著者
李 〓遠 川原 晋
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1166-1172, 2015-10-25 (Released:2015-11-05)
参考文献数
24

本研究は「共有」という概念を通じて都市の共同体の回復と雇用創出等の解決に取り組むソウル市の「共有政策」を対象とし、その政策の全体像を把握した上で、 「ソウル共有企業」へのアンケート調査から政策の有効性を評価することと、共有空間における行政からの支援の成果を明らかにすることを目的とする。結果として、まず、行政がソウル共有企業の認定および支援金の付与、そしてソウル共有企業の情報を市民に広報することで、ソウル共有企業やその活動に対しての市民からの信頼を生み出していることが分かった。また、柔軟な法制度の改正も共有活動を円滑にすすめる上で重要であることが明らかとなった。次に、共有空間に着目すると、共有空間認定型、共有企業認定型、共有空間整備型、自治区支援型の4通りの支援方法を通して、 共有概念を理解した市民によって積極的に利用されている。協力体制がよく構築されている共有空間委託型に関わる企業へのインタビューからは、今後この支援を受けた共有空間が若者たちの雇用創出や共同体意識の醸成に寄与するようなコミュニティ活動の拠点となることへの期待が高まっていることが確認された。
著者
山本 和生 橋本 成仁
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.763-768, 2012
被引用文献数
2

高齢ドライバーの引き起こす交通事故の増加が社会問題となっている。こうした事故を防止する目的で、運転免許返納制度が実施されている。多くの人がいつかは運転を諦めなければならないことを考えると、高齢ドライバーの増加が確実な我が国では、返納を行える環境を整えていくことが非常に重要な課題である。そこで本研究では、免許保有者と返納者で「車に頼らなくても生活できる」と感じる要因の違いについて把握し、保有者と返納者をわける意識構造、返納者の返納満足度に関する意識構造について分析を行った。その結果、保有者と返納者で要因や意識構造に違いがあること、また保有者の返納制度活用意向や返納者の返納して良かったと感じる意識を高めていくためには、公共交通の充実度を高めていく必要があることを明らかにした。
著者
松原 康介
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.213-218, 2013

2011年3月に勃発したシリア内戦は今日まで終わりの気配がみられない。これまでの都市計画分野における協力の実績を考えると、内戦終了の折には戦災復興都市計画において日本が協力していくことが考えられる。この観点から、本稿はベイルートの都市計画通史の分析を行う。オスマン帝国時代の計画、フランス委任統治領時代の計画、あるいはエコシャールや番匠谷といった都市計画家の存在など、シリア主要都市との共通項が多いためである。エコシャールによる1943年の計画は、今日に至るまで後継計画に影響を与えており、ガルゴールとサイフィ二地区の再開発は、ハリーリー及びその後継者達による強いリーダーシップの下で現在進行中である。
著者
村木 美貴
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.602-607, 2015

オリンピックは地域の都市再生を推進する契機となりえる。本研究は英国の面的市街地再開発、特に、ロンドン・オリンピック・パーク(以下、オリンピック・パーク)に着目し、大規模な面的市街地開発の中でどのような計画間と主体間の連携が存在し、それがオリンピック後の都市づくりに活かされているのか明らかにすることを目的とする。研究の構成は以下の通りである。まず、オリンピックに関連する主体と計画の関係を明らかにした上で、オリンピック・パーク整備の方針をロンドン市と基礎自治体について見る。最後に大会のテーマである低炭素を基軸に、その政策と分散型エネルギーネットワークの導入における主体間連携について議論する。研究を通して、(1)横と縦の計画間の連携は十分図られていたが、全体最適が地域の課題となるケースも見られるため、インフラ整備のための資金を広域で提供すること、ハコもの整備のための資金提供を超えて、住民サービスなども含めたソフト事業に対しても、細かく対応すること、(2)投資回収に時間のかかる地域冷暖房事業では、契約のための透明なプロセスと、市民、民間、公共にとってメリットが享受できる状況を考えることを指摘した。
著者
前田 陽子 瀬田 史彦
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.559-564, 2012

都心に近接した長屋混合型密集市街地のなかには、近年、その独特の雰囲気と若者による店舗進出を背景に新しく魅力的なまちとして大いに注目を集めている地区がある。この研究の目的は、大阪中心部に位置する中崎地区を対象として、長屋再生型店舗の集積形成過程を分析し、中崎地区が地域ブランド化していく変遷をたどり、さらに新しい店舗経営者と従前から存在する地域コミュニティとの関係性について明らかにすることである。新しい店舗経営者の多くは外部からの若者で、地元住民との近所づきあいにもさほど積極的とはいえない。しかし最近では、自発的に地元の地域振興会に加わり、地域活動に貢献する店舗経営者も現れ始め、中崎地区の店舗と既存コミュニティの関係性は新しい段階に入りつつあると考えられる。
著者
須永 大介 村木 美貴
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.769-774, 2012
被引用文献数
1

地球温暖化問題への対策は極めて重要なテーマである。CO2排出量は業務、家庭、産業、交通部門での発生量が高く、排出量の削減が重要な問題となっている。本稿では、CO2排出量の削減を目指したロンドンの交通政策、特にEVの普及促進について論じる。研究にあたり、まずロンドンの気候変動、計画、交通政策について整理を行い、次にEVに関する政策について詳細を整理した。分析の結果として、ロンドン市長の強力なリーダーシップの下、総合的な資金制度を活用してEVの充電施設が増加してきたことが明らかとなった。また、EV向け駐車施設に関する規制とCar Club会員の増加がCO2排出量削減に寄与していることを明らかにした。
著者
松村 暢彦
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.373-378, 2012

本研究では、地域活動を通して形成される地域住民間のネットワークの現状と、活動への参加が個人に与える影響を明らかにするため、戦後に開発されたオールドニュータウンである兵庫県川西市大和地区の住民を対象にアンケート調査を行った。その結果、地域活動への参加頻度とパーソナル・ネットワークの拡大には正の相関関係があり、地域でのネットワーク形成を促進していくためには、活動への積極性を高めていくことが必要であることがわかった。しかしそれと同時に、地域住民が地域と関わりを持つまでの間には、「人付き合いの敬遠」や「他者への無関心」といった困難な課題が存在することも明らかとなった。また、参加する地域活動の違いが個人の「地域に対する態度」と「生活満足度」にどのように影響を及ぼしているかを検証するため、共分散構造分析を用いてモデルを作成した結果、参加する活動領域やその組み合わせの差異によって、個人の生活満足に影響を与えるまでのプロセスに様々な差異が見られることがわかった。
著者
鈴木 春菜 榊原 弘之
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.53-58, 2014-04-25 (Released:2014-04-25)
参考文献数
9

本研究では、自動車を保有しないと不便であると考えられる地方都市における、移動格差がもたらす心理的諸影響について分析を行った。自動車を利用できる環境にあるが敢えて利用しない積極的自動車非利用者と、自動車を利用したいが利用できない状況にある消極的自動車非利用者がいると想定し、消極的な自動車非利用者は自動車利用者と比較して地域愛着・主観的幸福感・地域の地理認知の水準がいずれも低いという仮説を措定した。山口県宇部市において転入者と学生に対するアンケート調査を行い、仮説の検証を行った。その結果、地域愛着・主観的幸福感・地理認知のそれぞれについて仮説を支持する結果が得られた。また、地域愛着については一般居住者については自動車利用傾向が高いほど地域愛着が低下するという結果が得られ、自動車利用の積極性による影響の差異が示された。
著者
依藤 光代 松村 暢彦 澤田 廉路
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.487-492, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
10

地方都市の商店街ではにぎわいを喪失しており、商業の活性化が課題となっている。長期間にわたる商店街活性化に関する活動や組織の変化を追跡するだけではなく、まちづくりの担い手間の関係に着目することにより、まちづくり活動の担い手の継承の要因について考察した結果、次のように考えられた。(1)1993年以降、担い手となるセクターは、行政組織、地元市民組織、新規市民組織、広域市民組織の順に変遷してきた。(2)担い手が継承されるための要因は、地縁・志縁の担い手間のネットワークや、問題意識および課題解決の方向性が担い手間で共有されること、課題を解決するためのスキルを担い手が提供できること、活動の場としての組織の存続が担保されていること、の4つが考えられた。共通して重要であるのは、志縁の関係が行われるような、実践的な活動が積み重ねられることである。
著者
宮脇 勝
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.607-612, 2012-10-25 (Released:2012-10-25)
参考文献数
7
被引用文献数
1

本論では鎌倉市中心部を取り上げ、広がりのある景観の歴史性をエリアで特定し、景観保全に役立てる歴史的景観特性アセスメント手法として、「歴史的景観キャラクタライゼーション」と呼ばれる方法、つまり、土地利用の年代特定により、エリア単位で年代特定を地図上で行い、景観の「時間的奥行き(Time-depth)」から歴史的価値を評価する方法を採用する。さらに、本論の特徴は土地利用の歴史的評価に加え、道路、街区、水路も歴史的景観キャラクタライゼーションに取り込む点にある。本研究により鎌倉市中心部で抽出された1875年以前の歴史的な土地利用エリアに歴史的価値があり、宅地を含む歴史的景観キャラクタライゼーションにより、土地利用について、調査エリアの56%以上に及ぶエリアを地図上に特定し、歴史的価値(持続性の価値及び希少性の価値)を示した。また、歴史的な街区は全街区面積の約45%(約91ha)、歴史的な道路は全道路面積の63%(約70ha)、水路は1875年時と比較して62%(約4ha)が残されており、その位置も特定した。多くは寺社の分布とも重なることを明らかにし、より広範囲の歴史的景観保全を提言している。
著者
田村 光司 浅野 光行
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.39.3, pp.667-672, 2004-10-25 (Released:2017-08-02)
参考文献数
7

本研究では、複雑な街路構造が生み出す性質を迷路性と定義し、迷路性の有用性を考察し、迷路性のある商業地の魅力を求めることを目的とする。各商業地の街路構造を解析することで、街路構造の複雑さをあらわす指標を独自に求め、それをもとに、迷路性のある商業地の魅力を、景観要素、歩行者意識、事業者意識の3つの観点からアプローチしていく。
著者
渡辺 公次郎 近藤 光男
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.44.1, pp.50-55, 2009-04-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
14

我が国に残る歴史的市街地では、景観保全と防災性能向上の両立を図る必要がある。中でも住宅の耐震化は重要であるにも関わらず費用面の問題もあり遅々として進んでいない。そこで本研究では、歴史的景観保全に配慮した耐震化を促進させるための行政補助金の効果を分析する。研究対象地域は徳島県南部地域とする。まず、仮想市場法(CVM)を用いて、住宅耐震化と、歴史的景観保全に配慮した耐震化に関する支払意思額(WTP)を調べた。この値をもとに、ランダム効用モデルを用いて許諾率関数を推計し、それを用いてWTPを推計した。その結果、徳島県南部地域における歴史的景観の価値は24億7,544万円であった。次に、推計した許諾率関数を用いて「歴史的景観保全に配慮した住宅の耐震改修を行う際に補助金を支給する」政策を想定し、最適な補助金額を算定したところ、1戸当たり280万円であった。
著者
今村 真樹子 佐藤 宏亮
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.210-217, 2022-04-25 (Released:2022-04-25)
参考文献数
10

まちづくりにおいて地域固有の課題に対応するため、行政との協働を担う主体の形成が欠かせない。さいたま市では行政主導による住民自治組織「区民会議」が平成30年度まで設置されており、本研究は、区民会議を対象とし、16年間の活動における位置付けとその変遷、廃止に至った要因、廃止後の取り組みとの関連性に焦点を当て、都市部における住民自治組織の役割と意義について考察することを目的としている。文献調査とヒアリング調査をもとに得た主な考察は以下の通りである。1) 広域での効果的な区民会議の活動を実現することは、議会や予算、条例などとの兼ね合いもあり、容易ではない。2) 区民会議は要綱改正毎に方向性や立場が不明確になっていった。3) 活動や協議範囲の限定、位置付けを変更し、行政とうまく連携させる取り組みであれば、都市部でも住民自治を実現できる可能性があると推察される。
著者
長井 香南 伊藤 史子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.1148-1155, 2023-10-25 (Released:2023-10-25)
参考文献数
10

携帯情報端末は数十年の間に急速な進歩を遂げ、ここ数年ではスマートフォンの所持が一般的になってきた。それに伴い「歩きスマホ」という言葉が生まれ、歩行中のスマートフォンの利用は危険であるという議論もなされている。2010年代に登場したARゲームアプリは、ゲーム上の仮想都市を見ながら実際の都市を移動できる。本研究では、スマートフォンのアプリケーションの中でもARゲームに着目し、通常の歩行と比較して歩行者の歩行行動や空間認知にどのような特徴があるのかを明らかにすることを目的とする。歩行時の視線の動きや立ち止まり行動、直後の空間認知に関するデータを取得するため歩行実験を実施し、得られたデータをもとに歩行行動と空間認知それぞれの分析を行った。その結果、ARゲームの利用によって実空間を見る時間が低下し、空間認知を都市の場面記憶と捉えれば低下させる可能性があるが、都市空間構造の把握と考えれば、ARゲームの利用は影響がない可能性があることが示唆された。
著者
矢澤 知英 後藤 春彦
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.697-702, 2001-10-25 (Released:2017-12-01)
参考文献数
5

Recently many cases of shopping district revitalization have been carried out under the circumstance that declining shopping districts are increasing. This study aims to clarify the problems and issues of revitalization in consideration of the opinions of storekeepers and actual working organization officers that cause nonparticipation in the revitalization. In this study, through hearings, the opinions of these people are classified. As a result, four problems are clarified. These are the consciousness of the traditional human relations, disagreement with the results, shortage of invitation to participate for storekeepers in the revitalization, and the shortage of key information to storekeepers.
著者
石川 幹子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.133-138, 1996-10-25 (Released:2018-06-20)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

PREVENTION OF DISASTERS IS ONE OF THE IMPORTANT PROBLEMS IRE CITY PLANNIG. SINCE THE GREAT FIRE IN CHICAGO (1871), THE METHOD OF PARKS, PARKWAYS AND BOULEVARD SYSTEM (PARK SYSTEM) WAS ESTABLISHED. THE CONCEPT OF PARK SYSTEM IS TO COMBINE PARKS AND OPEN SPACES WITH BOULEVARD SYSTEM, AND CREATE SAFE CITY WHICH IS IMMUNE FROM FIRE DISASTERS. THIS METHOD WAS SPREAD OUT NOT ONLY OTHER CITIES IN UNITED STATES, BUT EUROPE AND JAPAN. IT IS IMPORTANT TO NOTICE THAT RECONSTRUC-TION PLANS IN JAPAN WERE IMPLEMENTED BASED ON THE CONCEPT OF PARK SYSTEM.
著者
薄井 宏行
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.570-577, 2023-10-25 (Released:2023-10-25)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本稿では,基本単位区,町丁目,250mメッシュ単位(基本単位区等)において,建物当たり平均人口,建物当たり平均世帯数,そして平均世帯人員(各建物利用強度)を算出し,その空間的な分布の特徴を基本単位区等の集計単位の違いに着目して解明した.主な知見はつぎの二点である.第一に,千葉県北東部や南部では,建物当たり平均人口と世帯数は1未満となる基本単位区が連坦する一方,北西部を中心に人口集中地区(DID)とその周辺では,建物当たり平均人口と世帯数は1以上となる基本単位区が連坦する.第二に,基本単位区における各建物利用強度を町丁目や250mメッシュ単位で推定する際の差分の空間的分布をみると,千葉県北東部や南部では,差分は0近傍となる基本単位区が連坦する一方,北西部を中心にDIDとその周辺では,差分の絶対値は1以上となる基本単位区が連坦する.とくに,同一の町丁目において戸建住宅と高層住宅が立地する場合,戸建住宅で主に構成される基本単位区では,町丁目単位や250mメッシュ単位ですると10以上の過大推定となるおそれがある.逆に,中高層住宅で構成される基本単位区では,10以上の過小推定となるおそれがあることに留意すべきである.
著者
中島 弘貴 馬塲 弘樹
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.719-726, 2023-10-25 (Released:2023-10-25)
参考文献数
31

本研究では、松戸駅周辺の「MAD City」プロジェクトの事例研究を通して、地域起業家および社会的企業の起業エコシステム通じた既成市街地の再生の実態把握を行った。ここでいうエコシステムとは、起業を生み出すための相互に関連した人々の集団や支援環境を指す。本研究では、地域起業家の中には、地域サービスの向上に貢献する事業を展開しながらも、地域内の社会環境に依存しない起業家が存在することを明らかにした。また、性別や子どもの有無によって、地域起業家が重視する環境、依存する環境に違いがあることも明らかになった。社会的企業は、自社で展開する事業の中で起業家と協働することで、地域に必ずしも依存しない起業家と地域の主体との関係構築に寄与し、更なる起業や付随する地域サービスの充実に貢献することで、市街地再生に資する事業展開を促進する起業エコシステムを醸成していた。