著者
板橋 雅子 高村 範子
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.32, no.12, pp.859-863, 1985

木曽地方の現地で行なわれているすんき漬の方法(漬種添加,ズミ果実添加,ヤマブドウ果実添加)を実験室で同一条件下に漬処理を行ない,以下の結果を得た。<BR>(1) 粗たんぽく質および総アミノ酸の含量はズミ果実破砕物添加漬製品が最高で,ヤマプドウ破砕物添加漬製品が最低であった。<BR>(2) 漬処理初期と終期のpHはヤマブドウ丸のまま添加漬製品が最低で,漬処理終期のpHはヤマブドウ破砕物添加漬が最高であった。<BR>(3) ズミ果実破砕物添加漬製品は遊離アミノ酸含量が最低であるにも拘らず,官能試験で最高の評価を得た。これは恐らく破砕されたズミ果実中のリンゴ酸,コハク酸,クェン酸および果糖,ブドウ糖が漬物中に浸透したためと考えられる。
著者
原 征彦 渡辺 真由美
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.36, no.12, pp.951-955, 1989-12-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
10
被引用文献数
32 37

茶のタンニン(ポリフェノール)成分として緑茶からカテキン類を4種,紅茶からテアフラビン類を4種分離精製した.これらがボツリヌス菌の芽胞および栄養細胞に対して示す抗菌力を最小発育阻止濃度(MIC)により求めた.芽胞はパウチ法,栄養細胞は画線法でそれぞれを嫌気培養し,ポリフェノール濃度の違いによる菌の生育の有無を調べた.その結果,ガレートカテキン類およびテアフラビン類は100~300ppmの濃度で,ボツリヌス菌の芽胞の発芽および栄養細胞の増殖を阻止した. 同じポリフェノール類が,他の耐熱性有芽胞細菌の芽胞および栄養細胞に対しても抗菌力を示すか否かにつき同じくMIC試験を行なったところ,菌により低濃度で発育が阻止される場合と高濃度でも発育が阻害されない場合とがあり,一定の傾向はみられなかった. なお本報の一部は日本食品工業学会第35回大会シンポジウム10)において発表した.
著者
平田 貴美子 茶珍 和雄 岩田 隆
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.34, no.9, pp.566-573, 1987
被引用文献数
8

(1)ヒユ,キンサイ,ツルムラサキ,ヨウサイ,サイシン及びパクチョイを厚さ0.03mmの低密度ポリエチレン袋(26cm×38cm)に密封し,1℃,6℃,20℃と30℃に貯蔵して品質の変化を調べた.20℃と30℃区では,いずれの野菜においても品質低下の要因となったのは主に葉の黄化であったが,緑色保持期間が比較的長かったのはツルムラサキとパクチョイであった.ヨウサイ及びヒユでは1℃と6℃区で低温障害の褐変が発生し,ツルムラサキでは1℃で葉にpittingと軟化という低温障害の症状が認められた.他の野菜では低温ほどよく鮮度が保たれた.<BR>(2)ヒユ,キンサイ及びパクチョイは貯蔵温度が低いほどアスコルビン酸(ASA)含量をよく保持していた.低温障害を生じたツルムラサキとヨウサイは低温区でのASA含量の減少が速やかであったが,ヒユではよく保持されていた.またツルムラサキは30℃においてもASAの減少が非常にゆるやかであった.<BR>(3)貯蔵中のクロロフィル含量を調べたところ,キンサイでは各温度区の間に明らかな差が認められなかったが,その他の種類では低温に貯蔵したものほどよく保持されていた.<BR>(4)遊離アミノ酸含量は,貯蔵温度が高いほど増加する傾向にあった.<BR>(5)総フェノール含量は,ヨウサイの低温区とキンサイの全温度区で,貯蔵中いったん増加した後減少した.その他の葉菜類においてはほぼ一定であった.
著者
平田 孝 渡辺 直哉 石谷 孝佑
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.33, no.9, pp.685-689, 1986
被引用文献数
1

二重包装した焼きのりと味付けのりの水分変化を予測する手法について検討した.まず,焼きのり,味付けのりの水分収着等温線を作成し,経験式に当てはめた.各種の包装形態に適用できるように一般化した数学モデルと水分収着等温線の経験式を用いて,二重包装した焼きのり,味付けのりの水分変化をシミュレートした.開発した数学モデルによって計算された予測値は実測値と良く一致した.コンピューターシミュレーションは乾燥食品の防湿包装設計に有益であると考えられた.
著者
伊東 裕子 熱田 純生 柴田 敬二 下田 満哉 筬島 豊
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.30, no.8, pp.435-441, 1983-08-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
3
被引用文献数
2 3

内部標準法によるコーヒー粉末のヘッドスペースガス分析法を用いて標準アロマグラムを作成するとともに,種々の包装形態における保存中の品質変化の違いを比較した。(1) 工場規準に基づいて焙煎(10回,生豆100kg/回)した同一種類の豆についてガスクロマトグラフ分析および官能検査を行い,標準アロマグラムを作成した。得られたアロマグラムは満足すべき再現性を示し,今後品質管理の基準として有用と考えられた。(2) 3種の包装形態においてコーヒー粉末を6ヵ月間貯蔵した。「劣化の有意差*」があらわれるのはピーク5対ピーク8比を基にしていずれも4ヵ月目と判定され,官能検査の結果もこれに一致した。包装形態間の優劣は官能検査では識別されたが,ガスクロマトグラフィーによってはできなかった。
著者
郡田 美樹 河辺 達也 長浜 源壮 森田 日出男 大林 晃 渡辺 裕季子 奥田 和子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.91-97, 1990
被引用文献数
3

炊飯米フレーバーに対するみりんの調理効果を調べるため,改造電気釜を用いて炊飯米のヘッドスペースガスを回収し,機器分析を行った.その結果若干の知見を得,原因について検討した. <BR>(1) フレーバー成分吸着剤Tenax TAを用いたフレーバー回収には循環系の装置が開放系に比べて回収率が高く,値の変動が小さかったので適していた.エタノールの添加は回収率等に影響を与えなかった. <BR>(2) 炊飯米フレーバーをTenaxで回収し, GCで130余りのピークを検出した.主要なピークのうち約40を同定した.成分別ではアルカナール,アルコール,アルケナール,直鎖ケトンの順に多かった.特にn-ヘキサナールの含量が高かった. <BR>(3) みりん添加炊飯米を同様にして分析すると,添加前に比ベガスクロマトグラム上のピーク面積の減少が認められた.減少率の大きかったアルカナールの中でもn-ヘキサナールの減少率が最も高く,筆者らが官能検査でヌカ臭の減少を認めた結果と一致した.またみりん添加により新しく検出された成分は無かった. <BR>(4) みりん添加によるアルカナール等揮発性カルボニル化合物の減少は,みりん成分と米成分間のアミノ=カルボニル反応又はその中間生成物の作用,及びみりん中のα-ジカルボニル類の作用が考えられた.また,みりん添加による炊飯米の物性変化が反応系に影響を及ぼすことが示唆された.
著者
森 光國
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.259-264, 1975

トマトジュース缶詰の品質指標を選定するため,全カルボニル化合物について分離・同定した。また揮発性カルボニル化合物についてもガスクロマトグラフで測定した。その結果大要次のことが明らかになった。<BR>(1) 主要なカルボニル化合物として3-デオキシグルコソン,3-デオキシペントソン,HMFおよびフルフラールが分離同定された。<BR>(2) これら主要カルボニル化合物のうち,量的に多いのは3-デオキシグルコソンおよびフルフラールで,HMFは高温下に貯蔵した場合にのみ多量に生成した。これに対し,フルフラールは室温下でも明らかに生成した。<BR>(3) いっぽう揮発性カルボニル化合物としては9成分のn-アルカナール類,3成分のn-メチルアルキルケトン類およびフルフラールが検出され,このうち貯蔵によりけん著に増加するのはフルフラールであった。<BR>(4) 以上のことからトマトジュース缶詰の品質指標をカルボニル化合物からみた場合にはフルフラールが適当と思われる。
著者
酒井 達郎 川合 弘志
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.13, no.9, pp.385-387, 1966-09-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
5

(1) 本実験は千歳飴の曲り防止のため行なったもので,製造後どのような保管温度に置かれても粘度が1010Poise以上あれば曲りは防止できる。(2) 濃縮温度140℃と145°~150℃では飴内部の結合状態が異なり,140℃の場合は145℃に比較すれば非常に曲りやすい。(3) 濃縮温度140°~150℃における見掛け活性化エネルギーは測定温度領域25°~40℃で85.4~63.2kcal/molである。
著者
中林 敏郎 真野 三蔵
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.22, no.11, pp.549-553, 1975
被引用文献数
2

焙煎中のクロロゲン酸類の質的および量的変化を明らかにするために,熱分析曲線の変化とクロロゲン酸類の変化との関係を検討した。<BR>(1) コーヒ豆粉砕物の圧縮成形試料を用いることにより,再現性のある熱分析曲線を得ることができた。<BR>(2) コーヒー豆,そのメタノール抽出物,およびクロロゲン酸の熱分析曲線は類似しており,200℃付近に吸熱があり,それ以上で著しい発熱と重量減が起こる。<BR>(3) 200℃付近の吸熱はクロロゲン酸類からの多数の熱変化物の生成反応に基くもので,熱変化物の一部が焙煎コーヒーに含まれることをTLCクロマトグラフィーで明らかにした。<BR>(4) 200℃以上での急激な発熱と重量減は,コーヒー豆成分の酸化や燃焼によるもので,この段階での褐色色素の急増に平行してクロロゲン酸類が急減することをアンモニア発色法を用いて明らかにした。<BR>(5) 以上の結果から,焙煎中クロロゲン酸類は直接,あるいは多数の熱変化物や他の成分との反応で生成する2次生成物を経て褐色色素に変化するものと推定した。<BR>本実験を行なうに当り熱分析の御指導を頂いた本学部の加藤芳朗教授に感謝する。また御援助を頂いたソントン食品工業株式会社および試料を提供して頂いた(株)トミヤコーヒー店(静岡市)に感謝する。
著者
アグレバンテ ジョセフイン 松井 年行 北川 博敏
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.37, no.11, pp.911-915, 1990
被引用文献数
8

本研究は,エタノール及びエチレン処理されたバナナの追熟中のホスホリラーゼとインベルターゼ術変化について検討したものである.バナナ果肉中術デンプン含量は,緑色段階の約20%から完熟段階の1%以下に減少し,一方全糖は20%へ増大した.追熟の同じ段階でエタノールとエチレン処理果実術デンプン・ショ糖含量と酵素活性はコントロール術それと共通点があった.ホスホリラーゼ活性は,デンプン術初期分解段階(カラーインデックス2)で増大し,デンプンの減少と同時に追熟術後期で減少した.他方,インベルターゼ活性は緑色段階で非常に低かったが,ショ糖の急激な増大に伴ってカラーインデックス3(黄色より緑色)で著しく増大した.
著者
宮口 右二 境 久美子 米倉 政実 堤 将和
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.36, no.9, pp.720-725, 1989-09-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
21
被引用文献数
4 6

グロビンのサクシニル化を行って,サクシニル化グロビンを調製し,その性状について検討した. (1) グロビンはpH 3.0以下で可溶であり,中性付近(pH 7.0~8.0)で最も低い溶解性を示した.これに対してサクシニル化グロビンはpH 4.0付近で最も低い溶解性を示すが,中性からアルカリ性側では高い溶解性を示した. (2) グロビンは硫酸アンモニウム0.1飽和(pH 2.0)で,サクシニル化グロビンは0.4飽和(pH 7.0)で完全に塩析された. (3) サクシニル化グロビンの起泡性はグロビンよりも優れていたが,気泡安定性の面ではグロビンよりも劣っていた. (4) グロビンはpH 2.0, 4.5, 7.0, 9.0, 11.0という条件下では加熱ゲルを形成しなかったが,サクシニル化グロビンはpH 2.0で明瞭なゼリー状ゲルを形成した. (5) グロビンはpH4.0でオボアルブミンの加熱凝集を強く防止した.一方サタシニル化グロビンはグロビンよりも中性に近いpH (pH 6.0)で凝集防止効果を発現した.
著者
武田 泰輔 岡田 早苗 小崎 道雄
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.31, no.10, pp.642-648, 1984
被引用文献数
1 4

穀類粉のなかの,小麦粉による発酵生地の代表的食品であるパンにおいて,乳酸菌がどのような働きをしているかを究明する実験によって,以下の結果が得られた。<BR>(1) 製パン工場の食パン生地及びバターロール生地中の酵母と乳酸菌の菌数を計測した結果,4時間の発酵過程中に酵母は生地1g当たり10<SUP>8</SUP>個のオーダーで,乳酸菌は生地1g当たり10<SUP>6</SUP>個のオーダーで存在することを認めた。<BR>(2) この乳酸菌の主たる由来を原材料中の生イースト及びドライイーストに求め,これら13試料について乳酸菌数を計測した。その結果,生イースト7試料については製品1g当たり10<SUP>8</SUP>~10<SUP>10</SUP>個のオーダーで,またドライイースト6試料(うち2試料は国産,4試料は欧米よりの輸入品)については製品1g当たり10<SUP>2</SUP>~10<SUP>6</SUP>個のオーダーで存在していた。<BR>(3) 上述の各試料より総計81株の乳酸菌を分離取得し,形態,発酵タイプ等の特徴から各試料に優勢を占める株を代表株として計15株を選び詳細な同定試験を行ってBERGEY'S MANUAL第8版に照合し種名を決定した。<BR>(4) その結果,パン生地からはLactobacillus planta-rum, L. casei,生イースト及びドライイースからは,L. plantarum, L. casei, L. brevis, L. cellobiosus,及びBacillus coagulans系統の乳酸菌が同定された。これらは,発酵性糖を高濃度に含む植物質の発酵液などによく見られるタイプである。<BR>(5) これら分離乳酸菌が,増殖のない状況下でどの程度の生物活動をし得るかを調べた。パン生地と生イーストから分離した代表株9株について,3%ブドウ糖を含むGYP液体培地に,1ml当たり菌数が10<SUP>8</SUP>~10<SUP>9</SUP>個となるように多量の菌体を接種して48時間培養後,その乳酸生成量を測定した結果,いずれの乳酸菌株も,多い少いの差はあるが,すべて乳酸を生産した。このことから,これら乳酸菌は,生地中の分裂増殖がない状況下でも何らかの活動をするものと考えられる。よってパン生地発酵過程中で,乳酸菌は生地やパンの品質,味覚等に何らかの影響を及ぼしているものと考えた。<BR>(6) 研究室の実験規模で,酵母と乳酸菌をそれぞれ別々に純粋培養し,酵母だけで生地発酵して焼いたパンと,酵母と乳酸菌を混合して生地発酵して焼いたパンとで風味等を比較した結果,前者はいわゆる酵母臭があったのに対し,後者ではそれが消失することや,生地の伸展性が良好になるなど,両者間に差があることを認めた。<BR>(7) 以上のことから,培養酵母を添加して造る通常のパン生地発酵には,乳酸菌も関与しており,パンの品質や味覚などに何らかの好ましい影響を与えていると考えられる。従って,旧来の自然発酵生地(パン種)中の固有の乳酸菌を究明し,パン製造に適した優良な乳酸菌を見つけ出して,今日のパンの品質や味覚等の向上改善をはかることが,可能であると考える。
著者
村田 敏 田中 史彦
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.333-338, 1992-04-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
10

大豆油,菜種油,綿実油,サフラワ油,米ぬか白絞油,胡麻油の6種類の食用油について蒸気圧の測定を行った結果,以下の知見を得た.(1) 先述の食用油の蒸気圧曲線が明かとなり,そのうち大豆サラダ油,綿実サラダ油,菜種サラダ油,米ぬか白絞油についての蒸気圧曲線は,その増加傾向が290℃前後で変わることが分かった.サフラワサラダ油については指数的増加の傾向を示すことが,また,胡麻油については280~300℃の間で蒸気圧一定の状態があることが分かった.(2) 測定データに非線形のRiedel型の蒸気圧式を最小二乗法によって当てはめた.その結果,極めて適合性は良好であり,その計算式ln PVD=A+B・T-1+C・ln T+D・T6は食用油の蒸気圧を算出する際,実用上極めて有用であることが示された.
著者
緒方 邦安 伊東 卓爾 岩田 隆
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.21, no.8, pp.394-399, 1974-08-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
9
被引用文献数
1

コールド・チェーンにおける果実そ菜の品質保持と温度変動の許容度との関係について,今回はホウレンソウとセロリーについて調査した。(1) ホウレンソウの商品性保持期間は1℃区で約5週間,6℃区で約15日,20℃区では3~4日であった。冷蔵遅延区は20℃の影響が強く,1日の遅れは1℃区に比べて約25日間劣った。6℃ 3日→1℃区も約10日間短縮された。冷蔵中断区は20℃下で急激な鮮度低下を示した。また貯蔵温度の変動は著しい品質低下をまねき,商品性保持期間はかなり短縮された。(2) セロリーでは,20℃区は5~6日後に腐敗を生じ商品性を失なつた。6℃区は25日前後が限界であったが,1℃区は約35日間商品性を保持した。冷蔵中断区では,中断後急速に商品性を失った。1℃〓6℃(1日毎)と1℃〓6℃(5日毎)の変温区を比較すると,5日ごとの区が1ごとの区よりも7日近く劣った。(3) ホウレンソウの還元型アスコルビン酸含量は,貯蔵中に減少したが,とくに冷蔵の遅れや中断によって強く影響を受け減少した。(4) セロリーの揮発性成分のGLCパターンは貯蔵温度により大きな影響を受け,とくに20℃区および6℃区での商品性の限界付近でのピークとの著しい増加を認めた。1℃区では28日後でもピークとの増加はなく,逆にピークaの増加を認めた。(5) セロリーの還元糖含量は,1℃区では漸次増加する傾向にあり,6℃区はほとんど変らず,20℃区は減少の傾向を示した。(6) 以上のように,ホウレンソウおよびセロリーは低温要求度が高く,かつ温度変動に敏感に反応することが判明した。したがって,このような青果物では,収穫後ただちに1℃付近の低温でしかも厳密に調整された条件の下で貯蔵を行なう必要があることを指摘した。
著者
杉沢 博 田村 啓敏 中原 一晃
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.35, no.10, pp.709-712, 1988-10-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
5
被引用文献数
3 5

GC/MSによる揮発成分の同定に保持指標Kovats Indexを補助手段として活用すると,同定はかなり容易になる.現在手持ちのデータ処理装置(市販のCR 3AそれぞれC-R 2A)の持つBASICプログラム機能を活用して,自動的かつ連続的にKI値を計算,出力させるプログラムを開発した.このプログラムを一部変更すれば, BASICプログラム機能をもつ他の機種にも応用できる.この方式によれば, KI値計算のためコンピュータやインターフェースなども不要であり,また,データ処理装置のほかの機能にも支障はない.
著者
中林 敏郎 真野 三蔵
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.22, no.11, pp.549-553, 1975-11-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

焙煎中のクロロゲン酸類の質的および量的変化を明らかにするために,熱分析曲線の変化とクロロゲン酸類の変化との関係を検討した。(1) コーヒ豆粉砕物の圧縮成形試料を用いることにより,再現性のある熱分析曲線を得ることができた。(2) コーヒー豆,そのメタノール抽出物,およびクロロゲン酸の熱分析曲線は類似しており,200℃付近に吸熱があり,それ以上で著しい発熱と重量減が起こる。(3) 200℃付近の吸熱はクロロゲン酸類からの多数の熱変化物の生成反応に基くもので,熱変化物の一部が焙煎コーヒーに含まれることをTLCクロマトグラフィーで明らかにした。(4) 200℃以上での急激な発熱と重量減は,コーヒー豆成分の酸化や燃焼によるもので,この段階での褐色色素の急増に平行してクロロゲン酸類が急減することをアンモニア発色法を用いて明らかにした。(5) 以上の結果から,焙煎中クロロゲン酸類は直接,あるいは多数の熱変化物や他の成分との反応で生成する2次生成物を経て褐色色素に変化するものと推定した。本実験を行なうに当り熱分析の御指導を頂いた本学部の加藤芳朗教授に感謝する。また御援助を頂いたソントン食品工業株式会社および試料を提供して頂いた(株)トミヤコーヒー店(静岡市)に感謝する。
著者
末綱 邦男
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.7-14, 1990

Streptomyces californicusの液体培養によって生産された赤色色素を単離精製し,機器分析 (UV,IR,MS, NMR)によりその構造解析を試みた結果,ジデオキシグリセオロジンCと同定した.また,ジデオキシグリセオロジンCはペプチドとの複合体を形成することによりその水溶液は美麗な赤色を呈するので,天然食用色素としての可能性を検討した.基礎的検討の結果,色素-ペプチド複合体水溶液の色調はpH3~5では赤色から赤橙色を呈して, pH6~9では赤橙色から赤紫色を呈した.また,熱に対しては非常に安定であるが,紫外線に対する耐光性は劣った.安全性については初期試験の段階であるが,その急性毒性値はきわめて低く,また突然変異誘発性も有しないと推定された.今後各種食品への利用適性などの応用研究を進め,さらに安全性面での保証が十分得られるならば食用色素としての開発が可能と考えられる.本研究において,終始御指導を賜わりました名古屋大学化学測定器センター近藤忠雄博士, UBE科学分析センター(株)斎藤啓治氏に深く感謝いたします.