著者
山下 隆治 児玉 光博 真鍋 修
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.6, pp.774-776, 1991-06-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
5

Deithyl 2, 3-pryridine dicarboxylates 3 were easily prepared in one pot synthesis by the reaction of a-chlorooxaloacetate 1, a, p-unsaturated aldehydes 2 and ammonia. Especially, diethyl 5-ethyl-2, 3-pyridine dicarboxylate 3a was obta i ned in a good yield (81%) by the reaction of 1, 2-ethyl-2-prop enal 2a and ammonia in chloroform using an autoclave. In the reaction in an autoclave, the yield of 3 a in chlorobenzene or toluene was similar to that of chloroform. But under atmospheric pressure, the yield of 3a was lower in toluene, benzene, and ethanol than in chlorobenzene.
著者
安田 伍朗 堀 卓也
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.3, pp.240-243, 1991-03-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
4

N-Benzylation of phenanthro[9, 10-d]triazole gave the mixture of 1-benzyl-1H- and 2-benzyl-2H-phenanthro[9, 10-d]triazole (1c and 2c) such as N-Alkylation. The mass specctrometry can be used to distinguish clearly between the 1-alkyl-1H- and 2-alkyl-2Hphenanthro-[9, 10-d]-triazole. The 1-alkyl compound releases more N2H, which is further split with the (R-H) elimination to give base peak m/z 190, than do the 2-isomer, and so on the mass spectrun of 2-alkyl compound a base peak is parent peak. However the fragmenta tion patterns of the two benzyl compounds show similarities so structures are proposed for these fragment ions by consideration of rearrangement fragment C14H8N+(m/z 190) and C6H5CH2+ (m/z 91).
著者
伊藤 健児 永島 英夫 深堀 隆彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.3, pp.177-186, 1991-03-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
78
被引用文献数
2

新規アリルルテニウム(IV)錯体,Ru(η5-C5R5)L,2X(R=H or CH3;L=C0 or Ph3P; X=Cl or Br) または [Ru(η5-C5Me5)Cl2]2 に対するアリル基質の酸化的付加により合成し,R=CH3;X=Brの代表例につきX線構造解析を行った。これらアリルルテニウム錯体ならびに既知の[Ru(1-3:6-7:10-12-η-C12H18)Cl2を種々の有機金属試薬によりアルキル化し,多様なアルキル(アリル)ルテニウム(IV)錯体に誘導するとともに,この酸化状態にある炭素-ルテニウム(IV)結合の反応挙動を詳細に検討した。その結果,金属-炭素結合はCOtBuNC,アルケン類との反応においてまったく挿入活性を示さず,β-水素脱離と連続するヒドリドとアリル配位子間の還元的脱離をもっとも容易に起こす。C-C結合生成をともなう還元的脱離は80℃以上で進行し,いずれの場合もRu(II)化合物として安定化される。一方カチオン性のジエンルテニウム(II)活性種は第2のジエン分子と酸化的環化してC-C 結合を生成したのち,β脱離と還元的脱離による水素移動を連続して起こし,量論的および触媒的なプタジェンの二~三量化が高選択的に進行することを見いだした。
著者
清野 公師 寺井 忠正 後藤 邦夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.2, pp.149-152, 1991-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
9

GrayanotoxinIII (3,5,6,10,14,16-hexahydroxygrayanotoxane ,G-III) は 3,6,14 位に第二級ヒドロキシル基,また, 5,10,16 位に第三級ヒドロキシル基の合計6つのヒドロキシル基をもつ四環性ジテルペノイドである。本報においては,0~100℃ の間に5段階の反応温度を設定し G-III を無水酢酸-ピリジンによりアセチル化反応を行うとともに,その反応経過を詳細に検討した。その結果,ヒドロキシル基のアセチル化に対する反応性は,6位が最も高く,以下,3位,14位,16位の順であった。この中で,6位のヒドロキシル基の反応性は極めて高く,0℃ではこれのみが選択的にアセチル化された。一方,3-OHと14-OHのアセチル化速度の比は,100℃においては 5 : 2 であったが,低温になるにつれその比が減少し,20℃では約 1:1 となった。さらに,第三級ヒドロキシル基については77℃以上で反応した結果,16位のみがアセチル化された。以上の結果から,この反応は逐次競争反応にしたがい進行することが判明した。
著者
宇野 文二 窪田 種一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.2, pp.101-109, 1991-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
56
被引用文献数
1

著者らは近年,電子スペクトルに対する置換基効果を置換基定数で記述する新しい方法を研究してきた。電子スペクトルで測定される一重項あるいは三重項遷移エネルギー(1.3Euv)は, Swain らの FR 置換基定数あるいは湯川らの置換基定数 (σi ,σπ+,σπ-)を用いて, 1.3EUV=aF+bR+C, 1,3EUV=ασi+βσπ++γσπ-+Cと記述された。そして,これらは共役系の n-π* 吸収帯を初め,共役系および脂肪族系の n-π* 吸収帯,分子内電荷移動吸収帯,分子化合物の分子間電荷移動吸収帯およびそれら錯体形成による成分化合物自身の吸収帯などに対する置換基効果に適用できる一般式であることを明らかにした。さらに,ベンゼン置換体の吸収帯を用いて,これらの式の適用限界を議論した。第一吸収帯に対しては合理的に適用できるが,第二吸収帯には適用できなかった。第二吸収帯に対する分子内電荷移動配置の寄与は置換基の種類にいちじるしく依存し,この吸収帯の性格がすべての置換基で同じでないためである。これらの一連の研究について,一般式の誘導の過程から種々の吸収帯に対する適用結果および分子軌道論によるその理論的背景を総合的に述べた。
著者
矢田 智 高木 弦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.1, pp.20-24, 1991-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
15
被引用文献数
5

8族金属触媒によるメントン1とその異性体であるイソメントン2の還元アミノ化反応の選択性と立体化学について検討した。1の反応生成物は第一級アミン異性体のネオメンチルアミン4,メンチルアミン5とネオイソメンチルアミン6であった。第一級アミン異性体の生成率は5%Pd-C>5%Ru-C≧5%Rh-C>5%Pt-C>Raney-Co>Raney-Niの順で収率24~84%の問であった。5%Pd-C触媒では3種類の第一級アミン異性体中,4が45%の収率で最も多く生成したのに対し,5%Ru-C触媒では6が41%の収率で最も多く生成した。このように,触媒による第一級アミン異性体の生成物分布の違いは反応中間体のP-メンタン-3-イミン3と3のエナミン形,3-P-メンテン-3-アミン10との間でエナミン形-ケチミン形互変異性化が生じ,これらに対する水素付加速度の違いによって説明した。また,1や2の反応ではまったく第二級アミンや第三級アミンの生成は認められず,その原因を1,2や3の官能基に対する置換イソプロピル基の立体障害によって説明した。一方,2の還元アミノ化反応では1にくらべて反応が進みにくい。しかし,2の反応によって得られた第一級アミンの生成物分布は1の反応の結果と似ている。2の反応では2が1に異性化して反応が進行したことを示唆した。
著者
藤田 眞作 小山 行一 小野 茂敏
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.1, pp.1-12, 1991-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
19
被引用文献数
11

インスタントカラー写真に用いるo-スルホンアミドフェノール色素放出剤の分子設計における知見を述べる。この化合物の色素放出能力は,酸化と加水分解による。これらの効率が,ベンゼン環の置換基によって,大きく変化することを見いだした。とくに,相当する酸化体(o-キノン・モノスルホンイミド)の加水分解の副反応を調べ,それがt-ブチル基の立体障害により抑止できることを見つけた。一方,放出されるアゾ色素の堅ろう性は,アゾ成分中の電子供与基の存在で向上することを示した。色素放出剤の合成設計においては,o-アミノフェノール中間体の合成経路を種々検討した。その中から,ベンゾオキサゾールを経由する経路を開発した。Beckmann転位によるベンゾオキサゾールの合成法,スルホニルクロリドの合成条件,2-メトキシエトキシ基の導入方法,キノンの新規還元法を述べる。この研究によって,この色素放出剤を用いるインスタントカラーフィルムが,実用化された。
著者
西田 晶子 竹下 誠 原田 敏直 藤崎 静男 梶返 昭二
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.9, pp.945-948, 1990-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10

9-(2-メチルフェニル)-9-フルオレノール1を出発原料として,数段階を経て9-(2-ジメチルアミノメチルフェニル)フルオレン4および9-(2一ジメチルアミノメチルフェニル)-9一フルオレノール5を合成した。これらは室温においてSP体が優勢配座であるごとが判明した,つぎに4のCDC13溶液にトリフルナロ酢酸を少量ずつ添加したところ4の塩が生成し,優勢配座がSPからapへと変化した。生成した4-ap塩はN-H… π 相互作用により安定化しているものと推定した。4のこの相互作用が9-(2一ジメチルアミノフェニル)フルオレン6のそれとくらべて強いことを,4のジメチルアミノメチル基の塩基性が6のジメチルアミノ基の塩基性より強いことから説明した。また酸としてトリフルオロ酢酸のほか酢酸を用いて,4塩の配座平衡におよぼす酸の強さの影響を調べたところ,弱酸の酢酸ではその平衡も ap/sp=7/3を限度とすることが判明した。
著者
石塚 孝宏 三浦 久男 野平 博之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.10, pp.1171-1177, 1990-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13
被引用文献数
7

自発分極が大きく,電界応答性に優れた新規強誘電性液晶を合成することを目的として,光学活性1,1,1-トリフルオロ-2-オクタノール1を用いて,光学活性部位にトリフルオロメチル基をもつ液晶化合物を合成した。1とコア部分をエステル結合で連結した化合物は,Sc*相の温度範囲が狭く,自発分極も期待したほどには大きくなかった。一方,1とコア部分をエーテル結合で連結した化合物4'-alkoxy-4-biphenylyl 4-(1-trifluoromethylheptyloxymethyl)benzoate 6および 4-(5-alkoxy-2-pyri-midinyi)phenyl 4-(1-trifluoromethylheptyloxymethyl)benzoate 7は,いずれも広いSo*相をもち,自発分極も2000~3000μc/m2という大きな値をもつ優れた強誘電性液晶であることがわかった。また・これらはコア構造の違いにより応答時間の温度依存性にいちじるしい違いがみられた。さらに,これらをアキラルなホスト液晶に混合して評価した結果,6がキラルドーバントとしても優れていることがわかった。
著者
石川 雄一 一ノ瀬 泉 西見 大成 塚本 真司 国武 豊喜
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.10, pp.1065-1071, 1990-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
25

親水基として環状ポリアミン(cyclam)を有する不斉両親媒性化合物(2C16AspC11N4,2C12Glu.AzoC1014N4,C12AzoCn14N4)およびその金属錯体の二分子膜形成能と膜特性を,電子顕微鏡による形態観察,示差走査熱量計によるゲル-液晶相転移の測定,さらに円二色性スペクトルによる分子配向の評価から明らかにした。cyclam型二分子膜,その金属錯体膜,および対応するアンモニウム塩型.二分子膜の膜組織化能は親水基構造に依存し,Cu2+錯体≦Ni2+Zn2+錯体≦14N42H+<-N+(CH3)3の順で,より発達した二分子膜(高度な秩序性,相転移の大きな協同性,安定な会合形態)を与えた。錯体膜および配位子膜の自己組織性は疎水鎖の構造にも依存し,C12AlaAzoCn<2C12Glu.・AzoC102C16AspC11-の1頂に膜の組織性が向上した。また,一本鎖型化合物のcyclam金属錯体が二分子膜を形成するためには,C6以上のスペーサーの長さが必要であった。
著者
黒綺 富裕 矢野 真司 加藤 徹 若月 淳也
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.9, pp.955-961, 1990-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
36
被引用文献数
3

リン酸エステル堪型両親媒性モノマーである,phosphate (Cn-AHMP-Na)Sodium alkyl 2-hydroxy--3-thethacryloyloxypropylを,リン酸二水素アルキルの-ナトリウム塩(Cn-MAP-Na)とメタクリル酸2,3-エポキシプロピル(EPM)の反応により合成した。HPLC分析や31P-NMR分析の結果,C12-AHMP-NaはEPMのエポキシ基のβ開裂体であった。AHMP-Naモノマーの種々の物理化学的諸物姓(種々Cのn-溶荊への溶解性,臨界ミセル濃度(cmc),cmcにおける表面張力(γcmc),ミセル形成自由エネルギー(∠Gmic),分子占有面積(A))を測定した。さらにC12-AHMP-Na/水の2成分系の相図を作成した。36%以下の濃度では等方性のミセル溶液,39~62%ではミドル相,67~72%でラメラ相85%以上では結晶であった。水溶液中で重合したC12-AHMP-Naのホモポリマ-は,水,メタノ-ルを増粘した。また,ポリエチレングリコールジアクリラートで橋かけしたCn-AHMP-Naのポリマーは水,メタノールを吸液し零たが,エタノールはほとんど吸液しなかった。ミドル相の固定化を目的に,C12-AHMP-Na/水の2成分系相図のミドル相領域で重合を試みたが,重合物は等方性となり,ミドル相の固定化はできなかった。
著者
野口 英行
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.9, pp.939-944, 1990-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
30
被引用文献数
4

カリウム-18-クラウン-6錯体によるピクリン酸イオンの25.0℃ での抽出平衡定数(Kex)を9種の抽出溶媒について決定した。log Kex 4. 95 (CH2C12), 4.85 (CHCl3) , 4.43 (CH2C1CH2C1)3.39 (C6H5C1), 2.31 (C6H5CH3) , 1.91 (m-(C1H3)2C6H4), 1.51 (C6H5CH ( CH3)2), 1.48 (CS2), 1.04(C2H50C2H5)の順に減少する。著者はIogKexが18-クラウン-6の分配係数の対数(10gKd,L)と直線関係を示すことを見いだした。本イオン対抽出系に正則溶液論を適応し,イオン対の溶解パラメーターおよびモル体積を12.3(ca1.cm-3)1/2.280cm3.mo1-1と決定した.さらにlogKexと10gKd,Lが直線関係を示し,傾きはイオン対と配位子のモル体積の比となることを正剛溶液論を用いて説明した。
著者
猪俣 克巳 西久保 忠臣
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.7, pp.764-769, 1990-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1

第四アンモニウム塩構造を有するジシンナマート類(3a~f)は,2,2'-(メチルイミノ)ジエタノールとシンナムクロリドにより得られたN-メチルビス[2-(シンナモイルオキシ)エチル]アミンと種々のアルキルブロミドとの反応により合成した。合成したこれらのジシンナマート類の光化学反応を水溶液中および有機溶媒中で行い,その光反応性や分子内の置換基の効果についても比較検討を行った。さらに,313nm光による二量化反応および254nm光による開裂反応も一部検討を行った。この結果.第四アンモニウム塩構造を有するジシンナマートの光反応(付加環化反応)は二次反応で進行し,さらに長時間光照射することにより定量的に進行することが判明した。また,これらのジシンナマート類は,対応する疎水性の1,5-ペソタンジオールジシンナマート(PDC)よりも高い光反応性を示し,その反応性は溶媒の種類に大きく依存し,水がもっとも優れた反応溶媒であることも判明した。
著者
山本 弘信 八月朔 日猛 渡邉 敏行 宮田 清蔵
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.7, pp.789-796, 1990-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
15
被引用文献数
3

著者らは超分子分極率βの大きな分子が非中心対称構造をとりやすく,バルク位相整合のために最適な配向をするような分子設計法について検討した。種々のアニリン誘導体2分子をメチレン基により結合したメタンジアミン分子は,半経験的分子軌道計算MOPACAM1法によりΛ型配座をとることが予測された。Λ 型分子は,一方向にスタッキソグして結晶化しやすいために非中心対称構造をとりやすいと考えられる。合成したメタンジアミン誘導体はすべてSHG活性であった。結晶構造解析の結果から,メタンジアミン分子は。Λ型配座をとり,結晶中でΛ が一方向にスタッキングしており,分子の極性軸は100%配向していることがわかった。この構造は,原料のアニリン2分子がバルク位相整合のために最適な配向をした状態に近いので,有効なβテンソル成分をバルク位相整合に最大限に利用することができると考えられる。その結果,二次の非線形光学定数dのうちバルク位相整合可能な非対角テンソルが最大となることが予想される。この分子設計法により,非常に高い確率でSHG活性物質を合成することができた。
著者
近藤 知 掛川 一幸 佐々木 義典
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.7, pp.753-758, 1990-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13
被引用文献数
4

チタン,ジルコニウム,鉛の混合硝酸塩溶液の凍結乾燥によりPb(Zr, Ti)03(PZT)を合成した(全凍結乾燥法)。またチタン,ジルコニウムの混合硝酸塩溶液の凍結乾燥生成物を熱分解したものとPbOとの固体間反応によってもPZTを合成した(組み合わせ法)。これらの合成法,および一般に行われている固相法について反応性,均一性などを比較検討した。ゑ全凍結乾燥法により得られた粉体の反応牲は最も良好で中間生成物なしにPZTが生じ,約600℃ で単一相のPZTが得られた。組み合わせ法でも中間生成物は生じず,単一相のPZTは900℃ で得られた。固相法では中間生成物としてPbTiO3が生じ,単一相のPZTが得られる温度は1000℃ であった。固相法により合成されたPZTには大きな組成変動(組成不均一性)が認められた。全凍結乾燥法と組み合わせ法により合成されたPZTの組成変動は検出精度内では認められなかった。誘電率の温度特性を調べた結果,全凍結乾燥法および組み合わせ法を用いて得られたPZTの誘電率の最大値はともに,乾式法によるPZTの2倍程度の値をもっていた。
著者
上釜 兼人 栗原 正目呼 平山 文俊
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.10, pp.1195-1199, 1990-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
25
被引用文献数
1

アルキル化β-シクロデキストリン誘導体[ヘプタキス(2,6-ジ-O-メチル)-β-シクロデキストリン(DM-β-CyD), ヘプタキス (2,6-ジ-O-エチル)-β-CyD (DE-β-CyD)] を用いて,プロスタグラソジンE1(PGE1)の安定性の改善と錠剤からの放出速度の制御を企図した。PGEユの固体状態における安定性はCyD複合体化により向上し,その効果はDE-β-CyD≦ β-CyD<DM-β-CyDの顧であった。錠剤からのPGE雲の放出速度は,複合体の溶解性を反映して,β-CyDまたはDM-β-CyD複合体化により促進され,一方,DE-β-CyD複合体化により抑勧された。また,PGE,単独錠の放出速度は溶出液のpHの影響を受けたが,複合体錠の場合はpH依存性は小さかった。速放出性のDM-β-CyD複合体と徐放姓のDE-β-CyD複合体を組み合わせたマトリックス錠ならびに二層錠を調製し放出制御を試みた結果,二層錠からの放出挙動は速放部と徐放部の放出速度の和として観察され,一方,マトリックス錠はゼロ次に近い放出パターンを与えた,これらの結果は,親水性と疎水性のCyD複合体を混合使用することにより,薬物の放出速度を任意に鯛御可能なことを示唆した。
著者
吉永 鐵大郎 岩崎 浩満 河野 賢太郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.11, pp.1256-1262, 1990-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
28
被引用文献数
1

有機化合物のpKaあるいは酸,塩基の強さと分子構造の関係についてはこれまで多くの研究がなされているが,いずれも,単独の方法あるいは指標を用いただけで十分満足できるものはない。著者らは今回,半経験的分子軌道法(PPP法,CNDO/2法,Ext-HMO)を用い,従来から利用されている指標すなわち・H+の授受に関与す為原子位置(X)でのπ電子密度(I1)と中島らの提案したイオン化ポテンシャル(ΣQp(pp|XX)δZ)(12)とを組み合わせて線形結合をつくり,指標の重みぬくキ ラをパラメ._..ターとして変化させ,pKaとの相関係数が最大になるような条件下での指標を新しい指標とした。この方法をMCC法(Maximum Correlation Coefficient Method) と名付けた。この方法を用いるとほとんどの場合,単独の指標を用いる場合より相関係数がかなり高くなるが,各化合物群に対して得られた最適化パラメーターの値から逆に基本骨格分子の特定の原子のクーロン積分値の変化量を見積れる可能性も得た(なんらかの補正を要するとしても)。今回,対象とした化合物群は主としてN原子を含む共役系化合物であったが非共役系化合物にも適用できる可能性がある。
著者
石川 徳久 坂尾 勝彦 松下 寛
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.10, pp.888-892, 1994-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
9
被引用文献数
1

試料液のイオン強度調整を必要としないイオン選択性電極を用いた標準液添加法を提示する。体積Vの試料液を,既知濃度(CS1)の定量イオンを含む第1標準液で滴定したのち,一定体積V0の試料液を添加する。引きつづいて第1標準液と同じイオン強度をもつ既知濃度CS2の第2標準液で滴定する。この二つの滴定曲線においてυS2=υS1(V+V0)/V-υS10の条件を満たす第1および第2標準液の滴定体積υS1,υS2対応にした起電力E1,E2をそれぞれ読み取れば,分析濃度Cxはy対Xの直線プロットの勾配から決定される(VS10は第1標準液の最終添加体積である)。〓種々のイオン強度の試料液中の10-3~5×10-5mol・dm-3の範囲のフッ化物濃度を,誤差±O.4%以下,相対標準偏差0.5%以下で定量した。
著者
佐野 寛 武田 敏充 阿部 恵子 右田 俊彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.5, pp.463-465, 1990-05-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8
被引用文献数
1

第二級アルコールであるシクロドデカノールから誘導される酢酸シクロドデシルとジフェニルシランをラジカル開始剤ジ-t-ブチルペルオキシド(以下DTBPと略記する)存在下加熱すると,デオキシ化されたシクロドデカンを生成した。この反応においてラジカル開始剤は不可欠であり,DTBPなしでは反応はまったく進行しない。またエステルとしては酢酸エステルが最もよい収率を与えた。第一級および第三級アルコールの酢酸エステルもデオキシ化されるが収率は低下した。アセチル化糖のデオキシ化では収率は低く,多量の副生物の生成が認められた。この原因としてジフェニルシランが2原子の活性水素をもつこと,およびラジカル条件下で他のシランに容易に不均化することがあげられる。
著者
森 泰智 川上 聡 橋田 洋二
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.4, pp.396-400, 1990-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
22
被引用文献数
4

非プロトン性極性溶媒中,2,4-位に置換基を持つ6-クロロ-1,3,5-トリアジン〔1〕とシアン化銅(I)あるいはシアン化カリウムとの反応から,いくつかの標題の化合物〔2〕が得られた。しかし,2,4-位にアルコキシル基を持つ場合・同様な反応からイソシアヌでレ酸トリアルキル〔3〕およびヒドロキシ置換体〔4〕が得られ,これらは最初生成したシアノトリアジンが分解しシアン酸アルキルを与え,これを経て生成したものと推察された。また,シアノトリアジンとアミン,アルコール,およびアジ化物イオンなどとの反応から,それぞれ対応するアミジン,イミダート,およびテトラゾール誘導体などが得られ,シアノトリアジンは求電子性に富むことがわかった。