著者
池澤 秀起 高木 綾一 鈴木 俊明
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.261-264, 2015 (Released:2015-06-24)
参考文献数
7
被引用文献数
1

〔目的〕腹臥位での下肢空間保持課題において,肩関節外転角度の変化が下肢空間保持側と反対側の僧帽筋下部線維の筋活動に与える影響を検討した.〔対象〕健常男性16名とした.〔方法〕課題は腹臥位での下肢空間保持とし,肩関節の外転角度を変化させ,各々の肢位での筋活動を比較した.測定筋は下肢空間保持側と反対側の僧帽筋下部線維とした.〔結果〕下肢空間保持側と反対側の僧帽筋下部線維の筋活動は,肩関節外転角度が0度・30度・60度に対して90度・120度において有意に増大した.〔結語〕僧帽筋下部線維は脊柱の固定に加え,上肢を重さとして利用するために肩甲骨の上方回旋作用にも関与したのではないかと考えられた.
著者
津嶋 勇一 吉岡 準平 藤田 和樹 水野 勝則
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.775-778, 2016 (Released:2016-10-27)
参考文献数
25
被引用文献数
2 2

〔目的〕端座位で上肢挙上を保持する背筋トレーニングは立位よりも骨盤後傾を伴いやすい.今回,骨盤傾斜角度が上肢挙上時の背筋活動に及ぼす影響について検討した.〔対象と方法〕整形外科的疾患の既往が無い健常男性10名とした.測定肢位は端座位とし,上肢90°挙上位を保持させた.測定条件は骨盤前傾5°,後傾5°,後傾15°とし,右側の僧帽筋上部,中部,下部線維,腰部脊柱起立筋,多裂筋の筋電図を導出した.〔結果〕骨盤後傾によって多裂筋活動の減少,僧帽筋活動の増加が認められた.〔結語〕上肢挙上による背筋トレーニングを端座位で行う場合は,骨盤前傾位で実施することで僧帽筋の過活動が起こらず,選択的な多裂筋活動の増加が期待できる.
著者
肥田 光正 出口 祐子 宮口 和也 中園 雅子 平田 直希 中川 理恵 北山 淳 浜岡 克伺
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.529-533, 2018 (Released:2018-07-06)
参考文献数
26
被引用文献数
2

〔目的〕本研究の目的は,大腿骨頸部骨折を受傷し,人工骨頭置換術を施行した患者を対象に歩行動作能力の回復を予測する因子として,急性期術後痛の強度と下肢筋力を調査することである.〔対象と方法〕対象者は,外傷による大腿骨頸部骨折後に人工骨頭置換術を施行した48名のうち除外基準の該当者を除く31名とした.術後の急性痛は,Verbal Rating Scaleを用いて術後7日目に患側の最大荷重時の疼痛を測定した.下肢筋力は,術後7日目の等尺性膝伸展筋力体重比を測定した.〔結果〕早期歩行自立群と歩行自立群は,疼痛は中等度の荷重時痛で,両下肢等尺性膝関節伸展筋力は筋力体重比16.8%で一定の判別精度を示した.〔結語〕歩行動作自立に必要な日数は,急性期術後痛強度および膝伸展筋力に一定の影響を受けることが示唆された.
著者
佐藤 貴徳 工藤 慎太郎
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.377-380, 2016 (Released:2016-07-06)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

〔目的〕歩行開始時には,下腿三頭筋の活動低下によって足圧中心(COP)の後方移動が起きる.その際に,下腿三頭筋がどのような動態を示すかを検討する.〔対象〕同意を得た下肢に整形外科的疾患のない健常成人22名とした.〔方法〕足圧分布測定器,超音波画像診断装置,ビデオカメラを同期して,歩行開始時の下腿三頭筋の動態を,安静立位時と歩行開始時の筋線維束長の変化量で検討した.〔結果〕下腿三頭筋は10 mm程度の伸張方向への動態を認めた.〔結語〕下腿三頭筋はCOPが後方移動する際に伸張されることが示唆され,歩行開始時の運動療法の際には,この動態も含めてアプローチする必要があると考えられる.
著者
藤井 貴允 戸田 晴貴 石川 博隆 木藤 伸宏 佐々木 久登
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.463-468, 2013 (Released:2013-10-08)
参考文献数
20

〔目的〕本研究は,椅子からの立ち上がり動作(Sit-to-Stand, 以下STS)における加齢変化の影響を,個々の筋が発揮する筋活動と関節モーメントの関係から明らかすることを目的とした.〔対象〕対象はすべて女性で,若年者16名,高齢者16名とした.〔方法〕三次元動作解析装置と表面筋電図を用いてSTSを計測し,下肢の関節モーメントと積分筋電図を解析した.〔結果〕膝関節活動が主体であった高齢者は,最大股関節伸展モーメントよりも最大膝関節伸展モーメントの方が大きく,大殿筋下部線維,中殿筋の筋活動は有意に高値を示した.〔結語〕膝関節活動が主体であった高齢者は,股関節伸展モーメントが低下する傾向を示し,大殿筋下部線維・中殿筋の筋活動を高め,持続的に活動し,STSを遂行することが示唆された.
著者
後藤 亮平 田中 直樹 渡邉 大貴 金森 毅繁 柳 久子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.751-758, 2014 (Released:2014-10-30)
参考文献数
26

〔目的〕廃用症候群入院患者の特性,またADLの回復に影響する要因を検討した.〔対象〕廃用症候群のためリハビリテーションの指示が出された患者とした.〔方法〕退院時のFIM運動項目の得点から初期評価時FIM運動項目の得点を引いた値(FIM利得)を,中央値で2群に分類した.多重ロジスティック回帰分析を用いて,ADL向上に影響する要因を検討した.〔結果〕入院前FIM運動項目,膝伸展筋力,股関節屈曲可動域,肺炎の有無の4因子に,FIM利得との有意な関連が認められた.〔結語〕廃用症候群入院患者においては,入院前FIM運動項目,膝伸展筋力・股関節屈曲可動域といった身体機能,また肺炎の有無が,入院期間中のADL向上に影響する事が示唆された.
著者
寺本 喜好 臼井 永男
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.207-214, 1995-11-20 (Released:2007-03-29)
参考文献数
8
被引用文献数
1

疾患を持った被検者を対象に,重心位置を計測し,さらに重心計のステージ上で,頭部を固定して骨盤を水平方向にローテーションさせ,その軌跡を測定して健常者と比較した。その結果,足底面内には症状,年齢,性別,習熟度によって様々な円(楕円)軌道が描かれ,健常者とは形態,大きさ,円滑さにおいて差が見られた。この軌跡の運動解析をすることによって,骨盤と腰部および下肢の身体状況を知る手掛かりとなり,身体の柔軟性と重心の安定性および運動能力を,定量的に評価できる可能性が考えられた。そしてこの重心ローテ―ション(CGR)を習熟することによって,骨盤をより正常な形態に補正し,脊柱や下肢の関節および筋の柔軟性と,平衡感覚の向上に役立つことが示唆されたので報告する。
著者
澁谷 光敬 平島 賢一 田野 聡 髙岡 克宜 池脇 圭司 鶯 春夫
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.467-470, 2020 (Released:2020-06-20)
参考文献数
10

〔目的〕Tilt tableを使用した傾斜角度変化が腹筋群に与える影響を明らかにすることとした.〔対象と方法〕対象は健常成人男性5名で,筋活動計測は非利き足側の腹筋群(外腹斜筋,内腹斜筋),下肢筋(中殿筋,大腿直筋,大腿二頭筋)の5筋とした.Tilt tableの傾斜角度を40°から80°まで10°ずつ変化させ,各傾斜角度での受動的立位保持10秒間の筋活動を3秒間測定し,積分値を算出し比較検討した.〔結果〕内腹斜筋では40°に対し60°以上で有意に高値を,また,50°に対し60°で有意に高値を示した.その他の筋では傾斜角度変化における有意差は認められなかった.〔結語〕Tilt tableの傾斜角度を60°以上にすることは内腹斜筋を選択的に活動させる一手段となる可能性が示唆された.
著者
濱田 勇志 武井 圭一 守岡 義紀 野々垣 政志 茂木 恵 石川 由樹 山本 満
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.455-458, 2017 (Released:2017-06-23)
参考文献数
10

〔目的〕無呼吸発作・周期性呼吸に対する腹臥位の効果を,超低出生体重児の1例の介入結果から検討することである.〔対象と方法〕症例は,超低出生体重児であり,修正37週以降にも周期性呼吸・無呼吸発作を示した.呼吸管理目的に腹臥位によるポジショニングを3週間実施し,経皮的動脈血酸素飽和度(以下,SpO2)を指標に,背臥位へ姿勢変換した後の腹臥位の即時的変化と24時間変化を評価した.また,介入前後3週間での呼吸異常の有無を調査した.〔結果〕SpO2は,5分間変化(即時的変化),24時間変化のどちらでも平均値の上昇,変動幅の減少を示した.呼吸異常の出現頻度は,無呼吸発作で介入前5回,介入後は消失,周期性呼吸で介入前5回,介入後1回であった.〔結語〕腹臥位による呼吸管理は,呼吸異常の頻度を減少できることが示唆された.
著者
阿南 雅也 徳田 一貫 木藤 伸宏 新小田 幸一
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.755-760, 2010 (Released:2010-11-25)
参考文献数
18
被引用文献数
3 2

〔目的〕本研究は,体幹および下肢の運動連鎖の観点から変形性膝関節症(膝OA)の発症・進行に関与する機能障害を明らかにするために,膝OA患者における椅子からの立ち上がり動作(STS)の運動学的分析を行った。〔対象〕膝OAと診断された女性17名の膝OA群と膝関節痛を有さない女性16名の対照群とした。〔方法〕課題動作は座面高が下腿長の高さの椅子からのSTSとした。3次元動作解析システムKinema Tracer(キッセイコムテック社製)を用いて各体節および下肢関節の角度を求めた。〔結果〕身体重心(COM)前方移動期における各体節の角速度の平均値には有意差が認められなかったが,COM上方移動期における膝関節伸展,足関節底屈の角速度平均値は対照群に比し,膝OA群が有意に小さかった。〔結語〕膝OA群のSTSにおいて,臀部離床後に体幹前傾で得られた速度を下肢に伝えることができず,適切な膝関節の関節運動および肢節のアライメント保持が難しくなっていることが示唆された。
著者
渡邊 裕文 大沼 俊博 高崎 恭輔 谷埜 予士次 鈴木 俊明
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.561-564, 2014 (Released:2014-09-25)
参考文献数
13
被引用文献数
6 1

〔目的〕座位での腹斜筋の活動を明確にすることである.〔対象〕本研究に対する同意を得られた健常男性7名とした.〔方法〕テレメトリー筋電計MQ-8を用い,左側腹斜筋に複数の電極を配置し,座位にて側方移動距離を変化させ筋電図を測定した.座位での筋電図積分値に対する相対値を求め,移動距離による相対値の変化を検討した.〔結果〕側方移動距離の増大に対し,移動側腹斜筋群では筋電図積分値相対値に変化が認められず,反対側腹斜筋群ではこの値が全電極で増加傾向を示し,内腹斜筋単独部位とその直上の2電極で有意に増加した.〔結語〕座位で側方体重移動をリハビリテーションに用いる時,移動反対側内腹斜筋による骨盤の挙上作用に着目する必要のあることが示唆される.
著者
山下 喬之 横山 尚宏 川元 大輔
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.517-521, 2022 (Released:2022-10-20)
参考文献数
24
被引用文献数
1

〔医学・医療系教育とVR〕近年,Virtual Reality(VR)の教育実践が盛んに行われ始め,効果検証も始まりつつあるが,理学療法教育分野での報告は少ない.〔先端技術教育と理学療法教育へのVR導入〕Information and Communication Technology(ICT)を活用した教育は,コロナ禍以降の進化も必要であり,VRは理学療法士養成教育においても業界の様々な課題を解決に導ける可能性を秘めている.〔開発と課題〕カメラとパソコン,通信環境のみで,仮想現実空間における臨床疑似体験を可能とする教材を開発した.導入コスト,映像編集・加工のスキル,通信環境や新しい教育方法に対する慣れに関する課題が挙げられた.〔実践案〕VRの導入を現実的にする提案を,既存のサービスを活用した教材配信,学習者既有のデジタル端末で視聴できる教材の制作と,簡易ゴーグルを使った方略の工夫としてまとめた.
著者
角田 友紀 蛭間 基夫
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.203-208, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
11

〔目的〕住宅改善での理学療法士(PT)の自宅訪問が不十分と指摘がある.そこで,本報告では自宅訪問を規定する要因を明らかにした.〔対象〕PT協会から無作為抽出した全国のPTの中の介入経験者1,163人とした.〔方法〕質問紙による調査を2010年8月から2ヵ月行った(回答率40.3%).介入者の訪問状況から必ず行う必須群(47.5%),事例により行う事例群(47.6%),訪問経験がない非訪問群(3.7%)の三群に分類し勤務機関の実態や介入する具体的支援についてクロス集計により比較した.〔結果〕必須群では勤務機関は訪看や老健が多く,日常業務の主対象は在宅生活者や維持期患者が多かった.〔結語〕自宅訪問が可能なPTとの連携を確保する重要性が示唆された.
著者
高橋 亮吾 Dai Yidan 上田 容子 易 勤
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.391-395, 2021 (Released:2021-06-20)
参考文献数
24

〔目的〕寛骨臼関節唇と腸腰筋の位置関係および形態特徴を肉眼解剖にて調査を行うこと.〔対象と方法〕解剖学実習体6体12関節(男性3名,女性3名,平均年齢87.2 ± 7.9歳)を用い大腰筋と腸骨筋の腹側および背側を測定し筋・腱成分の割合を算出した.〔結果〕縦幅は全長74.1 ± 6.6 mmに対し,腹側は腸骨筋74.1 ± 6.6 mmと大腰筋34.3 ± 19.1 mm,大腰筋腱39.8 ± 21.2 mm,背側は大腰筋腱74.1 ± 6.6 mmであった.横幅は全長38.6 ± 5.8 mmに対し,腹側は腸骨筋26.7 ± 5.2 mmと大腰筋10.6 ± 3.7 mm,背側は大腰筋腱16.8 ± 5.5 mmと腸骨筋腱8.8 ± 6.1 mmであった.〔結語〕寛骨臼関節唇と接触する腸腰筋の背側の多くは大腰筋腱で構成されていた.
著者
野村 真 前田 剛伸 嘉戸 直樹 鈴木 俊明
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.195-199, 2017 (Released:2017-05-02)
参考文献数
23
被引用文献数
15 6

〔目的〕運動イメージの明瞭性の個人差が複雑性の異なる手指対立運動のイメージ課題における上肢脊髄神経機能の興奮性に及ぼす影響についてF波を用いて検討した.〔対象と方法〕対象は健常者30名とし,Vividness of Movement Imagery Questionnaireの得点結果より運動イメージの明瞭性の高い群,低い群にふりわけた.運動イメージ課題は複雑性の異なる3種類の手指対立運動とした.各群における安静試行と各課題の振幅F/M比の変化を比較検討した.〔結果〕振幅F/M比は運動イメージの明瞭性の低い群において安静試行と比較して課題2,課題3で有意に増加した.〔結語〕運動イメージの明瞭性の個人差が運動イメージ中の脊髄神経機能の興奮性の違いに影響を及ぼす可能性が示唆された.
著者
小山 浩司 一場 友実 古島 弘三 菅野 好規 新津 あずさ 小太刀 友夏 新納 宗輔 上野 真由美 足立 和隆
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.78-83, 2023 (Released:2023-02-15)
参考文献数
39

〔目的〕スパインマットが胸郭拡張差および呼吸機能・呼吸筋力に与える影響を明らかにすること.〔対象と方法〕健常成人男性30名(年齢20.2 ± 1.6歳)とした.介入方法は,対象を背臥位とし,スパインマットを胸椎部に挿入した.測定項目は,脊柱アライメント,胸郭拡張差および呼吸機能・呼吸筋力であった.〔結果〕介入後に胸椎後弯角度が有意に減少した.また胸郭拡張差は有意な増加を認めた.呼吸機能は最大吸気量が,呼吸筋力では最大吸気圧に有意な増加を認めた.〔結語〕スパインマットの使用により,胸郭拡張差,最大吸気量および最大吸気圧は増加する可能性が示唆された.
著者
川北 大 飯田 修平 内藤 秋光 藤田 拓也 小瀧 敬久 佐藤 絵美 岡田 雄大 池田 喜久子 玉利 光太郎 阪井 康友
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.56-62, 2023 (Released:2023-02-15)
参考文献数
28

〔目的〕回復期の片麻痺患者に対してロボット型短下肢装具(R-AFO)を用いたリハビリの効果を検討すること.〔対象と方法〕対象は24名の脳血管障害片麻痺患者.介入期間は10日間で,評価は介入前,介入後の2回実施した.R-AFO群は,通常の理学療法練習60分と,R-AFOを使用した起立や歩行練習を20分の計80分間,非実施群は,通常の理学療法練習を80分間行った.〔結果〕通常群よりもR-AFO群で有意に効果が認められた項目は,歩行速度,麻痺側片脚支持時間,片脚支持時間の左右対称性割合,機能的自立度評価法(FIM)であった.〔結語〕R-AFO装着下での麻痺側に荷重を促す歩行訓練を反復して行ったことで,麻痺側片脚支持時間の割合の増大による,歩行左右対称性の改善効果を有する可能性を示唆した.
著者
上杉 睦 秋山 純和
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.115-120, 2006 (Released:2006-07-26)
参考文献数
15
被引用文献数
1

片麻痺患者では麻痺側下肢の荷重量を免荷した立ち上がり動作が観察される。本研究は片麻痺患者の立ち上がり動作練習についての基礎的研究として,片麻痺患者4名に対して立ち上がり動作時の意識的な下肢の荷重配分が荷重量,足圧中心に及ぼす影響を検討した。測定条件は,通常の立ち上がり動作(Normal),両側下肢の均等荷重を意識した立ち上がり動作(E50%),麻痺側下肢の荷重量を体重の60%に調節した立ち上がり動作(E60%)と非麻痺側下肢の荷重を40%に調節した立ち上がり動作(E40%)の全4条件とした。荷重量の結果では立ち上がり動作時の意識的な荷重調節により,麻痺側下肢の荷重量が増加し,荷重量の左右不均等改善が認められた。このことは,意識的に麻痺側下肢の使用を促していることが考えられ,臨床場面における立ち上がり動作の練習で下肢の荷重量を意識的に増加することは非使用の改善,均等荷重の獲得に有用である可能性がある。
著者
小口 理恵 牧迫 飛雄馬 加藤 仁志 石井 芽久美 古名 丈人 島田 裕之
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.705-710, 2008 (Released:2009-01-28)
参考文献数
19
被引用文献数
8 3

[目的]本研究では,地域在住高齢者において定期的に実施している運動の種目により,身体組成,運動機能に違いがあるかを検討した。[対象]70歳以上の地域在住高齢者83名(平均年齢75.9±4.3歳)を対象にした。[方法]身体組成,運動機能,実施している運動種目,実施頻度,実施時間および過去半年間での転倒の有無を調査した。運動種目により,対象をスポーツ群と軽運動群とに分類し,調査項目の比較検討を行った。[結果]スポーツ群では,軽運動群よりもTimed Up & Go Testが有意に速い値を示し,過去半年間の転倒経験が少なかった。さらに,スポーツ群では運動実施頻度と骨格筋量(r=0.41),膝伸展筋力(r=0.42)に有意な相関関係が認められた。[結語]定期的にスポーツを実施している高齢者は,歩行機能が良好であり転倒経験も少なく,運動の実施頻度は下肢筋力や骨格筋量と関連があることが示された。