著者
藤田 芳史 久保田 彰 古川 まどか 八木 宏章 佃 守
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.113, no.3, pp.115-122, 2010-03-20
被引用文献数
1 2

過去11年間に当科で治療した耳下腺癌症例34例について検討した.T1/2/3/4aが5例/12/7/10, N0/1/2が25例/3/6, stage I/II/III/IVが5例/10/6/13であった. 病理組織型は, 多形腺腫由来癌が9例, 腺癌が8例の他, 計10種類の組織型を認めた. 同期間の良性腫瘍98例を含め, 穿刺吸引細胞診 (FNA) の有用性を検討したところ, 感度76.0%, 特異度95.4%, 良悪性の正診率91.1%であり, 過去の報告と同等であったが, 4例の偽陽性と, 6例の偽陰性を認め, FNAの結果のみで悪性腫瘍と判定し, 顔面神経の処置を決定するのは危険なことが判明した. 悪性腫瘍29例に手術を施行した. 顔面神経は可能な限り温存を試み, 15例で全5枝を温存した. 悪性腫瘍で, 顔面神経浸潤が疑われる症例, リンパ節転移陽性, 高悪性度の症例, 切除断端陽性の15症例に対して, 術後放射線照射を施行し, そのうち3例に再発を認めた. 手術不能例5例に対しては, 化学放射線同時併用療法または放射線単独照射を行ったが, 現在まで全例生存している. 5年overall survival (OS) は87.4%, 5年progression free survival (PFS) は71.4%であった. stage分類別5年PFSは, stage I/II: 91.7% (stage I: 100%, stage II: 87.5%), stage III/IV: 51.6% (stage III: 50%, stage IV: 47.9%) で, 両者の間には有意差が認められた. またN分類別5年PFSでも, N0: 86.2%, N+: 38.1% (N1: 66.7%, N2: 20.8%) で, 両者の間には有意差が認められた.
著者
瀬野 悟史 嶽 良博 硲田 猛真 齊藤 優子 池田 浩己 北野 博也 北嶋 和智 榎本 雅夫
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.105, no.3, pp.232-239, 2002-03-20
被引用文献数
5 3

近年花粉症の治療として, 従来のメディカルケアに加えてセルフケアの重要性が認識されてきている. 飛散花粉観測より得られる情報は, セルフケアに重要であるが, 特にリアルタイムの花粉情報はよりきめ細やかなセルフケアに役立つ可能性がある. リアルタイム花粉モニターは, リアルタイムの飛散花粉情報が得られること, 簡便に飛散花粉数を測定することができることから今後普及していくと考えられる. 今回このリアルタイム花粉モニター (KH-3000) の精度などについて検討した. 和歌山市において, 2001年2月2日から4月26日までに観測された飛散花粉を対象とし, ダーラム型花粉捕集器とリアルタイム花粉モニターの結果について比較検討を行った. スギ花粉飛散のピークとなる3月のスギ花粉の相関係数はr=0.69, ヒノキ科花粉飛散のピークとなる4月のヒノキ科花粉の相関係数はr=0.89であり, 良好な相関関係が認められた. しかし, リアルタイム花粉モニターの結果には, 花粉ではないピークも認められた. 検討の結果その原因は雪やそれ以外の可能性が考えられた. 現在本機器に, 改良品として雪対策も行われており, スギ・ヒノキ科花粉のリアルタイム測定には, 本モニターが有用であると考えられた.
著者
森 恵莉 松脇 由典 満山 知恵子 山崎 ももこ 大櫛 哲史 森山 寛
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.114, no.12, pp.917-923, 2011 (Released:2012-01-28)
参考文献数
20
被引用文献数
5 12

現在日本で保険適応のある嗅覚検査には, 基準嗅力検査と静脈性嗅覚検査の二種あるが, 基準嗅力検査は実施率, 普及率ともに低く, 静脈性嗅覚検査は疼痛を伴う検査であり患者への侵襲が高い. 嗅覚同定能検査の一つとして開発されたOpen Essence (以下, OE) は, 現在医療保険の適応はないが, その臨床的有用性が期待されている. 今回われわれは嗅覚障害患者に対するOEと自覚症状, 基準嗅力検査, および静脈性嗅覚検査との比較検討を行った. 当院嗅覚外来患者のうち, 嗅覚の評価が可能であった122例を対象とした. OEスコアと基準嗅力検査, 静脈性嗅覚検査, また嗅覚障害に対する自覚症状としてのVisual Analog Scale (VAS) と日常のにおいアンケートとの間にはそれぞれ有意な相関を認めた. また静脈性嗅覚検査において嗅覚脱失を認めた群はOEの正答率が有意に低かった. OEは従来からの検査法である基準嗅力検査と静脈性嗅覚検査および自覚症状をよく反映するため, 一般臨床において広く利用可能な嗅力検査であると考える. なお, OEに含まれるメンソールは詐病を見破れるものとして必要と考えるが, 嗅力を判定する際にはこれを除いて検討する方が良いかもしれない.
著者
佐藤 公則 柏木 彰一 平野 実
出版者
Japanese Society of Otorhinolaryngology-Head and neck surgery
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.100, no.5, pp.479-483, 1997-05-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
11
被引用文献数
8 8

新生児の声帯膜様部を透過型電顕で観察した. 1) 声帯の粘膜上皮は薄いが, 細胞間隙は非常に狭く, 細胞どうしが密に接し, desmosomeが比較的多く認められた. 粘膜上皮の細胞どうしがより強く接着していると考えられた. 2) 声帯粘膜上皮の基底膜および基底部の接着装置はほぼ完成していた. 声帯粘膜上皮と粘膜固有層の支持的機能がすでに十分に備わっていると考えられた. 3) 粘膜固有層は基質が豊富で線維成分の発達は乏しかった. 膠原線維は成熟した構造であったが, 弾性線維は未熟な構造であった. 新生児の声帯は振動体として必要な粘膜の粘弾性が乏しく, 振動に適した構造ではないことが示唆された.
著者
渋沢 三伸 矢野 一彦
出版者
Japanese Society of Otorhinolaryngology-Head and neck surgery
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1, pp.1-5, 1990-01-20 (Released:2008-03-19)
参考文献数
4
被引用文献数
2 1

Many authors described the clinical importance of asymmetry of the laryngeal framework. However, its pathogenesis is generally unknown. In this study, CT images of 315 Japanese subjects were investigated to define the laryngeal position relative to the midline of the cervical vertebra.The CT slice of each subject within 5mm cephalad of the cricoarytenoid joint was traced. Then, the deviation and rotation angles were measured using our method.Seventy one percent of the subjects' larynges deviated and/or rotated to the right side, while 17% to the left side. Six percent showed neither deviation nor rotation. As to the rest of 6%, deviation and rotation were in opposite directions. Besides, the length of the thyroid alae were measured in 282 subjects. Left ala was longer in 55%, and right was in 23%, and almost equal in 22%.The conclusions are as follows, 1. The majority of the subjects' CT images showed deviation and/or rotation of the laryngeal framework to the right side.2. So called idiopathic laryngeal deviation is a case which observed in those cases with remarkable deviation and/or rotation of the laryngeal framework.3. Aging seemed to be an important factor in accerelation of the laryngeal deviation and rotation.4. The type of diseases and the side of mass lesions had no statistical significance in deviation and rotation of the larynx.
著者
丸山 裕美子 塚田 弥生 平井 信行 中西 庸介 吉崎 智一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.1, pp.53-61, 2015-01-20 (Released:2015-02-05)
参考文献数
15
被引用文献数
1 2

Vocal cord dysfunction (VCD) における声帯奇異運動は一般的に一過性かつ発作性である. われわれは36例の VCD 加療経験の後, 持続的に声帯奇異運動を認める症例を経験し, 声帯奇異運動が「口すぼめ吸気法」施行中に改善し呼吸法中止により再発することを確認した. VCD は気道刺激に対する声門閉鎖反射亢進と, 吸気時の声門下陰圧に対する能動的声帯内転運動により生ずると考えられている. 今回われわれが初めて提唱した「口すぼめ吸気法」は, 緩徐な吸気の実現を容易にし, 声門上腔の陰圧化により声門上下腔の気圧差を減少でき, 器具を用いず即実行できる簡便な方法であり, VCD に対し試行する価値があると考える.
著者
坂田 英治 梅田 悦生 大都 京子 金沢 致吉 村岡 潔
出版者
Japanese Society of Otorhinolaryngology-Head and neck surgery
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.81, no.7, pp.676-682, 1978-07-20 (Released:2008-03-19)
参考文献数
12
被引用文献数
1

Unter den Krankheitsfällen, die über Schwindel klagen, findet man nicht selten Prodromalsymptome schwerer Krankheiten oder Initialsymptome von Hirntumor usw.Neben der Schwindelbeschwerde, dem subjektven Symptom der Patienten, lassen sich auch die objektiven Symptome Spontan-und Provokations-Nystagmus feststellen. Hierhin liegt auch der Grund für die in den letzten Jahren die Forschung in Bezug auf Spontan-Nystagmus, über deren Bedeutung man sich mehr und meter hewusst geworden ist. Tatsache ist jedoch, dass vom pathophysiologischen Aspekt aus betrachtet uber Schwindel noch viel Dunkel herrscht.Wir haben deshalb aufgrund von Untersuchungen Genaueres über die Mechanismen, die beim Zuatandekommen von Spontan-und Provokations-Schwindel wirken, zu ergründen versucht, wobei wir erstere an einem Krankengut mit Morbus Ménière, akuten Labyrinthf unktionsausfall sowie Innenohrentzündungen, letztere bei Lageschwindel vom gut-bzw. bösartigen paroxysmalen Typ sowie bei Zervikalschwindel anstellten.Die Verfasser haben insbesondere Schuknechts mechanische Erklärung über den Lageschwindel vom gutartigen paroxysmalen Typ zum Anlass seiner Forschung, da er glaubte theseArt von Schwindel durch einen funktionelleren Mechanismus erklärbar machen zu können. Desweiteren hat der Autor die Zusaznmenhänge von "Bruns-Syndrom" und "akutem Unterwurmsyndrom" beim Lageschwindel vom bösartigen paroxysmalen Typ ereörtert und dabei betont, dass Storung im Vestibulariscerebellum die Hauptursache bei der Entstehung dieser Erkrankungen sind.
著者
堤 康一朗 岩武 博也 桑原 大輔 俵道 淳 小林 健彦 肥塚 泉 加藤 功
出版者
Japanese Society of Otorhinolaryngology-Head and neck surgery
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.727-733, 2000-06-20 (Released:2008-03-19)
参考文献数
33
被引用文献数
2 2

ヒトパピローマウイルス(HPV)遺伝子の転写は感染した上皮細胞の分化と密接に関連している.カルシウムを含む様々な因子が培養上皮細胞の分化を制御し,13番サイトケラチン(CK13)の発現は培養喉頭上皮細胞(HLEC細胞)の分化マーカーであることが報告されている.本研究の目的は,カルシウム濃度増加のHLEC細胞におけるCK13発現とHPV16遺伝子転写に及ぼす影響を調べることである.われわれはHPV16遺伝子を含む2種類のHLEC細胞を解析した.HPVl6によって不死化したHLEC細胞(HLEC16細胞)とHPV16陽性(HPV16が感染した)の培養喉頭乳頭腫細胞(HLP16細胞)である.HLEC16細胞ではウイルス遺伝子が細胞染色体に組み込まれていた.対照的にHLP16細胞は細胞染色体外にウイルス遺伝子は存在していた.われわれは免疫細胞染色を用いてカルシウム濃度増加のCK13発現に対する影響を評価した.HLP16細胞とHLEC16細胞は共にCK13発現誘導を伴って増加したカルシウムに反応した.HLP16細胞とHLEC16細胞におけるCK13発現は低カルシウム条件下(0.1mM)では検出不能であったが高カルシウム条件下(1.0mM)では検出された.一方,ウイルスRNAのレベルはHLP16細胞ではカルシウムを加える(1.0mM)ことによって上昇したが,HLEC16細胞では低カルシウム(0.lmM)および高カルシウム(1.0mM)条件下で同等であった.これらの結果はカルシウムが誘導する分化がHLP16細胞におけるウイルス遺伝子転写を正に制御したことを示唆する.また,ウイルス遺伝子の宿主細胞染色体への組み込みが分化に依存しないHPV16遺伝子転写の重要な決定要因なのかもしれない.
著者
島貫 茉莉江 戸塚 大輔 中原 奈々 佐藤 陽一郎 今西 順久
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.121, no.7, pp.912-920, 2018-07-20 (Released:2018-08-01)
参考文献数
23

頸部外傷の中でも, 特に気管損傷は気道緊急疾患で迅速な対応を要する. また早期に診断・治療がなされなかった場合, 急性期には皮下気腫の増悪や呼吸障害の出現, 長期的には瘢痕性気道狭窄が生じることがある. 当院で最近経験した3例の鋭的気管損傷例について報告し, その診断・治療について検討した. 3例いずれも刃物による頸部刺傷に起因し, 受傷機転は自傷1例, 他害2例で, いずれも緊急手術にて気管損傷を確認・閉鎖し, 気道の後遺障害を残さず治癒した. 術前に創部触診で気管損傷を直接触知し得たのは1例のみで, 診断にはそのほかの間接的臨床所見が重要と考えられた. 皮下気腫は全例に認められ, 非特異的ではあるが過去の報告に一致して高頻度であった. エアリークは2例に認められ, 気管損傷を強く示唆する重要な所見と考えられた. CT では気管損傷を疑う所見を2例に認めたが, 損傷の部位と程度の評価は困難であった. 損傷部位は他害の2例では胸部気管に位置していたが, いずれも経頸部アプローチにて閉鎖可能であった. 過去の報告を踏まえると, 他害例や胸骨上切痕部に皮膚切創がある場合には胸部気管損傷の可能性を考える必要がある. 鋭的気管損傷においては, 臨床所見および画像診断を合わせても確定診断のみならず損傷の部位や程度の評価に限界があることから, 疑われる場合には, 全身状態が許されれば創部の十分な展開による診断と評価および閉鎖術が勧められる.
著者
松浦 省己 生駒 亮 矢野 実裕子 松本 悠 羽田 華練 折舘 伸彦
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.124, no.3, pp.225-230, 2021-03-20 (Released:2021-04-03)
参考文献数
15

SAPHO 症候群の主な症状は皮膚症状と骨症状であり, 皮膚症状としては掌蹠膿疱症が多く, 骨症状は関節痛で胸肋鎖関節に多い. 治療は非ステロイド性抗炎症薬などによる対症療法が主体である. 近年, 口蓋扁桃摘出術により関節・皮膚症状が改善されたと報告されている. 今回われわれは, 口蓋扁桃摘出術により関節痛が著明に改善した SAPHO 症候群の一例を経験した. 症例は53歳, 男性. 急性扁桃炎, 掌蹠膿疱症の精査加療目的で入院. 掌蹠膿疱症と同時期発症の腰痛あり, CT, MRI, 骨シンチグラフィ所見から SAPHO 症候群と診断した. 退院後, 急性扁桃炎を再発, 掌蹠膿疱症の悪化と胸肋鎖関節痛が出現したため, 両側口蓋扁桃摘出術を施行. 術後は速やかに皮疹, 関節痛は軽快した.
著者
日本耳鼻咽喉科学会福祉医療・乳幼児委員会 守本 倫子 益田 慎 麻生 伸 樫尾 明憲 神田 幸彦 中澤 操 増田 佐和子 森田 訓子 中川 尚志 西﨑 和則
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.122, no.9, pp.1221-1228, 2019-09-20 (Released:2019-10-02)
参考文献数
11

乳幼児の自覚的聴力検査から得られる情報は重要であり, 可能な限り信頼性の高いデータを短時間に得る必要がある. これらの検査技術の困難度, 信頼度が年齢 (3歳未満, 3~6歳, 6歳以上の3群に分類) や発達レベル (定型発達, 発達障害, 知的発達障害の3群に分類) から受ける影響を, 聴力検査にかかった時間および検者が声かけなどに対する反応などから感じた聴力検査結果との整合性を「検査信頼度」として評価, 検討を行った. 研究参加施設は大学病院, 総合病院, クリニックなど15施設である. 検査の信頼度は, 3歳未満では知的発達障害児で41%, 定型発達児58%, 発達障害児50%と知的発達障害児が有意に低かった. 3~6歳では定型発達児88%, 発達障害児75%, 知的発達障害児73%であり, 6歳以上では発達障害児と定型発達児はどちらも90%以上であったが, 知的発達障害児のみ77%であった. 検査にかかる時間も3歳未満では, 発達による差異は認められなかったが, 3~6歳未満および6歳以上においては, 発達障害児と定型発達児に比べて知的発達障害児の検査時間は有意に長かった. 6歳未満の児への聴力検査には技術と時間がかかること, 発達障害・知的発達障害があるとさらに検者の検査にかける時間や高度な技術が必要となることが明らかになった.
著者
小川 敬
出版者
Japanese Society of Otorhinolaryngology-Head and neck surgery
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.240-257, 1987 (Released:2008-03-19)
参考文献数
53

The comparative ultrastructural studies of taste buds were made scanning electron microscopically in 15 different kinds of the vertebrtates, such as fish, frog, newt, lizard, snake, chicken, macaw, mouse, rat, guinea pig, rabbit, cat, monkey and human.There were no remarkable differences in the shapes and sizes of the taste pores on the surface ultrastructure of the taste buds among classes and species of such animals, but in the taste buds in frog, lizard and bird, there were some morphological characteristics in the distribution sites in the oropharynx. On the basis of the surface morphological features, these taste buds could be classified into five different types; type I named crater-like type, II buried type, III exposed type, IV disc type and V specific type. Most of the taste buds in these cases seemed to belong to type I or II groups.The relationships between the ultrastructural characteristics of taste buds and their physiological roles were discussed briefly from a viewpoint of evolution of taste sensation in the vertebrates.
著者
奥田 匠 花牟礼 豊 笠野 藤彦 鹿島 直子
出版者
Japanese Society of Otorhinolaryngology-Head and neck surgery
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.108, no.9, pp.835-841, 2005-09-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
26
被引用文献数
6 4

蝶形骨洞に限局した疾患あるいは蝶形骨洞を主病変とする疾患では, 頭痛・眼症状など, 通常の鼻副鼻腔疾患とは異なった症状により耳鼻咽喉科以外の科で気付かれることが多い. このような症例には炎症や嚢胞性疾患が多いが, 良性腫瘍や悪性腫瘍, 真菌症も含まれる. それぞれが比較的まれな疾患であるため本邦では数例ずつの症例報告とならざるを得ず, 概要がつかみにくい. 今回我々は, 1999年から5年間に鹿児島市立病院耳鼻咽喉科を受診し, CTやMRIの画像により蝶形骨洞が主病変と診断された44例 (男性21例, 女性23例) を対象に, 病変の分類, 主訴, 治療法等を検討し, 蝶形骨洞を主病変とする疾患の診療の指針について考察した. 病変の内訳は炎症32例, 嚢胞8例, 良性腫瘍1例, 原発性悪性腫瘍2例, 転移性悪性腫瘍1例であった. 症状は頭痛が59%, 眼症状が27%に認められた. 眼症状の内訳は, 炎症症例の60%が眼痛であり, 嚢胞症例の63%が視力低下, 腫瘍症例の100%が複視と, 病態により症状が異なる傾向があった. 頭痛に複視を来した場合は悪性腫瘍の可能性が高く特に注意を要する. 保存的治療に反応の良い症例以外では, 腫瘍性疾患も含め, 診断的治療を兼ねた内視鏡下鼻内副鼻腔手術が有用であった. 早急な治療を要する疾患 (急性化膿性炎症, 視力障害を伴う嚢胞, 悪性腫瘍) の鑑別が重要と考えられた.
著者
和田 佳郎 山中 敏彰 北原 糺 倉田 純一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.119, no.9, pp.1201-1209, 2016-09-20 (Released:2016-10-07)
参考文献数
17
被引用文献数
3 3

日常診療において原因不明の浮動性めまいを訴える患者は多い. われわれは重力感受性障害が浮動性めまいを引き起こすと考え, その仮説を検証する第一段階として重力感受性を定量的に評価する臨床検査法の開発を行った. 予備実験から, 頭部 roll 傾斜角度が30度以内では頭部傾斜角度 (HTA) と頭部傾斜感覚 (HTP) はほぼ直線関係 (相関係数が身体傾斜条件では0.991, 頭部傾斜条件では0.999) となることを示した. この直線性を利用して, 座位における頭部傾斜時の自覚的視性垂直位 (SVV) と HTA から頭部傾斜感覚ゲイン (HTPG) を求める方法を確立し, 頭部傾斜 SVV (HT-SVV) 検査法と名づけた. 重力感受性は HTPG>1であれば過大, HTPG<1であれば過小と評価できる. 健常人329人を対象に HT-SVV 検査を実施し, 解析結果から HTPG (1.02±0.12, 0.80~1.25), HTPG の左右差指数 (4.7±3.7%, 10.0%以下), 頭部直立 SVV の絶対値 (1.1±0.8度, 2.5度以下) の平均値±標準偏差および基準値 (中央値を含む健常人の95%が含まれる範囲) を求めた. 今後, HT-SVV 検査装置のソフト, ハードの簡便化, 迅速化を進め, 浮動性めまいを中心とする各種めまい患者を対象とした臨床データを検討することにより, HT-SVV 検査法の臨床的意義を明らかにしていく予定である.
著者
宮崎 宏三
出版者
Japanese Society of Otorhinolaryngology-Head and neck surgery
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.2316-2330, 1960-11-20 (Released:2008-12-16)
参考文献数
24

The author studied on the various basic methods to measure the difference of biaural pitches by using 35 healthy subjects. These methods were clinically applied to 1) 32 cases of Menieres disease 2) 10 cases of nerve deafness 3) 10 cases of conductive deafness, and following results were obtained.Of 32 cases of Menieres disease. 15 were fresh cases 17 were obsolete cases. 12 of 15 fresh cases and 2 of 17 obsolete cases revealed Pathological Diplacusis (Diplacusis index is over ±2%), In 15 cases of Pathological Diplacusis 12 cases showed higher pitch on diseased ear than on healthy side, and 3 cases showed the reverse. The former group has greater difference of the pitch of both ears.The audiogram of Pathological Diplacusis cases revealed reversible hearing loss of low frequency in most cases and closed relationship to Recruitment was seen. However, there noted no parallel relationship with Pitch Difference Limen.Therefore, above mentioned phenomenon is considered to be explained by disturbance of the sense of hearing due to Endolymphatic Hydrops. This phenomenon was not comfirmed at any other types of hard of hearing.