著者
西 満正 長野 稔一 大塚 直純 吉井 紘興 石沢 隆 山本 四郎 黒木 克郎 大山 満 渡辺 研之
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.259-264, 1975-05

大腸にはポリープが多い. しかも癌との区別が困難なもの, 多発するものが多い. これらの処置については外科医がしばしば悩まされている. 大腸のポリープと癌には疫学や腫瘍発生学の面からも興味のつきない点が多々ある. 今回われわれは入院手術症例, 直腸鏡集検例, 大腸ポリポージス症例, ソテツ毒による大腸発癌実験例などについて検討した. 私はポリープの癌化率をうんぬんする前にポリープの種類をよく知ること, 癌の判定基準を明らかにすること, 何よりもポリープを慎重に取り扱うことを強調したい.
著者
平林 邦昭 内田 学 山口 拓也 吉川 健治 西岡 宏彰 谷口 雅輝 木村 太栄 木野 茂生 中林 洋
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.11, pp.1645-1649, 2001-11-01
被引用文献数
8

患者は70歳の女性で, 6か月前に下血と意識消失発作で入院歴がある.そのときは胃・大腸内視鏡, 出血シンチグラフィーで異常を認めず軽快退院している.今回同様の症状で再入院し, 出血シンチングラフィーと腹部アンギオグラフィーで空腸動静脈奇形(arteriovenous malformation;以下, AVMと略記)と診断した.術中の病変部位の同定に難渋すると考え, 術直前に腹部アンギオグラフィーを施行し病変近傍にマイクロカテーテルを留置し開腹手術を行った.予想どおり術中の触診, 視診では病変は全く不明であり, 留置しておいたカテーテルの触診を頼りに病変のおよその部位を判断しサブライトを透光することで病変を肉眼でとらえることができた.切除標本の血管造影と特徴的な病理所見よりAVMと確定診断をくだした.
著者
津田 傑 石川 真 関野 昌宏
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.30, no.10, pp.2034-2038, 1997-10-01
被引用文献数
14

症例は48歳の女性. 右下腹部痛を訴え来院. 来院時, 右下腹部を中心に圧痛, 反跳痛, および筋性防御を認めた. 腹部超音波およびCT検査の結果, 右卵巣嚢腫および虫垂炎による汎発性腹膜炎を疑い手術を施行した. 腹腔内は黒褐色の腹水が貯留し, 右卵巣に径約5cmの壁が破裂した単房性腫瘤を認めた. 右卵巣嚢腫破裂にともなう汎発性腹膜炎と診断した. また回盲部は周囲組織と癒着し, 虫垂を認めず腫瘤を触知した. このため回盲部悪性腫瘍を疑い, 右卵巣卵管切除に加え右半結腸切除を施行した. 切除標本の病理組織検査の結果, 虫垂子宮内膜症に起因した虫垂重積と診断した. 虫垂切除71,000例中, 虫垂子宮内膜症と虫垂重積はそれぞれ0.05%, 0.01%に認められたのみである. 本症例はわれわれの調べえた範囲で本邦3例目であり, きわめてまれと思われる. 本疾患の術前診断や緊急開腹時には癌との鑑別が困難なため, 術式の選択に苦慮すると思われた.
著者
後藤田 直人 板野 聡 堀木 貞幸 寺田 紀彦 児玉 雅治
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.32, no.11, pp.2596-2600, 1999-11-01
参考文献数
14
被引用文献数
12 9

患者は72歳の女性.55歳の時に交通事故で骨盤を骨折.3年前よりときどき右下腹部痛,下痢がみられ,当院を受診.触診では右下腹部から側腹部にかけて圧痛を認めたが,腹膜刺激症状はなく,腫瘤も触知しなかった.その後も症状が続くため平成10年に注腸造影X線検査(以下,注腸Xp), Computed tomography(以下,CT)を施行し,上行結腸の腹腔内からの脱出を認めた.腰ヘルニアを疑い,手術を行うも胸腰筋膜のレベルで,外腹斜筋の中に腸骨稜を下端とした直径4cmの欠損部があり,上腰三角,下腰三角は脆弱でないため,腰ヘルニアではなく,17年前の外傷による腹壁ヘルニアと診断,周辺組織を縫合することで欠損部を閉鎖した.術後は良好に経過中である.外傷性腹壁ヘルニアは鈍的,鋭的損傷,または介達外力による損傷の結果生じるヘルニアである.受傷後まもなく発生する場合と遅発性に発生する場合があるが,後者はその中でもまれといわれている.自験例では注腸Xp, CTがヘルニアの存在診断に有用であると考えられた.
著者
横山 直行 白井 良夫 宗岡 克樹 若井 俊文 畠山 勝義
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.486-491, 2006-04-01
被引用文献数
3

症例は74歳の女性.十二指腸乳頭部癌切除後,最大径8cmまでの多発肝転移巣が出現.TS-1を150mg/日(15時に50mg, 22時に100mg内服)隔日で投与した.TS-1投与日の血清5-FU濃度は夜間高く,午前3時に最高値(539ng/ml)を示し,本療法が時間治療であることを確認した.治療開始後転移巣は徐々に縮小・減少し,4か月後には肝前区域に径2.5cm大の単個を残すのみとなった.骨髄抑制や消化器系の副作用はなく,外来での加療が可能であった.治療開始151日目に多量の吐血を来たし,出血性ショックで同日死亡した.病理解剖の結果,死因は肝前区域の残存腫瘍の退縮により,同腫瘍内を貫通する肝動脈が破綻したための胆道出血と診断された.本症例の経験から,TS-1を用いた時間療法が十二指腸乳頭部癌に対し有効である可能性が示唆された.一方,化学療法著効例では腫瘍壊死に伴う動脈性出血にも留意すべきである.
著者
澤口 裕二
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.29, no.10, pp.2001-2004, 1996-10-01
被引用文献数
11

外来初診時から患者の背景によらずに癌と病名を告げた.告げる前に家族には相談しなかった.このため病状,手術,合併症,退院後の生活について正確に伝えることができた.その結果,疾患に対する不安のための不必要な入院が減少し,平均在院期間が胃癌では69日以上から41日へと,直腸癌で90日前後から54日へと短縮した.また,再発時の治療導入が容易となった.診断書に記載する病名の調整が不要となった.重要な点は病名のみならず病状とこれから受ける治療の必要性とその限界を明示することである.
著者
須藤 隆之 菅井 有 上杉 憲幸 幅野 渉 中村 眞一 斎藤 和好
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.208-213, 2005-02-01
参考文献数
16
被引用文献数
3

症例は58歳の男性で,平成14年7月27日腹部膨満感があり近医を受診した.精査にて腸間膜腫瘍と診断,9月12日腫瘍摘出,右半結腸切除,小腸切除術を施行.病理組織学的所見は紡錘形腫瘍細胞が束状に増殖していた.免疫組織学的検査にてc-kit染色陽性で,腸間膜gastroin-testinal stromal tumor(GIST)の診断となる.10月27日よりメシル酸イマチニブ400mg/日投与開始.平成15年4月4日腹部CTにてGIST再発を認め4月23日腫瘍摘出術施行.5月16日よりメシル酸イマチニブ400mg/日投与再開.平成16年12月12日腹部CTにてGIST再発を認め12月24日腫瘍摘出術施行.c-kit遺伝子を検索し,エクソン9のcodon503と504の間に6塩基対の挿入を認めた.c-kitの遺伝子検索は,メシル酸イマチニブの効果判定のために重要であると思われた.
著者
関川 浩司 渡辺 岩雄 川口 吉洋 遠藤 辰一郎
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.17, no.12, pp.2226-2229, 1984-12-01
被引用文献数
4

胆嚢病変に起因した自発性外胆嚢瘻の報告は比較的まれで,本邦では自験例を含め22例を数えるにすぎない.このうち本瘻孔の基盤となった病変は胆石症17例であり4例が胆嚢癌例であった.今回われわれは胆石症および胆嚢癌症例で腹壁に自潰することにより外胆嚢瘻の形成をみたきわめてまれな一例を経験したので報告するとともに臨床的特徴像について本邦報告例を集計し報告する.
著者
櫻井 孝志 立松 秀樹 山高 浩一 山本 貴章 有澤 淑人 川原 英之
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.234-239, 2003-03-01
被引用文献数
6

症例は84歳の女性。平成14年2月腹痛・嘔吐・下痢・血便を主訴に入院。既往歴として高血圧・狭心症・糖尿病があり内服治療中であった。便細菌培養にて病原性大腸菌O-1を検出, CT・下部消化管内視鏡検査にて下行結腸に壊死を伴う炎症を認め, 細菌性腸炎による脱水を誘因とした虚血性大腸炎と診断した。入院翌日のCEAが106.1ng/mlと異常高値を示し, 悪性腫瘍の検索を行ったが病変を認めず。26日後のCEA再検査では正常化していた。3月13日下行結腸切除術および人工肛門造設術施行した。病理診断上悪性所見を認めず, 免疫組織化学染色によるCEA局在も正常であった。検索上, 虚血性腸炎におけるCEA上昇は, 今らの1例報告のみであった。CEA高値を呈した機序は不明であった。発症時に細菌性腸炎に罹患していたことによるCEA産生活性化の可能性や, 膿瘍腔内に便汁が多量に貯留した可能性などの複合的な要素の関与が考えられた。
著者
井口 利仁 吉岡 孝 五味 慎也 中井 肇 折田 洋二郎
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.36, no.11, pp.1575-1580, 2003-11-01
被引用文献数
7

輸入脚空腸憩室穿孔に随伴した特異な腸石の1例を経験した.症例は75歳の男性.胃切除術の既往を有し,C型慢性肝炎治療のためursodeoxycholic asid(以下,UDCAと略記)を投与されていた.2002年3月12日,腹痛のため当院内科に入院,翌日腹膜炎の診断にて外科に紹介され緊急手術を施行した.前回手術ではBillroth II法で消化管再建されていた.輸入脚空腸穿孔により腸間膜膿瘍が形成され,膿瘍内に結石を認めた.空腸を部分切除し, Roux en Y吻合による消化管再建術を施行した.病理組織検査にて空腸憩室炎からの穿孔と診断された.結石は中核と外殻より構成され,中核の主成分はdeoxycholic acid.外殻はUDCAであった.胆汁酸腸石が中核となり,薬物が外殻を形成した混成腸石である可能性が示唆され,結石形成に空腸憩室とBillroth II法再建が関与したと考えられた.
著者
朝井 均 岡 博子 緒方 和男 市吉 誠 田中 一雄
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.14, no.7, pp.1029-1038, 1981 (Released:2011-03-02)
参考文献数
23
被引用文献数
1

腹部症状を主訴として来院した外来患者に対し超音波検査をfirst screening検査として検討した結果, 胃癌症例28例中12症例において胃X線内視鏡検査などに先がけて胃癌診断をすることができた.Borrmann分類での描出率はII型20% (1例), III型36% (5例), IV型86% (6例) であり浸潤型の胃癌症例, とくにIV型において高率に超音波診断が可能であった.胃壁に沿って全周性に癌が浸潤している症例においては, いわゆるpseudokidney signを捉えることにより胃壁肥厚像を証明でき, 粘膜側からの情報だけでなく筋層, 漿膜側の情報も得ることが可能であるといえる.以上, これまで超音波診断のアプローチがほとんどなかった胃病変に対しても他の諸検査の弱点を補う検査法として十分期待される.
著者
大塚 正彦 加藤 洋
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.1248-1256, 1992-05-01
被引用文献数
61

1946〜1988年の43年間に癌研病院で手術された大腸癌2,656例のうち,低分化腺癌あるいは未分化癌と診断されたのは64例であり,全切除大腸癌の2.4%である.平均年齢および男女比は通常の大腸癌と大差なかったが,発生部位別頻度は右側結腸29例,直腸24例,左側結腸10例,肛門管1例であり,通常の大腸癌に比べ右側結腸の頻度が高かった.この64例を癌間質が少ない順にmedullary(med),intermediate(int),scirrhous(sci)に分類すると,med群に比べて後2者でリンパ管侵襲,リンパ節転移,腹膜播種が多く,予後は有意に不良であった.int群とsci群の間に有意差は認めなかった.また,Grimelius反応,NSE染色さらに電顕により64例中6例(9.4%)に内分泌細胞癌が認められ,非常に予後不良であった.大腸の低・未分化癌は,(1)内分泌細胞癌(予後不良),(2)内分泌細胞癌以外のmed群(予後良好),(3)int群+sci群(予後不良)に分類することが可能で,臨床的に有意義であると思われる.
著者
安村 幹央 飯田 辰美 後藤 全宏 岡田 将直 村瀬 勝俊 水谷 知央 二村 直樹 阪本 研一
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.347-351, 2002-03-01
被引用文献数
7

症例は81歳の男性.発熱,腹痛を主訴に来院した.腹部CTで腹腔内のほぼ全域で腸管壁内と思われる嚢胞状ガスを認めた.また,腹腔内遊離ガス,右腎尾側に5×5cm大の充実性腫瘤像を認めた.結腸腫瘍による腸管閉塞,消化管穿孔性腹膜炎と診断し,緊急開腹術を施行した.上行結腸に腫瘍を認め,右半結腸切除を施行した.Treitz靭帯の肛門側120cmから回盲部の口側40cmまでの回腸,左側結腸の漿膜下および腫瘍近傍の腸間膜に嚢腫様気腫性変化を認めた.腫瘍は粘液癌で,se,ly3,v0,n0,ow(-),aw(-),ew(-),stage IIであった.腸間膜の嚢腫様気腫内にも癌細胞が認められた.大腸癌を合併した腸管嚢腫様気腫症(pneumatosis cystoides intestinalis:以下,PCIと略す)の報告は少ない.PCIの成因には大腸癌による腸閉塞状態が関与したと思われた.
著者
加藤 岳人 七野 滋彦 佐藤 太一郎 秋田 幸彦 河野 弘 梛野 正人 金井 道夫 三浦 由雄 片山 信 山本 英夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.735-739, 1983-04-01
被引用文献数
19

鈍的腹部外傷による小腸・腸間膜損傷の病型は,破裂・断裂・挫傷の3型に分類される.腸管の破裂や断裂は遅発性のものを除けば診断は比較的容易で,多くは開腹に至り救命しうる.一方,挫傷は症状も軽微で何らの後遺症も残さず治癒することが多い.しかしまれな合併症として遅発性穿孔や腸狭窄をきたす場合がある.今回われわれは外傷性小腸狭窄を呈した2症例を経験し,術前診断が可能であったので文献的考察を加えて報告する.
著者
土屋 泰夫 佐野 佳彦 中村 利夫 梅原 靖彦 大久保 忠俊 中村 達
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.32, no.9, pp.2258-2262, 1999-09-01
被引用文献数
15

症例は63歳の男性で, 食後右季肋部の疝痛発作のため入院した. 腹部超音波, CT検査で肝前上区域(S8)に胆管内部の腫瘤陰影とその末梢胆管の拡張を認め, ERCPでは同部に辺縁平滑な陰影欠損像を認めた. この後直接胆管造影で腫瘤陰影の脱落, その後再び腫瘤陰影が確認された. 血管造影で肝S8に腫瘤濃染像を呈したため, 胆管内発育型肝細胞癌を疑い手術を施行した. 肝S8表面の腫瘍を認め, 胆管内腫瘍栓は肝門部まで進展していたため, 右葉切除術を施行した. 主腫瘍の割面は被膜形成なく最大径は2.2cmで腫瘍栓に連続性を認めた. 組織学的にはEdmondso III型の肝細胞癌であった. 本邦報告例の臨床的検討では, 肝切除例の予後は姑息的治療例より良かった. 自験例のごとく被膜形成が不明瞭な浸潤性の腫瘍で, 2cm前後の肝細胞癌でも胆管内発育を来すため, 占居部位がGlisson鞘に近い例では十分な範囲の切除が必要である。