著者
十川 陽香 興梠 克久
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.39-49, 2021 (Released:2022-08-19)
参考文献数
7

木刀は剣道や古武道等において使用され,そのほとんどは宮崎県都城市で生産されている。カシ類で製作されることが 多く,製作過程はこれまでに調査が行われた。本稿では,現在の木刀の生産,流通の現状と課題を明らかにするために,木刀製作所や武具販売店,製材業者,原木市場,カシ類を利用する鉋や農林業用具の製作会社に対して2019~2020年に聞き取り調査を行った。その結果,若手職人の不足による技術継承の危機的状況が明らかとなった。若手職人不足の要因の一つは低賃金にあり,これは製作所の赤字経営に起因している。製品の値上げを実現するためには需給間の情報の隔たりが解消されることが望ましい。木刀産業は原料不足にも直面しており,人工林の造成技術や代替原材料が求められている。一方で,海外での需要は増加しており,今後輸出を考慮した生産の方向性を検討すべきである。
著者
内藤 大輔
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.13-22, 2010-07-01 (Released:2017-08-28)
参考文献数
30

森林管理協議会(FSC)は,環境保全の点からみても適切で,社会的な利益に適い,経済的にも継続可能な森林管理を推進することを目的としている。本稿では,マレーシア・サバ州キナバタンガン川中流域に位置するD保存林に隣接する村落において,先住民の権利に関わるFSC原則と規準の運用状況を検証した。林業局はD保存林でFSC認証を取得後,認証機関による改善要求により,違法伐採の取締りのため境界管理を厳格化した。それに伴い,村人の慣習的な森林利用も制限されていた。FSCは本来,先住民の権利を保障することを目的としているが,本稿の事例では,森林法が厳しく適用された一方で,先住民の慣習権が適確に認知されなかったため,先住民の森林利用が制限されることとなった。先住民の慣習的な森林利用が,法律や制度によって十分認められていない地域では,土地や森林資源の利用をめぐる対立が潜在していることが多く,森林認証制度の導入により,それが顕在化することがある。そのため森林管理者や認証機関は,既存法では先住民の慣習的な権利が保障されないことが多いことを認識した上で,認証基準を適用すべきであろう。
著者
荻 大陸
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.123, pp.120-124, 1993-03-20 (Released:2017-08-28)
被引用文献数
1
著者
厚味 英 髙田 乃倫予 山本 信次
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.43-51, 2023 (Released:2023-11-12)
参考文献数
42

学校林に関する研究は,その設立経緯から公立学校の事例が多く,現在の活動状況に関する報告は環境教育利用を中心とした「新しい学校林」を扱った事例に偏っている。一方で学校の基本財産形成を目的として設置された「伝統的な学校林」は利用が低調である。よって本研究では,伝統的な学校林を今後有効利用していくために調査の及んでいない私立学校学校林の現状と課題を明らかにし,学校林の抱える課題や解決方法を抽出することを目的とした。調査対象は学校法人自由学園であり,調査方法は文献収集と整理,半構造化インタビューによる聞き取り調査,現地踏査である。その結果1950年の植林開始から生徒が造林・育林作業を担い現在も実施していること,学校林の木材を用いて校舎建築や木工品製作が行われていることから,森林造成から木材生産という一連の流れが学校教育に直結していることが確かめられた。こうした活動が可能な理由として,教員の長期在籍,独自のカリキュラムでの活動展開,教育理念に沿った活動展開という私立学校の特徴が関係しており,これらを参考した新たな仕組みの構築や応用が公立学校学校林の抱える問題解決する要素の一助になると考えられる。
著者
石崎 涼子
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.65-74, 2014-07-01 (Released:2017-08-28)

スイスは,日本と同様に,長年,林業部門の生産性の低さや補助金への依存に悩まされてきた。日本においては今なお解決に向けた方向性さえみえない状況にあるが,スイスでは1990年代から助成改革が進められ,2008年から新たな助成制度が導入されている。本稿では,日本における林業助成のあり方に関する議論を深めるために,スイスにおける林業助成のプロセスと成果を検討した。その結果,(1)スイスの林業助成改革は,財政部局からの要請に対して受け身で展開したのではなく,森林政策の枠組みや戦略の構築と一体的に進められたこと,(2)森林政策の戦略を検討する過程で,今後,連邦政府は市場で生き残れない主体を永続的に支援することはしないとする助成原則が打ち出されたこと,(3)林業助成は,目的志向型の助成に変わったこと,(4)目標の具体的な設定方法や過渡的支援の終了に関わっては,なお議論が残されていることなどが明らかとなった。
著者
岡田 航
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.58-68, 2017 (Released:2017-10-10)
参考文献数
57

元来,「里山」は地域社会の中で地理区分を表す用語として使用されてきたが,戦後復興の際,防災と森林資源の安定利用を図る過程で政策用語としての「里山」が登場した。1950年代,森林資源の高度利用が目指されると,農用林として使用されてきた「里山」は低位生産力地帯であるとされ,林業基本法制定の際の議論では「里山」における論争が行われた。1960年代末には逆に農用林が利用されないことが問題視され,農政も含めた総合利用のための施策として「里山再開発事業」が行われた。他方,林学の研究者の間では,1970年代以降社会文化的な要素も含んで人と「里山」との関わり合いの意味を捉える考え方が登場し,自然保護運動からは,二次的自然環境保全の重要さを訴えるための旗印として「里山」が積極的に用いられた。他方林業政策では,森林の多面的機能の観点から「里山」の意義を再考しようとする諸調査が行われるが,1990年以後は自然保護分野で「里山」が頻用されていくのとは対照的に,林業政策(森林・林業政策)においては次第に影が薄い用語となっていった。
著者
藤原 千尋
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.13-18, 2000-12-05
被引用文献数
2

岩手県遠野市では毎年クマ被害が発生し,被害地住民にとって深刻な問題となっている。被害地住民の被害に対する認識や農業経営形態などにより被害問題の形態が変わることから,被害問題は加害動物と共に被害地住民の認識・行動が形作っていると言える。そこで本論では被害地住民の側からクマ被害の実態把握を行うことを目的とし,AとB,2つの集落に対して聞き取り調査を行った。その結果,B集落で遠野市による電気牧柵の補助制度が導入されない理由として,成功例を身近に見ておらず失敗例が共通認識化されていることが考えられた。従って,今後の対策としては,電柵導入が効果的と思われるが導入されていない集落に対して,モデル事業を行うこが挙げられる。また人身事故が過去に生じたB集落では,クマに対する認識が強く否定的になり,クマを残す合意形成が難しくなっていることが明らかになった。このことから,クマを対象とした場合,一見「クマと共存している」と思われる集落も,一回の人身事故でクマ否定派に変化することが考えられ,人身事故対策が非常に重要であると言える。
著者
齋藤 暖生
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.15-26, 2019 (Released:2019-07-31)
参考文献数
45

自然とのつながりの希薄化による様々な弊害が懸念され,自然と関わる文化の再構成は,現代社会において大きな課題となっている。日本国内では,早くから森林文化論が提起されてきたが,政策論にまで十分に展開してこなかった。そこで,本稿では食用植物・キノコの採取・利用を題材として,文化的要素を抽出し,さらに利用文化の盛衰を解釈することを試みた。採取前・採取時・採取後の過程にわけ,それぞれいくつかの側面に分けて文化的要素を抽出した。その結果,多様な文化的要素が抽出でき,そのいくつかが対象資源の意味付けに結びついていることが見出された。戦後における食用植物・キノコ利用の盛衰を整理したところ,幅広い意味づけを与えられたものが現代に残り,さらに,レクリエーションとして親しまれるようになっていると解釈された。また,それとは無関係に,自然環境および社会環境の変化により衰退・消滅を余儀なくされたものがあった。森林文化を再構築するには,人々による森林への意味付けを醸成する内からのアプローチと,それを取り巻く自然環境や制度を整える外からのアプローチがありうる。
著者
箕輪 光博
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.110-115, 1997-03-01

本稿は,10年ほど前に劇的な民営化に踏み切ったニュージーランド(以下,略してNZ)の国有林を取り上げ,その背景,内容,現状,評価を素描すると共に,あわせてわが国の国有林の民営化について言及したものである。NZ林業・林産業の特徴は,ラジアータパイン松主体のモノカルチャー型,平地林型,輸出志向型の育成的林業,川上から川下までの一貫した技術主導型の経営,短伐期指向(25〜30年伐期)などにまとめられる。国有林の民営化は,そのようなNZ林業の特質,官業としての国有林経営の非効率さなどに起因しているが,より根本的にはロジャーノミックスと呼ばれる経済変革,成人式と言われる社会変革の一環として断行されたものである。民営化は,林業公社,保全局,林業省への3部門分割(1987年)と国有林のアセットセール(伐採権の売却: 1990年以降)の2段階にわけて行われた。1996年までに,約45万haの国有林・伐採権が売却され★★政府の林木資産保有割合は10%以下に低下した。生産面と保全面を分離し,かつ人工林経営の徹底した民営化に踏み切った今回のNZの変革は,10年を経た今日賛否両論に晒されてる。我が国の国有林のあり方を考える際には,NZ民営化の功罪とその特殊性,及び我が国の国有林の歴史と使命を十分に考慮する必要があろう。
著者
竹本 豊
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.12-22, 2009-11-01
被引用文献数
2

2003年4月に,高知県が全国で初めて導入した新税制「森林環境税」は,その後,同様の新税制が30の都道府県にまで波及したことを考えると,非常に興味深い事例である。本稿では,行政内部組織に焦点をあて,森林環境税導入の政策決定過程を解明した。政策決定過程における主要な政策調整は,課税方式と税の使途に存在した。課税方式では,(1)「水道課税方式」の従量制から定額制への変更と(2)「県民税超過課税方式」の選択,税の使途では,(1)ハード・ソフト両面からソフト中心事業への変更と(2)ハード事業の復活である。決定過程を分析すると,知事発言により,新税導入に向けた取り組みが積極化した税務課の新税実現に向けた現実的選択の積み重ねと,決定段階での森林局の実質的関与が特徴的であった。政策決定過程を仮説的に定義すると,ある政策目的に対して理想的な政策手段を追及する過程ではなく,ある政策目的を円滑に達成するための政策手段を選択していく過程であるといえる。
著者
藤野 正也 小笠原 輝 大脇 淳
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.16-25, 2020 (Released:2021-03-29)
参考文献数
35

本研究は草原の維持に対する地元住民の意向とそれに影響を与える要因を明らかにすることを目的に,現在も火入れによる草原管理が行われている山梨県南都留郡忍野村忍草区の住民を調査対象として,同地区にある高座山の草原に対する意識に関するアンケート調査を実施した。単純集計の結果,37.9%の住民が草原を現在も利用・管理しているまたは過去に利用・管理した経験があると回答した。また,多くの住民にとって草原が大切であることが明らかになるとともに,草原維持への意向も強いことが明らかとなった。直接利用が少なくても,高座山を間接的に利用していることを住民が認識しやすい状況にあることが影響していると考えられた。さらに,草原への関心度合いに影響を及ぼす要因を二項ロジスティック回帰分析で分析したところ,忍草区で生まれた人の方が草原を大切に思う結果となった。この理由として,地域への帰属意識が醸成される中で,高座山は先祖から引き継いだものであるという意識が醸成された可能性が考えられた。また,草原の直接利用がなくなり,間接利用だけになる場合,草原を維持できると考える人が少なくなることも考えられた。
著者
片野 洋平
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.21-30, 2016 (Released:2017-10-10)
参考文献数
26

本研究は,過疎地域において人々がスギ・ヒノキなどの人工林を適切に間伐する行為に着目し,過疎地域の自治体に人工林を所有する在村者と不在村者それぞれの人工林の管理行動を規定する要因を明らかにすることを目的とする。本研究は,人工林管理行動のうち,特に人工林を管理しない人々の行動に着目し,その規定因を明らかにした。鳥取県日南町の在村者,不在村者から得たデータを用い,それぞれに対し回帰分析を行った。分析の結果,第一に,「人工林面積」および「森林の場所に対する認知」,第二に,在村者の「登記」,第三に,不在村者の「教育歴」 ,「地元地域との交流」,「森林との距離」が人工林非管理行動に影響を与えている可能性を明らかにした。本研究により,人工林非管理行動に対する経済的要因と場所への認知に対する要因の重要性を確認すると共に,在村者と不在村者では異なる要因が同行動に対し影響を与える可能性を確認した。過疎自治体や森林組合は,一方では,在村者,不在村者双方に対して同一の要因からなる施策を講じ,他方で,在村者,不在村者それぞれに応じた施策を行うことによって,人々の森林管理に影響を与える可能性を示唆する。
著者
山本 伸幸
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.1-8, 2011-07-15
被引用文献数
1

フィンランドにおける森林所有者共同組織の,独立前後から現在までの形成過程に焦点を当て,同国の公私分担の有り様を探ることを目的とした。具体的には,日本の森林・林業再生プランの議論などで近年度々参照される森林管理組合(MHY)と,グローバル企業体である巨大森林協同組合メッツァリートグループという,性格の異なる2つの森林所有者共同組織の対比を議論の中心に据え,日本の森林組合論を手がかりに整理を試みた。その結果,1)森林管理組合については,公益性のある土地組合へと純化する傾向が近年の行財政改革の中であらためて問い直されていること,2)メッツァリートについては,森林所有者の組合としての拘束された資本の側面が,大規模林産企業としての機能資本の側面によって変容を迫られていることが明らかとなった。最後に,3)今回の議論が,日本の森林組合に関する公私分担の議論にも資することが示唆された。
著者
武田 八郎
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
no.129, pp.117-122, 1996-03
被引用文献数
3

わが国における紙パルプ産業の海外造林は1970年代の東南アジア,大洋州諸国での試験造林事業をはじめ,ブラジル・紙パルプ資源開発プロジェクト,本州製紙のパプアニューギニアでの造林事業などがあげられるが,石油危機を契機に海外造林はしばらく停滞していた。しかし'80年の「チップショック」により紙パルプ産業は原料確保先の分散化や多角化を図るとともに,海外造林を中核とした製紙原料の開発輸入を進めることになった。とりわけ1980年代半ば以降の円高進行や1990年代に入っての地球環境問題などを背景に,紙パルプ資本の海外造林投資が相次いでいる。これらは安価な製紙原料となる短伐期型のユーカリ造林であるところに共通性があり,また進出先もタイ,ベトナム,チリ,ニュージーランド,オーストラリアといった環太平洋諸国に広がっている。これは紙パルプ産業による長期的な原料確保を補完するための新たな海外進出に他ならない。
著者
奥田 裕規 井上 真 安村 直樹 立花 敏 山本 伸幸 久保山 裕史
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.37-42, 1998-10-01
被引用文献数
2

高度経済成長期以降,全国の山村において4割もの人口が若年層を中心に流出した。しかしながら,東北地方の人口減少は他の地方と比べ,比較的緩やかであった。これは,家の跡取りとして財産を引き継ぐ替わりに親の世話をするという「使命」を負わされ,その「使命」を果たすため,農業や出稼ぎをしたり,「国有林材生産協同組合」(以下,「国生協」という)等に勤務することにより山村に残り,または通勤圏内に仕事を見つけ,都市部からUターンしてきた人たちが35歳以上世代に多くいたからである。ところが,1990年以降,人口減少の程度が激しくなっている。この理由として,都市部に出た34歳以下の子供たちが,故郷に帰って財産を引き継がねばならないという「使命」から解き放たれ,故郷に帰ってきていないことがあげられる。山村が今後も維持されていくか否かは,この子供たちが山村に戻ってくるか否かにかかっている。アンケート調査によると,女性の子供たちに,故郷で親の世話をするべきだと考え,将来,故郷に帰るか否か迷っている傾向がみられる。このような子供たちが自ら望んで故郷に帰って来るために,どのような環境を整えればよいのか,今後,更に研究を進めていく必要がある。
著者
泉 桂子 佐藤 康介
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.1-15, 2021 (Released:2021-08-14)
参考文献数
26

ロッククライミングは近年森林スポーツの一種として普及しつつある。今後森林内の岩場を利用するクライマーの増加 とそれに伴う地域社会や他の森林利用者との軋轢の発生・顕在化が予想される。本研究の目的は,軋轢の調整に成功しているロッククライミングエリアの運営実態の解明と,クライミングが地域活性化に与える影響の把握である。対象地は岐阜県の笠置山クライミングエリアであり,地域の住民や組織とクライマーが相互協力の関係にあり,かつクライマーから入山協力金を徴収している。運営については地域の財産区を母体とする地域住民団体と近隣地域のクライマーからなる愛好者団体が連携を保っていた。その一方でエリアの運営資金確保には困難も見られた。エリアの開設には明治期の旧村有林に起源を持つ笠置財産区有林が重要な役割を果たした。さらにクライマーへのアンケート調査 (n=46) によれば,宿泊を含むエリア周辺での消費支出は低調であり,コンビニエンスストア以外の施設の利用も少なかった。しかしながらその来訪回数はリピーターが8割以上を占め,居住地,クライミング歴や年齢層は幅広く,多様なクライマーがエリアを訪れていた。
著者
芳賀 和樹 加藤 衛拡
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.14-26, 2012-03-01 (Released:2017-08-28)
参考文献数
33
被引用文献数
1

従来の研究では,近世の藩営林経営と近代の国有林経営の関連性が考察されることはなかった。本論文では,秋田を例にして,近世における藩営林の管理・経営システムの到達点と,その近代への継承について考察した。秋田藩は,19世紀初めに抜本的な林政改革を開始し,領内の林政を統一して,輪伐を基本とする高度な森林経営技術を確立していった。近代に入り,基本的には近世の藩営林を引き継いで秋田県域の官林が成立する。官林は当初秋田県が所管し,明治11年からは政府が直轄した。しかし,19世紀に確立された森林の管理・経営システムは,官林を経営する実務に長けた人材や,藩営林を管理・利用してきた山元の村々に蓄積されており,詳細な森林資源調査と計画的利用法が常に志向された。
著者
エムディ アブデュルラ ラナ 野口 俊邦 エムディ アブデュス セレム
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.54-61, 2006-03-01

This paper applies the cost-benefit analysis to the issue of participatory forest management (PFM) projects in Bangladesh. As economic incentive is the key factor to ensure farmers' willingness to continue in the PFM project, cost-benefit analysis of the project is very essential to understand the success of the project. To meet the objective of the study an interview-administered questionnaire survey was conducted on 146 purposively selected participated farmers whose plots were felled in 2003. The important findings of this study were (i) the PFM project was economically beneficial both for the farmers and for the government, (ii) the average amounts of farmers' share of benefit from the final felling were Tk. 37,260 in agroforestry system and Tk. 67,104 in woodlot forestry system, which were attractive amounts for a local poor households, (iii) the benefit-cost ratios were 3.54 for the agroforestry system and 2.45 for the woodlot forestry system, (iv) although the collection of total government revenues was higher from woodlot forest plots than from agroforestry plots, the benefit-cost ratio was higher in agroforestry plot than in woodlot forest plot, (v) the standard of living of 100% of the farmers had improved after receiving their share of benefits from final felling.
著者
イチャワンディ イン 篠原 武夫 ダルスマ ドゥドゥン 仲間 勇栄
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.1-12, 2005-07-01
被引用文献数
2

This paper describes the characteristics of private forest management applied by farmers in dry land of the rural Java. The agroforestry system was used to manage their forest to manifest many objectives and constraints. The farmers practiced many types of agroforestry system, which depend on their own habit and needs. By a long experience, farmers cultivated their own small land with a high value of plant species combination. Farmers were able to manage their private forest on sustainable manner by applying selective cutting system. Even though, private forest has not contributed a big portion to the total household income, but it was important as saving asset, especially when cash money urged during emergency situation. Financial analysis proved that agroforestry-based private forest in Java is prospective for an investment in farming business. PF system is a promising system to be promoted for forest resources improvement in Java. It could be accelerated by intro-ducing appropriate policy and programs with farmers' characteristics on managing PF in rural area of Java.