著者
奥田 稔 宇佐神 篤 伊藤 博隆 荻野 敏
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.105, no.12, pp.1181-1188, 2002-12-20
被引用文献数
4 4

アレルギー性鼻炎患者(AR)における昆虫アレルゲンの症状への関与を調べるため,560例のARを対象にしてガ,ユスリカ,ゴキブリを含む13アレルゲンに対するIgE抗体を測定した.また,65例の患者でこれら3種の昆虫の鼻誘発試験を実施した.<br>ガ,ユスリカおよびゴキブリに対するIgE抗体保有率はそれぞれ32.5%,16.1%,13.4%であった.これらIgE抗体保有率には,地域,年齢,治療および合併症による差は認められなかった.<br>鼻誘発試験で陽性と判定される割合は,RASTクラスが高いほど多くなる傾向があった.とくにゴキブリ,ガにおいて,RASTクラス3以上では,各々55.6%および61.5%が鼻誘発試験に陽性を示した.<br>昆虫間のIgE抗体価の相関を検討したところ,ガ,ユスリカ間には強い相関が認められ共通抗原性を示唆したが,ゴキブリ,ガ間およびゴキブリ,ユスリカ間では強い相関は認められなかった.また,いずれの昆虫もヤケヒョウヒダニおよび室内塵に対するIgE抗体価との相関は認めなかった.<br>以上の結果,日本においてガ,ユスリカ,ゴキブリは,アレルギー性鼻炎を起こす原因となっていることが示された.
著者
鈴木 光也
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.114, no.1, pp.15-23, 2011-01-20

superior canal dehiscence syndrome (上半規管裂隙症候群) とは, 上半規管を被っている中頭蓋窩天蓋や上錐体洞近傍の上半規管周囲に骨欠損を生じ, 瘻孔症状, Tullio現象, 難聴などさまざまな臨床症状を来す疾患単位である. 発症の機序はいまだ不明であるが, その頻度は欧米に比較してアジア諸国では少ない. 本症候群の瘻孔症状やTullio現象は上半規管の刺激によって生じるため特徴的な眼球偏倚がみられる. つまり時計回りまたは反時計回りの回旋成分を含んだ垂直性の動きであり, 上半規管が正に刺激されると上方に, 負に刺激されると下方に眼球が偏倚する. 難聴は伝音難聴 (気導—骨導差) も感音難聴も生じうる. その他, 前庭誘発筋電位 (Vestibular evoked myogenic potential) 検査において振幅の増大と反応閾値の低下がみられる. 画像診断には側頭骨HRCT (high resolution CT) が用いられる. 上半規管裂隙症候群の診断ではスライス幅0.5-1.0mmの冠状断CTが有用とされているが, CTのみでは裂隙の診断に限界があり, false positiveに注意しなければならない. false positiveを排除するためには神経耳科学的検査で上半規管瘻孔を示唆する眼球運動の確認が必要である.
著者
長縄 慎二 中島 務
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.113, no.10, pp.783-789, 2010-10-20
被引用文献数
3 1

従来, 難聴やめまいのMRI (Magnetic Resonance Imaging) 診断では聴神経腫瘍の有無や奇形, 椎骨脳底動脈循環不全, 脳腫瘍, 多発性硬化症などが診断される程度であり, 内耳のリンパ環境の変化については, 迷路炎によるリンパ腔の形態的変化や著明な内耳出血がない限り検出が困難であった.<br>近年, 3Tの登場とマルチチャンネルコイルによる信号雑音比の向上, 新しいパルスシークエンスソフトの開発による高速化などのMR技術の顕著な進歩が複合して, 内耳リンパ環境の変化を鋭敏に捉えることのできる3D-FLAIR (fluid attenuated inversion recovery) が臨床応用可能となり, 従来は画像的な異常を検出できなかった突発性難聴やハント症候群, ムンプス難聴などの多くの患者で異常所見を検出し得るようになった. さらに3D-FLAIRを鼓室内ガドリニウム造影剤投与と組み合わせることによって, 内リンパ水腫を検出することが可能となった. しかし, 本法はガドリニウム造影剤の適応外使用であり, 侵襲性もあるので, 次のステップとして静脈注射での内リンパ腔描出を目指した. まず血液迷路関門の透過性が亢進していると思われる突発性難聴症例を対象に通常量静脈投与4時間後には迷路外リンパ腔が増強され, 前庭において内リンパ腔の認識が造影欠損として可能であることを示した. メニエール病については国内で認可されている最大量である2倍量のガドリニウム造影剤の静脈投与4時間後の3D-FLAIRで蝸牛, 前庭において内リンパ水腫を描出することに成功した. しかし, 静脈投与4時間後撮影は鼓室内ガドリニウム造影剤投与に比べて造影剤の外リンパ移行が不十分なことも多く, さらに薄い濃度の造影剤を検出する方法を検討している. このようにさまざまな内耳MRI研究は, 感音性難聴とめまいにおける画像を使った客観的医療の導入のきっかけとなることを目指して進化している.
著者
小林 正佳 今西 義宜 石川 雅子 西田 幸平 足立 光朗 大石 真綾 中村 哲 坂井田 寛 間島 雄一
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.986-995, 2005-10-20
被引用文献数
5 7 3

嗅覚障害の治療としてステロイド薬の点鼻療法が一般的に行われているが, 治療が長期にわたる症例も多くその副作用が懸念される. ステロイド薬点鼻療法長期連用に関してその安全性を有用性と比較して検討した報告はない. そこで今回は当科嗅覚味覚外来で同療法を施行した患者を対象にこの比較検討を施行した.<BR>0.1%リン酸ベタメタゾンナトリウム液 (リンデロン液®) の点鼻療法を施行した62例中42例 (68%) に点鼻開始後1~2カ月で血清ACTHまたはコルチゾール値の低下が出現したが, 異常な理学的所見や自覚的症状は認められなかった. 点鼻療法を中止した8例は全例1カ月後にそれらの値が正常範囲内に回復した. 一方, 同療法を継続した34例中4例で開始後2~5カ月で自覚的な顔面腫脹感, 顔面の濃毛化というステロイド薬のminor side effectが出現したが, 中止後1カ月ですべての症状が消失した. 同療法のみを3カ月以上継続した23例の治療効果は, 自覚的嗅覚障害度, 基準嗅力検査上ともに統計学的に有意な改善がみられ, 日本鼻科学会嗅覚検査検討委員会制定の嗅覚改善評価法でも78%例で何らかの改善判定が得られた.<BR>ステロイド薬点鼻療法の長期連用は軽度で可逆的な副作用を生じ得る. 一方, 嗅覚障害の治療効果は高い. よって同療法は有用な嗅覚障害の治療法であり, 臨床的必要性に応じて十分な注意の下に長期連用することは可能と考えられる.
著者
岩崎 幸司 小野 勇 海老原 敏
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.92, no.12, pp.2047-2054, 1989
被引用文献数
12 8

A total of 27 cases of salivary gland adenocarcinomas were studied from clinicopathological view point. Adenocarcinomas of the salivary gland were microscopically subclassified into 3 groups according to Luna's classification : Salivary duct carcinomas histologically resembled the ductal carcinoma of the breast, displayed nuclear atypia and had poorer prognosis than the other subclasses of salivary gland adenocarcinomas. Terminal duct carcinomas lacked in nuclear atypia and displayed a variety of growth patterns, including papillary, cribriform, tubular, and solid. Some terminal duct carcinomas showed prominent mucin-production. Epithelial-myoepithelial carcinomas had clear cytoplasms and exuberant glycogen.<br>In addition to the clinicopathological study, nuclear areas of the tumor cells were measured in each of the 27 salivary gland adenocarcinomas, and mean nuclear area (MMA) and standard deviation (SD) were calculated. The group with more than 50 um2 of MNA had poorer prognosis than the group with 50 um2 or less of MNA, and the group with more than 13 um2 of SD had poorer prognosis than the group with 13 um' or less of SD.<br>Finally, immunohistochemical study was performed against various markers including keratin, epithelial membrane antigen, lactoferrin, S-100 protein, CEA, etc., using the Avidin-biotin-peroxe idase complex method. Lactoferrin was present in most of the salivary duct carcinomas, on the other hand, S-100 protein was detected in all of the five cases of the terminal duct carcinoma investigated. But immunohistochemical study is not especially useful in distinguishing subclasses of salivary gland adenocarcinomas or investigating the origin of tumor cells.
著者
久保田 彰 古川 まどか 藤田 芳史 八木 宏章
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.113, no.3, pp.101-109, 2010
被引用文献数
2 2

根治切除可能な進行頭頸部扁平上皮癌に対する化学放射線同時併用療法 (CRT) の毒性および効果に関連する因子を検討した. stage IIIとIVの115例に対する放射線の中央値は66Gy (58-70) で, 化学療法は5FUの1,000mg/m<SUP>2</SUP> を4日間の持続点滴とcisplatinの60mg/m<SUP>2</SUP> の2コース同時併用を行った. grade 3以上の粘膜炎はN0が13%でN1-2は59%と有意差を認めた. 治療の完遂率はN0が87%, N1-2が82%で有意差はなかった. 経過観察期間の中央値は42カ月 (5.8-91) で3年生存率 (OS) は66%, 3年progression free survival率 (PFS) は55%であった. OSで有意差を認めたのはstage IIIの86%とIVの57%, T0-2の78%とT3-4の62%, N0-1の83%とN2の53%, adjuvant chemotherapy (nedaplatin/UFT) ありの77%となしの50%, 舌の33%と中咽頭の77%であった. PFSで有意差を認めたのは, T0-2の72%とT3-4の49%, CRの77%とPRの53%, 舌の22%と下咽頭の58%, 中咽頭の66%, 喉頭の53%であった. 多変量解析ではT3-4, N2, adjuvantなし, 舌がOS, PFSと有意に関連する独立した危険因子であった. 根治切除可能な進行頭頸部扁平上皮癌のCRTは有用である. adjuvant chemotherapyの追加でCRTの治療成績をさらに向上する可能性があるが, 舌癌は不良で他の治療を検討する必要がある.
著者
吉浦 禎二
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.73, no.10, pp.1662-1673, 1970

我耳鼻咽喉科領域における上気道粘膜はその殆んどが線毛上皮細胞によって被覆され, その線毛運動により, 気道内の異物, 細菌等を常に除去せんとする重要な役割を演じている. 一方他の動物においては, 運動・栄養・循環・生殖等, 種によりそれぞれ異った機能を発揮している.<BR>形態学的には近年電子顕微鏡の発達にともないその微細構造は次第に解明されているが機能的観点から線毛の収縮および協調運動の機構などについては未解決の点が多く残されている.<BR>従って私は上気道粘膜の病態生理特に線毛運動機構に関して, 原生動物からる脊椎動物にいたる8種の動物の線毛運動様式と線毛装置の微細構造との関係を比較検討することにより, 形態と機能との間の関連性を追求することを目的として本研究を企図した.<BR>研究方法として, 線毛協調運動様式の観察には, 位相差顕微鏡下に16ミリcinecameraを使用し高速度撮影し, 線毛装置の微細構造はJEM-T5型電子顕微鏡下に観察しそれぞれ比較検討した.<BR>固有線毛の内部構造には殆んど差違は認められず, いわゆる「9+2」patternを示した. しかしながらbasal bodyおよびrootletには形態学的に著しい差違が認められた. すなわちbasal bodyに関してゾウリムシ, ナミウズムシにおいては線毛長軸に対して対称性であり線毛運動が可転性を有することから, このような形態は必要なことと思われた. その他の動物においては非対称性が明らかでeffective strokeの方向に屈曲していた. さらにbasal footが常にrecovery strokeの側に突出しているのが認められた. 一方rootletは様々な方向に走り且つこれを欠くものもあり単なる支持組織に過ぎないとの説を認める. basal footは隣接するbasal bodyとは結合していず, その外にbasal body間を結合する何物も見出し得なかった.<BR>以上のことから個々の線毛のkinetic centerはbasal bodyにあると考察したがmetachronalな協調運動を支配するものあるいはその伝播径路を解明することは困難であった.
著者
石田 正幸 川崎 匡 渡辺 行雄
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.107, no.3, pp."107-179"-"107-187", 2004-03-20
被引用文献数
1

過去におけるネコの視運動性眼振(OKN)の報告では,水平性と垂直性OKNを定量的に同条件で記録したものは,ほとんどなかった.本研究では,ネコの水平性および垂直性OKNを直立頭位で同条件のもと記録し,定量的パラメーターを用いて解析した.<br>覚醒ネコ5匹を対象とした.直立頭位のネコにランダムドットパターンのステップ状視運動刺激を行い,サーチコイル法を用いて眼球運動を記録した.<br>ネコの水平性と垂直性OKN反応における,直接経路のパラメーターとして,急速緩徐相速度上昇,急速緩徐相速度下降を,間接経路のパラメーターとして,定常状態緩徐相速度,OKAN面積を呈示した.<br>水平性OKNの定常状態緩徐相速度(SPV)は,40~60°/sまで刺激速度の増加に伴って増大し,それ以上では,飽和した.右向きと左向きのOKNは,ほぼ対称だった.垂直性OKNについては,下向きOKNの定常状態緩徐相速度(SPV)は,20°/sまで刺激速度の増加に伴って増大し,それ以上では,飽和した.これは,水平性OKNのSPVよりも低速であった.一方,上向きOKNのSPVは,弱く不規則であった.<br>視運動性後眼振(OKAN)も,右向きと左向きで,ほぼ対称だった.下向きOKANも,認められたが,水平性OKANよりも弱かった.OKANのSPVにおける急速緩徐相速度下降は,水平性と下向きOKNにおいて観察された.一方,上向きOKANは,ほとんど観察されなかった.<br>本研究結果より,ネコの水平性OKNと垂直性OKN反応の差は,直接経路よりも間接経路の差によるところが大きいと思われた.また,ネコとサルのOKN反応を比較すると,直接経路,間接経路ともに,ネコの方が小さく,特に,中心窩視力に関わる直接経路の差が大きいと思われた.
著者
今西 順久 藤井 正人 徳丸 裕 菅家 稔 冨田 俊樹 神崎 仁 大野 芳裕 犬山 征夫
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.101, no.5, pp.602-614, 1998-05-20
被引用文献数
14 2

目的:今後の中咽頭癌に対する治療方針決定の参考にすべく,その予後因子の解析及び治療方針と成績に関する統計学的検討を行った.<br>(対象)1981年7月から1996年6月までの15年間に当科で治療した中咽頭扁平上皮癌91鯛,性別は男性83例,女性8例,年齢分布は29歳から84歳,平均62.7歳であった.病期分類は1期:11例,II期:12例,III期:30例,IV期:38例,進行期(III+IV)が納7500を占めた.原発巣に対する一次治療の内訳は,化学療法併用例とsalvage surgery施行例を含む根治照射群が72例,術前照射と術後照射施行例を含む根治手術群が14例,化学療法単独群が5例であった.NeoadjuvantChemotherapy(NAC)は50例に施行された.<br>(方法)単変量解析として背景因子別に粗累横生存率を箪出し,Coxの比例ハザードモデルによる多変量解析により予後因子の独立性及びハザード比を検討した.また根治照射群と根治手術群の一次治療方針別,さらにNACの有無別及び効果甥に生存率を比較検討した.<br>(結果)全体の5年生存率は55.6%で,単変量解析では(1)T分類(p=0.0075),(2)年齢(p=0.0274),(3)亜部位(p=0.0400)が予後因子と考えられ,多変量解析の結果T分類が独立した予後因子と判定された(p=0.0253).治療方針別生存率の検討に統計学的有意差は認められなかった.再発に対するsalvage surgeryが根治照射群の生存率の向上に寄与しており,特に上壁型は適応が高いと考えられた.NACの葵効率は85.44%と良好であったが,生存率改善に寄与した統計学的証明は得られず,効梁別の比較でも奏効群と非奏効群の生存率に有意差は認められなかった.<br>(結論)今後の治療成績向上のためには,予後不良因子である(1)T4,(2)70歳以上,(3)前壁型に短する治療を強化する必要があると同特に,積極的かつ適切なsalVage surgeryが不可欠である.放射線療法の占める比重は大きいがその適応と限界を正確に見極めるべきである.
著者
姜 学鈞 梅村 和夫
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.96, no.11, pp.1926-1932,2015, 1993
被引用文献数
2

光増感反応を利用して, ラットの前下小脳動脈 (AICA) 血栓形成による長期観察可能な内耳虚血モデルを作成し, 内耳循環障害が内耳の機能と形態に及ぼす影響を検討した. AICAに血栓形成後の蝸牛血流値は30.8±3.4% (平均値±SE) で, AICA閉塞時及び24時間後にABRに変化があったのは96%であった. そのうち平衡障害症状 (自発眼振または姿勢異常) を伴ったのは77%であった. 短時間内に血流が再開しない場合には, 内耳の広範な細胞の変性と消失が認められた. 平衡障害と前庭・三半規管の組織障害とは相関しなかったが, かなりの機能代償があるものと考えられた. このモデルは内耳虚血の機能と形態学的な研究に有用であると思われた.
著者
川城 信子 土橋 信明 荒木 昭夫 古賀 慶次郎 河野 寿夫 伊藤 裕司
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.97, no.6, pp.1056-1061, 1994
被引用文献数
14 1

NICU退院時のABRが正常であり,その後難聴と判明した症例10症例について検討した.退院時のABRが正常であったので難聴に気付いた時期が遅れた.難聴は生後10カ月から3歳3カ月で判明した.難聴の程度は90dB以上の高度難聴が6例,低音部の聴力が残存し,高音漸傾型の高度難聴が3例,60dBの高音漸傾型で中等度難聴が1例であった.<br>全例が周産期に重症の呼吸婚環障害があり,全例が挿管し人工呼吸の呼吸管理を行っていた.原因疾患としてPPHNの状態が10例中8例に認められた.これはPPHN25例中の8例,32%に難聴が発生したことになる.人工呼吸管理症例166例中12例,7.2%に難聴の発生があった.ECMOを使用した症例が6例あり,ECMO使用例8例の75%に難聴が発生したことになる.難聴の原因として人工呼吸管理方法に問題があるのかもしれない.また,アミノグリコシド系の薬剤,フロセマイド利尿剤も全例に使用されており,これらの薬剤の使用も否定できない.ABRが正常であっても安心してはならず,重症の呼吸困難症例では聴力についての観察が必要であり,6カ月および1歳前後にはABRによる聴力のスクリーニングが必要であることが判明した.
著者
渡部 浩伸 菅野 秀貴
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.101, no.8, pp.967-978, 1998-08-20
被引用文献数
1 8

(はじめに)抗腫瘍剤であるシスプラチン(以下CDDP)は,腎障害,聴器障害,血液毒性などの副作用を有しているが,これらの副作用には,フリーラジカルや脂質過酸化反応の関与が示唆されている.メシル酸デフェロキサミン(以下DFO)は,鉄排泄剤であり,最近になリフリーラジカルスカベンジャー作用のあることが注目されている.したがって,DFOはフリーラジカルの発生が関与されていると考えられているCDDPの副作用に対し軽減効果が期待されることから,ラットを使用し,CDDPの聴器障害に対するDFCの軽減効果の有無,さらに腎障害に対する軽減効果,CDDPの抗腫瘍効果に対するUFOの影響について検討した.<br>(方法)Fisher系雄ラットを,I群)コントロール群,II群)DFO単独群,III群)CDDP単独群,IV群)CDDP•DFO併用群の4群(各群n=10)に分けて使用した.CAP閾値を測定した後,蝸牛有毛細胞障害の状態を走査電顕を用いて観察した.また,血中尿素窒素(以下BCN),血中クレアチニン(以下Cr)を測定した.抗腫瘍効果については,扁平上皮癌担癌ラットを用いて腫瘍体積の増大率より検討した.<br>(結果)聴器障害について,CDDP•DFO併用群はCDDP単独群と比較し,CAP閾値の上昇および蝸牛外有毛細胞の障害程度は明らかに軽度であり,DFOはCDDPによる聴器障害を有意に軽減した.BUN.Crについては,CDDP•DFO併用群は,CDDP単独群よりも上昇程度は軽度であり,腎障害についても軽減効里が認められた.抗腫瘍効果に関しては,CDDP•DFO併用群とCDDP単独群間には有意差はなかつた.<br>(結論)今回の実験において,DFOの併用はCDDPの抗腫瘍効果に影響を及ぼさず,CDDPの聴器障害,腎障害に対して軽減作用を有していることを明らかにた.したがって,CDDPの副作用を軽減する上でDFOは有用な薬物であり,今後その臨床応用が期待される.
著者
三宅 弘
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.876-883, 1969

咽喉頭部異常感を有する女性患者では, その異常感が更年期障害によるか否かを明らかにするため先づ996名の患者の統計的観察を行なつた. その結果は, 更年期ばかりでなく, 更に若年の, 30才以後の女性にも異常感患者が多いことを知り, またmenopauseを過ぎた患者について異常感の発生とmenopauseが一致したかどうかを調べて僅か15%のものに一致を認めた. しかしその中には単なる偶然の一致によるものも含まれているであろうから, 咽喉頭異常感と更年期とは余り関係が無さそうと先づ考えた.<BR>そこで次に咽喉頭異常感患者の尿中のestrogen, pregnanediol, gonadotropinの量を測定して, 更年期との関係の有無を確実にしようとした. そしてその測定結果に見出された特徴の一つには尿中のgonadotropinの低下があつた. この現象は更年期のホルモン異常とは全く相反する現象であるので, 咽喉頭異常感は更年期とほとんど関係がないだろうと判断した.<BR>而してこのgonadotropinの低下は咽喉頭異常感の原因となりうるものと考える. 何故ならば, 一般的に立つて, ホルモン異常は多くの臨床的症状を呈するのが普通であり, 同時にpsychoneurosisやvegetative Stigmataを伴うものであるから. 而してこのgonadotrpin量の低下の原因としては, estrogenの濃度の上昇や, 視床下部のneurosecreetionの異常や, 下垂体前葉機能障害が考えられるが, emotionが形成されるlimbic syatemからの影響も見逃すことは出来ない.<BR>以上の諸成績から私は結論的に, 咽喉頭異常感は更年期とは直接関係がないが, 尿中ホルモンに異常があることから, 咽喉頭部異常感の治療には, 局所的治療, 自律神経系に対する治療や, tranquilizerなどのほか, ホルモン療法も必要だと主張した.
著者
村田 潤子 土井 勝美 小畠 秀浩 北原 糺 近藤 千雅 奥村 新一 久保 武
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.102, no.5, pp.605-612, 1999-05-20
被引用文献数
3 1

真珠腫性中耳炎の手術時に内耳に瘻孔が形成されていた症例についてその臨像を検討し, 特に瘻孔の位置や進展度と術前・術後の骨導聴力との相関について調べることを目的とした. 対象としては大阪労災病院耳鼻咽喉科, 大阪大学医学部耳鼻咽喉科, および関連各施設耳鼻咽喉科で平成4年から平成8年の間に初回手術を施行した症例のうち, 骨迷路にびらんまたは骨欠損がみられた症例を選び, 瘻孔の進展度にはDornhofferとMilewski<SUP>1) </SUP>の分類に準じてI, IIa, IIb, IIIの4段階に分類した. 内耳瘻孔症例としては, 進展度IIa以上の24症例24耳を対象とした. このうち半規管, 前庭にのみ瘻孔を有したのは21症例であった. 蝸牛に瘻孔を有したのは残りの3例で, すべて蝸牛に単独に瘻孔があり, 進展度はIIIであった. 軸位断での術前CT診断を施行していたのは14症例で, 内耳瘻孔についての陽性率は71.5% (10症例) であった. 術前骨導聴力は蝸牛に瘻孔を有した症例が, 半規管, 前庭に瘻孔を有した症例よりも悪かったが, 半規管, 前庭に瘻孔を有した症例の中で, 進展度による大きな差異はみられなかった. 全例に鼓室形成術を施行した. 半規管, 前庭に瘻孔を有した症例の中で, 進展度IIaの症例13例中で術後骨導聴力低下と判定されたのは2例 (15%) で, 進展度IIb以上の症例8例では, 3例 (38%) であった. このように, 進展度IIaの症例に比べてIIb以上の症例で術後に骨導聴力の悪化が起こりやすい傾向がみられた.
著者
堀 弘樹 菅野 秀貴
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.102, no.1, pp.102-8-102-18, 1999-01-20
被引用文献数
2 1

Lazaroidは脂質過酸化反応を抑制し, 活性酸素を消去する作用をもつfree radical scavengerである. ラットを用いて, CDDPの聴器障害および腎障害に対するLazaroidの軽減効果の有無を検討し, さらにCDDPの抗腫瘍効果に対するLazaroidの影響について検討した. CDDP, Lazaroid併用群のCAP閾値上昇はCDDP単独群と比較して有意に軽度であり, 外有毛細胞の障害の程度も明らかに軽度であった. 一方, 両群間の血清BUN値に有意差は認められず, 腎の病理組織学的所見にもほとんど差異はなかった. TGRを指標とした検討で, 両群の間にはCDDPの抗腫瘍効果に差は認められなかった. これらの結果より, LazaroidはCDDPの腎障害に対する軽減効果はないが聴器障害を著明に軽減すること, Lazaroidの併用がCDDPの抗腫瘍効果には影響を及ぼさないことが示唆された.