著者
増田 智美 金築 優 関口 由香 根建 金男
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.31-44, 2005-03-31 (Released:2019-04-06)

本研究では、怒り喚起を伴う対人場面における自己陳述を測定できる怒りの自己陳述尺度を作成し、標準化することを目的とした。青年期の学生596名のデータを対象として因子分析を行った結果、第1因子「他者からの不当な扱い」、第2因子「敵意に満ちた考え」、第3因子「報復の正当化」、第4因子「自己への叱責」、第5因子「他者への非難」が抽出された。尺度全体および各下位尺度ともに安定的な内的整合性が示されたことから、尺度の信頼性が認められた。また、他尺度との関連性により併存的妥当性が確認された。加えて、イメージによる怒り喚起状態に伴って、尺度得点が増加したことから、怒り喚起状態における自己陳述を測定する尺度としての構成概念妥当性が裏づけられた。今後、怒りの認知的側面を標的とした認知行動療法を施す際のアセスメント・ツールとして、本研究で標準化された怒りの自己陳述尺度を活用することが望まれる。
著者
岡島 義 金井 嘉宏 笹川 智子 金澤 潤一郎 秋田 久美 陳 峻要 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.297-309, 2008-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、社会不安を測定するSocialPhobiaandAnxietyInventory(SPAI)の翻訳版を開発することであった。大学生431名を対象に自己記入式の調査を行い、探索的因子分析を行った。その結果、SPAI日本語版は原版と同様の2因子45項目で構成され、各因子を「社会恐怖」「広場恐怖」と命名した。各因子の内的整合性(α=.88〜.96)、および再検査法による信頼性(r=.67〜.72)は高かった。既存の社会不安測定尺度と相関は中程度であったため、高い併存的妥当性が認められた。また、「社会恐怖」下位尺度において、確認的因子分析を行ったところ、原版と同様の5因子構造であることが確認された。以上の結果から、SPAI日本語版は高い信頼性と妥当性を有することが明らかにされた。
著者
石川 信一 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.145-157, 2003-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

本研究の目的は、認知の誤りと不安の関連を検討することであった。本研究では、児童の認知の誤りを測定するChildren's Cognitive Error Scale(CCES)を作成し、 CCESと特性不安との関連を検討した。まず、217名の児童を対象に、自由記述にて児童が不安や心配を感じる不安場面を収集した。その結果、12の不安場面が抽出された。次いで、5人の臨床心理学を専攻する大学院生が不安場面における認知の誤りの項目について検討を行った。その結果、認知の誤りの項目として23項目が抽出された。さらに、それらの項目について、819名(男子408名、女子411名)を対象にした主成分分析の結果、20項目が抽出された。CCESは再テスト法と、Cronbachのα係数によって、十分な信頼性があることが示された。CCESの妥当性については、小学校教諭2名を対象としたインタビューを用いた内容的妥当性の観点から確認された。また、CCESの合計点について性差、学年差について検討するために2要因の分散分析を行ったところ、女子のほうが男子よりも認知の誤り得点が高いことが示され、学年差はないことが示された。最後に、認知の誤りと特性不安の関連を検討するため、CCESの合計点を高群、中群、低群の3群に分類した。群を要因とした分散分析の結果、認知の誤り得点高群は、中群、低群より特性不安が高いことが明らかになった。以上のことから、認知の誤りを示す児童は不安が高いことが明らかになり、本研究の結果から、児童の不安障害に対して適切な治療をするためには、認知の誤りに対する介入の必要性が示唆された。
著者
金 外淑 村上 正人 松野 俊夫
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.143-156, 2006-09-30 (Released:2019-04-06)

外来通院中の全般性不安障害患者に対して、認知行動的諸技法を用い、治療効果が得られた症例を取り上げ、認知行動的介入による心理技法の導入とその臨床経過について報告する。面接による治療は52セッションであった。介入の初期段階は患者特有の心配・不安に対する仕方に注目し、論理情動行動療法による認知再構成法を用い、心配や不安時に生じる認知の仕方について理解させた。中期段階は、イメージを用いた「心配へのエクスポージャー」と「言葉による反応妨害法」を組み合わせた介入を行った。後期段階では、おもに問題解決訓練を導入し、出来事に対する問題解決の能力を向上させ、自信を高める介入を行った。その結果、過剰な心配・不安症状を訴える頻度も減り、次第に日常生活上のストレスも以前より柔軟に対処できるようになった。
著者
伊藤 義徳 根建 金男
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.33-46, 2001-03-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究では、ネガティブ感情の喚起がセルフモニタリング能力に及ぼす影響について検討を行った。38名の情緒安定性の高い、あるいは低い大学生を対象として、手話の指文字を観察し、再生する課題を行わせた。情緒安定性の高い者と低い者を、それぞれネガティブ感情喚起群と中性的刺激群の4群に振り分けた。プリテストとポストテストの間に感情を操作する刺激をVTRにより呈示した。再生の程度に対する客観的評定の得点から主観的評定の得点を減じた値をセルフモニタリング得点とした。その結果、ネガティブ感情を喚起させる群では、セルフモニタリングの得点が刺激を呈示する前から後にかけて上昇し、再生に要する時間が長くなることが示された。このことは、ネガティブ感情の喚起が、セルフモニタリング能力を低下させることを示唆している。本研究の結果をもとに、認知心理学の知見をセルフコントロール研究に応用することの意義について考察した。
著者
尾形 明子 宮谷 真人 中尾 敬 島津 明人 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.33-42, 2008-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究は、不安と自己関連処理との関連について検討することを目的とした。60人の実験参加者は不安条件、ノイズ条件、負荷なし条件に割り当てられ、呈示された中性語に対して、自己関連づけ課題、他者関連づけ課題、意味課題の3つの方向づけ課題を行い、その後自由再生課題を行った。実験中、不安条件では不安を喚起させ、ノイズ条件では80dBのホワイトノイズを呈示した。その結果、不安条件では他の条件に比べて自己関連づけ課題の再生率が低くなっており、不安は自己関連づけ課題の再生成績にのみ影響を及ぼしている可能性が示された。
著者
伊藤 理紗 兼子 唯 巣山 晴菜 佐藤 秀樹 横山 仁史 国里 愛彦 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.237-246, 2016-05-31 (Released:2019-04-27)
参考文献数
15
被引用文献数
1

本研究では、エクスポージャー中の恐怖のピーク前後の安全確保行動(以下、SB)が治療効果に及ぼす影響性の差異について検討した。ゴキブリ恐怖の大学生(N=30)を対象に、対象者を三つの介入条件のいずれか一つに割り当てた:(a)SBなし群、(b)恐怖ピーク前SB群、(c)恐怖ピーク後SB群。群と時期(エクスポージャー前・エクスポージャー直後・フォローアップ時)を独立変数、ゴキブリ恐怖に関する変数を従属変数とした分散分析の結果、すべてのゴキブリ恐怖の変数において時期の主効果が有意であった。単純主効果の検定の結果、すべての群においてエクスポージャー直後とフォローアップ時のゴキブリ恐怖は、エクスポージャー前と比較して、有意に低かった。最後に、各群のエクスポージャー中の恐怖の推移もふまえて、エクスポージャー中の恐怖のピーク前後の安全確保行動が治療効果に及ぼす影響について、考察した。
著者
岡島 純子 佐藤 容子 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.1-11, 2011-01-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、幼児を持つ母親の自動思考を測定する育児自動思考尺度(ATQ-CR)を開発し、ストレス反応との関連について検討することであった。予備調査1にて、育児ストレス場面を抽出し、予備調査2にて、四つの育児ストレス場面、78の自動思考項目を抽出した。本調査では、探索的因子分析、高次因子分析を行い、ネガティブ思考29項目、ポジティブ思考14項目が抽出された。ATQ-CRの内的整合性は高く(ネガティブ思考因子α=.90、ポジティブ思考因子α=.76)、妥当性は、内容妥当性と基準関連妥当性の観点から確認された。SOMモデルに基づき、自動思考のバランスとストレス反応の関連性について検討した結果、ネガティブ寄り群、中立群のほうがポジティブ寄り群よりもストレス反応が有意に高かった。本研究の結果から、育児中の母親に対して自動思考に焦点を当てたストレスマネジメント介入の必要性が示唆された。
著者
小林 奈穂美 五十嵐 透子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.111-120, 2013-05-31 (Released:2019-04-06)
参考文献数
18

本事例では、治療に抵抗を示す思春期強迫性障害の17歳の女子高校生に対して、マーチ&ミュール(2008)の児童・思春期のCLに対する治療法を参考に、行動療法の曝露反応妨害法を用い、CL、母親、およびセラピストによる自宅訪問を含んだ"チーム"による治療を行い、4カ月半で症状が改善した。"チーム"治療の際の、治療導入時の働きかけ、治療過程における"チーム"の役割と家族を"チーム"に含めることの重要性およびCLの主要な生活の場である自宅での治療について考察し、思春期強迫性障害CLに対する"チーム"による治療の必要性を検討した。
著者
藤坂 龍司 井上 雅彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.57-70, 2012-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

自閉症早期療育に取り組む親の会に所属する11組の親子を二組に分け、不連続試行法(DTT)を中心とする行動療育の知識と技法に関する親講習会を、時期をずらして約1カ月間実施した。その結果、親の教育技法、子どもの獲得スキルともに、トレーニング後におおむね向上し、半年後、1年後のフォローアップでもそれが維持された。親の精神健康度は講習会後改善したが、1年後は一部の親で再び悪化した。家庭療育を1年未満で中断する親も少なくなかった。これらのことから、約1カ月の親講習会はDTTを中心とする行動療育の技法を親に習得させるためには効果的だが、その後1年間にわたって安定的に家庭療育を維持させるためには不十分であることが示唆された
著者
五十嵐 友里 嶋田 洋徳
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.149-161, 2008-05-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、社会不安におけるpost-eventprocessing(PEP)と解釈の関連を検討することであった。社会不安傾向高・低群にスクリーニングされた計12名の大学生は、スピーチが課される実験に参加した。実験参加者はスピーチの後と実験3日後に、聞き手の意図的に操作された行動に対する解釈について回答した。加えて、実験3日後にPost-EventProcessingQuestionnaire(PEPQ)へ回答した。群、測定時期を独立変数、ネガティブな解釈の生起率を従属変数とし、抑うつ傾向得点を統制した共分散分析を行った結果、高群におけるネガティブな解釈の生起率は時間とともに増加していた。PEPQについて群を独立変数としたt検定を行ったところ、高群において得点が有意に高かった。したがって、PEPが3日後の解釈に影響を与えていたことが示された。
著者
藤田 英美 加藤 大慈
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.325-337, 2008-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

近年、統合失調症患者の体重増加の問題が指摘されている。それに対してさまざまな栄養・運動管理プログラムが行われているが、その効果を長期的に検討した報告は少ない。そこで、精神科デイケアを利用中の統合失調症患者を対象に、10セッションで構成される栄養・運動管理プログラムを実施し、その(1)実施前、(2)実施後、(3)2か月後、(4)6か月後、(5)12か月後に、身体指標として体重とbodymassindex(BMI)、認知指標としてHealthyEatingSE尺度、行動指標として食事記録、日常的な食生活および運動生活の評価を用いて、効果の検討を行った。その結果、12か月後まで追跡調査を行うことができた5例全員において、プログラム終了の12か月後には体重、BMI、食生活の自己管理に対するセルフエフィカシー、食生活の改善を認めた。その一方で、運動生活の改善は持続せず、プログラムを定期的に実施して関心を促すなどの工夫が必要と考えられた。
著者
髙橋 稔
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.183-192, 2016-05-31 (Released:2019-04-27)
参考文献数
14
被引用文献数
2

本論文では、慢性腎疾患を患っていたクライエントに対して、うつ症状の再発予防を目的とし、アクセプタンス&コミットメント・セラピー (ACT)に基づき介入を行った症例を報告した。ケースフォーミュレーションの結果、クライエントには価値の明確化が不十分であり、体験の回避や認知的フュージョンが見られた。またクライエントは、ACTへの動機づけが高く、治療者との関係のなかでプライアンスを強めてしまうことも予測された。面接はセルフヘルプのマニュアルに従い、クライエントの日常生活での出来事を取り上げながら進めた。面接の途中、大きな体調の変化に見舞われたが、気分や感情の変化も大きくなく、それまでとは異なるような人間関係も報告された。また、面接経過を経て、AAQ-IIも徐々に高くなり、BDI-IIは低く安定し、STAIも低くなった。以上の結果を踏まえ、クライエントの理解と介入の特徴をACTの視点から検討した。
著者
松見 淳子
出版者
Japanese Association for Behavioral and Cognitive Therapies( JABCT )
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-4, 2016-01-31 (Released:2019-04-27)

The principles of cognitive behavior therapy (CBT) are considered to be cross-culturally applicable because the assessment and intervention programs are interrelated and, by definition, contextually designed and empirically evaluated. In the prevailing age of the evidence-based practice of psychotherapy, this special section aims to specify cultural adaptation elements of CBT in an Asian socio-cultural context. Progress made in the practice of CBT in Asia through the establishment of the Asian CBT Association (ACBTA) is reviewed, and various functional roles of culture in the application of CBT in Asia are considered. The 3 invited articles and a commentary are by Drs. Akihito Masuda, Young Hee Choi, Tori Andrews and Tian Po Oei, and Gordon C. Nagayama Hall; their papers were originally presented at the 4^<th> Asian Cognitive Behavior Therapy (CBT) Conference 2013 Tokyo, and were subsequently updated for the present Special Section of the Japanese Journal of Behavior Therapy, the flagship journal of the Japanese Association of Behavioral and Cognitive Therapies.
著者
有村 達之 久保 千春
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.25-33, 2002-03-31 (Released:2019-04-06)

気分変調症を合併した片頭痛に認知読書療法を適用した症例を経験したので報告する。症例は24歳男子大学院生。治療前には片頭痛、気分変調症の症状が2年間続いていたが、6回の認知読書療法で抑うつ症状と頭痛回数は軽快した。片頭痛と気分変調症の症状はなくなり、治療終了5か月後、3年後にも改善は維持されていた。プライマリーケアにおける認知読書療法の適応について検討を行った。
著者
兼子 唯 中澤 佳奈子 大月 友 伊藤 大輔 巣山 晴菜 伊藤 理紗 山田 和夫 吉田 栄司 貝谷 久宣 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.43-54, 2015-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、社交不安障害(SAD)を、全般型(GSAD)と非全般型(NGSAD)のみでなく、自覚された生理的覚醒の高低で分類し、社交不安症状、注意バイアスの違いを検討することであった。SAD者16名と健常者6名を対象に質問紙調査と修正ドット・プローブ課題を実施した。課題では、自動的/統制的処理段階における否定的評価、肯定的評価、生理的覚醒に対する注意バイアスを測定した。分散分析の結果、GSAD・NGSAD・健常者の比較、自覚している生理的覚醒の高・低・健常者の比較では有意な差は示されなかった。しかし注意バイアス得点を0と比較した結果、NGSAD群は自動的処理段階で肯定的評価に対して、自覚された生理的覚醒の高いSAD群は統制的処理段階で生理的覚醒に対して、注意バイアスが大きいことが示された。この結果から、SADの状態像を検討する必要性とそれぞれに有効な介入方法について考察された。
著者
立元 真 古川 望子 鮫島 浩 布井 博幸 池ノ上 克
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.127-135, 2015-05-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、周産母子センターおよび小児科から紹介された母子対への、予防的な個別ペアレント・トレーニングのプログラムの効果を、無作為化比較試験で検証することであった。プログラムは、インテークセッションに続いて、行動分類、行動の強化、不適切行動への計画的無視、制限やタイムアウト、復習と応用の5セッション、さらに問題解決の4セッションで構成された。効果査定には、養育スキル尺度Ver.2、子どもの行動傾向測定尺度が用いられた。12組の母子が紹介され、6組を介入群に、また、残りの6組をWL群に無作為に割り付けた。治療効果判定の基準に照らして検討を行い、関心・情報、話し合いの養育スキルの下位項目、協調の子どもの行動傾向の下位項目において、改善効果や改善傾向が認められた。
著者
境泉 洋 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.223-232, 2010-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、ひきこもり状態にある人(以下、ひきこもり本人)の親を対象とした行動論的集団心理教育の効果を検討することであった。本研究においては、介入群14名、コントロール群11名が設定された。介入群を対象に隔週2時間の行動論的集団心理教育を3セッション行い、その効果測定として介入前後にひきこもり行動チェックリスト(以下、HBCL)、ひきこもり状態に対する否定的評価尺度(以下、否定的評価)、ひきこもり本人が示す問題行動への対処に関するセルフ・エフィカシー尺度(以下、エフィカシー)、心理的ストレス反応尺度(以下、SRS-18)、日本語版GHQ-28(以下、GHQ-28)に回答を求めた,その結果、行動論的集団心理教育によって親の「エフィカシー」が向上し、かつ「不機嫌・怒り(SRS-18)」「不安と不眠(GHQ-28)」が改善された。これらの結果を踏まえ、ひきこもり本人の親に対する行動論的介入の効用と今後の課題について考察が加えられた。