著者
吉田 博 藤本 水石 林 淳三
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.122-129, 1991

クリタケの栄養世代における栄養要求性(無機塩類,ビタミン類,核酸関連物質,植物ホルモン)を基礎培地を設定して静置培養法により検討した.<BR>(1) 燐酸カリウムおよび硫酸マグネシウムはクリタケの栄養生長に不可欠であり,添加量の増加に伴い生育速度ならびに菌糸体収量は増加し,30mg/lの濃度で最大生長に達した.硫酸亜鉛も生長促進効果を示し,3mg/<I>l</I>の濃度で最大生長に達した.<BR>(2) チアミンは栄養生長に不可欠であり,添加量の増加に伴い生育速度ならびに菌糸体収量は増加し,30μg/<I>l</I>の濃度で最大生長に達した.しかし,チアミンの単独添加では栄養生長は不十分であり,他の8種のビタミン類(ニコチンアミド.リボフラビン,パントテン酸,ピリドキシン,葉酸,シアノコバラミン,ビオチン,イノシトール)の添加により栄養生長は促進された.<BR>(3) 核酸塩基(アデニン,グァニン,シトシン,チミン,ウラシル,オロット酸),ヌクレオシド(アデノシン,グアノシン,シチジン,イノシン,ウリジン,チミジン),ヌクレオチド(アデニル酸,グアニル酸,シチジル酸,ウリジル酸)は生長促進効果を示したが,核酸塩基類,ヌクレオシドおよびヌクレオチド間の効果には顕著な差は認あられなかった。<BR>(4) IAA, NAAおよびGA<SUB>3</SUB>は1mg/<I>l</I>の濃度で若干の生長促進効果を示したが,IAAおよびNAAは10mg/<I>l</I>の濃度で逆に生長阻害作用を示した.
著者
緒方 邦安
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.10, no.11, pp.470-481, 1963-11-15 (Released:2010-03-08)
参考文献数
61
被引用文献数
2
著者
阿南 豊正 天野 いね 中川 致之
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.74-78, 1981-02-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
28
被引用文献数
2 5

緑茶(荒茶)を130℃で30分および160℃で30分加熱し,化学成分の変化を調べた結果,アミノ酸類,ビタミンC,遊離還元糖の減少が著しいのに対し,全窒素やカフェインはほとんど減少しないことが明らかとなった。次に,緑茶加熱中の成分変化に対する各成分の相互作用の影響を調べるため,テアニン,グルコース,(-)-エピカテキン,カフェインを各々組み合わせてセルロース粉末と混合し,130℃で30分および160℃で30分加熱し,各成分含量および熱水浸出液の吸光度を調べた結果,テアニンとグルコースの相互作用の影響が最も大きく,ついで(-)-エピカテキンとテアニンの相互作用の影響が若干認められた。
著者
高崎 禎子 久保田 紀久枝 小林 彰夫 赤塚 慎一郎
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.329-335, 1986
被引用文献数
3

脱脂大豆とかつお節だしけ抽出残渣を加水分解し調製された新しいタンパク質加水分解調味料(混合調味料)の香気成分を減圧蒸留法およびヘッドスペース法により分離し,GCおよびGC-MSから香気構成成分の同定を行った。香気成分は,有機酸,ピラジン類,ラクトン類,フラン類,含硫化合物,ピロール,アルデヒド類などから成っており,それらの多くは,オキアミ加水分解調味料の成分と共通していたが,混合調味料からは,オキアミ調味料の特有香気に関与している2-フェニル-2-ブテナール,4-メチル-2-フェニル-2-ペンテナール,5-メチル-2-フェニル-2-ヘキセナール等のアルドール型縮合物は見出せなかった。混合調味料とオキアミ調味料の香気濃縮物およびヘッドスベースの香気成分を比較することにより,混合調味料の穏やかな香気について考察した。
著者
原 利男 久保田 悦郎
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.26, no.9, pp.391-395, 1979-09-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
5
被引用文献数
1 3

新茶の香気特性とその保全方法を明らかにするため,1番茶期の上級煎茶の貯蔵中の香気成分の変化をガスクロマトグラフィーGC-MS法および官能検査などで調べ,次の結果を得た。(1) 新茶に多く含まれ貯蔵中に減少する香気成分として,n-ノニルアルデヒドとシス-3-ヘキセニルヘキサノエートを同定し,官能検査の結果からシス-3-ヘキセニルヘキサノエートが新茶の香気に少し寄与しているように推定された。(2) 新茶はプロピオンアルデヒド,1-ペンテン-3-オール,シス-2-ペンテン-1-オール,2,4-ヘプタジエナールおよび3,5-オクタジエン-2-オンなどは検出されないか,あるいはごくわずかしか存在しなかった。これらの成分は貯蔵中に生成するオフ・フレーバー成分と推定された。(3) 新茶の香気保全には超低温(-70℃)貯蔵の効果が著しかった。
著者
大野 富二雄 鈴木 進治 丸山 孝 西成 勝好
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.35, no.12, pp.835-842, 1988
被引用文献数
1 2

タンニン酸とゼラチンの混合物,及びそれより形成されるチューインガムについて検討した. <BR>(1) タンニン酸とゼラチンによるチューインガムは,混合物を水中で規則的な圧縮と折りたたみを繰り返すことにより得られ,混合物の調製はタンニン酸とゼラチンを60℃において5分間撹拌混合すると効率的であった. <BR>(2) 混合物からチューインガムの形成は,酸抽出ゼラチンはpH5で,またアルカリ抽出ゼラチンではpH4でそれぞれ最も効率的であったが,アルカリ抽出ゼラチンでは酸抽出ゼラチンに比較してチューインガム形成pH域が狭く形成率も低かった. <BR>(3) 添加水量を多くして調製した混合物は,チューインガムの形成率が低く,形成されるチューインガムの粘度は上昇する傾向が認められた. <BR>(4) タンニン酸のゼラチンに対する比率が0.2以下の混合物からはチューインガムは形成されなかった. <BR>(5) タンニン酸のゼラチンに対する比率を, 0.40あるいは0.50として調製した混合物から得られたチューインガムは,市販チューインガムよりも粘度が高いものの,アルベオグラフで膨れ度合を測定すると,ほとんど同じ体積となった.この時チューインガムは抗張力が大きく市販チューインガムの2~5倍の仕事量を要した.
著者
谷川 英一 元広 輝重 秋場 稔 鈴木 道章
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.24-26, 1968

アスパラガス缶詰の酸生成形式に属する膨脹変敗につき細菌学的検査を行なった結果を要約すれば次のようである。<BR>(1) 供試缶詰から37℃および50℃で好気的並びに嫌気的に発育する細菌1菌株を分離した。<BR>(2) 分離菌の汚染源は明らかでないが,アスパラガス栽培地より工場搬入までの過程で汚染の可能性のあることが推察される。<BR>(3) 分離菌芽胞の耐熱性は100°~105℃では12分間の加熱に耐えるが,110℃では8分間,115℃では6分間の加熱により死滅する。<BR>(4) 緩衝液のpHと分離菌芽胞の耐熱性との関係はアルカリ性で耐熱性の減少が認められる。
著者
冨金原 迪 外山 信男
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.79-82, 1968-02-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
3
被引用文献数
2

Effect of three organic acid salts on maceration of kelp was examined. By soaking in 1.0% Sodium citrate, the kelp was successfully jellied. Sodium oxalate exhibited the effect of similar level, while the effect of sodium lactate was significantly less than those two. The cell-walls was easily degraded, the solubles in jelly increased, and the precipitates decreased by treating the saltmacerated kelp with cellulase. Some easy-to-serve foods were prepared from this cellulase-treated jelly.
著者
大富 あき子 北倉 芳久 染谷 清一 橋本 彦尭
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.39, no.11, pp.953-959, 1992-11-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
21
被引用文献数
2 1

かえしのねかしに有用な微生物が関与しない場合の,“ねかし”操作が品質に与える影響を調べ,以下の結果を得た.かえしをねかした場合,かえしが大気に接触する開放系には,品質の改善及び嗜好性の改善が認められ,密封したかえしには品質の改善が認められなかった.微生物の菌数は,どちらのかえしにも同じように酵母の若干の増殖が見られ,その他の菌には経時変化は見られなかった.窒素雰囲気下でもかえしの熟成効果は認められたので,空気による酸化褐変はかえしの熟成による品質改善に影響してはいなかった.開放系でのねかしに伴いアルコール分の蒸発,特に比較的高蒸気圧な成分が減少していることが認められた.しかし高蒸気圧の1成分であるエタノールの減少は官能評価に影響は与えていなかった.以上より,かえしのねかしに有用な微生物の関与しない場合の熟成と思われる品質の改善は,エタノールや水と同時に蒸発するような高蒸気圧成分の揮発による現象ではないかと推定できた.
著者
釘宮 正往
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.40, no.12, pp.854-858, 1993-12-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
8
被引用文献数
1

野菜類及びいも類の酸・アルカリ処理による組織の崩壊の難易について検討した.酸処理は試料に塩酸を加えて上澄み液のpHを1.0~1.5として35℃で1時間または崩壊しにくい場合は24時間放置し,アルカリ処理は水酸化ナトリウム溶液を加えて上澄み液のpHを12.5~13.0として室温で2時間撹拌した.用いた試料の重量とアルカリ処理後の未崩壊物の重量から崩壊度(%)を求めた.その結果,トマト,カボチャ,サッマイモは酸処理なしで,アルカリ処理のみで,組織がほぼ完全に崩壊した.キュウリ,ナス,ピーマン,タマネギ,ニンニク,ユリ根,サトイモ,ジャガイモは酸・アルカリ処理で組織がほぼ完全に崩壊した.キャベツ,ハクサイ,レタス,ホウレンソウ,グリーンアスパラガス,プロッコリーは酸・アルカリ処理によって組織の50~100%が崩壊したが,崩壊度のばらつきが大きかった.このことは組織の接着機構の不均一性や繊維状組織の存在に起因するのではないかと推測した.ダイコン,ニンジン,ゴボウ,レンコン,ショウガ,クワイは酸・アルカリ処理による崩壊度が28%以下であり,組織が崩壊しにくいことが明らかとなった.組織が崩壊しにくいものの中には酸・アルカリ処理によって軟化するもの(ダイコン,ニンジン,クワイ)と,しないもの(ゴボウ,レンコン,ショウガ)があった.以上の結果から,酸・アルカリ処理による組織崩壊の難易は組織の接着機構の違いを反映したものと考察した.
著者
斎尾 恭子 有坂 将美
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.25, no.8, pp.451-457, 1978
被引用文献数
4

米国産食品用大豆,1975年度産IOMを試料とし,これを40℃, RH75.2%(飽和食塩デシケーター)に約1ケ月貯蔵し,貯蔵中の品質変化並びに豆腐への加工性変化を検討し,次のような結果を得た。<BR>(1) 貯蔵に対する窒素溶解指数(NSI),固形物抽出率が低下し,有機酸,脂肪酸度は増加した。またpHは僅かに酸性側に移行した。<BR>(2) 貯蔵した大豆は浸漬過程で溶出物が増加し,豆乳抽出率が減少し,また豆腐が軟弱になり凝固性が低下した。この凝固性の低下は,主に抽出率減少に伴なう豆乳濃度の低下に起因する。<BR>(3) 貯蔵した大豆蛋白質の溶解度低下は,希アルカリ溶液,メルカプトエタノール溶液で抽出することにより,また抽出を反復することによりほぼ回復した。<BR>(4)貯蔵した大豆の水抽出蛋白質画分にあっては,11S成分に対する7S成分の比率が増加した。
著者
山脇 和樹 森田 典子 村上 公一 邨田 卓夫
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.40, no.9, pp.636-640, 1993

収穫直後の生鮮なハーブ13種(コモンタイム,コリアンダー,フェンネル,ヒソップ,イタリアンパセリ,レモンバーム,オレガノ,ローズマリー,セージ,サラダバーネット,スペアミント,スイートバジル,スイートマジョラム)のアスコルビン酸に関する基礎調査を行って次の結果を得た.<BR>(1) 総アスコルビン酸含量は,最も多いサラダバーネットの297mg/組織100gから,最も少ないスイートバジルの67mg/100gの範囲内にあった.<BR>(2) アスコルビン酸酸化酵素は種によって活性に差がみられ,イタリアンパセリとサラダバーネットは活性が低く,他のハーブで比較的高い活性が認められた.<BR>(3) 熱湯5分間処理で,コリアンダーとレモンバームでは組織中のアスコルビン酸の約1/2が抽出液中へ溶出されるが,他のものでは約1/4以下であった.熱湯処理によるアスコルビン酸の残存率はスイートバジルで53%と最も低く,コリアンダー,フェンネル,イタリアンパセリおよびサラダバーネットでは90%以上であった.
著者
弘中 泰雅 杉山 也寸志
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.30, no.9, pp.516-520, 1983
被引用文献数
1

食パンストレート法の発酵条件を直交表L<SUB>8</SUB>(2<SUP>7</SUP>)に基づいて実験の割り付けを行い,製品に学える各要因の効果を検討した。<BR>(1) pHは捏上温度が上昇し,発酵時間が長くなり,ホイロ時間が長いほうが低下するが,なかでも捏上温度の影響が最も大であった。<BR>(2) T. T. A.は捏上温度が上昇し,発酵時間が長くなり,ホイロの時間が長いほうが増加したが,ホイロ時間の影響が最も大であった。<BR>(3) パンの比容積はホイロの影響を大きく受けるが捏上温度条件も重要である。発酵時間,パンチの効果も認められた。<BR>(4) 残存糖量は2糖類のみ,各要因の効果が認められ,捏上温度の低下,発酵時間の短縮により減少した。パンチの実施においても残存2糖量は減少する傾向にあった。
著者
重松 洋子 下田 満哉 吉武 清晴 筬島 豊
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.309-315, 1991-04-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

緑茶の香気特性を解明することを目的として,評価用語に対して専門の官能検査員がもっている匂いイメージを明らかにするとともに,品質の異なる60種の緑茶の香りを専門の官能検査員により評価し,得られた官能評価結果を数量化理論第3類ならびにクラスター分析により解析した.(1) マイナス要因とされる匂い用語についてはパネリスト間にその匂いイメージに関して若干のバラツキが認められたが,プラス要因の用語についてはイメージが良好に一致していることが明らかとなった.(2) 数量化理論第3類の第1,第2軸上で“おおい香”,“返り香”が特徴的な玉露,“茶の香り”,“新鮮香”,“みる芽香”に優れた上級煎茶,マイナス要因の“こわば臭”,“木茎臭”,“むれ臭”,“いちょう香”,“青臭”,“異臭”などを含む中・下級煎茶を特徴付けることができた.(3) 全情報の80%を要約した数量化理論第3類の第1~第3軸のスコアーを用いてクラスター分析を行なった結果,供試緑茶を匂い特性に基づいて8群に分類することができた.
著者
山本 泰 東 和男 好井 久雄
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.28, no.9, pp.496-501, 1981-09-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
22
被引用文献数
3 3

醸造における原料の有効利用や麹菌による着色コントロールを可能にするためには麹菌のヘミセルラーゼの作用を明らかにする必要があり,本報ではまず市販種麹から分離したキシラナーゼ活性について検討し,次の結果を得た。(1) 麹菌のキシラナーゼ活性測定の条件は,pH5.5,40℃ 30分の反応が適当であった。(2) 〓麹におけるキシラナーゼの生産は,散水が60%以上で30℃培養が優れ,40~60時間において急激に増加し,70時間で最高値に達した。(3) 麹菌を形態や種類によってグループ別けした場合には,これらのグループ間にキシラナーゼ平均活性の差を認めたが,いずれのグループにもキシラナーゼの強い菌株と弱い菌株が含まれていた。(4) キシラナーゼ活性と中性及びアルカリ性プロテアーゼ活性との間には高度に有意の相関があり,醤油の醸造等においてヘミセルロースと蛋白質の分解の関連性が推測された。
著者
小野崎 博通 南 公子 高桑 稔子
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.18, no.7, pp.346-350, 1971
被引用文献数
1

タール色素が酸性溶液中で生イーストに吸着されることを応用して,キャンデー類中に含まれる食用人工着色料の分離定量法を検討した。<BR>(1) 着色料の酵母菌体への吸着に対して,共存する糖の影響ならびに生細胞と死滅細胞との色素吸着力を比較したところ,死滅酵母は糖の存在に関係なくよく色素を吸着するのに対し,生酵母の場合では糖の添加によって吸着力が著しく増大した。<BR>(2) 酵母菌体に吸着した色素は0.5Nアンモニアにより抽出され,高い回収率を得た。<BR>(3) 酵母菌体より抽出された混合色素溶液をシリカゲルGのプレートに液状フェノールを展開溶媒としてTLCを行ない,各分離帯の抽出液を比色測定し分離定量することができた。<BR>(4) 分析の応用例として市販のこんぺいとうおよびスティックキャンデー中のタール色素を分離定量した。
著者
山口 直彦 加納 正男 池田 公子 木島 勲
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.114-119, 1984
被引用文献数
4

西洋わさび粉,芥子粉の抗酸化力及びトコフェロール製剤に対する相乗性を試験し,次の結果を得た。<BR>(1) 芥子粉は西洋わさび粉に比較して強い抗酸化力を示した。<BR>(2) 酵素ミロシナーゼを失活し,アルキル芥子油の生成を抑えると,芥子粉,西洋わさび粉の双方に抗酸化力の増大が認められた。<BR>(3) 芥子油配糖体の主成分であるシニグリンには抗酸化力が認められるが,その効力は弱い。<BR>(4) 芥子粉の脂質は抗酸化力を示さなかった。しかし,脱脂によって,芥子粉の抗酸化力は約2倍の増大が認められた。<BR>(5) 芥子たんぱく質は芥子たんぱく質分離液より抗酸化力が強い。しかし,芥子たんぱく質は芥子粉より効力が弱かった。<BR>(6) 芥子粉(加熱)はトコフェロール系抗酸化剤の2倍以上の抗酸化力を示した。<BR>(7) 芥子粉(加熱)は味そとは相加的に,トコフェロールとは相乗的に作用し,抗酸化力の著しい増大が認められた。<BR>(8) 芥子粉(加熱)を添加したビスケットを試作し,保存試験を行った結果,芥子粉添加ビスケット中のラードの酸化安定性は著しく向上した。
著者
三木 登
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.119-125, 1975

トマト中に存在する天然の抗酸化物質を分離,同定し,リコピンの酸化に対するそれらの抗酸化能について調べた。<BR>(1) トマトジュースのメタノール抽出液中からFlori-silカラムクロマトグラフィーおよび薄層クロマトグラフィー(TLC)により抗酸化物質を分離した。<BR>(2) 主たる抗酸化物質は,TLC,紫外線および赤外線吸収スペクトルなどにより,α-およびγ-トコフェロールと同定した。<BR>(3) トマトジュース中のトコフェロール総量は約0.7から1.1mg%であった。平均組成はα-, γ-およびδ-トコフェロールがそれぞれ85%,15%および2%であった。<BR>(4) トマト中に存在するトコフェロールでトマト中のリコピンの酸化を十分に防止できるものと推定した。<BR>(5) リコピンの酸化に対する抗酸化能はα->γ->δ-トコフェロールの順であった。合成酸化防止剤(ブチルハイドロオキシアニソール,ブチルハイドロオキシトルエン)およびフラボノイドのリコピンの酸化に対する抗酸化能はトコフェロールにははるかにおよぼなかった。