著者
大谷 吉秀 桜井 嘉彦 五十嵐 直喜 横山 剛義 木全 大 亀山 香織 久保田 哲朗 熊井 浩一郎 北島 政樹
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.990-994, 1998 (Released:2011-08-23)
参考文献数
26

消化器癌の進展過程でのマトリックス分解酵素 (matrix metalloproteinase: MMP) による細胞外マトリックス (extracellular matrix: ECM) 破壊における間葉系細胞の役割について検討した.1型, III型コラーゲンを分解するMMP-1は癌先進部組織で高い酵素活性を示した.MMP-1産生細胞の同定を目的にin situ hybridizationを行った結果, 癌巣周囲の線維芽細胞や顆粒球にMMP-1mRNAの発現を認めた.ヒト胃粘膜由来線維芽細胞の培養液にヒト胃癌細胞株MKN-74の培養上清を添加すると, 単独培養に比べ高いMMP-1産生を認めた (p<0.05).また, ヒト胃癌細胞株TMK-1の腹腔内投与によるヌードマウス腹膜播種モデルでは, 癌細胞を線維芽細胞の培養上清とともに投与することで結節数の有意な増加を認めた (p<0.01).以上より, 消化器癌によるECM破壌に間葉系細胞が重要な役割を演じていることが確認された.
著者
龍野 玄樹 鈴木 昌八 落合 秀人 犬塚 和徳 神藤 修 宇野 彰晋 松本 圭五 齋田 康彦 谷岡 書彦 北村 宏
出版者
The Japanese Society of Gastroenterological Surgery
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.699-705, 2011
被引用文献数
1 1

症例は62歳女性で,検診での超音波検査で肝腫瘍を指摘され,当院を受診した.B型・C型肝炎ウィルスマーカーは陰性であり,血清CA19-9値が281.6U/mlに上昇していた.腹部CTで肝左葉の肝内胆管拡張と肝外側区域に境界不明瞭で辺縁が軽度造影される5cm大の腫瘍を認めた.門脈左枝内は腫瘍栓で充満していた.門脈腫瘍栓合併肝内胆管癌あるいは混合型肝癌を考え,5-FUによる肝動注化学療法を先行させた.治療開始後にCA19-9値の低下,肝腫瘍の縮小と門脈腫瘍栓の退縮を認めた.化学療法終了から1か月,後肝拡大左葉切除,肝外胆管切除・胆道再建,リンパ節郭清,門脈再建を施行した.病理組織学的には乳頭状の増殖を示す高分化型腺癌から成る腫瘍であり,門脈腫瘍栓を伴った肝内胆管癌と診断された.術後22か月の現在,再発なく社会復帰している.門脈腫瘍栓合併肝内胆管癌に関する文献的考察を加え報告する.
著者
松林 潤 平良 薫 余語 覚匡 鬼頭 祥悟 浦 克明 豊田 英治 大江 秀明 川島 和彦 石上 俊一 土井 隆一郎
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.328-336, 2015-04-01 (Released:2015-04-17)
参考文献数
37

症例は62歳の男性で,健康診断にて胆道系酵素上昇を指摘され,当院を受診した.画像検査で肝左葉に直径3 cmの腫瘤性病変と,その近傍に拡張した肝内胆管を認めた.胆汁細胞診はclass IIであったが,多数の肝吸虫の虫卵が証明された.本患者にはフナの生食の嗜好歴があった.Praziquantelを内服後,肝吸虫症に合併した肝内胆管癌と考え,肝左葉切除術を施行した.病理組織学的検査は低分化型腺癌であった.腺癌周囲にはリンパ球浸潤や線維化が生じており,慢性胆管炎後の変化が見られた.胆管内には結石などその他の慢性炎症の原因となるものはなく,本症例は肝吸虫症による慢性炎症が胆管癌発生に関与したと考えられた.淡水魚の生食歴などがあれば,糞便検査や十二指腸液検査などを行い,肝吸虫や虫卵を認めた場合は,駆虫するとともに胆管癌合併の可能性を考慮する必要がある.
著者
桑原 隆一 池内 浩基 皆川 知洋 堀尾 勇規 佐々木 寛文 蝶野 晃弘 坂東 俊宏 内野 基
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.671-679, 2018-11-01 (Released:2018-11-30)
参考文献数
29

目的:クローン病(Crohn’s Disease;以下,CDと略記)は再発を繰り返す原因不明の難治性炎症性腸疾患であり,複数回の手術を必要とすることが多い.そこで当院で施行したCD腸管切除症例1,143症例の臨床的特徴,術後経過について検討した.方法:1974年9月から2014年7月までに当科で腸管病変に対して手術を行ったCD 1,143例,延べ手術回数2,001回を対象とし,臨床的特徴および再手術率などをretrospectiveに検討した.結果:男女比は827:316(2.6:1),初回手術時年齢は30.0(7~78)歳,病悩期間は20.4(2.5~43.2)年で初回手術時の病型は小腸型380例,大腸型104例,小腸大腸型659例であった.手術適応に関しては非穿孔型が604例(52.8%),穿孔型は539例(47.2%)であった.術後合併症(Clavien-Dindo III以上のもの)は66例(3.3%)に認め,そのうち縫合不全が45例(2.2%)と最も多かった.累積5年の再手術率は22.2%であった.再手術のリスク因子に関しては性別,初回手術時年齢,病型,病変部位,飲酒歴,喫煙歴は有意差を認めず,初回手術時の“肛門病変あり”のみに有意差を認めた(P=0.001).死亡症例は24例(2.1%)で癌死が16例と最も多かった.結語:累積5年の再手術率は22.2%で再手術のリスク因子は初回手術時の肛門病変の存在であった.死亡原因は癌死が多数を占めた.
著者
中川 浩之
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.45-54, 1984 (Released:2011-03-02)
参考文献数
36
被引用文献数
1 1

最近10年間の当教室における閉塞性黄疸317例中51例 (16.1%) に消化管出血をみた. 本症は閉塞性黄疸の種々の合併症の中で最も頻度が高く, 死亡率も高い重篤な合併症で, 急性閉塞性化膿性胆管炎などの重症感染症に続発する例が多い. 閉塞性黄疸の術前胃液検査で感染例では塩酸ベタゾール刺激に対する胃分泌反応の遷延傾向がみられた. 一方, 術後胃分泌能は消化管出血例で著明に亢進していた. イヌの胆管結紮後2~3週に胃液量の増加を中心とした胃分泌亢進がみられた. また, 胆管結紮後, 胆管内にエンドトキシンを注入したラットでは20例中11例 (55.0%) に急性多発性胃潰瘍がみられ, 本症の発生機序として胆道感染症の重要性が強く示唆された.
著者
八重樫 泰法 中島 章恵 細井 信之 福田 春彦 佐瀬 正博
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.33, no.9, pp.1648-1651, 2000-09-01
参考文献数
9
被引用文献数
2

液体窒素の飲用による胃破裂報告は, 本邦における第1例目と考えられる.症例は17歳の男性.高校学園祭の化学部の催しで, 液体窒素にジュースを混じて約30ml飲用した.飲用直後より激烈な腹痛を発症し, 当院救急外来に搬送された.来院時, 著しい腹部膨満および筋性防御を認め, 腹部単純X線で腹腔の約1/2を占める遊離ガスを認めた.CT検査で腹腔内の遊離ガス, 後腹膜腔の遊離ガスおよび縦隔内の遊離ガスを認めた.内視鏡検査では, 胃体部小彎側に縦走潰瘍を認めた.緊急手術では, 胃体上部小彎に3cmの縦走する穿孔を認め, この部を縫合閉鎖した.術後経過は良好であり, 第26病日に軽快退院した.液体窒素の飲用傷害について, 搬送時には凍傷を考慮したが, 実際は揮発窒素ガス産生による胃破裂が主であった.
著者
前田 将宏 三浦 昭順 宮本 昌武 加藤 剛 出江 洋介 中野 夏子 比島 恒和
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.565-571, 2010-05-01 (Released:2011-12-27)
参考文献数
24

症例は23歳の男性で,インド旅行帰国後の下痢・腹痛・嘔吐を主訴に受診,CTにて回盲部腸重積症と診断し,同日緊急手術を施行した.術中所見では回盲部腸重積症を認め,用手的に整復が可能であった.しかし,盲腸は腫大し腫瘤様に触知され,周囲の腸間膜リンパ節の腫大も認められたため悪性病変も否定できず回盲部切除術を施行した.病理組織学的診断では,パイエル板の著明な肥厚と盲腸の鬱血・浮腫性変化を認め,非特異的腸炎の診断であった.後日,便培養からカンピロバクター(Campylobacter jejuni)および赤痢菌(Shigella flexneri)が検出され,細菌性腸炎関連性腸重積症と診断した.発生機序は回盲部の解剖学的要因に加え,急激な回盲部粘膜の炎症性変化に伴う先進部形成に腸管蠕動異常亢進が契機となったと考えられた.保存的治療の報告例もあり,細菌性腸炎が腸重積症の一因となることを認識し治療にあたることが肝要である.
著者
馬場 秀夫 是永 大輔 大野 真司 斎藤 純 渡辺 昭博 岡村 健 杉町 圭蔵 辻谷 俊一
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.1010-1013, 1989-04-01

Stage III胃癌治癒切除例49例中15例に,術前OK-432腫瘍内投与を行った.5年生存率はOK-432非投与群の36.5%に比べ,投与群では73.3%と有意に良好であった(p<0.05).術後再発率は投与群27%,非投与群56%であり,投与群に明らかな腹膜再発が認められなかったのに対し,非投与群では58%(11/19)が腹膜再発で死亡した.次に腹膜再発動物モデルを作成しOK-432による腹膜再発予防効果を検討した結果,OK-432腫瘍内投与の場合には腫瘍縮小効果が認められたのみであったが,腹腔内投与と腫瘍内投与を併用した場合には著しい抗腫瘍効果と生存率の延長が得られた.以上よりOK-432腫瘍内投与はStage III胃癌の予後を改善し,さらに今後腹腔内投与の併用により,腹膜再発予防効果が高まる可能性が示唆された.
著者
森山 秀樹 山村 浩然 北村 祥貴 西田 佑児 竹原 朗 芝原 一繁 佐々木 正寿 小西 孝司
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.368-371, 2009-04-01 (Released:2011-12-23)
参考文献数
17

症例は18歳の女性で,自動車運転中の自損事故で受傷し,当院へ救急搬送された.シートベルトは着用していなかった.腹部全体が板状硬で上腹部に著明な圧痛を認めた.腹部CTで腹腔内遊離ガスを認めた.外傷性消化管損傷による汎発性腹膜炎が疑われたため緊急手術を施行した.腹腔内には血性の腹水があり,胃前庭部の離断を認めた.幽門側胃切除を施行し,Billroth II法再建,Braun吻合を行った.術後経過は良好で術後15日目に退院した.他臓器の損傷を伴わない外傷性胃離断の報告は今までに1例もない.その発生機序を考察し報告する.
著者
笹子 三津留 木下 平 丸山 圭一 岡林 謙蔵 田尻 久雄 吉田 茂昭 山口 肇 斉藤 大三 小黒 八七郎 石川 勉 松江 寛人 山田 達哉
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.23, no.9, pp.2191-2195, 1990-09-01
被引用文献数
8

リンパ節転移の無い早期胃癌を特定化し局所切除をすればリンパ節郭清をともなった手術と同等の治療成績を挙げることが期待される.1962年から1985年までに国立がんセンター病院で切除された単発早期胃癌1,440例のリンパ節転移についての検討より,リンパ節転移を否定しうる病変は,IIb,2.0cm以下の潰瘍性変化の無いIIc,2.0cm以下のIIa,腺腫内癌であった.そこで安全誤差をいれて,(1)1.5cm以下のIIa,(2)1.5cm以下の胃炎類似型IIcまたはIIb,(3)腺腫内癌の3つを局所治療の適応とした.切除標本の組織学的検索結果により完全切除は厳重な経過観察,粘膜内断端陽性は外科的局所切除,粘膜下層浸潤もしくは脈管浸潤例はR1以上の胃切除を行うという治療体系を作った.現在までの11例中8例は局所切除のみで,3例では外科的切除が追加された.この治療体系は癌が根治する可能性を下げることなく局所切除を行える優れた治療体系である.
著者
小島 博文 小尾 芳郎 阿部 哲夫
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.182-187, 2014-03-01 (Released:2014-03-26)
参考文献数
14
被引用文献数
2

症例は33歳の男性で,刑務所服役中に統合失調症を発症した.刑務所を出所後に暴飲暴食し,意識障害を主訴に救急搬送された.来院時の単純X線検査で著明な胃拡張を認めたが,腹部症状は無く精神科入院となった.入院後7日目に吐血,血圧低下,腹痛を認め,当科紹介となった.身体所見上,腹部は著明に膨隆し,板状硬を呈していた.腹部造影CTで胃内に多量の残渣と胃壁内ガス像,肝内門脈ガス像を認めた.急性胃拡張による胃壊死が疑われ,緊急手術を施行した.術中所見では,胃壁が菲薄化しており,胃のほぼ全体が壊死に陥っていた.また,胃壁に気腫状変化を認めた.胃の温存は不能と考え,胃全摘術を施行した.術後,敗血症と肝不全を合併したが集学的治療により回復し,第47病日に精神科転科となった.胃は血流豊富な臓器であり壊死に至ることはまれである.過食後の急性胃拡張による胃壊死の1例を報告する.
著者
古賀 成昌
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.19, no.9, pp.1849-1855, 1986-09-01

外科治療ができない癌に対し,体外循環を応用した血液加温による全身温熱療法と癌化学療法を併用した全身温熱化学療法の成績と,本法の問題点について述べた.全国集計例132例の成績ではCR,PRがそれぞれ2例,30例にみられたが,症例の背景を考えた場合,この成績は評価できるものと考える.全身温熱療法の宿主免疫能をはじめとした生体への影響は大きくはなく,今後適応症例を選び,操作の簡便化,制癌剤の投与タイミング,温熱感受性などの問題点を解決することにより,本法の治療効果はさらに向上できるものと考える.
著者
小杉 千弘 安田 秀喜 幸田 圭史 鈴木 正人 山崎 将人 手塚 徹 樋口 亮太 平野 敦史 植村 修一郎 土屋 博紀
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.632-639, 2009-06-01
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

鼠径ヘルニア根治手術は若い外科医が基本手技を鍛錬する場であり,外科手術の入門編として位置していた.現在,初期研修医制度が実施され,外科系診療科志望でない研修医も外科をローテーションするカリキュラムが組まれている.今回,我々は鼠径ヘルニア根治術を初期研修医に執刀させる是非を検討する.方法:2005年4月から2007年12月に根治手術を施行した139例を対象とした.134例にmesh plug法が,5例にPROLENE hernia system法が行われた.初期研修医執刀例は72例(R群),外科医執刀例は67例(S群)だった.R群とS群において,患者背景,術中,術後因子を検討した.結果:患者背景においてR群とS群で有意差はなかった.術中因子として手術時間においてR群:S群に有意差を認めた(88.0分:64.2分,p<0.001).術後因子は,入院期間(3.8±2.1日:4.9±8.3日,p=0.14),合併症(9.8%:6.6%,p=0.64)に統計学的に有意差はなかったが,再発はR群7例(9.7%),S群1例(1.5%)で有意にR群において高かった(p=0.04).考察:入院期間,合併症には有意差はなく,再発率は初期研修医術者が外科医と比較し有意に高かったが,助手として外科専門医が指導することで,再発率が抑えられる.よって,現在の研修医制度において外科系研修カリキュラムの手術執刀についての指導指診作成が望まれる.
著者
水野 翔大 篠崎 浩治 藤田 翔平 笹倉 勇一 田口 昌延 寺内 寿彰 木全 大 古川 潤二 小林 健二 尾原 健太郎
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.234-244, 2018-03-01 (Released:2018-03-28)
参考文献数
65

症例は58歳の男性で,近医において50歳時に潰瘍性大腸炎と診断され,アミノサリチル酸製剤,ステロイドで治療が開始された.ステロイド依存例であり免疫調節薬,インフリキシマブ,血球成分除去療法が導入されたが寛解に至らず外科的治療が検討されていた.今回,直腸穿孔による汎発性腹膜炎を発症し緊急手術を施行した.直腸Ra前壁に穿孔を認めHartmann手術を施行した.切除腸管の病理検査で異型リンパ球の全層性浸潤像と腸管壁全層の線維化を認めた.免疫染色検査の結果,びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と診断された.切除腸管の粘膜部分に活動性の潰瘍性大腸炎を示唆する所見は目立たず,悪性リンパ腫に起因する直腸穿孔が示唆された.潰瘍性大腸炎と悪性リンパ腫の合併はまれであり,潰瘍性大腸炎治療薬によるEpstein-Barr(以下,EBと略記)ウイルス感染の合併と悪性リンパ腫の発生の関連が報告されている.本症例でも病変部へのEBウイルス感染を認め,その関連が示唆された.