著者
上原 俊介 中川 知宏 田村 達
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.89-100, 2015 (Released:2015-03-26)
参考文献数
38
被引用文献数
1 1

義憤(moral outrage)とは,ある出来事やそれに関与した人物の行動が道義に反しているという知覚によって引き起こされる怒りのことを指す。怒りの研究者たちはこれまで,道徳違反を目の当たりにしたときには義憤が喚起されると仮定してきた。ところが最近の研究によれば(たとえば,Batson, Chao, & Givens, 2009),怒りの喚起は自分(あるいは自分の同胞)が危害を加えられたときにしか確認されず,私憤(personal anger)が怒りの本質であると指摘する者もいる。そこで本研究は,公正に対する敏感さ(justice sensitivity)という人格特性に注目し,義憤とは正しさに過敏に反応する人たちにみられる制限的な感情反応ではないかと予測した。日本人参加者に対して架空の拉致事件に関する新聞記事を読ませ,そのとき感じた怒りの強さを答えさせた。その結果,どんなに公正に敏感な参加者でも,強い怒りは日本人が拉致被害の犠牲になったときにしか報告されず,私憤説に一致する証拠しか確認されなかった。こうした知見を踏まえ,本研究は,私憤がきわめて堅固な反応であるという可能性を指摘した。
著者
大髙 瑞郁 唐沢 かおり
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.49-59, 2010 (Released:2010-08-19)
参考文献数
18
被引用文献数
2

帰属と援助の先行研究は,貧困者が政府に援助されるに値するか否かの判断(Zucker & Weiner, 1993)や,貧困者を援助する社会政策に対する態度の規定因(Applebaum, 2001)を検討してきた。しかし,政府に援助されるに値しないと判断した人々も,社会保障政策を支持するかもしれない。なぜなら,彼らが貧困者に貧困を解決することが不可能であると判断すれば,政府に援助する責任があると判断し,社会保障政策を支持する可能性が考えられるからである。そこで本研究は,社会調査データの二次分析を行って,人々が社会保障政策に対する態度を決定する過程を解決責任(Brickman, Rabinowitz, Karuza, Coates, Cohen, & Kidder, 1982; Karasawa, 1991)の観点から検討した。結果は,低所得者は高所得者よりも,社会保障の対象となる人々の生活を保障する政府の責任を重く判断し,社会保障政策を支持することを明らかにした。考察では,格差が拡大しつつある日本社会に,本研究が与える示唆について議論した。
著者
脇本 竜太郎
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.160-168, 2008 (Released:2008-03-19)
参考文献数
16
被引用文献数
4 2

自尊心の高低と援助要請に関しては,正の関係を想定する脆弱性仮説と負の関係を想定する認知的一貫性仮説・自尊心脅威モデルという対立する仮説が提案され,双方を支持する知見が蓄積されている。本研究では,そのような知見を整理する1つの視点として自尊心の不安定性を取り上げ,自尊心の高低と不安定性が青年の被援助志向性および援助要請に及ぼす影響について,対人ストレスイベントの頻度・日間変動を統制した上で検討した。援助要請についてはさらに,家族・非家族という対象ごとの検討も行った。 48名の大学生・大学院生が1週間の日誌法による調査に回答した。階層的重回帰分析の結果,自尊心の高低と被援助志向性・援助要請の関係は,自尊心の不安定性により調節されていた。具体的には,自尊心が不安定である場合は高さと被援助志向性,援助要請の回数は負の関係を,特に自尊心が安定している場合は正の関係を持つことが示された。また,対象別の援助要請の分析では,上記のような関係が非家族への援助要請数でのみ認められた。自尊心の高低と同時に不安定性を検討することの意義・有用性および今後の研究に対する示唆について議論した。
著者
竹村 幸祐 有本 裕美
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.40-49, 2008 (Released:2008-11-14)
参考文献数
34
被引用文献数
1 1

北米と同様に自発的入植の歴史を持つ北海道では,日本の他の地域とは異なり,ヨーロッパ系北米人に似た相互独立的な心理傾向が優勢であると報告されている(Kitayama, Ishii, Imada, Takemura, & Ramaswamy, 2006)。Kitayama et al.(2006)は,北海道で自由選択パラダイムの認知的不協和実験を行い,他者の存在が顕現化している状況よりも顕現化していない状況でこそ認知的不協和を感じやすいという,北米型のパタンを北海道人が示すことを見出した。本研究では,Kitayama et al.(2006)とは異なる方法で他者の存在の顕現性を操作し,彼らの知見の頑健性を検討した。実験の結果はKitayama et al.(2006)の知見と一貫し,他者の存在の顕現性の低い状況において北海道人は認知的不協和を感じやすく,逆に他者の存在の顕現性が高い状況では認知的不協和を感じにくいことが示された。
著者
遠藤 由美
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.150-167, 2000
被引用文献数
1 1

自尊感情は心理学におけるもっとも重要な概念の一つでありながら, これまで自尊感情とは何かという議論はあまりおこなわれてこなかった。本稿では, これまで明示的に示されることがほとんどなかった自尊感情に関する従来の考え方を探り, 伝統的な「自己」が現実世界の社会的状況や人間関係性から切り離され過ぎていたという問題点を指摘した。次に, 最近提唱されつつある自尊感情への生態学的・対人的視点をとったアプローチを紹介し, これまで整合性のある説明を与えられなかった点について, 新たな観点から議論した。最後に, 今後の研究課題と意義を提唱した。
著者
脇本 竜太郎
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.165-179, 2005 (Released:2006-02-18)
参考文献数
62
被引用文献数
1 1

人間の社会的行動は,自尊心への欲求から説明されることが多かった。しかしながら,その自尊心への欲求自体が,“なぜ”人間にとって重要なのかは実証的に検討されてこなかった。この“なぜ自尊心の欲求が重要なのか”という問に存在脅威(死の不可避性の認識に基づく脅威)の緩衝という観点から答え,人間の社会的行動を包括的に説明する枠組みたるべくして登場したのが存在脅威管理理論である。本稿では,まず存在脅威管理理論の概要について紹介する。次に,既存の研究を概観し,存在脅威管理理論がもたらした成果と,個々の社会的行動の実証的検討における課題について述べる。最後に,近年報告されている存在脅威管理方略の差異に関する知見を紹介し,そのような文化内・文化間差を存在脅威管理理論がいかに捉え,組み込んでいくべきかについて展望を述べる。
著者
杉本 絢奈 本元 小百合 菅村 玄二
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.150-160, 2016 (Released:2016-09-07)
参考文献数
47

「首を傾げる」ことで,疑問や不審を抱くだろうか。大学生82名が箱に空いた角度の異なる穴を覗くことで,右傾,左傾,無傾の3種の姿勢をとり,対人認知,リスクテイキング,論理的思考という3課題を行った。姿勢操作はカウンターバランスされた。その結果,首を右に傾げると,傾げない場合よりも,社会的に望ましい人物の仕事への関心を低いと評価しやすくなり(p=.002, d=0. 9),また男性は首を左に傾げた場合,傾げなかった場合に比べ,危険な行動をとると判断しやすかった(p=.014, d=0. 8)。論理的思考には差が見られなかったが,仮に疑い深くなっても論理性の判断はつきにくいからかもしれない。対人場面では提示された人物描写を字面通りに受け取らなかったと解釈でき,首傾げ姿勢が慎重な情報処理を促すという仮説は,右傾に限って支持された。右傾で仮説通りの効果がみられた理由は,大半の人は生まれつき首を右に傾けやすいからかもしれない。左傾によって軽率な行動傾向が高まったが,これは不自然な姿勢を取ったためと考えられ,右傾によって慎重になるという結果と矛盾はしない。今後は姿勢の個人差を考慮した上で,参加者間計画にし,追試をすることなどが求められる。
著者
雨宮 有里 高 史明 杉山 崇
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.1804, (Released:2019-07-19)
参考文献数
25

自伝的記憶の意図的想起と無意図的想起の検索過程についての主要な研究は,無意図的想起は抽象度が低い想起手がかりに対して直接に特定的記憶が検索される特殊な過程であると主張している。一方で,雨宮・高・関口(2011)は,無意図的想起は単に意図的想起と無意図的想起に共通の過程の産物であり,意図的想起では固有の生成的検索によってより高い特定性の記憶の想起がもたらされるとするモデルを提案している。本研究では,手がかり語法により,単語が表す出来事の経験頻度と想起意図の有無を操作し,雨宮らのモデルを検証した。その結果,無意図的想起は想起手がかりの抽象度に関わらず生じること,その抽象度に応じて想起される出来事の特定性が変化すること,意図的想起の方が無意図的想起よりも特定性が高いことが示され,雨宮らのモデルが支持された。またこのモデルは,先行研究との一見矛盾に見える相違を統合的に説明しうるものであった。
著者
堀毛 一也
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.116-128, 1994-11-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
34
被引用文献数
11 4 17

本研究では, これまで行われてきた異性関係スキル研究の問題点を整理するとともに, 1) 異性関係スキルの分類および基本的スキルとの関連性の検討, 2) 関係の発展・崩壊とこれらのスキルの関連性の検討という2点を目的とした調査研究を行った。そのためにまず, 現在進行中の恋愛体験について, 熱中度や, 類似性, 重要性などいくつかの項目で評定を求めた。また, 過去の失恋体験についても, ショックの大きさ, 関係から得た自信などについて評定を求めた。同時にオリジナルに開発した社会的スキル尺度 (ENDE2) と異性関係スキル尺度 (DATE2) により, 基本スキルと異性関係スキルの測定を行った。因子分析の結果, ENDE2では, 男子4因子, 女子3因子が得られた。このうち記号化スキルと解読スキルはどちらにも共通に含まれていた。DATE2の分析からは, 男子7因子, 女子6因子が抽出された。2つのスキル間の関連性を検討したところ, 女子では記号化・解読スキルと異性関係スキルの問に中程度の相関が見られた。一方男子では, 基本スキルのそれぞれが, 異性関係スキルの諸因子と別個の相関を示していた。この結果は, デート場面でイニシアチブを求められることにより, 男子は多様なスキルを早めに高め, 状況に応じて使い分けることが必要になるものと解釈された。また, 現在進行中の恋愛関係とスキルの関連を分析した結果, 異性・基本スキルとも関係の発展と共に高まる傾向が示されたが, その発展の過程には明確な性差がみられた。男性は, 発展の初期に相手への情熱を高め, スキルを洗練させてゆく傾向があった。これに対し, 女性は相手の特性を慎重に検討し, 関係が重要であるという認識を得た後に, 急速にスキルを発展させることが明らかになった。さらに, 過去の失恋体験もスキルの向上に影響しており, 男性では過去の失恋から得た自信やショックの大きさがスキルの向上と有意な関連をもっていたのに対し, 女性では自分から強い愛情を示しながら失恋した場合にはスキルが高まるが, それ以外に過去体験との関連はみられなかった。これらの知見はこれまでの恋愛や失恋に関する研究結果を支持するものと考えられる。
著者
清水 裕士
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.142-152, 2017 (Released:2017-04-27)
参考文献数
15

本論文の目的は,二者関係データをマルチレベル分析に適用した場合に生じるいくつかの問題点についてとりあげ,その問題がなぜ生じるのか,そしてどのようにそれを解決するかについて提案することである。1つは,ペアデータの平均値を階層線形モデル(HLM)のレベル2の説明変数として用いるときに生じるバイアスの問題をとりあげた。シミュレーションの結果,HLMでは深刻なバイアスが生じる一方,マルチレベルSEMではそのバイアスが生じないことを示した。次に,ペアデータに対してマルチレベルSEMを適用した場合に生じる不適解の問題を取り上げた。ペアデータはペアレベルの推定が不安定になりやすいため,分散が負に推定される不適解が頻繁に生じる。この問題について,いくつかのサンプルデータからベイズ推定を行うことで回避できることを示した。最後に,マルチレベルSEMの個人レベル効果の解釈の難しさについて議論した。
著者
樂木 章子
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.146-165, 2003-03-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

本研究では, 乳児院や児童養護施設で生活する乳幼児が, 血がつながらない育て親 (養親) に養子として引き取られるに至る過程において, その重要な前提である, 育て親となる夫婦が養子を迎える決断をなす過程に着目した。具体的には, ある養子斡旋団体が養子を迎えようとする夫婦を対象に実施している養親講座の現場でのフィールドワークに基づき, そこで用いられている言説戦略を分析した。この養親講座においては, 養子の子育ての困難さ, とりわけ, 施設で生活する子どもとの縁組によって直面する問題が生々しく語られ, 夫婦がこれまで築いてきた生活を根底から揺るがされるものであることが強調された上で, 夫婦に養子を迎える決断を迫る。このようなプロセスを通して, 夫婦がそれまで無自覚に依拠していた諸前提が明確化され, 無意識のうちに抱いていた親子関係のイメージが否定されていく。養親講座の言説戦略は, いわば, 養子を迎えるという決断が, その後の人生における「公理」として機能しうるような状況を構成していることが示唆された。言い換えれば, 養親講座の言説戦略は, 血縁という先験性を持たない養親子において, 血縁に代替しうるような先験性を構築する試みであることが考察された。
著者
山田 順子 鬼頭 美江 結城 雅樹
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.18-27, 2015 (Released:2015-12-22)
参考文献数
40
被引用文献数
1 6

本研究の目的は,友人関係および恋人関係における親密性の文化差の原因の検討である.近年の国際比較研究は,北米人の方が東アジア人よりも,対人関係のパートナーに対して感じる親密性が高いことを示してきた.本研究は,社会生態学的視点に基づき,この文化差をもたらす原因を,北米社会における対人関係選択の自由度,すなわち関係流動性の高さに求めた.この仮説を検討するため,日本人とカナダ人参加者を対象に,親友・恋人および最も親しい家族に対する親密性,また参加者を取り巻く身近な社会環境における関係流動性の認知を尋ねた.その結果,まず先行研究と一貫して,日本人よりもカナダ人の方が,親友や恋人に対してより強い親密性を感じていた.さらに,理論仮説と一貫して,親友に対する親密性の日加差は,対人関係選択の自由度によって有意に媒介され,自由度が高いほど親密性が高いことが示された.
著者
脇本 竜太郎
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.58-71, 2009 (Released:2009-08-25)
参考文献数
28
被引用文献数
2 1

本研究では,存在論的恐怖と愛着不安・回避傾向が成功・失敗についての自己の帰属と親友からの帰属の推測に及ぼす影響について検討した。近年,対人関係が存在論的恐怖を緩衝する効果を持つことが明らかにされている。そして,Wakimoto(2006)は存在論的恐怖が顕現化すると日本人は関係維持のため謙遜的態度を強めることを報告している。これに,日本人が他者による謙遜の打消しや肯定的言及など支援的反応を期待するという知見を併せて考えると,存在論的恐怖は自己卑下と共に他者からの支援的反応の期待を高めると考えられる。また,このような影響は愛着不安・回避傾向により調節されると考えられる。これら予測を現実の成功・失敗についての原因帰属を用いて検討した。大学生52名が実験操作の後に過去の実際の成功・失敗について自分自身の帰属と親友がどのように帰属してくれるかの推測について回答した。その結果,MS操作により自己卑下的帰属が強まる条件では,親友からの支援的な帰属の期待も強まることが示された。一方,親友からの支援的な帰属の期待が必ずしも自己卑下的帰属の高まりを伴わないことも示された。これら結果を近しい他者を通した関係による存在論的恐怖管理の様態及び互恵的関係の形成における存在論的恐怖の影響という点から論じた。
著者
村山 綾 三浦 麻子
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.81-92, 2014 (Released:2014-03-18)
参考文献数
28
被引用文献数
1

本研究では,集団討議で生じる葛藤と対処行動,およびメンバーの主観的パフォーマンスの関連について検討した。4名からなる合計17集団(68名)にランダムに配置された大学生が,18分間の集団課題を遂行した。その際,討議開始前,中間,終了時に,メンバーの意見のずれから算出される実質的葛藤を測定した。また討議終了時には,中間から終了にかけて認知された2種類の葛藤の程度,および葛藤対処行動について回答を求めた。分析の結果,集団内の実質的葛藤は相互作用を通して変遷すること,また,中間時点の実質的葛藤は主観的パフォーマンスと関連が見られないものの,終了時点の葛藤の高さは主観的パフォーマンスを低下させることが示された。関係葛藤の高さと回避的対処行動は主観的パフォーマンスの低さと関連し,統合的対処行動は主観的パフォーマンスの高さと関連していた。関係葛藤と課題葛藤の交互作用効果も示され,課題葛藤の程度が低い場合は,関係葛藤が低い方が高い方よりも主観的パフォーマンスが高くなる一方で,課題葛藤の程度が高い場合にはそのような差はみられなかった。葛藤の測定時点の重要性,および多層的な検討の必要性について議論した。
著者
三浦 麻子 飛田 操
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.124-136, 2002-04-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
24
被引用文献数
4 2

本研究では, 集団創造性に影響を与える要因として成員アイディアの多様性を取り上げ, その効果を実証的に検討した。多様性の高い集団による相互作用過程においては, 集団が創造性パフォーマンスを発揮する可能性が高まり, 集団の創発性が生まれることが期待される。しかしその一方で, コミュニケーションにおいては葛藤を生じやすくさせる方向で機能することが考えられる。実験1では, 集団成員の個人レベルのアイディア創出結果にもとづいてアイディアの多様性を分類し, 集団の創発性と成員の心理的変数に対する効果を検討した。しかし, 予測したような多様性の効果は見られず, 成員アイディアの多様性が十分な効果を持つためには, より円滑なコミュニケーションを促進するような, 類似性や共通性を有することが必要となることが示唆された。そこで, 実験2では, 成員のアイディアの多様性に加えて類似性についても検討し, この2つの基準にもとづいて集団を分類した検討をおこなった。その結果, 多様性と類似性の相乗効果によって, 集団の創発性が高められる可能性が示された。以上の研究結果から, 集団が創造的となるためには, 成員相互の多様性と類似性がともに必要となることが示唆された。
著者
Keiko Ishii
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.1909, (Released:2019-10-02)
参考文献数
13

Previous research has demonstrated that when people have to choose a product for which they do not have a preference and can observe their partners’ choices in advance, they are more likely to imitate their partners’ choices when choosing privately, whereas they are likely to choose differently when they are with their partners. The present study extends this evidence by testing Japanese participants and examining individual differences in the need for uniqueness. Despite the Japanese cultural norm of interdependence, which is positively associated with conformity, less than half of the participants imitated their partners’ choices, whether they chose privately or publicly. Moreover, people with a high need for uniqueness tended to choose a different option when choosing in front of their partners. Implications for the consequences of social influence are discussed.
著者
宮島 健 山口 裕幸
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.62-72, 2018 (Released:2018-07-31)
参考文献数
39
被引用文献数
1

集団や社会において,集団成員の多くが受け入れていない不支持規範が維持・再生産される心理的メカニズムとして,多元的無知のプロセスによるはたらきが示唆されている。その集団内過程において,偽りの実効化は不支持規範の安定的再生産へと導く社会的機能を有することが示唆されている。しかしながら,偽りの実効化を引き起こす心理的メカニズムは明らかにされていない。本研究では,日本における男性の育児休業を題材として,他者に対する印象管理動機が偽りの実効化を誘発するという仮説について検証した。本研究の結果,多元的無知状態の人々では印象管理動機が喚起され,その結果として,逸脱者に対する規範の強要(i.e., 実効化)が誘発されることが明らかとなった。これは,多元的無知状況下において,他者信念を誤って推測した人々による逸脱者への規範の強要は,不支持規範を維持・再生産させようと意図しているのではなく,自己呈示的な動機に基づいて行動しているに過ぎないという印象管理戦略仮説の妥当性を示している。
著者
須山 巨基 山田 順子 瀧本 彩加
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.si4-3, (Released:2018-11-07)
参考文献数
66

集団力学研究とは,実験・調査・モデリングを通じて,個体が集合的に作り出す複雑な社会現象を定量的に検証する研究群の総称である。社会心理学における集団力学研究は,1940年代から隆盛するも徐々に研究の主流から外れていった。一方,生物学では,近年の新しいデータ収集法や分析方法の発達により集団力学研究が盛んに行われるようになり,再び集団力学研究が脚光を浴び始めている。本稿ではまず,社会心理学と生物学のそれぞれにおける集団力学研究の歴史を概観する。続いて,社会心理学において高い関心が寄せられてきた同調と文化拡散に注目し,これらのトピックに関して生物学が新たな集団力学的な手法を用いてどのような知見を見出したのか紹介する。最後に,生物学における集団力学研究の社会心理学への援用可能性とその便益性を示し,社会心理学と生物学の融合による集団力学研究の展望を論じる。
著者
和田 実
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.38-49, 2000-07-15 (Released:2010-06-04)
参考文献数
15
被引用文献数
3 2

本研究は, 大学生が恋愛関係崩壊に際してどのような対処行動をとり, 崩壊時にどのような感情を抱くのか, さらに崩壊後にどのような行動的反応をとるのかを性差と崩壊時の恋愛関係進展度の観点から調べた。被験者は大学生239 (男性116, 女性123) 名であった。いずれも, 異性としばらく付き合った後に, その関係が崩壊した経験のある者のみである。恋愛関係崩壊への対処行動として“説得・話し合い”, “消極的受容”, および“回避・逃避”, 崩壊時の感情として“苦悩”, 崩壊後の行動的反応として“後悔・悲痛”と“未練”が見いだされた。恋愛関係が進展していた者ほど, 崩壊時に説得・話し合い行動がより多くとられ, 崩壊時の苦悩が強く, 崩壊後の後悔・悲痛行動と未練行動が多かった。女性は, 関係が進展していた者ほど回避・逃避行動をとらなかった。関係進展度に関わらず, 男性は女性よりも消極的受容行動を多くとった。さらに, もっとも進展した関係が崩壊した場合のみで, 男性よりも女性の方が多くの説得・話し合い行動をとる一方, 回避・逃避行動をあまりとらなかった。
著者
樋口 収 下田 俊介 小林 麻衣 原島 雅之
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.14-22, 2016 (Released:2016-10-06)
参考文献数
28
被引用文献数
5

東京電力福島第一原子力発電所の事故から5年以上たった今なお福島県の産物の風評被害は続いている。なぜ消費者は福島県の産物を危険視するのだろうか?2つの実験で行動免疫システムが活性化すると,汚染地域を過大に推定するかどうかを検討した。実験1では,プライミングの条件(病気の脅威条件vs.統制条件)に関係なく,慢性的に感染嫌悪傾向が高い人の方が低い人よりも,汚染地域を過大に推定していた。実験2では,感染嫌悪傾向が高い人では病気の脅威条件の方が統制条件よりも汚染地域を過大に推定していた。また感染嫌悪傾向が低い人では条件で差異はみられなかった。風評被害と行動免疫システムの関係について考察した。