著者
齋藤 昭彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.85-90, 2005 (Released:2005-06-30)
参考文献数
1

老人保健施設や地域で活躍する理学療法士が増えるなかで,理学療法士には直接的に対処できない医学的問題を抱える患者に遭遇する機会が増加している。諸外国ではすでに理学療法士による独立診療が行われている。このような状況の中で,リスクを把握し,回避するために骨関節系疾患と同一症状を呈するほかの医学的疾患とを鑑別する能力が求められている。患者の病歴,主観的訴え,客観的所見が筋骨格系以外の問題の存在を示唆し,医学的フォローアップが必要であることを同定する能力を理学療法鑑別診断という。理学療法士は患者の訴えを包括的にとらえ,理学療法の禁忌となる症状や理学療法士の知識の範囲を超える病態を示唆する症状がみられる場合には医師に報告しなければならない。本稿では整形外科領域でのリスクを回避するための理学療法鑑別診断について記載する。
著者
岡元 翔吾 宇賀 大祐 中澤 理恵 坂本 雅昭
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.161-165, 2015

〔目的〕シャドーピッチング(以下,シャドー)の反復が肩関節回旋可動域と筋力に与える影響を明らかにすることとした.〔対象〕高校硬式野球部に所属する投手9名とした.〔方法〕連続した通常投球およびシャドーの前後で,投球側肩関節内外旋可動域,肩関節内外旋筋力および主観的疲労度を比較した.〔結果〕通常投球,シャドーともに肩関節内外旋筋力の低下が認められた.しかし,肩関節内旋可動域の減少は通常投球のみに認められ,シャドーでは肩関節外旋可動域の拡大が認められた.〔結語〕シャドーは,投球動作中の肩関節回旋運動における肩甲胸郭関節の関与が大きいことから,投球障害発生リスクを軽減させる可能性が示唆された. <br>
著者
林田 一輝 大住 倫弘 今井 亮太 森岡 周
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.805-810, 2016 (Released:2016-12-22)
参考文献数
25

〔目的〕今回Rubber Hand Illusionを用いてSelf-Touchによる身体所有感の脳内メカニズムを検証した.〔対象と方法〕健常者20名を対象に ①Self-Touch,②Self Rubber Hand Illusion(ラバーハンドを触れることによる錯覚),③Other-Touch(他者から触れられる),④Other Rubber Hand Illusion(ラバーハンドを触れられることによる錯覚)の4条件で機能的生体近赤外線分光装置を用いて脳活動を計測した.〔結果〕全条件で両側運動前野が,条件②のみ補足運動野が活動していた.〔結語〕Self-Touchによる身体所有感の錯覚の惹起には補足運動野の活動が関与している.
著者
片山 訓博 大倉 三洋 山﨑 裕司 重島 晃史 酒井 寿美 栗山 裕司 稲岡 忠勝 宮﨑 登美子 柏 智之 藤本 哲也 藤原 孝之
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.357-361, 2012 (Released:2012-09-07)
参考文献数
10
被引用文献数
1

〔目的〕常圧低酸素環境における低強度運動時の呼吸循環代謝応答を測定し,エネルギー代謝に与える影響について検討した.〔対象〕健常成人男性13名.〔方法〕通常酸素濃度条件(1.0 atm,酸素濃度20.9%)と常圧低酸素条件(1.0 atm,酸素濃度14.5%)を設定した.両条件下でATポイントの70%負荷による自転車エルゴメータ運動を行った.実験中,酸素飽和度,心拍数,呼気ガスデータを測定した.〔結果〕低酸素条件では,通常酸素条件に比べ,運動時心拍数,分時換気量が有意に高値を示した.低酸素条件は,通常酸素条件に比べ,脂肪酸化率は有意に低かった.逆に,ブドウ糖酸化率は有意に高く,エネルギー代謝は亢進していた.〔結語〕常圧低酸素環境下の運動によって,糖質利用が促進される可能性が示唆された.
著者
北村 菜月 佐藤 拓 川越 厚良 佐竹 將宏 塩谷 隆信
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.767-771, 2010 (Released:2010-11-25)
参考文献数
13
被引用文献数
7 7

〔目的〕身体活動量の評価票であるIPAQ日本語版の信頼性・妥当性について,最近開発された生活活動量計(A-MES;3軸加速度計)を用いて検討することを目的とした。〔対象および方法〕信頼性の検討では健常学生56名を対象とした。IPAQ日本語版に1週間の期間を空けて2回回答し,各質問項目において級内相関係数を算出した。妥当性の検討では健常学生16名を対象とし,A-MESにより身体活動量を1週間測定し,最終日にIPAQ日本語版に回答した。A-MESの評価結果とIPAQ日本語版の質問項目とに共通する項目に関して,Pearsonの積率相関係数を算出した。〔結果〕信頼性について,IPAQ日本語版の全ての質問項目で級内相関係数は0.75を上回った。妥当性について,「休日における総坐位・臥位時間」において有意な相関係数が得られた。〔結語〕IPAQ日本語版は信頼性の高い質問票であること,休日の坐位,臥位といった身体活動の評価においてIPAQ日本語版は妥当性が認められることが示された。しかし,対象によっては記憶の影響を受けやすく,IPAQ日本語版の正確な身体活動量の評価に対する限界が示唆された。
著者
花里 陽子 秋山 純和 霍 明 胡 春英 霍 紅 常 冬梅 劉 建華
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.423-427, 2016 (Released:2016-07-06)
参考文献数
17

〔目的〕中国における脳血管疾患患者家族の介護不安の内容を把握し,ADLと介護不安の関連を明らかにした.〔対象〕中国におけるリハビリテーションセンターに入院中の脳血管疾患患者の家族45名とした.〔方法〕質問紙によるアンケート調査を行った.調査項目は家族の基本属性,退院後の介護の状況,患者の背景,ADL状況とした.ADLと介護不安の有無との関連性をχ2検定により解析した.〔結果〕トイレ移乗,浴室移乗の介助と家族の介護不安の有無に有意な関連が認められた.〔結語〕移乗動作の介助が家族の介護不安につながっている可能性が示唆された.
著者
丸山 仁司
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.53-58, 2005 (Released:2005-06-30)
参考文献数
3
被引用文献数
2 2

バイタルサインとは,生命の基本的な徴候のことで,脈拍,呼吸,体温,血圧をいい,それらについて,定義,概要,測定方法,測定結果の解釈について述べる。特に,脈拍は,心拍数との関係,脈の触診と異常,呼吸は,呼吸の異常,呼吸音,体温では発熱,血圧では高血圧などについて述べる。
著者
中村 豪志 川畑 翔 川野 裕也 萩原 純一 加茂 智彦 小川 芳徳
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.269-273, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
20

〔目的〕縦手すりにもたれて,一側上肢で下衣を上げ下げする動作の効果を検証することとした.〔対象〕健常な男性10名とした.〔方法〕服の上から「短パン」を装着し,これを上げ下げする動作を測定した.手すりなしと手すりにもたれた姿勢で動作を行い,時間,重心総軌跡長,矩形面積,耳垂の上下移動距離の姿勢による相違点を解析した.〔結果〕手すりにもたれた動作では,手すりなしの動作と比較して,重心総軌跡長,矩形面積,耳垂移動距離の平均が有意に低かった.手すりにもたれた動作では,上げる動作における重心総軌跡長と矩形面積,下げる動作における矩形面積と耳垂移動距離で正の相関がみられた.〔結語〕一側上肢で下衣を上げ下げする動作は,縦手すりに寄りかかることでバランスが向上する.
著者
原田 光明 佐野 岳 水上 昌文 居村 茂幸
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.609-611, 2009 (Released:2009-09-24)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

〔目的〕重症心身障害児(者)(以下,重症児(者))は長期間にわたり臥位姿勢で過ごす時間が多く,筋緊張の不均衡や重力の影響により,二次障害として側彎や胸郭の変形などを併発しやすい。また重度の側彎症に伴い胸郭の変形が非対称性に進行してくる等の報告がある。しかし,臨床上において胸郭変形は視診的評価が主であり,客観的評価がなされていないのが現状である。そこで本研究において胸郭扁平率を用いて胸郭変形を検討することを目的とした。〔対象〕重症児(者)17名(平均年齢42.12±9.82歳)と健常成人18名(平均年齢40.56±10.05歳)とした。〔方法〕本研究ではGoldsmithらが考案,今川らが提唱している定量的胸郭扁平率について検討した。〔結果〕胸郭扁平率の平均は,重症児(者):0.63±0.08,健常成人:0.72±0.06であり,重症児(者)にて有意に低値を示した。また重症児(者)の胸郭扁平率は体重との間に有意な相関が認められた(r=0.463)。しかし,身長,BMIとの間には相関は認められなかった。〔結語〕このように胸郭扁平率は健常者に比べて,重症児(者)で低下する傾向にあったことから,胸郭扁平率は胸部変形を反映する指標となりうる可能性が示唆された。また今後の研究課題として症例数の増加による胸郭扁平率の数値的意味の検討,拘束性換気障害との関連性の検討が必要と考えられた。
著者
北地 雄 鈴木 淳志 原島 宏明 宮野 佐年
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.1023-1026, 2014 (Released:2015-01-21)
参考文献数
19
被引用文献数
1

〔目的〕集中的なリハビリテーションが行われる回復期病棟入院時の脳卒中者に対し,リハビリテーションに対するモチベーションを調査し,その関連因子を抽出することによって,より円滑で効果的なリハを提供する一助を得ること.〔対象〕脳卒中者23名.〔方法〕モチベーションはリハビリテーションに対する期待度を聴取することで評価し,それと身体機能面,心理・精神的側面,社会的側面およびQOLとの関連を相関分析と回帰分析を用い調査した.〔結果〕モチベーションは日常生活動作能力や自立度,良好なコミュニケーション能力や気分,およびバイタリティと関連し,特に日常生活自立度と気分が重要であった(R2=0.524).〔結語〕日常生活自立度の向上,良好なコミュニケーション,および心理的ケアがモチベーションを向上させる可能性が示唆された.
著者
中島 愛 池田 誠
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.645-648, 2010 (Released:2010-09-25)
参考文献数
4

〔目的〕本研究は訪問リハにおけるPT・OTによる協業の必要性を明らかにすることを目的とした。〔対象〕都内で訪問リハ実施施設に勤務するPT,OT,同施設の利用者とした。〔方法〕郵送による利用者ニーズとPT・OTの専門性に関するアンケート調査とした。〔結果〕利用者のニーズは歩行や機能障害が上位に,ADLや趣味活動が下位に挙がった。またPTは下肢・体幹の機能,歩行,起居動作,呼吸を,OTはADL,趣味に関する項目を専門と回答した。PT・OTは協業の必要性を感じていたが,多くの施設で協業の明確なルールを定めていなかった。〔結語〕安全で質の高い訪問リハを提供するためには,専門能力を活かす協業が必要である。
著者
冨田 和秀 阪井 康友 門間 正彦 大瀬 寛高 居村 茂幸
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.237-243, 2004 (Released:2004-08-30)
参考文献数
13
被引用文献数
5 3

本研究の目的は,dynamic MRIを用いて,健常者の安静呼吸と最大深呼吸における横隔膜運動の差異を定量的に解析すること,最大深呼吸における全横隔膜運動とBMI,肺活量(VC)や胸郭拡張差との相関関係について検証することである。その結果,横隔膜の頭尾方向への運動距離の平均は,安静呼吸時,腹側部14 mm,中央部20 mm,背側部27 mmであり,最大深呼吸時,腹側部41 mm,中央部64~67 mm,背側部74 mmであった。また,全横隔膜運動とBMI,VC,胸郭拡張差との間には,相関関係は認められなかった。
著者
長谷川 真人
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.177-182, 2007 (Released:2007-04-10)
参考文献数
7

米国医療,リハビリテーションの場にて積極的に活用されているセラピューティックレクリエーションの概念と実際のサービス内容の紹介を行う。初めに,セラピューティックレクリエーションの定義,教育,資格内容,理論についての概論を説明する。セラピューティックレクリエーションで使用される主な治療手技についても紹介する。最後に現場での経験から,医療,リハビリテーションにおける,実際のセラピューティックレクリエーション活用方法についても紹介し,日本の医療,リハビリテーション現場での新たな介入方法の可能性について示唆する。
著者
鈴木 学 加藤 仁志 仲保 徹 木村 朗
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.485-489, 2014 (Released:2014-09-25)
参考文献数
9
被引用文献数
1

〔目的〕学生の性格とPBLテュートリアルに対する取り組み状況との関係について検討した.〔対象〕A大学理学療法学科の3年生55名とした.〔方法〕PBL実施後,KT性格検査による学生の性格判定およびPBLの取り組み状況に関するアンケートを実施した.〔結果〕5つの性格の程度は7.85~11.71であった.主たる性格によるPBLの取り組み状況には差異はなかった.各タイプの傾向とPBLの取り組み状況との関係は,臨床思考は「信念確信型」との間で有意な正の相関,「繊細型」との間で負の相関,協調性は「自己開放型」との間で有意な正の相関がみられた.〔結語〕取り組み状況の要因の1つとして各性格の程度が関係していることが示唆された.
著者
甲斐 義浩 村田 伸 田中 真一
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.365-368, 2007 (Released:2007-08-18)
参考文献数
24
被引用文献数
8 6 10

本研究は,健常成人男性15名(平均年齢22.4±5.7歳,平均身長170.2±5.4 cm,平均体重62.3±8.7 kg)の左右30肢を対象に,利き足と非利き足における足把持力と大腿四頭筋筋力およびそれらの最大値到達時間について比較検討した。利き足の判定については,ボールを蹴る足を機能脚,走り幅跳びで踏み切る足を支持脚とした。機能脚と非機能脚,支持脚と非支持脚の比較において,双方ともに足把持力と大腿四頭筋筋力および最大値到達時間に有意差は認められなかった。本研究では,利き足と非利き足の足把持機能ならびに大腿四頭筋機能の優位性を示すに至らなかった。今後,別の変数を用いた検討が必要と考えられる。
著者
高取 克彦 松尾 篤 庄本 康治 梛野 浩司 徳久 謙太郎 鶴田 佳代
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.61-65, 2008 (Released:2008-04-05)
参考文献数
15
被引用文献数
1

右視床出血により左上肢のComplex regional pain syndrome type 1(CRPS1)を呈した1症例に対し,Moseleyの運動イメージ・プログラム(Motor imagery program: MIP)を実施した。MIPは3種類の介入(1.手の左右認知,2.患手の運動イメージ,3.Mirror therapy)で構成されており,皮質ネットワークの賦活を目的としたものである。介入効果は一事例研究デザインにて検証した。結果としては,MIP実施期間に特異的な疼痛軽減が認められ,その効果はMIP終了後も持続していた。また患手の模写による身体図式の評価ではMIP後,より詳細な描写に変化した。これらのことからMIPは脳卒中後CRPS1患者の身体図式を変化させ中枢性の疼痛軽減効果を持つ可能性が示唆された。
著者
片岡 弘明 田中 聡 宮崎 慎二郎 石川 淳 北山 奈緒美 村尾 敏
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.329-334, 2012 (Released:2012-08-01)
参考文献数
28
被引用文献数
2

〔目的〕本研究の目的は,男性2型糖尿病者の筋量と血糖コントロールの関係を明らかにし,運動処方の一助とすることである.〔対象〕骨関節疾患および運動器疾患のない男性2型糖尿病者58名とした.〔方法〕血糖コントロール別に良好群14名,可群20名,不可群24名の3群に分類し,生体電気インピーダンス方式体組成計を用い上下肢・体幹筋量を測定した.〔結果〕上下肢・体幹の全てにおいて,不可群は良好群よりも有意な筋量の減少を認めた.さらに上肢,体幹においては,不可群は可群よりも有意な筋量の減少を認めた.〔結語〕上下肢・体幹筋量は,血糖コントロール不良者ほど減少していたことが明らかとなったことから,運動プログラム立案時には有酸素運動とレジスタンス運動を併用した運動を考慮する必要性が認められた.
著者
今井 亮太 中野 英樹 森岡 周
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.401-405, 2012 (Released:2012-09-07)
参考文献数
13
被引用文献数
3

〔目的〕本研究の目的は,物体の視覚的提示に伴う腱振動刺激による運動錯覚時の脳活動を明らかにすることとした.〔対象〕振動刺激によって錯覚を経験した際の錯覚強度が4以上であった11名を対象者とした.〔方法〕以下の3条件にて手関節総指伸筋腱を振動刺激した.条件1:物体提示なし.条件2:手関節を掌屈すれば物体に接触する距離に物体を提示.条件3:手関節を掌屈しても物体に接触しない距離に物体を提示.脳活動は,機能的近赤外分光装置を用いて測定した.〔結果〕条件1と条件3に比べ,条件2において右運動前野,右感覚運動野,右頭頂領域にoxy-Hbの有意な増加が認められた.〔結語〕物体の提示位置が異なることにより,運動錯覚時の脳活動が変化することが示唆された.
著者
有竹 愛理 浅川 育世
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.300-306, 2023 (Released:2023-08-15)
参考文献数
14

〔目的〕訪問リハビリ利用者の環境因子介入効果を,活動参加をアウトカムに検討した.〔対象と方法〕視床出血後症例1名に対し各3ヵ月のA期B期を比較した.事前調査で訪問リハビリ利用者36名の活動参加の変化量を算出し,機能的自立度評価(FIM)9点,Life Space Assessment(LSA)5.9点,Community Integration Questionnaire(CIQ)4.3点を目標値に設定し,A期は標準的介入,B期はA期に加え包括的環境要因調査票(CEQ)を介入した.〔結果〕各変化量はA期FIM 3点,LSA 9.0点,CIQ 2.0点,B期FIM 9点,LSA 1.0点,CIQ 4.5点であった.〔結語〕訪問リハビリ利用者の環境因子介入は活動参加に良い影響を与えることが示唆された.
著者
伊藤 弥生 山田 拓実 武田 円
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.353-358, 2007 (Released:2007-08-18)
参考文献数
15
被引用文献数
19 5

本研究は高齢者において円背姿勢が呼吸機能や呼吸パターンに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。地域在住高齢者65名の脊柱の後彎計測を行い,円背指数により正常群と円背群に分類した。握力,呼吸筋力,呼吸機能,安静換気と肺活量測定時の換気様式及び胸部呼吸量と腹部呼吸量の測定を行い,2群で比較した。円背群は正常群に比べ,握力,最大吸気・最大呼気口腔内圧,PEFと%PEFが有意に低下していた。安静換気では,正常群は腹部優位,円背群は胸部優位と換気様式に違いがあった。安静換気と肺活量測定時ともに,円背群で腹部呼吸量が有意に少なかった。