著者
太田 博俊 高木 国夫 大橋 一郎 田村 聡 久野 敬二郎 梶尾 鐶 加藤 洋
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.14, no.10, pp.1399-1408, 1981-10-01
被引用文献数
10

当外科において手術された1978年10月までの1000例の単発早期胃癌に対して肉眼分類を中心に時代的変貌を加味しつつ, その臨床像を検討した. 最近は手術胃癌の3例に1例は早期癌で, 陥凹型早期癌が多く, 占居部位では隆起型は胃下部, 陥凹型は, 胃中部に多い. 年齢分布はピークは隆起型は60歳代の山型, 陥凹型は50歳代の丘型を示した. 症例数では隆起型と陥凹型は, 1対4の比率で, 深達度 m と sm ではほぼ同率であった. 早期胃癌のリンパ節転移率は 12.7%, m 癌は 21.7%. 隆起型では, 20.9% その内 m 癌は 1%, sm 癌は, 33.3%, 陥凹型では, 10% その内 m 癌は 3.9%, sm 癌は 16.7% であった. 治癒切除例の5生率は 93.8% 非治癒切除例で 56.5% であった.
著者
小野 文徳 小野地 章一 吉田 節朗 内山 哲之
出版者
The Japanese Society of Gastroenterological Surgery
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.63-67, 2004
被引用文献数
1

症例は71歳の男性. 約20年前に背部打撲により脾損傷と診断され, 保存的に加療されたことがある. その後は特に外傷の既往はない. また, 3年前頃から心房細動のためアスピリンを服用しており, 半年前に脳梗塞を発症している. 脳梗塞後のリハビリにて近医入院中, 腹部CT検査にて脾 胞を指摘された. その1週間後, 突然の左側腹部痛とショック症状を呈したため当院に搬送された. 腹部CT検査および腹腔穿刺にて脾破裂による腹腔内出血と診断し, 緊急手術を施行した. 腹腔内に多量の凝血塊と血性腹水を認めるとともに, 脾には仮性襄胞とその破裂が認められ,外側は横隔膜,大網と強固に癒着していた. 病理組織検査では, 外傷性変化とともに, 新旧の壊死巣・出血巣が混在した脾梗塞の所見を認めた. 本症例の脾破裂の直接原因は脾梗塞と考えられたが, 外傷性変化, 抗凝固薬の服用も影響したものと考えられた.
著者
高台 真太郎 上西 崇弘 市川 剛 山崎 修 松山 光春 堀井 勝彦 清水 貞利 玉森 豊 東野 正幸 久保 正二
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.50-55, 2007-01-01
被引用文献数
6

肝癌切除後の孤立性リンパ節転移を摘除することで,術後2年6か月の現在,無再発生存中の症例を経験したので報告する.症例は58歳の男性で,C型慢性肝炎に伴う肝癌に対して肝切除術を2回施行されていた.経過観察中のCT像上,肝尾状葉に約4cm大の腫瘤性病変を認め,AFP, PIVKA-II値の著明な上昇がみられた.腹部血管造影像では腫瘤は中肝動脈および左胃動脈より栄養される腫瘍濃染像として描出され,肝癌の尾状葉再発と診断し開腹した.腫瘍は肝尾状葉に接するように総肝動脈の腹側に存在していたが,肝臓からは独立しており肝癌の総肝動脈幹リンパ節転移と考え摘除した.病理組織学的検査では中分化型肝癌のリンパ節転移と診断された.AFP, PIVKA-IIは術後2か月日に標準値範囲内へ低下し,以来,再発徴侯を認めていない.原発巣がコントロールされた肝癌の孤立性リンパ節転移は摘除により良好な予後が得られる可能性が示唆された.
著者
橋本 直樹 野田頭 達也 藤田 正弘 高屋 誠章 熊谷 達夫 田中 正則 佐々木 睦男
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.323-327, 2000 (Released:2011-06-08)
参考文献数
26

症例は35歳の女性で, 下腹部腫瘤を主訴とし近医を受診, 卵巣腫瘍の診断で当院産婦人科にて両側付属器切除術が施行された. 組織診にて印環細胞癌と診断されたため, 当院内科にて胃内視鏡検査を施行し, 胃体中部大彎にIIc病変が認められた. 生検にて印環細胞癌と診断され, 当科にて胃全摘術3群郭清を施行, 再建はρ吻合, Roux-Y法で行った. 病理組織学的検討では深達度m, リンパ節転移n2 (+), 脈管侵襲はly (-), v (-) であった. 術後, 化学療法を施行し, 現在外来にて経過観察中である.一般にKrukenberg腫瘍は播種性転移として取り扱われているが, 本症例では肉眼的および腹水細胞診での腹膜播種は認められなかった. 検索した限りでは胃粘膜内癌によるKrukenberg腫瘍の報告は6例のみで, 本症例はまれであると考え報告した.
著者
富山 光広 加藤 紘之 大野 耕一 奥芝 知郎 佐藤 正文 田辺 達三
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.25, no.9, pp.2291-2300, 1992-09-01
被引用文献数
7

動脈-門脈シャント術の併用が,肝動脈遮断によって生ずる肝不全を回避しうるか否かを実験的に検討した.雑種成犬を用い,肝への動脈性血行をすべて結紮する肝動脈遮断群(n=5)と,切離した肝動脈を門脈に直接吻合する動脈-門脈シャント群(n=5)の2群を作成し,肝血行動態,肝酸素需給動態および肝生化学的変化について検討を加えた.その結果,肝動脈遮断群では6時間後に総肝血流量は55%,肝酸素供給量は43%に減少し,門脈血管抵抗は250%にまで上昇した.これに対しシャント群では,それぞれ120%,108%,70%と肝動脈遮断下にもかかわらず術前の状態を良く維持していた.総胆汁酸濃度,GOT.GPTは,シャント群で低値を示した.また動脈血中ケトン体分画比はシャント群の方が高かった.以上の結果から動脈-門脈シャント手術は肝動脈遮断後の肝血流量と酸素供給量を維持し,肝不全予防に有用であると考えられた.
著者
幕内 博康 熊谷 義也 山崎 栄龍 掛川 暉夫 片桐 誠 有森 正樹
出版者
The Japanese Society of Gastroenterological Surgery
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.12, no.8, pp.486-491, 1979
被引用文献数
1

逆流性食道炎の発生機序はLESPが低く, かつgastrinに対する反応の悪いものに逆流が起こり, 逆流液が長く食道内に停滞することによると考えられる.これに腹圧と逆流液の酸度が影響を及ぼしている.この仮説を食道内圧pH測定, gastrin負荷試験, 酸排出試験を施行して確かめた.逆流性食道炎の診断には食道内視鏡が最も重要であるが, 食道炎の予後を知るにはこれらの機能検査が必要である.<BR>逆流性食道炎の治療は原則として保存的に行い,(1) ファーラー位で上体を高くして寝る.(2) 食後3時間以上たってから床につく,(3) LESPを上昇させる薬剤の投与,(4) 制酸剤粘膜保護剤の投与,(5) 肥満があれば標準体重へ戻す.などが有効である.
著者
新垣 雅人 児嶋 哲文 平口 悦郎 村上 貴久 松本 譲 寺本 賢一
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.39, no.10, pp.1577-1581, 2006-10-01
被引用文献数
4

横隔膜ヘルニアの1型であるまれな傍裂孔ヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は70歳の女性で,固形物摂取時の嚥下困難と嘔吐を主訴に,当院を受診した.上部消化管内視鏡検査とバリウム検査にて,食道裂孔ヘルニアの傍食道型と術前診断した.手術は腹腔鏡下に行い,食道胃接合部および胃上部付近を剥離し,後縦隔内に入り込んでいた胃穹隆部を整復したところ,ヘルニア門は左横隔膜にあり食道裂孔との間には横隔膜脚が介在していた.横隔膜ヘルニア(傍裂孔ヘルニア)と判断し,ヘルニア門を閉鎖した後,食道胃接合部付近剥離による逆流を考慮してToupet法を施行した.術後経過は良好で,11日目に退院した.本症はまれな病態で,かつ術前診断が困難であることより術式の選択に迷うが,本例ではヘルニア門の閉鎖とToupet法を施行し良好な結果を得ることができたことから,本疾患に対し,状況に応じてToupet法などを用いることは有用と考えられる.
著者
久保 隆一 喜多岡 雅典 赤埴 吉高 待寺 則和 肥田 仁一 田中 晃 進藤 勝久 安富 正幸
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.26, no.10, pp.2488-2493, 1993-10-01
被引用文献数
9

基底膜の構成成分である laminin (LN) の免疫組織化学的染色を大腸癌・胃癌に行ったところ LN 活性が癌組織の基底膜部分に認められる症例に高率に肝転移, 肝転移再発がみられることが明らかになった. また同じ基底膜成分である type IV collagen (CI V) の染色部位は LN と一致し, LN 陽性部位は基底膜であると考えられた. 1987年より LN 染色による大腸癌の肝転移再発の prospective study を行った結果, 高率に肝転移再発が予測できた. 一方, LN 陽性で基底膜を形成する癌がなぜ高率に肝転移するのかを解明するため培養細胞を用いた研究を行った. 培養細胞でも基底膜を形成する癌としない癌があったが, いずれの細胞も LN, CIV を産生していた. 以上より大腸癌・胃癌では基底膜を形成する癌としない癌があり, 基底膜形成癌 (basement membrane producing cancer; BmPC) が高率に肝転移することが明らかになった.
著者
松橋 延壽 永田 高康 立花 進 浅野 雅嘉 梶間 敏彦 土屋 十次
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.33, no.9, pp.1724-1728, 2000-09-01
被引用文献数
7

超音波検査にて術前診断可能であった閉鎖孔ヘルニアの5例を経験した.症例は女性4例, 男性1例.右側3例, 左側2例.全例痩せ型で, 平均年齢は83.8歳と高齢であった.主訴は5例とも腹痛, 嘔気でイレウス症状を呈していた.また, Howship-Romberg徴候は術前3例に確認した.閉鎖孔ヘルニアを術前疑い全例に超音波検査を施行し, 小腸の閉鎖孔への嵌入を確認した.症状発生から手術までの期間は, 1日から最長24日で平均10.6日であった.嵌入形態は3例がRichter型であり, 嵌入部位は回盲部から50〜100cmの小腸であった.術式は3例が小腸人工肛門(二連銃式), 1例が15cmの腸切除, 1例が整復解除のみであった.ヘルニア門の処理は単純縫合閉鎖が3例, mesh plugによる補強が2例であった.なお, 人工肛門は後日閉鎖し全例生存中である.
著者
福島 亘 八木 雅夫 坂本 浩也 伊井 徹 清水 康一 米村 豊 泉 良平 三輪 晃一 宮崎 逸夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.26, no.8, pp.2185-2188, 1993-08-01
被引用文献数
7

症例は64歳の男性で, 昭和56年8月に胸部中下部食道癌 (A_0 N_0 M_0 Pl_0, Stage I) にて右開胸開腹胸腹部食道全摘術および胸骨後経路頸部食道形成胃管吻合術を受けた. 切除標本の病理組織診断は低分化型扁平上皮癌, 深達度 ep, n(-) であった. 術後10年目に嘔気と嘔吐を認めたため内視鏡検査を施行したところ, 門歯列より 26cm の再建胃管内に径 2.0cm の山田 III 型ポリープを認めた. 生検結果は中分化型腺癌であった. 超音波内視鏡検査で深達度 m と診断されたため, 内視鏡的ポリペクトミーを施行した. 切除ポリープは病理組織学的に乳頭状腺癌, 深達度 m で断端における癌の浸潤も認めなかったため治癒切除と診断された. 食道早期癌術後の再建胃管に発生した早期胃癌の本邦報告例は, これまでに自験例を含め3例のみときわめてまれであったが, 再建胃管癌46例の本邦報告例の検討からは, 早期発見のため術後の再建胃管の定期的な検索が必要であると思われた.
著者
小高 通夫 竜 崇正 碓井 貞仁 渡辺 義二 山本 義一 小出 義雄 山本 宏 有我 隆光 長島 通 佐藤 博
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.17, no.9, pp.1698-1702, 1984-09-01
被引用文献数
12

肝門部胆管癌はその解剖学的位置および胆管癌の浸潤性増殖の特微から最も治療困難な疾患の1つである.われわれは以前よりたとえ非治癒切除におわっても可及的に切除するという態度で,この領域の癌に対処してきた.切除例を中心に中下部胆管癌と比較検討して肝門部胆管癌の治療上の問題点について述べてみたい.
著者
宗岡 克樹 白井 良夫 高木 健太郎 小山 高宣
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.495-499, 2001-05-01
被引用文献数
18

急性上腸間膜動脈閉塞症の2症例に対し, ウロキナーゼを上腸間膜動脈(SMA)に動注する血栓溶解療法を施行した. 症例1は59歳の男性で, SMA本幹に完全閉塞を認め, ウロキナーゼ60万IUの動注により血栓は消失した. 発症からSMA再疎通までは3.5時間であった. 腸切除を要さず, 1か月で軽快退院した. 症例2は68歳の男性で, SMAの完全閉塞を認め, ウロキナーゼ60万IU動注により血栓は消失した. 発症からSMA再疎通までは6.5時間であった. 腹部所見は軽減したが, 再疎通後3時間目から再度憎悪したため緊急手術を行った. 空腸, 回腸280cmが壊死しており, 腸管切除再建を行ったが, 術後4か月目に多臓器不全で死亡した. 自験例および従来の報告例の検討からは, 本療法を発症後早期(SMA本幹閉塞では5時間以内, SMA遠位部の閉塞では12時間以内)に行えば腸管壊死を回避できる可能性がある.
著者
水間 公一 島津 雄一 宇野 賢 古屋 隆司 戸塚 守夫 早坂 滉
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.16, no.11, pp.1986-1990, 1983-11-01

最近3年間における教室のインシュリン併用 TPN 症例を集計・検討した. インシュリン併用 TPN 症例のうち高齢者の占める割合が高く, 加齢に伴う耐糖能の低下が一因であると思われた. レギュラーインシュリン点滴注入が多く行われたが, 症例によっては分轄皮下注, 中間型インシュリンの併用が有効な場合もあった. 検索症例とくに糖尿病型症例では TPN の投与カロリーは少ない傾向にあり, この点充分なインシュリン投与による高カロリー投与に留意しなければならないと考えられた. 糖尿病型症例では併用インシュリンの量・期間ともに他群に比べて多く血糖管理に細心の注意が必要であると思われ, 合併症の点からも発熱の頻度が多く充分な経過観察などが必要であろう. しかし, また重症な代謝性合併症は経験しておらず, 耐糖能の低下があってもインシュリン併用によって TPN は安全に施行できることも指摘した.
著者
京 明雄
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.13, no.7, pp.828-836, 1980-07-01
被引用文献数
2

胃切除後吻合部潰瘍症例21例, 十二指腸潰瘍症例60例, 胃切除後吻合部潰瘍のない症例17例を対象として, 茂樹前基礎酸分泌, 血清ガストリン値およびテトラガストリン, セクレチン, レギュラー・インスリン, Ca グルコネート刺激による胃酸および血清ガストリン反応を検索した. 吻合部潰瘍では, かならずしも残胃の大きさと相関しない機能的壁細胞量の残存刺激が認められ, しかもその約4割が基礎分泌状態において持続的に機能している状態にあり, これは主として迷走神経の影響を受けた残存壁細胞の機能異常と密接な関連性を持ったことが推定された.
著者
酒本 喜与志 荒川 博文 箕田 誠司 石河 隆敏 杉田 裕樹 鮫島 浩文 江上 寛 池井 聰 小川 道雄
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.25, no.10, pp.2590-2594, 1992-10-01
被引用文献数
9 11

サイトカインは手術侵襲後に生じる種々の生体防御反応において重要な役割を果たしている.今回,外科手術後の血中サイトカインの上昇機序と,それが,どのような因子の影響を受けるかを検討した.対象は合併症を有しない,各種の予定手術を受けた38例である.サイトカインの定量はELISA法,メッセンジャーRNA(mRNA)の測定はNorthern blotting法にて行った.その結果,1.血中interleu-kin 6(IL-6)値は術後1日目に最高値を示すこと,2.ドレーン浸出液中のIL-6,interleukin 8(IL-8)値は末梢血に比べ著明に高いこと,3.胸腔,腹腔ドレーン浸出液中の細胞内に手術当日,1,2日目にIL-6,IL-8のmRNAの発現を強く認めるが,末梢血細胞内には極めて微量であること,4.食道癌1期的根治術,肺葉切除術はおのおの,同程度の手術侵襲を有す膵頭十二指腸切除術,結腸・直腸切除術よりも高いIL-6値を示すこと,5.IL-6値は手術時間あるいは出血量との間に有意の相関が有ること,が明らかになった.以上より,サイトカインは主として手術局所にて誘導,分泌され,次いで血中に移行して高サイトカイン血症を来たすこと,また,手術時間,出血量はともにサイトカイン産生の大きな影響因子であることが示唆された.
著者
丹羽 篤朗 三井 敬盛 森山 悟 石黒 秀行 柳瀬 周枝 大和 俊信 柴田 和男 佐々木 信義 角岡 秀彦
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.30, no.9, pp.1962-1966, 1997-09-01
被引用文献数
13 10

中結腸動脈瘤の破裂により腹腔内出血をきたした症例を報告する. 症例は60歳の男性. 既往に高血圧. 突然の腹痛と背部痛で発症し, 疼痛が増強するため当院を受診した. 腹部理学所見, 血液検査で腹膜炎を疑ったが, 超音波検査では大量の腹水を認め, 腹腔穿刺にて腹腔内出血と診断した. 造影CTでは脾動脈瘤と胃裏面から股間膜左側に広がる血腫を認めた. 緊急手術を施行し, 中結腸動脈左枝の破裂による出血で破裂部を切除し止血した. 病理組織検査では中膜壊死に伴う隔離性動脈瘤と診断された. 術後経過は順調で16病日に退院した. 術後の血管造影で腹腔動脈起始部は閉塞し, 上腸間膜動脈根部, 下膵十二指腸動脈, 膵十二指腸動脈弓, 背側膵動脈, 脾動脈, 胃十二指腸動脈, 中結腸動脈根部に嚢状, 紡錘状の動脈瘤が多発したきわめてまれな症例であった. 術後18か月が経過したが, これらの動脈瘤による症状はない.
著者
白畑 敦 松原 猛人 伊津野 久紀 齋藤 充生 石橋 一慶 木川 岳 根本 洋 北村 直康 真田 裕 日比 健志
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.460-465, 2010-04-01 (Released:2011-12-27)
参考文献数
19
被引用文献数
6 4 8

症例は62歳の男性で,2001年2月に他院にて絞扼性腸閉塞の診断で小腸部分切除術を施行された.同年5月に腹壁瘢痕ヘルニアを発症し,コンポジックスメッシュを用いたヘルニア修復術が施行された.術後経過は良好であったが,2006年8月腹痛が出現し近医を受診した.腹部広範に圧痛,発赤を認め,また腹部CTにおいては腹壁直下に液体成分と思われる低吸収域を認めた.メッシュを温床とした腹腔内膿瘍と診断され,切開排膿,同部の洗浄に加え,抗生剤投与が開始された.しかし,2か月を経過しても感染が遷延するため手術目的で当院に紹介となった.同年10月に当院にてメッシュ除去術および洗浄ドレナージ術を施行した.術後第8病日に経過良好で退院した.術後,感染の再燃は認めていない.
著者
小池 伸定 鈴木 修司 今里 雅之 田中 精一 林 恒男 鈴木 衛 羽生 富士夫 山本 雅一
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.512-516, 2002-05-01
被引用文献数
8

症例は56歳の男性.1991年肝細胞癌の診断で7月肝外側切除術を施行.切除標本は4×3cmの単結節型で,病理組織学的所見は硬化型肝細胞癌,EdI+II,IV,fc(-),sf(-),vp0,vv0,b1,tw(-),im1,z1であった.1996年より外来経過観察中,血清AFPの上昇を認め,2000年4月腹部CT検査で左胃動脈幹に約5cmのリンパ節腫大あり,血管造影で左胃動脈より腫瘍濃染像を認め,残肝再発なく,肝細胞癌の腹腔内リンパ節転移の診断で,2000年7月リンパ節摘出術を施行した.硬化型細胞癌で肝切除後9年を経過して,残肝再発なく孤立性にリンパ節再発をきたし,これを切除しえた1例を経験した.