著者
佐藤 健一 冨田 哲治 大谷 敬子 佐藤 裕哉 原 憲行 丸山 博文 川上 秀史 田代 聡 星 正治 大瀧 慈
出版者
長崎大学
雑誌
長崎医学会雑誌 (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.87, pp.186-190, 2012-09

平成20年度に広島県・市が主体となり黒い雨を含む原爆被爆体験による心身への健康影響や黒い雨の体験状況に関するアンケート調査が行われ,平成22年に「原子爆弾被爆地域の拡大に関する要望書」が厚生労働省に提出された.しかしながら,「黒い雨」そのものを危険因子として死亡危険度を評価した疫学的研究は未だない状況である. 一方で,黒い雨を含む放射性降下物などによる間接被爆あるいは内部被爆の影響を評価する試みとして,被爆時所在地の位置情報を用いた死亡危険度の評価が考えられる.
著者
田中 憲一 Alexander Ivannikov 宮澤 忠蔵 豊田 新
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.79, pp.171-174, 2004-09

カザフスタン共和国セミパラチンスク近郊の旧ソ連核実験場では,1948年より1989年まで459回の地上・空中・地下核実験が行われてきた. これにより50万人とも言われる人々が被曝しており,我々はその線量評価に取り組んでいる. 線量評価の有効な方法の1つに歯のエナメル質を用いたESR法がある. ERS測定を日本で行う場合,通常はまず核実験場近隣住民の歯を空路で日本に持ち帰るが,空港のX線手荷物検査により歯の被曝線量が増加する可能性がある. 一般的に,X線手荷物検査の線量は数uGy〜数十uGyと言われている. 一方,セミパラチンスク近郊住民の歯の線量は,数十mGy〜数百mGyで論議される. 従って歯のESR線量測定法におけるX線手荷物検査の影響は非常に小さいと予想されるが,本研究ではこれを実験的に確認する.
著者
高木 正剛
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.5-10, 2005-03

僧帽弁位機械弁装着した30才女性に対しワーファリンをヘパリンの自己注射(皮下注)に代替し妊娠前より妊娠36週まで約14ヶ月間を管理した. 妊娠15週までは良好な経過であったが以後は顕著に凝固能亢進しAPTTは正常値に近づいた. しかし全血凝固時間は38分以上に延長しており,D-ダイマーは正常妊娠時の範囲内でありFDPも正常値であったためヘパリンは最高2.3×10 単位に抑制出来た. 出産は妊娠38週に帝王切開で行なわれ正常男児が得られた. ヘパリンによる母親への副作用は特に認めずヘパリン抗体も認められていない. ヘパリン自己注射による妊娠管理は決して安全容易ではないが,それぞれの症例に応じて細やかに対応することで可能であり,入院期間の短縮につながると思われた.
著者
柴田 義貞
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.87, pp.221-224, 2012-09-25

セシウムはカリウムと同族のアルカリ金属であり,両者の化学的・物理的性質はよく似ており,人体には約4,000Bqの放射性カリウムが常在している.2011年3月11日に発生したマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震と随伴巨大津波によって,東京電力福島第一原子力発電所では全電源喪失の事態が発生し,運転中の原発3基では炉心溶融が起こり,運転休止中の1基でも冷却保管されていた大量の使用済燃料棒が破損し,1986年4月26日に旧ソ連で発生したチェルノブイリ原発事故による放出量の約10%の放射性物質が放出され,福島県をはじめとする広範囲の地域が放射性物質によって汚染されることとなった. チェルノブイリ原発事故で多数の小児甲状腺がん発生の原因となった放射性ヨウ素への被ばくは,政府が速やかに行った汚染原乳の出荷制限措置によって最小限に抑えられ,数か月後には被ばくの虞もなくなった.一方,セシウム137への被ばくについては,その半減期が30年と長期であるため,多数の人が将来の健康影響を懸念している. チェルノブイリ原発事故によるセシウム137の健康影響はこれまでのところ認められていないというのが大多数の研究者の考えであるが,福島原発事故後の日本ではスウェーデンのマーチン・トンデル(Martin Tondel)博士やベラルーシのユーリ・バンダジェフスキー(Yuri Bandazhesky)博士などごく一部の研究者の研究が過大に評価されており,インターネットや講演会などを通じての広報活動によって,一般住民に無視しえない影響を与えている. 本報告では,彼らの研究を統計的因果推論と現代疫学の視点から検討する.
著者
芳原 敬士 宮川 清
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.79, pp.282-285, 2004-09

DNA損傷に対し,相同組換え修復においてRad51と協調しているRad51 paralogの1つであるXRCC3の機能解析を行った. 遺伝子ターゲティングによりヒト大腸癌細胞(HCT116)からXRCC3遺伝子欠損細胞を作製し,作製したXRCC3欠損細胞に,野生型XRCC3 cDNA,および乳癌や膀胱癌などの発症リスクに関与することが報告されている遺伝子多型(T241M)を有するXRCC3 cDNAを発現することによって相補性実験を行った. その結果,XRCC3は,Rad51依存性の相同組換え修復に重要な役割を果たすとともに,DNA複製にかかわるRPAの機能を制御することによって複製の開始点をも調節していることを証明した. 更に遺伝子多型は,修復能は正常であるが複製調節能には異常をきたしていることも明らかになった. これらは,相同組換え修復はDNA複製機構と密接に連関し,その異常は発癌のリスクに関与する可能性を示唆するものと考えた. この実験は被爆者に置き換えると,被爆後のDNA障害に対する細胞内応答現象の1つを説明する事が出来るモデルであり,原爆後遺症としての発癌に関係する染色体不安定性の分子機構の1つとして考えられた. ノックアウトの作製は従来はCHOあるいはDT40等の脊椎動物細胞での報告があるが,我々は,HCT116細胞を用い,機能解析を行った. この細胞は,ミスマッチ修復異常を有する欠点を持っているが,それゆえに相同組換え頻度が相対的に高くノックアウトが比較的容易であり,p53が正常であるために細胞周期の研究に有用であると思われた.
著者
辻 英之 益田 和彦 杉本 洋輔
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.157-161, 2011-09-25

症例は58歳女性、50歳時にVogt-小柳-原田病(原田病)を発症し、最近はステロイド点眼のみを続けていた。2010年7月より4.5kgの体重減少あり。8月に入り、咽頭痛、口渇、全身倦怠悪化するため8月2日近医受診、随時血糖433mg/dl、HbA1c 9.8%(以下HbA1cは国際標準値で表記)あり、投薬加療開始されるも、ケトーシス悪化傾向にあり、当院紹介され8月6日入院となった。入院時採血、検尿で、抗GAD抗体 1214.3U/ml、血中CPR空腹時 1.0ng/ml、食後2hr 1.2ng/ml、尿中CPR 15.6マイクロg/日、CPR 5min 0.5ng/mlであること、約1年前の空腹時血糖84mg/dl、HbA1c 5.6%であることなどから急性発症自己免疫性1型糖尿病と考え、インスリン強化療法を導入、加療を開始した。入院時の眼底検査では典型的な夕焼け眼底を認めるものの、糖尿病性変化はなかった。患者の同意を得、測定したHLAでは、A*1101 A*2402 B*3501 B*5401 C*0102 C*0303 DRB1*0405 DQB1*0401 DPB1*0501でVogt-小柳-原田病、1型糖尿病に疾患感受性のあるHLA DRB1*0405が陽性であった。
著者
今村 一歩 川下 雄丈 古賀 直樹
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.119-123, 2013-06-25

症例は79歳、男性。不明熱にて精査中、腹部CT精査にて胃前庭部に高輝度線状陰影を認め魚骨穿通疑いにて当院紹介となった。明らかな腹膜刺激徴候なく準緊急的に腹腔鏡下精査を行った。検索すると胃前庭部前壁から線維組織とつながる形で長さ20mm程の魚骨に相当する白色線状物を認めた。魚骨の末梢のみが胃漿膜内に嵌入した状態であり、鋏にて漿膜を鋭的に切離し摘出を行った。穿通部位の胃壁漿膜筋層を縫合し周囲に膿瘍形成のないことを確認し手術終了した。術後経過は良好で術後8日目に退院となった。魚骨の消化管穿孔はしばしば不定な愁訴を来たし診断に苦慮する場合も存在する。腹腔鏡下アプローチは魚骨の存在診断と摘出を行える有力な治療選択肢の一つと考えられた。
著者
福田 実 鈴木 伸 須山 尚史
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.59-63, 2011-06-25

長崎港に入港する国際観光船の乗客数は増加傾向にあり、2009年には約4万人の外国人観光客が上陸した。これに伴って外国人患者も増加している。74歳の男性は数年前より冠動脈疾患•高血圧あったが、特に問題なく旅行を続けていた。国際観光船で旅行中、咳と不快感により夜間に目覚め息切れが出現するようになっていた。第1病日午前2時に強い呼吸困難が出現し船内のメディカルセンターを受診。長崎へ寄港した際、当院へ救急搬送された。重症呼吸不全であり、原因は肺癌・癌性胸膜炎・肺炎・間質性肺炎だった。人工呼吸管理・ステロイド治療などにより若干呼吸状態は改善された。米国よりメディカルチームに来院してもらい、人工呼吸管理を継続しながらチャーター機で移送した。国際観光船入港の増加により重症外国人患者を診療する機会も増加する。英語、中国語、韓国語など接する機会の多い外国語学習、プロの医学通訳育成が必要である。
著者
大野 毅 古井 純一郎 川上 俊介
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.14-18, 2008-03-25

症例は子宮筋腫手術の既往をもつ87歳の女性.2 007年9月21日朝より腹痛出現,翌22日になっても改善せず救急外来受診,腸閉塞と診断され入院した.イレウスチューブからのガストログラフィン造影検査にて骨盤部小腸の先細り狭窄像を認めたこと,一日排液量の減少を認めないことより手術適応と考えられた.外科転科時の腹部所見は膨満なく減圧良好であり,10月2日腹腔鏡下に緊急手術を施行した.気腹操作にて腹腔内を観察すると拡張腸管のヘルニア門への嵌頓を認め,この部の直上で腹壁を小切開しヘルニア門を解放した.嵌頓した腸管は壊死しており小腸部分切除を施行した.ヘルニア門はS状結腸と腹壁の癒着部位で,これを縫合閉鎖した.術後経過は良好で術後13日で退院した.腸閉塞に対する腹腔鏡補助下手術は,術前減圧可能な場合は術中における原因診断に有用であり,小開腹下での低侵襲の治療が可能である.
著者
鎌田 七男 川上 秀史 島本 武嗣
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.245-249, 2006-09
被引用文献数
1

原爆投下後,直接被爆者の中では早期より小児白血病が,次いで成人白血病が増加し,1953年をピークにして以後白血病の発生減少がみられたことは良く知られている。一方,家族を捜しに市内2Km以内に入った,いわゆる入市被爆者での白血病発生については渡辺・広瀬らの報告が1960年前後に出されているが,入市人口の不確かさなどで,必ずしも研究者間に受け入れられるものとはなっていなかった。広島大学原爆放射線医科学研究所臨床部門(内科)では1962年より被爆者を含む白血病の診断・治療研究を行ってきた。とくに被爆者白血病の臨床的ならびに細胞遺伝学的特徴把握を主眼に研究がなされてきた。入市被爆者における白血病に関しての研究も並行して行われており,かつ入市人口把握の問題点も解決できたので,入市被爆者白血病の1970-1990年までの罹患頻度,病型,染色体所見の特徴について報告し,残留放射線による被曝推定線量について考察する。
著者
関根 一郎
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.185-186, 2006-09

原子爆弾が広島・長崎両市に投下されて60年が経過した。原爆の医学的被害の研究は疫学的解析を主体になされ,様々な放射線被曝後障害の実態が明らかとなってきた。その中で特に重要なものは悪性腫瘍の増加で,白血病が被爆後約10年で発症のピークに達しその後漸減したのに対し,被爆者固形がんは,現在においてもその罹患率の増加が継続している。最近,我々は長崎腫瘍組織登録委員会の資料を基にした疫学的解析により,被爆後30年を経過し1980年代より近距離被爆者に重複がん罹患率が高くなり現在も増加傾向にあることを見出した。被爆者に数十年という長期間にわたり固形がんの罹患率が高い理由はいまだわっかていないが,放射線によりゲノム不安定性といった易腫瘍発生性が惹起されていて,一般的発がん因子の蓄積するがん年齢となって腫瘍が顕在化するのではないかと推論できる。将来的に発生メカニズムの分子レベルでの解明が待たれるが,そのために被爆者生体試料の収集は必須の作業である。
著者
熊谷 敦史 Vladimir A. Saenko 柴田 義貞 大津留 晶 伊東 正博
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.79, pp.297-300, 2004-09

甲状腺癌の約80%以上を占める主要な病理組織型である甲状腺乳頭癌(PTCs)には,特異的な遺伝子異常が存在する. 特に,チェルノブイリ原子力発電所事故後の小児PTCsにおける高頻度のRet/PTC遺伝子再配列異常が報告されている. 一方,成人PTCsにおいては,2003年BRAF遺伝子のエクソン15コドン599に限局した活性型点突然変異(T1796A,V599E)がその3〜5割に認められ,PTCsの発症に関与していることが報告された. その後シークエンス解析等の結果,BRAF遺伝子のヌクレオチド番号・コドン番号の表記が訂正され,これに従いHot spotはコドン600(T1799A,V600E)に訂正された. BRAF遺伝子はRAS-RAF-MAPK経路(MAPKカスケード)を構成するRAF蛋白のアイソフォームのひとつであるBRAF蛋白をコードする遺伝子であり,BRAF蛋白はセリン・スレオニンキナーゼとして細胞内情報伝達因子としての活性を持っている. BRAF蛋白は通常でも,その下流の因子であるMEK1/2に対して,その他のRAF蛋白(ARAF,RAF-1)より強い親和性を有しているとされている. 遺伝子変異によってBRAF蛋白の600番目のアミノ酸がバリンからグルタミン酸に転換すると,BRAF蛋白の構造変化を引き起こし通常よりさらに強力なリン酸化能を恒常的に発揮するようになると考えられている. また成人発症のPTCでは,BRAF遺伝子変異と遠隔転移との間に有意な相関性が認められることも指摘され,BRAF遺伝子変異が予後不良群のマーカーとなる可能性も注目されている. これに対して小児PTCsは成人例に比べて遠隔転移が高頻度に認められるにもかかわらず,予後が比較的良好であることが特徴である. そこで小児PTCsにおけるBRAF遺伝子異常の頻度を検討した. 更に,放射線汚染地域および非汚染地域でのPTCsの遺伝子異常の頻度を比較することにより,放射線被曝による変異誘発の可能性もあわせて検討することとした.
著者
近藤 晃 林 洋子 山下 裕
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.111-114, 2007-09

患者は50歳の女性。2007年4月5日,高熱,悪寒,全身の筋肉痛,関節痛と咳嗽が数日続くため,他医より紹介されて入院した。入院後,HydrocortisoneおよびPredonisoloneの投与を行って解熱したが,4月16日頃から右前腕および右大腿に浮腫性の紅斑が出現した。経過を通じ,白血球増多,CPR高値,赤沈亢進,LDHの上昇,さらにはムコ蛋白の上昇と軽度の肝機能障害があり,臨床的には発熱と咽頭痛,関節炎と皮疹が認められ,リウマトイド因子や抗核抗体は陰性で,血清フェリチン値も高値を示したことから,成人スチル病と診断した。本例はその経過中に,明らかにインフルエンザAの有意の抗体の上昇を認めたため,成人スチル病にこの感染が併発したものと考えた。ステロイドの長期投与によって,2007年5月末の時点では平熱の状態で,関節痛や皮疹も消失している。
著者
林 洋子 山口 東平 野中 俊輔
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.309-312, 2004-12

症例は46歳,女性. 1988年に原発性胆汁性肝硬変(PBC)と診断され,加療を受けていた. 2002年肝硬変による浮腫,腹水貯留が出現し,2003年には腹部CTにて門脈血栓を指摘された. 2004年4月4日,吐血し,意識レベルの低下を認め,緊急入院となった. 食道静脈瘤,貧血の治療を行うも,血圧は徐々に低下し,吐血から26時間後に死亡した. 病理解剖では,多量の消化管出血及びstageIVのPCBを背景に広範な急性中心性肝壊死が認められた. Sepsis,DICの所見も確認された. 死因は,septic shockの可能性も否定できないが,hypovolemiaに起因する中心性肝壊死による肝不全が直接死因として最も重要な病態と考えられた.
著者
近藤 晃 穐山 雄一郎 山下 裕
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.372-375, 2006-12

71歳男性で,発熱,両下肢の倦怠感があるため,2006年7月7日当病院に入院した。右肘部背側に小鶏卵大の腫瘤があり,右前腕および上腕屈側に結節および発赤をみとめた。白血球数18200/mm3,好中球86.9%であったため,piperacillinの治療を開始した。入院時の血液培養で,Viblio vulnificusが分離された。その後,piperacillinのほか,imipenem, biapenemに変更して,症状は軽快した。アルコール性肝炎があったが,早期からpiperacillinによる治療を行ったことにより,重症化せずに救命し得たものと考えられた。
著者
大畠 雅之 田中 賢治 中村 昭博
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.313-317, 2004-12

漏斗胸に対する胸骨翻転術,胸骨拳上術に変わる治療として2001年よりNuss法を行っている. Nuss法は金属プレートにより変形胸骨を表面より支える方法で現在まで12例に施行した. 8例にステンレス鋼を4例にチタン合金のプレートを使用した. 手術時間は48分から4時間11分で平均1時間47分であった. 出血量は前例20g以下であった. 術後の鎮痛として10例に硬膜外麻酔を用いた. 術後合併症が2例に発生し,1例は皮下気腫,他の1例は術後金属プレートの偏位のための金属プレートの抜去術が行われた. Nuss法後2年が経過した1例に金属プレートの抜去術が行われたが,胸郭の変形,再陥凹を認めていない. 多くの患児とその家族は術後の結果に非常に満足しているが,成長過程にある小児の場合注意深い経過観察が重要であると思われる.