的なビスコグラム最高粘度,フォーリングナンバー値をでん粉の単離,トルエン処理等を行うことなく測定する可能性が認められた.
著者
河野 勇人 姫野 国夫
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.1135-1139, 1992
被引用文献数
1 2

発酵食品における製品の再発酵を防止するための天然保存料の開発を目的に,食塩存在下において<I>Zygosaccharomyces rouxii</I>に対するキラー活性を有する酵母菌を<I>Kluyveromyces</I>属酵母のIFO type strainから検索した.クロステストによる検索の結果, <I>K. thermotolerans</I> IFO 1778株,<I>K. vanudenii</I> IFO 1673株, <I>K. lactis</I> IFO 1267株, <I>K.phaffii</I> IFO 1672株が, NaCl存在下(4%w/v)でキラ一活性を有していた.この4株の培養上澄液を添加したNaCl含有培地による<I>Z.rouxii</I>の培養試験の結果では, IFO 1778株のものが最も阻害効果が強かった.また,<I>K. thermotolerans</I>に属するIFO株9株のうち,このIFO 1778株のみ<I>Z.rouxii</I>に対しNaCl依存性のキラー活性を示した. IFO 1778株のキラータイプはK<SUB>1</SUB>~K<SUB>11</SUB>に属さない新しいタイプであり,そのキラー活性は核性遺伝によると思われた.
著者
畑 明美 緒方 邦安
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.132-137, 1976
被引用文献数
1

果菜類のナス,ピーマン,メロン,イチゴについて,生育中ならびに貯蔵中の硝酸塩含量について調べた。<BR>(1) ナスの果実の生育に伴い硝酸塩含量は増加し,いわゆる収穫適期に最高になり,夏採りナスでは,その後,完熟期にはやや減少した。部位別の含量分布をみると,果梗側の基部に含量が高く,出荷適期のもので270ppmも含まれており,果頂部はその1/4~1/5の含量であった。貯蔵中,硝酸塩はやや減少するようであるが,低温下では低温障害が生じ,20℃下では貯蔵後6日で一部腐敗果がでて亜硝酸塩の生成がみられた。<BR>(2) ピーマンの果実の硝酸塩含量を7月と8月の採取果で比較すると,収穫初期の7月果に含量が高く後期では約半分となった。生育に伴う硝酸塩の変化については8月収穫の果実でみたが,幼果期から完熟期へしだいに減少した。 1℃, 12℃, 20℃および1℃のCA(O<SUB>2</SUB> 3%: CO<SUB>2</SUB> 3%)下に貯蔵したが,いずれの区も貯蔵1カ月を経過しても硝酸塩量の変化はみられなかった。<BR>(3) メロンでは未熟果が適熟果に比し含量が高かった。とくに皮部に多く,胎座には少なく,食用とする適熟果の果肉部で17ppm程度であった。<BR>(4) イチゴの硝酸塩は約10ppmで果菜類中では少ない方であるが, 0℃および0℃のCA貯蔵でもあまり減少がみられなかった。 CA貯蔵では,かびの発生がおさえられる傾向がみられたが,亜硝酸塩含量は普通空気区とあまり変らなかった。<BR>本実験を行なうにあたり,試料提供など実験に援助をいただいた京都府大附属農場,寺田友良,今井俊夫の両氏に対し,また分析にあたりご協力いただいた川崎俊和氏,竹崎宏氏に深謝します。
著者
門田 利作 中村 武彦
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.7-10, 1967
被引用文献数
1

以上の実験結果をまとめてみるとつぎのようになる。<BR>(1) 日向夏の外果皮に対する収率は2.12%で全果に対して0.44%であった。これを他の柑橘類レモン,オレンジと交献<SUP>12)</SUP>によって比較してみるとそれぞれ全果に対し0.80%, 0.40%前後であるので,日向夏はこれら柑橘類に比べて精油含有量に大きな差はないようである。<BR>(2) 日向夏芳香中性化合物中,炭化水素化合物として,テルペン系のα-ピネン,d-リモネンを確認でき,かつ他の柑橘類と同じくd-リモネンが主成分であると思われる。<BR>(3) 炭化水素化合物以外に含酸素化合物としてテルペン系のシトラル,リナロール,ゲラニオールが確認され,また脂肪族としてカプリルアルデヒド,デシルアルデヒド,ノニルアルコール,デシルアルコールが確認できた。<BR>(4) ここで確認されたテルペン系および脂肪族化合物は他の柑橘類精油中にも含まれているにかかわらず,日向夏の芳香には一種独特のものが感じられる。これがなにに由来するかいろいろな要因によるものと思われるが,まず第1に考えられることは特有の微量物質の存在,成分の含量比などと思われる。引きつづきガスクロマトグラフ法で研究する予定である。<BR>本報の一部は1964年10月16日宮崎市で行なわれた日本農芸化学会西日本支部大会で講演した。