著者
橘川 宗彦 大場 基夫 工藤 盛徳
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.231-236, 2006-06-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
13

ワカサギ卵を水生菌の発生を抑え効率よく孵化させるため, 陶土を用いて不粘着処理した受精卵を高密度で収容できる孵化器を用いる方法と従来の屋外飼育池に敷設した着卵基質に付着孵化させる方法とで孵化管理の比較試験を試みた。孵化器では屋外飼育池に比較し今回の試験では約5分の1省スペース化され, 使用水量も約3分の1に節水された。発眼率では有意差は認められなかったが, 飼育池で観察された卵の脱落による減耗も孵化器では防止できたことや, 受精卵の収容から孵化までの死卵の分離除去が容易であり, 薬剤等を使用せずに水生菌の抑制ができる等の利点があった。一度に多量の受精卵収容作業では不粘着処理に多少時間を要するが, 不粘着処理した受精卵を孵化器に収容する新たなワカサギ受精卵の効率的な孵化管理法を紹介した。
著者
平山 和次 松江 吉行 小牧 勇蔵
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.95-102, 1960-10-31 (Released:2010-03-10)
参考文献数
2

1) 恒温動物に対する麻痺毒として知られていたイソメ毒は, 魚貝類に経口的に与えた場合は無害であるが, 飼育水中に加えると飼育動物に強い麻痺作用が起こる。2) 飼育水中に加えたイソメ毒の毒性は, pHの値に大きく支配され, アルカリ域では毒性を示すが, 酸性域では殆んど無毒となる。3) イソメ毒はイソメの体表部組織中のみに含まれ, 他の部分には存在しない。4) イソメ毒はイソメの死後速かに体表にしみ出るが, 生時に分泌されるようなことはない。5) ゴカイ, イトメ, クロイトメなど他の多毛類中にはイソメ毒のような毒は検出されない。6) イソメ毒とフグ毒とを比較すると, 前者は恒温動物に対しても, 飼育水に加えた場合は魚貝類などの変温動物に対しても, 麻痺作用を示すが, 後者は相当量を飼育水中に加えても魚貝類に対しては麻痺作用を示さない。
著者
示野 貞夫 益本 俊郎 美馬 孝好
出版者
水産増殖談話会
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.113-117, 1993 (Released:2011-03-05)
著者
熊井 英水 今村 儀佐 中村 元二
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.211-218, 1983-03-25 (Released:2010-09-07)
参考文献数
10

マイワシ単一餌料を給与したハマチに対するDBT-HClの投与効果をみるため, 実験Iでは対照群の他に硝酸チアミン5mg, DBT-HCl2mg, 5mgを投与した合計4群を, 実験IIでは対照群の他にチアミン無添加のビタミン混合物投与群更にDBT-HCl2mg, 5mg, ビタミン混合物+DBT-HCl2mg, ビタミン混合物+DBT-HCl5mgの6群を設定し60日間飼育し次の結果を得た。1) DBT-HCl投与群の組織中チアミン濃度は投与量に対応した濃度を示した。2) DBT-HCl2mgあるいは5mgの単独投与群は実験Iおよび実験IIいずれにおいても顕著な効果を認めなかった。3) チアミン無添加のビタミン混合物の投与はへい死を予防した。4) チアミン無添加のビタミン混合物にDBT-HClを2mgまたは5mg併用すれば増体重が著明に向上した。5) マイワシ単一餌料の連続給与はチアミン欠乏症の他にそれ以外の餌料性疾患を併発すると判断した。
著者
李 〓 森 勝義
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.115-119, 2006-03-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
17

中国沿岸では, およそ20種類のカキが生息し, 養殖対象としては主に近江ガキ (Crassostrea ariakensis) , 皺ガキ (C. plicatula) , マガキ (C. gigas) , 大連湾ガキ (C. talienwhanensis) と僧帽ガキ (Saccostrea cucullata) の5種類である。中国におけるカキ養殖は約2000年の歴史があるが, 1990年代以後, 人工種苗生産技術の発達とともに生産量と養殖面積は毎年上昇し続けた。2002年におけるカキ養殖の総生産量は殻付で362.55万tで, 貝類総生産量の37.6%を占め, 第1位である。しかし, ここ数年赤潮多発などの養殖海域の環境悪化, 大量斃死, 養殖ガキの質の低下などの問題が現れてきた。これらの問題点を克服し, 持続性のあるカキ養殖を行うためには, 合理的な養殖管理・漁場開発の実施, 病気予防対策の強化, 優良品種の開発などの対策が考えられる。
著者
亀甲 武志 根本 守仁 伴 修平 三枝 仁 澤田 宣雄 石崎 大介 中橋 富久 寺本 憲之 藤岡 康弘
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.303-309, 2013-09-20 (Released:2015-04-02)
参考文献数
43
被引用文献数
2

水田を利用したホンモロコ Gnathopogon caerulescens の初期育成の可能性を検討するため,2009年と2011年にホンモロコ孵化仔魚を滋賀県内の水田(合計6筆)に 1 m2 あたり20個体から80個体の密度で放流し,中干し時までの成長と生残を調査した。水田へ放流後19~25日間で,15.2~21.9 mm まで成長し,天然下や飼育下での成長よりも早く,生残率は23.1~43.9%であった。以上の結果から,水田はホンモロコの初期育成の場として有効であると考えられた。
著者
間田 康史 宮川 真紀子 林 大雅 海野 徹也 荒井 克俊
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.103-112, 2001-03-20 (Released:2010-10-28)
参考文献数
29

雌性発生により繁殖している三倍体ギンブナの卵をキンギョ精子で受精後,様々な条件で低温あるいは高温処理を施すことにより,四倍体あるいは四倍体-三倍体モザイクが作出できた。40℃,60秒間の高温処理では受精後5分に処理を開始した群で四倍体の出現率が高かった(67~100%)。DNAフィンガープリント分析とRAPD-PCR分析から,四倍体は父親キンギョ由来のDNA断片を示すことから,精子核ゲノムが取り込まれて作出されることが判明した。高温処理(40℃,60秒間,受精後5分)を施した受精卵の細胞学的観察から,三倍体では本来膨潤しないはずの精子核が雄性前核となり,三倍体雌性前核あるいは二細胞期の割球の核と融合することにより四倍体核が形成されることが判った。同一水槽で三倍体と四倍体を飼育した場合,12月齢魚では成長に差は見られなかった。これらの三倍体は全雌であったが,四倍体では17個体中10個体が雌で,残りの7個体は性的に未分化であった。
著者
中村 一雄
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.16-26, 1958-05-30 (Released:2010-06-30)
参考文献数
28

1) オイカワ卵の発育と水温との関係について実験をおこなつた。2) オイカワ卵のふ化は15.3℃と18.9℃の間から28.7℃と31.7℃の間が適温で, その範囲は相当広く, なかんずく18.9-27.4℃が最適温度である。3) オイカワ卵のふ化可能の低温の限界は11.0-15.3℃の間であり, 高温の限界は33.5℃前後である。4) オイカワ卵のふ化適温範囲内において水温 (θ) とふ化日数 (T) との関係はTeaθ=Kの公式に適合し, これよりaloge=0.5103, a=0.1175, K=1,705, Q10=3.24の値を得た。5) オイカワ卵のふ化日数と水温との関係は次のごとくである。 平均水温 (℃) 11.0 15.3 18.9 21.4 23.1 25.8 27.4 28.7 31.7 33.3平均ふ化日数 - 8.56 5.52 4.10 3.40 2.19 2.16 1.89 1.73 1.576) オイカワ卵のふ化日数と水温の相乗積はふ化適温範囲内においては水温の上昇するにしたがい減少する傾向がある。7) 千曲川におけるオイカワの産卵期の水温とオイカワのふ化適温とは一致する。8) オイカワのふ化稚魚の浮上水温は31.8-20.1℃までは適温範囲内にあつたが, 20℃以下は明らかになし得なかつた。 また33.6℃は適温外であつた。9) オイカワのふ化稚魚の浮上日数と水温との関係は適温範囲内においてはTeaθ=Kなる公式が適用できてaloge=0.032, a=0.0742, K=1.472, Q10=2.12の値を得た。10) オイカワのふ化稚魚の浮上日数と水温との関係は概略次のごとし。 平均水温 (℃) 20.1 22.0 25.9 27.5 28.8 31.8 33.6 平均浮上日数 6.8 6.3 4.6 4.1 3.4 2.8 2.411) オイカワのふ化稚魚の浮上日数と水温の相乗積は水温の上昇するにしたがい減少する。12) オイカワのふ化適温範囲はコイ, フナ, ワカサギと同じく広く, しかもメダカとともに最も高水温に適する種類である。13) オイカワは自然水域において16.7℃の低温まで繁殖する可能性があると考えられる。
著者
今井 正 出濱 和弥 坂見 知子 高志 利宣 森田 哲男 今井 智 岡 雅一 山本 義久
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.93-100, 2021 (Released:2022-03-20)
参考文献数
21

本研究の目的は長期間,硝化作用を有する熟成状態のろ材を保存するための安定状態を評価することである。密封して保湿状態にしたろ材のアンモニア酸化活性に及ぼす保存温度の影響を調査した。ろ材のアンモニア酸化活性を25℃で測定した後,これらを海水から取り出してジッパー付き袋に入れて,1~35℃の8段階の温度で180日間管理した。1℃で保存したろ材のアンモニア酸化活性は最初と同様であった。加えて,アンモニア酸化古細菌とアンモニア酸化細菌の現存量は,それぞれ14%と10%でわずかな減少であった。5~20℃で保存したろ材の活性は約50%まで減少した。活性のさらなる減少は25℃以上で保存したろ材で認められた。また,1℃で約3年間保存した場合でも,ろ材の活性が33%残っていることが示された。ゆえに,硝化作用を有する熟成ろ材の長期間保存のためのアンモニア酸化微生物の保持は,設定温度温度内では1℃で最も高かった。
著者
秋山 信彦 小笠原 義光
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.577-584, 1994-12-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
29
被引用文献数
3

シロウオLeucopsarion petersiの繁殖行動を水槽内で観察した。その結果, 本種の雄は巣を作った後, 雌を巣内へ誘引する行動を行うが, 巣に入ると求愛行動をとらずに, ほとんどの時間を巣の入口付近で行う水送り行動に費やすことが明らかになった。雌が巣に入ってから産卵するまでの日数は14から22日で, 雌は産卵後ただちに巣外に出るが, 雄は巣内に留まり, 水送り行動や卵清掃を行う。卵が孵化する1~2日前に雄は巣の入口を開き, 仔魚は孵化後ただちに巣外に出る。孵化後, ほとんどの雄は巣外に出て死亡するが, 稀に再び雌を誘引する行動をとる個体がいた。24回の観察中6例で2から3回雌に産卵させ, 孵化まで卵の保護行動をとった。また, 本種の巣にポリエステル樹脂を流し込み巣の大きさを測定した結果, 入口から最奥部までが50.4~111.6mm, 横幅が12.1~128.5mmの範囲であり, 高さは6.7~7.7mmであった。
著者
桐山 隆哉 藤井 明彦 吉村 拓 清本 節夫 四井 敏雄
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.319-323, 1999-09-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
6
被引用文献数
13

野母崎町地先で1998年9月に, クロメの葉状部が欠損し, 著しい場合は茎だけとなる現象が観察された。その後, この現象は野母崎町地先のみならず, 県下全域に及んでいることが分かった。発生状況や症状等から生理障害とは考えられなかった。一方, 本症状を起こした葉体には高い割合で縁辺に特徴ある弧状の痕跡が認められ, その形状は魚類による摂食痕に酷似していた。また, 葉体が欠損する症状は, 口之津等でオオバモクにみられた他は同一場所に生育しているホンダワラ類やツルアラメには認められなかった。
著者
太田 健吾 島 康洋 渡辺 研一
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 = The aquiculture (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.225-231, 2010-06-20
参考文献数
44

小型種苗に有効な外部標識を開発することを目的に、アンカー部分とチューブの長さを短く改良したスパゲティーアンカータグ標識を作製した。平均全長50〜80mmサイズのオニオコゼに装着して、生残率、成長および標識の残存状況から有効性と識別可能期間を検討した。その結果、平均全長50mmサイズの小型の種苗でも標識の脱落は認められず、標識残存率は100%を示した。また、同サイズでは装着作業のみに起因する死亡も認められなかった。平均全長60mmサイズで装着した標識は少なくとも装着後2年間は脱落せず、外部からの識別が可能であることが判った。しかし、20%の個体では装着500日以降標識の一部が魚体中に埋没し、改善が必要と考えられた。
著者
新谷 一大 渡邊 精一
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.245-252, 1990-09-30 (Released:2010-03-09)
参考文献数
20
被引用文献数
1

1988年7月から1989年6月までの1年間に, 茨城県牛久沼において採集したオオクチバス523尾の食性を調査した。同沼においては, テナガエビ, アメリカザリガニが本種の主要な餌生物であり, モツゴ, ヨシノボリがこれらに次いでいた。本種の体長が増すにつれて, アメリカザリガニの出現率が増加し, ヨシノボリの出現率が低下した。体長が増すにつれて, 餌の大きさの最大値が上昇する傾向がみられたが, 大型の個体は, 小型の餌もよく利用していた。本種は甲殻類を年間を通して (特に夏と冬) , 魚類を夏から秋にかけて, 水生昆虫を春にそれぞれ良く捕食していた。小, 中型個体は年間を通して魚類および甲殻類を主要な餌として利用していたのに対し, 大型個体では甲殻類を主要な餌生物としていた。
著者
土井 敏男 野田 亜矢子 濱 夏樹
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.601-602, 2008-12-20 (Released:2012-09-15)
参考文献数
7

Histological specimens of the tissue of a red-spotted grouper Epinephelus akaara infected by Lernaeenicus ramosus were observed. The muscle of the host was inflammated around the intruding head horn of the parasite, resulting in granuloma. Another host,parasitized by three copepods on the dorsal trunk, recovered spontaneously in captivity over a period of six months without any treatment.
著者
楠木 豊
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.13-21, 1971-05-30 (Released:2010-03-10)
参考文献数
6

1. '69年1月から5月まで広島県下の五日市, 音戸, 三高, 安芸津のカキ養殖場で, 毎月1回海水中色素量と, そこに養殖されているカキの消化盲のうの加熱による緑変を調べた。又培養藻類でカキを飼育し, 消化盲のう中の色素との関係をみた。2. 消化盲のう部の色は1月が最も濃く, 月とともにうすくなる傾向にある。又場所別にはカキの成長の良いところが色が濃い。3. この緑変の程度は, カキの体内に取り入れられる海水中色素量と密接な関連が認められた。4. 消化盲のう部の色の変化は速かで, 5日程で, その前の影響は殆んどなくなる。5. 人工飼育したカキの消化盲のう部の色素は, 給餌したプランクトンの色素と同じ吸収曲線を描いている。6. これらのことから, 緑変の色素は海水中の植物プランクトンに由来することが認められた。