著者
江草 周三
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.106-111, 1959-04-20 (Released:2010-06-30)
参考文献数
18
著者
澤山 英太郎 高木 基裕
出版者
水産増殖談話会
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.155-162, 2014 (Released:2014-09-03)

本研究は,マダイ人工種苗で見られる吻部の異常を示す形態異常について遺伝的要因を明らかにすることを目的とした。60日齢における吻部異常個体の形態的識別を行った。吻部の異常を有する個体は全体の3.4%で,その中でも下顎短縮は最も高い割合で確認されたため,下顎短縮個体についてマイクロサテライトDNAを用いた多型解析と親子鑑定を行い,正常個体の値と比較した。ヘテロ接合体率やアリル頻度においては正常個体と下顎短縮個体で違いは見られなかった。また,親子鑑定を実施したところ,正常個体には9個体のメス親魚と16個体のオス親魚からなる43家系が,下顎短縮個体には9個体のメス親魚と15個体のオス親魚からなる40家系が関与しており,正常個体と下顎短縮個体で出現家系に有意な偏りは確認されなかった。以上の結果から,本下顎短縮個体は遺伝的な要因よりも,何らかの後天的な要因が強く影響しているものと推測された。
著者
森川 晃 川上 弘 田北 徹
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.271-277, 2002-09-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
14

1998年4月から2000年4月に島原半島沖の有明海で漁獲されたマゴチ603尾とヨシノゴチ263尾について, 耳石薄片標本により年齢と成長の解明を試みた。耳石輪紋形成時期は両種とも年1回, マゴチでは6~7月, ヨシノゴチでは4~5月であり, いずれも産卵期にほぼ一致し, 輪紋数は年齢を示すと考えられた。満年齢時における両種の雌雄別逆算全長をもとに, 非線形最小二乗法を用いて, von Bertalanffyの成長式をあてた結果, t歳における全長Ltは次式で表された。マゴチ雄: Lt=458.26 (1-exp (-0.417 (t+0.439) ) )雌: Lt=728.44 (1-exp (-0.192 (t+0.978) ) )ヨシノゴチ雄: Lt=469.72 (1-exp (-0.215 (t+3.008) ) )雌: Lt=657.45 (1-exp (-0.267 (t+1.076) ) )両種とも, いずれの年齢においても雌の方が雄より大きい体サイズを示した。
著者
阿部 真比古 小林 正裕 玉城 泉也 藤吉 栄次 菊地 則雄
出版者
水産増殖談話会
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.497-503, 2008 (Released:2011-12-19)

アサクサノリと変種オオバアサクサノリを判別することを目的とし、ミトコンドリアATP6遺伝子に関連したミトコンドリアDNA部分塩基配列(670塩基)をマーカーに解析を試みた。その結果、オオバアサクサノリ3株において塩基配列が完全に一致し、ITS-1領域で変異が見られたアサクサノリ系統3株においても本領域の塩基配列は完全に一致した。また、アサクサノリ系統とオオバアサクサノリの間で1塩基置換が確認された。このことから、本領域はオオバアサクサノリの判別に有効なマーカーとなる可能性があることが示唆された。また、本領域はアサクサノリとナラワスサビノリの間でも20-21塩基置換が認められた。これらのことから、オオバアサクサノリの判別だけでなく、アマノリ類の種判別技術開発に活用できるマーカーとなる可能性もある。
著者
久下 敏宏 信澤 邦宏 舞田 正志
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.73-80, 2004-03-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
16
被引用文献数
2

榛名湖において, ワカサギ不漁年である1997年の5~6月での, 全長25cm以上のオオクチバス生息尾数は約2500尾と推定されるとともに, 全長25cm未満の卓越した年級群の存在が推察された。ワカサギ不漁年と豊漁年に, 1歳魚以上のオオクチバスの胃内容物を調査したところ, 両年ともに魚類と甲殻類を主な餌料としており, 魚類については, 不漁年はヨシノボリ属魚類, 豊漁年はワカサギの出現率が高かった。捕食されていたワカサギの成長段階は, 産卵期が親魚で, 夏以降が未成魚以上であった。また, 不漁年は豊漁年に比べ, オオクチバスの肥満度と胃内容物重量指数が低かった。さらに, 釣り大会秤量魚の平均体重が不漁期に減少することから, 榛名湖のオオクチバスにとってワカサギは重要な餌料であり, オオクチバス生息尾数の増減がワカサギ資源へ影響を及ぼしていると考えられる。
著者
渡辺 研一 高橋 誠 中川 雅弘 太田 健吾 佐藤 純 堀田 卓朗
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.255-263, 2006-09-20
被引用文献数
1

2-フェノキシエタノールの麻酔剤としての効果を、9種の主要な増養殖対象種(ブリ、マダイ、マアジ、カンパチ、シマアジ、ヒラメ、トラフグ、メバル、クロソイ)について、水産用医薬品であるFA100と比較、検討した。網で掬っても魚が暴れない程度に麻酔が罹り、麻酔後清水に移して一晩経過後に死亡個体が認められない2-フェノキシエタノール濃度は、おおむね200~1,000μl/l であった。一方、FA100の効果的で安全な濃度はおおむね100~500μl/l であり、2-フェノキシエタノールの場合と比較して範囲が狭かった。2-フェノキシエタノールで麻酔すると、FA100の場合より麻酔からの覚醒時間が短く、麻酔翌日の生残状況が優れた。さらに、2-フェノキシエタノールでは観察されなかった麻酔液表面の泡立ちがFA100で観察された。以上のことから、2-フェノキシエタノールは増養殖における麻酔剤として優れていることが示唆された。
著者
村田 修 宮下 盛 那須 敏朗 熊井 英水
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.145-151, 1995-03-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
12

マダイの卵にクロダイ精子を媒精して作出した交雑魚 (マクロダイと呼ぶことにする) の養殖品種としての特性を明らかにする目的で, その成長, 生残率, 外部形態, 環境ストレス耐性などについてマダイおよびクロダイ両種と比較した。(1) 媒精した浮上卵の受精率はクロダイ>マダイ>マクロダイの川頁, 孵化率はマダイ>クロダイ・マクロダイの順であった。(2) 孵化後30日目までの生残率はマダイ>マクロダイ>クロダイの順であったが, その後71日目から140日目までのそれはマクロダイおよびクロダイの方がマダイよりも著しく高くなった。(3) 成長は孵化後約8ヶ月目まではマクロダイ>マダイ>クロダイの順であったが, 満1年目からはマダイの方がマクロダイよりも徐々に大きくなり, 満3年目におけるマクロダイの成長はマダイよりは遅いがクロダイよりは早く両親の中間となった。(4) 環境ストレス耐性では, 水温上昇および低下, 比重低下, 並びに溶存酸素低下に対してマクロダイはいずれもクロダイよりも弱かったが, マダイよりも著しく強かった。(5) 外部形態や体色などからマクロダイはクロダイに近く父系遺伝が強いことが示唆された。
著者
中坪 俊之 廣瀬 一美
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.403-407, 2007-09-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
9

飼育下において, マンボウ8個体の全長を計測し, 追跡法により成長を調べた。140~1556日の飼育期間では供試魚はすべて直線的な成長を示した。同様の成長傾向を示した7個体の供試魚の成長データを基に, 推定年齢を算定し, 集団的にvon Bertalanffyの成長曲線の当てはめを行った結果, 次式が得られた。TLt=318.4× {1-exp [-0.149× (t-0.031) ] }マンボウが全長3mに達するためには約20年を要し, 今回用いた供試魚は, すべて成長期であることが推測された。
著者
太田 健吾 島 康洋 渡辺 研一
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.225-231, 2010

小型種苗に有効な外部標識を開発することを目的に,アンカー部分とチューブの長さを短く改良したスパゲティーアンカータグ標識を作製した。平均全長50~80 mm サイズのオニオコゼに装着して,生残率,成長および標識の残存状況から有効性と識別可能期間を検討した。その結果,平均全長50 mm サイズの小型の種苗でも標識の脱落は認められず,標識残存率は100%を示した。また,同サイズでは装着作業のみに起因する死亡も認められなかった。平均全長60 mm サイズで装着した標識は少なくとも装着後2年間は脱落せず,外部からの識別が可能であることが判った。しかし,20%の個体では装着500日以降,標識の一部が魚体中に埋没し,改善が必要と考えられた。
著者
橘川 宗彦 大場 基夫 廣瀬 一美 廣瀬 慶二
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.401-405, 2003-12-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
12

1) 芦ノ湖産ワカサギ親魚の水槽内自然産卵法による採卵の量産化試験をおこなった。2) 2001年流水式1.5t FRP水槽3面で, 小型定置網4力統により採捕された親魚を一昼夜収容し, 翌日水槽内に自然産卵され吸水を完了した状態の受精卵を効率的に採取した。3) 2002年3月5日から4月11日にかけて37日間操業した中で採捕親魚3, 427kgより, 水槽内自然産卵法で受精卵71, 018万粒が得られた。4) この方法により得られた受精卵の発眼率は86.7%から96.1%と, 事業規模の採卵としては極めて高い値を示した。5) 今まで行われてきた人工搾出法と比較し, 採卵数量の増加と発眼率の上昇が認められた他, 労働力の大幅な省力化が図られた。6) 自然採卵後の生残親魚を再放流することにより再資源化も可能となる。
著者
平本 義春
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.14-20, 1976

キスを用いて種苗生産の基礎である親魚養成の可否を検討し, さらに進んで種苗生産技術の方式を確立することを目的として1974年10月17日から1975年8月22日まで地元 (鳥取県大谷) で採捕したキスを室内水槽で飼育し, 水槽内での自然産卵, 産卵数およびふ化率等について若干の知見を得た。<br>1) 地曳網で採捕したキスをマアジ, ホウボウ, イシダイ等と混養して飼育することにより漁獲後10日前後で餌付けすることができた。餌料としては, マアジ, カタクチイワシ, ホウボウ, ハタハタ, シイラ, ヒラメ, ヒレグロ, アカガレイ, エビ類およびアサリを使用した。<br>2) 産卵盛期以外で水温が8.0-29.0℃の範囲内では外的刺激等がなければ日間摂餌量は水温が高い程多くなった。また水温が8.0℃以下では摂餌を全く行なわなかった。親魚の体重に対する日間摂餌率は, 2月下旬 (水温9.0-10.9℃) で1.53%, 4月上旬 (水温13.0-13.9℃) で4.58%, 8月下旬 (水温27.5-28.0℃) は6.50%であった。<br>3) 産卵期は6月中旬 (水温21.6℃)-9月上旬であり, その盛期は6月下旬-7月中旬であって, この30日間に総産卵数の2/3以上の卵が産出された。<br>4) 雌親魚8尾 (全長18.1-21.8cm; 雄7尾) による総産卵数は1,582,450粒であった。またこの8尾の1日の最多産卵数は80,000粒であった。<br>5) 産卵数の日変化から推すとキスは明らかに多回産卵魚であって, 産卵は1日1回, 2時間以内で終る。産卵時刻は日没前後であるが, 産卵期が進むにつれてその時刻は若干遅れる傾向が認められた。<br>6) ふ化率は22.5-90.9%の範囲にあり, 産卵期の前半において比較的高い値を示した。またふ化率は1日の産卵数が多い時に高い傾向を示した。<br>7) キスの親魚養成は室内の水槽で可能であり, 自然産卵によって採卵した卵はふ化率も高く種苗生産に充分使用できると考えられた。
著者
今井 正 豊田 惠聖 秋山 信彦
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 = The aquiculture (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.133-138, 2004-06 (Released:2011-03-05)

淡水飼育条件下において異なるアルテミアの給餌頻度でテナガエビ幼生を飼育することにより、幼生の摂餌機会数の違いと生残の関係を調べた。淡水湖の諏訪湖、汽水湖の佐鳴湖および河川の太田川に生息するテナガエビの幼生を淡水中でアルテミアを1日1回、2回、4回の3条件の給餌頻度で飼育した。諏訪湖産と佐鳴湖産では1日2回までの給餌ではポストラーバに到達できても20個体中1個体だけであったが、1日4回の給餌にすると繰り返した3回の実験それぞれで20個体中1~5個体がポストラーバに到達した。これに対し、太田川産では給餌頻度にかかわらず、第2ゾエア期へ脱皮する個体すらなかった。淡水湖と汽水湖に生息するテナガエビの幼生は、給餌頻度を増やすことで摂餌機会が増大し、淡水中でもポストラーバまで生残可能となることが明らかとなった。
著者
淀 太我 井口 恵一朗
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.31-34, 2003-03-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
9
被引用文献数
1 6

長野県大町市を流れる農具川で外来魚コクチバスの仔稚魚9群が確認され, この中の1群で保護親魚が同時に観察された。これは本邦の流水域における繁殖の初記録である。各群れの平均体長は9.8~22.8mm (屈曲期仔魚~稚魚) で, 各仔稚魚群の出現箇所内において, 仔稚魚の出現した観測点の流速は最大3.2~61.1cm/sを示した。仔稚魚は成長にともなってより速い流心部に進出すると考えられ, 一方産卵には緩流部が必要と考えられた。また, 農具川への侵入源と考えられる木崎湖と比較して農具川ではオオクチバスよりもコクチバスの比率が有意に高く, 本種の流水域への適応性の高さが明らかとなった。これらは, オオクチバスが定着しなかった本邦の河川中・上流域においてもコクチバスが定着して生物群集に悪影響を与える危険性を改めて強く示唆するものである。
著者
桑田 知宣 徳原 哲也
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.483-487, 2011-09-20 (Released:2012-10-08)
参考文献数
23

長良川の1支流において22床のサツキマスの産卵床を調査し,その特性(形成位置,大きさ,水深,流速,使用されていた基質の粒径サイズ)を調査した。産卵床の多くは淵尻に形成されていた。産卵床の長径は129.5±44.9 cm(平均±標準偏差,以下同様),短径は85.0±28.9 cmであった。形成された産卵床の平均水深は61.5±16.1 cm。表層の平均流速は42.0±15.5 cm/sec,底層の平均流速は25.9±10.7 cm/sec であった。産卵床の基質は16-63 mm の礫の割合が高かった。観察された産卵床の特性は過去の研究で報告されている河川残留型も含むサクラマス類の産卵床の特性と類似していることが明らかとなった。長良川におけるサツキマスの自然個体群維持のためにはこのような環境を産卵場所として保全維持していくことが重要であると考えられる。
著者
堀 俊明
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.88-97, 1981-09-25 (Released:2010-03-09)
参考文献数
10

福井県高浜町内浦湾奥にある関西電力高浜原子力発電所からの温排水が, 養殖ワカメの生長と成熟にどのように影響するかについて, 試験・調査を行った。その結果は次のように要約できる。1) 稼動時における同一水深のSt.1およびSt.2とSt.3との平均水温との差は, 水深0.5m層では, St.1とSt.3では3~4℃, St.2とSt.3では1.5~3℃, 2.0, 3.0m層ではSt.1およびSt.2とSt.3とでは1~2℃であった。2) 稼動時における水温の日較差は, St.1, 2で3~4℃, St.3で2~3℃に達する日がみられた。3) 着生密度は, 水深1.0m以浅ではSt.1, 2, 3の順で, 1.0~3.5m層ではSt.2, 1, 3の順で低かった。4) 葉体の生長は, 水深2.0m以浅ではSt.1, 2, 3の順で悪く, それを越えるとSt.1とSt.2とに差がなくSt.3に比べてともに悪かった。5) 葉体の成熟は, 水深2.0m以浅ではSt.1, 2, 3の順で良く, それ以深ではSt.1とSt.2とに差がなくSt.3に比べてともに良かった。6) 佐渡, 五島, および有明海でのワカメ養殖場と今回の温排水試験域との水温の比較から, 調査水域の平均水温は養殖適水温とみなされる。7) 温排水によってワカメの着生密度, 生長, および成熟が受ける影響は, 平均水温の上昇だけではなく, 温度ショックによるものも考えられる。8) 養殖ワカメは, 温排水の生物に与える影響を調べる良い指標生物といえる。終りに, 今回の調査期間中終始御指導いただいた福井県水産試験場主任研究員安田徹博士に深謝の意を表します。また, 調査に協力していただいた同場前技師宮内幾雄氏と同場技師小松久雄氏に感謝します。
著者
田子 泰彦
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.397-404, 2001-09-20
被引用文献数
12

1997~2000年に神通川と庄川のアユとサクラマスの主な漁場である中流域において、魚類の生息に極めて重要な淵の存在を調べた。最大水深が2m以上の淵は、神通川では18から11に、庄川では5から3に減少し、神通川では淵の数は減少する傾向が認められた。両河川では淵の存在は極めて不安定で、期間中に30の淵が消失し、21の淵が新たに形成された。期間中継続した淵は、神通川では4に過ぎず、庄川では皆無であった。両河川の中流域の河川形状には、典型的な中流域の河川形態型であるBb型は全く適応できなかった。これらの淵の消長は主に護岸建設などの河川工事により引き起こされたとともに、アユやサクラマスの生存にも悪い影響を与えてきたと考えられた。
著者
田中 彌太郎
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.165-170, 1980-12-25 (Released:2010-03-09)
参考文献数
10

ホッキガイ稚貝の耐高温性に関する実験観察の結果から, 本州中部暖海砂浜域に放流されたホッキガイ稚貝生存の可能性が示唆された。福島県産母貝から採卵し, 水温20℃下で人工飼育して得た平均殻長1~3mmのホッキガイ稚貝は水温25℃の10l水槽内で正常に生活し, 生長する。生長度は22.5℃において最も大であった。また, 夏季屋外流水タンクに収容された3mmサイズ稚貝の3週後における生残率は88%であった。一定条件下で得られた材料およびその温度条件の範囲内で, ホッキガイ種苗の現地試験が望まれる。

1 0 0 0 OA 6.ミネラル

著者
能勢 健嗣
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4-5, pp.289-300, 1972-12-25 (Released:2010-03-09)
参考文献数
14

高等動物では通常湿重量中約3.5%, 固形物中では約10%の無機成分が含まれている。Ca, K, Na, Mg, P, S, Clの7種は主要無機元素として要求され, これらは体中総無機元素の60~80%を占めるといわれる。このほか多数の元素が微量ではあるが体中に存在しており, FeあるいはMn以下の量の少ない元素は微量元素と呼ばれている。人間および家畜, 家禽類については無機質の体内における分布, 吸取および排泄, 生理作用あるいは所要量についてかなりよく調べられているが, 魚類については従来から主として透滲圧調整の観点から研究されており, 栄養要求の側からの研究はきわめて少い。魚は水中に生育するため, 環境水と体液の滲透圧の差により, 淡水魚では常に水の浸入と塩類の喪失に, 海水魚では逆に水の喪失と塩類の浸入に曝され, つねに滲透圧の調整を行なわなければならず, その結果, 魚の無機塩の代謝は一般の陸上動物には見らない側面をもっており, 魚の無機塩に対する栄養要求の研究を困難なものにしている。今後, 魚の無機代謝の研究を発展させるためには, 滲透圧および栄養代謝の両面からの研究を並行して行なわなければならない。ここでは魚類の無機塩の経口的要求を中心に述べてみたい。