著者
岩崎 恵 庄古 知久 安達 朋宏 内山 まり子 加藤 開 谷澤 秀 中本 礼良 吉川 和秀 小島 光暁
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.403-408, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
6

背景:COVID-19蔓延期の災害対応において,病院クラスター発生は病院機能停止を伴う大きなリスクである。感染者が含まれる多数傷病者受入方法を平時から検討しておく必要がある。目的:大規模災害発生時の多数傷病者受入に伴うCOVID-19クラスター発生の防止。 方法:防災訓練ワーキンググループにてCOVID-19蔓延期の災害対応を検討し,大規模災害発生時の多数傷病者受入方法とPCR検査を施行不能な場合に行う入院時のCOVID-19感染リスク分類のためのトリアージ法を策定する。結果:従来の二次トリアージに加えCOVID-19のリスク評価を行い,以下の4段階に分類するCOVIDトリアージを開発した。カテゴリーⅠ(紺)は発災前PCR陽性または抗原陽性,Ⅱ(紫):はCOVID-19の可能性が高い,Ⅲ(ピンク)はCOVID-19の可能性が低い,Ⅳ(白)は発災前PCR陰性とした。結語:災害拠点病院は潜在的なCOVID-19患者を受け入れるために従来のトリアージに加え,感染リスク別の入室カテゴリーを策定し,後日陽性者が判明した場合でも被害を最小限にする対策を準備しておく必要がある。
著者
山本 浩二郎 前田 晃佑 原口 珠実 里岡 達哉 青山 瑛里子 横山 靖法 草薙 みか 大里 恭章
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.588-592, 2021-08-31 (Released:2021-08-31)
参考文献数
11

薬剤による重篤な有害事象の発生頻度は低く,患者の症状の変化が薬剤性であることを疑うには薬剤師の積極的な介入が有効である。薬剤による有害事象の1つである血管性浮腫は,舌・咽頭に発生すると気道閉塞を起こし重篤な転帰を招く可能性がある。八尾徳洲会総合病院(以下,当院と略す)では集中治療室(intensive care unit,以下ICUと略す)に薬剤師を配置し重症患者の薬物治療管理を行っている。今回われわれは急性の舌・咽頭浮腫により気道閉塞をきたし救急搬送された症例に対して,ICU常駐薬剤師が薬剤性を疑い,医師へ発症機序の説明,代替薬や必要な検査提案など積極的治療介入により診断に結びついた症例を経験したため報告する。また,ICUにおいて薬剤師が介入することで薬剤性の有害事象に関する情報提供をリアルタイムに行うなど,医師の診断と治療方針に大いに貢献し,救急・集中治療の充実を図ったので併せて報告する。
著者
田中 拓 内藤 純行 長島 梧郎 加藤 晶人 上村 美穂 藤原 正三 馬野 由紀 田北 無門 平 泰彦
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.585-590, 2015-08-31 (Released:2015-08-31)
参考文献数
10

アルコール摂取に伴う意識障害,ならびに迷惑行為は救急医療機関にとって避けられない問題である。今回,2012年1月から2013年9月までの21カ月間に,当院へ救急受診した急性アルコール中毒166例を対象に振り返り,これらについて性別,年齢,エタノール血中濃度,意識レベル,外傷の有無,暴言・暴力の有無について検討した。平均年齢は45.1±19.3歳,男性120人,女性46人であった。エタノール濃度が計測されている症例は129例あり,平均エタノール濃度は207.9±99.6mg/dLであった。約10%の16例で,医療従事者に対する暴言・暴力行為があり,うち4例が警察介入を要した。暴言・暴力などの迷惑行為のあった16例のうち14例は男性であり,平均年齢は36.2±17.4歳と若く,血中エタノール濃度は253.9±85.3mg/dLと高い傾向にあった。急性アルコール中毒は時として重大な転帰をたどることもあり,また,医療従事者にも被害を及ぼすことのある病態である。日常的に多く遭遇する症例であり,適切な対処を院内共通の認識とする必要がある。
著者
吉川 博 佐藤 智人 檜山 洋子 福島 隆宏 佐伯 康之 畝井 浩子 松尾 裕彰
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.691-695, 2020-10-31 (Released:2020-10-31)
参考文献数
10

救急・集中治療領域の患者は重症度が高く,過少投与や必要薬剤の不使用など,薬物治療効果が適正に得られない状態は不利益となる可能性がある。そのため薬物治療効果を最大限に得るための適正使用(以下,適正使用)は重要である。本調査は2016年1月〜2017年12月にICU,高度救命救急センター,HCUでの薬剤師による適正使用介入事例を調査した。 対象期間での適正使用介入事例は227件。薬剤の種別として抗微生物薬が117件(51%),抗凝固薬23件(10%),消化器系薬14件(6%),循環器系薬11件(5%)であった。介入の種類として投与量の増量が105件(46%),薬剤追加が59件(26%),投与方法変更が30件(13%),薬剤変更が20 件(9%)であった。薬剤師は適正使用において,とくに抗微生物薬の増量,排便・血糖コントロールやDVT などの予防薬剤の追加について貢献していると考えられた。
著者
森川 剛 久保田 健 寺島 孝徳 岡澤 香津子 湯本 みゆ紀 柄澤 裕 塚田 晃裕
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.768-775, 2019-12-31 (Released:2019-12-31)
参考文献数
18

目的:当院の夜間緊急入院対応病棟における薬剤師業務において,薬剤関連入院の実態を調査し,また薬剤師の介入による医療経済的評価を行った。方法:対象は,2016年4月〜 2018年3月までの2年間で,夜間緊急入院対応を主とする病棟で薬剤管理指導を実施した1,754例とした。薬剤師の介入によって薬剤関連問題が原因の入院であると医師が診断した症例とその入院費,処方中止・減量を提案した薬剤のうち費用最小化分析が適応できる症例を調査した。結果:薬剤関連問題による入院と診断された症例は3.6%(64例/1,754例)あり,その入院医療費は計約5,454万円であった。薬剤師による中止・減量提案は410薬剤あり,費用最小化分析が適応できる医薬品削減費は計約710万円であった。結論:入院早期に薬剤師が介入することで,薬剤関連問題が明確化され,医療経済効果も明らかとなった。
著者
座間味 義人 相良 英憲 萱野 由佳 小山 敏広 白石 奈緒子 江角 悟 鵣川 豊世武 千堂 年昭 氏家 良人 名倉 弘哲
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.461-465, 2016-06-30 (Released:2016-06-30)
参考文献数
9
被引用文献数
1

エダラボンを用いた治療は患者の神経学的予後を改善する一方,急性腎障害発現のリスクがあると報告されている。本研究はエダラボン投与による急性腎障害発現を予防するために,エダラボン投与時の患者背景から危険因子を解析することを目的とした。岡山大学病院においてエダラボンが投与された患者を対象に,患者基本情報およびエダラボン投与情報,血液検査結果を電子カルテより遡及的に調査した。調査データから単変量解析を実施し,抽出した因子を用いて二項ロジスティック回帰分析を行った結果,感染症の併発が,エダラボンによる急性腎障害発現の有意な危険因子(予測因子)であることが示唆された。したがって,感染症の所見がある患者にエダラボンを投与する際は,急性腎障害発現に留意する必要がある。
著者
藤井 公一 宮武 諭 石山 正也 大木 基通 冨岡 秀人 加瀬 建一 小林 健二
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.478-480, 2014-06-30 (Released:2015-01-23)
参考文献数
10

2011年1月から2013年1月の2年間に,肺塞栓症と診断され失神を伴った5例について,その特徴を診療録より後方視的に検討した。平均年齢73.6歳。2例は随伴症状を認めなかった。来院時のvital signsは,収縮期血圧低値1例,頻脈2例,SpO2低値1例であった。D-dimer 値は全例で上昇していた。心電図異常4例,心エコー検査による右心負荷所見は全例で認めた。治療は全例で抗凝固療法が施行され,うち1例に血栓溶解療法が施行された。失神を伴わなかった肺塞栓症患者12例との比較では,平均年齢が高く(p=0.045),右心負荷所見を認める割合が高かった(p=0.049)。心エコー検査とCTを施行するまでの時間は,失神を伴っていた患者で長くなる傾向がみられた。失神を伴う肺塞栓症患者は典型的症状に乏しく,心エコー検査やD-dimer測定は失神患者の原因検索としても有用である。
著者
徳永 健太郎 尾田 一貴 岡本 真一郎 右山 洋平 川口 辰哉 蒲原 英伸 山本 達郎 藤井 一彦
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.517-521, 2019-06-30 (Released:2019-06-30)
参考文献数
17

背景:抗菌薬適正使用として狭域経口抗菌薬が処方できる環境を整えることは,耐性菌出現を抑制するために重要である。目的:時間外外来における経口抗菌薬の配置状況を明らかにする。方法:時間外処方せんに薬剤師が対応していない施設を対象とし,郵送によるアンケートにより調査した。結果:配置薬がある14施設のすべてにおいて,「AMR対策アクションプラン」で削減すべきとされた広域の経口抗菌薬である第3世代セファロスポリン系薬とフルオロキノロン系薬が配置薬に含まれていた。一方,『抗微生物薬適正使用の手引き』で使用が言及されていたペニシリン系薬および第1世代セファロスポリン系薬の配置は,それぞれ9施設(64.3%),3施設(21.4%)に留まっていた。結論:時間外外来における経口抗菌薬の配置状況は,抗菌薬適正使用を推進するために改善の余地があると考えられた。
著者
布施 明 坂 慎弥 立澤 裕樹 吉野 雄大 萩原 純 布施 理美 宮内 雅人 横田 裕行
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.703-710, 2016

<p>ツイッターで熱中症の共起ワードに着目し,熱中症救急搬送者数との関係を検討した。2014年6月1日から9月30日の間の,日別の熱中症救急搬送者数を集計し,「熱中症と考えられる」ツイートの114,003件を分析対象とした。搬送者数とツイート数の相関係数は0.91で強い相関があり,地域でも同様であった。共起ワードを検討すると,熱中症とは直接関係性が考えにくい単語でも相関が強い場合があることが明らかとなった。年代別での検討では50代以上で頻出する共起ワードの使用率が他の年代と比較して高かったが,性別での検討では,明らかな特徴はなかった。今回の結果は2014年,単年の分析結果であり,他年にも同様の傾向があるかについては検討する必要がある。50代以上はツイートの利用率は低いが,他の世代に比較して共起ワードの検出率が高かった。本結果をもとに,今後,SNSを用いた熱中症の予防に役立つような手法の開発が望まれる。</p>
著者
中薗 健一 高野 尊行 根本 真人 長谷川 伸之
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.761-765, 2014-12-31 (Released:2015-01-24)
参考文献数
18

集中治療室(ICU)では,時間経過とともに刻々と変化する病態に合わせた薬物治療計画が必要である。そのため,薬剤師による迅速な薬学的介入は重要であると考えられる。今回,ICU専従薬剤師による全身管理への薬学的関与の影響について検討した。方法:那須赤十字病院ICUへ入室した患者を対象とした。2010年1月から12月の270名を専従前群,2013年1月の49名を専従後群とした。薬剤管理指導記録から薬学的介入の内容,薬物治療変更の有無について比較検討した。結果:薬剤管理指導実施率は専従前64.1%から,専従後91.8%へ有意に増加した。薬学的介入による薬物治療変更は,専従前51.3%,専従後73.2%へ有意な増加を認めた。考察:ICUへの薬剤師専従化により,薬学的介入件数,薬物治療変更率はともに増加した。これより,患者の病態変化に合わせた迅速な薬学的介入を行うことができた。
著者
野々内 裕紀 眞継 賢一 伊藤 博美 大橋 直紹 端野 琢哉 濱口 良彦
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.46-50, 2023-02-28 (Released:2023-02-28)
参考文献数
10

80歳代,女性。2週間前からの動悸と胸痛が改善しないため当院の救急外来を受診し,発作性上室頻拍に伴う急性心不全の診断で入院となった。入院時の血液検査でクレアチンキナーゼ(CK)が6,259IU/Lの高値を示し,推算糸球体濾過量(eGFR)は入院3週間前の62.5mL/分/1.73m2から入院時24.6mL/分/1.73m2まで低下しており,尿中ミオグロビンは87.0ng/mLと高値であった。ICU入室後にアトルバスタチン(ATRC)とシクロスポリン(CyA)の併用が確認され,薬剤性横紋筋融解症による高CK血症および腎機能低下と診断された。 ATRCはCyAとの併用によりAUCが8.69倍に上昇することが報告されており,両剤の併用によるATRCの血中濃度高値が薬剤性横紋筋融解症の原因であったと考えられた。ATRCの中止と輸液負荷により退院時にはCK 259 U/L,eGFR 73.2mL/分/1.73m2に回復した。ATRCとCyAの併用は禁忌ではないが,ATRCの血中濃度を著しく上昇させ,薬剤性横紋筋融解症の発症リスクを高める恐れがある。
著者
榎本 有希 賀来 典之 六車 崇 クナウプ 絵美里 野坂 宜之 塚原 紘平
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.723-728, 2015-12-28 (Released:2015-12-28)
参考文献数
8

目的:わが国の小児病院前救護に関する教育の実態は不明である。小児病院前救護に関する教育の課題を抽出するために本研究を行った。方法:2013年6月にわが国の消防本部を対象に小児病院前救護に関するアンケートを施行し,そのうち教育に関する部分を抽出し解析した。結果:多くの項目で小児病院前救護に関する教育の必要性は認識されていた。一方で,教育が必要量の50%以上行われている(充足している)との回答は半数未満であった。また,救命救急センターの少ない地域では,多い地域に比べて教育の充足度が有意に低い分野が複数みられた。考察:小児病院前救護に関する教育の必要性は認識されているが,十分な教育がなされていない可能性がある。教育内容を再検討のうえで,処置基準や装備デバイスと一貫性をもった,効率的なoff the job trainingを行う必要がある。
著者
中村 秀明 染谷 泰子 矢島 務 阪本 奈美子 刈間 理介 鈴木 宏昌
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.651-658, 2020-10-31 (Released:2020-10-31)
参考文献数
16

救急救命士が実施する静脈路確保(IVA)における穿刺部皮膚温と実施結果との関係を検討した。方法:BANDO メディカルコントロール協議会所属の茨城西南消防本部において 2018 年8 月1 日〜2019 年3 月31 日に記録された静脈路確保282 症例を対象とした。結果:穿刺部皮膚温が高温群(28.5℃≦)では,低温群(28.5℃>)に比し穿刺静脈の太さ(p<0.05),視認性(p<0.01),触知性(p<0.01)いずれも高く,IVA 所要時間は有意(p<0.05)に短かった。IVA 実施救急救命士の経験年数は高温群が有意に短かった(p<0.05)ものの,成功率は高い(57.6% vs 62.8%)傾向にあった。考察:穿刺部皮膚温が高いほうが穿刺静脈の性状が良好であり,IVA に要する穿刺時間が短縮される。
著者
中村 秀明 中澤 真弓 井上 隆康 田中 幸太郎 刈間 理介 鈴木 宏昌
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.659-664, 2019-10-31 (Released:2019-10-31)
参考文献数
20
被引用文献数
1

目的:二項目の処置拡大により救急救命士の静脈路確保(intravenous approach;IVA)の機会が増加し, このことが手技の成功率に及ぼす影響を明らかにする。方法:茨城西南地方広域市町村圏事務組合消防本部の2014年1月1日〜2016年12月31日までの処置拡大二項目の実施記録とウツタインデータから後ろ向きに調査した。結果:処置拡大前後の全IVA成功率は52.2から63.2%に上昇した(p<0.01)。心肺停止例(cardiopulmonary arrest;CPA)に限定しても52.2から63.8%と有意に上昇していた。また,対象別にみたIVA成功率はCPAで58.5%ともっとも低く,低血糖で78.5%と有意に高かった。考察:処置拡大により救急救命士がIVAを実施する機会が増加したことで,全IVAの成功率のみならず,CPAに対するIVA成功率も改善することが示唆された。
著者
鷹野 剛 上村 豊 五明 佐也香 上笹貫 俊郎 松島 久雄
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.535-540, 2021-08-31 (Released:2021-08-31)
参考文献数
5
被引用文献数
1

埼玉県メディカルコントロール協議会(以下,県MC協議会と略す)は,平成29年4月1日から指導救命士制度を導入し認定を開始した。導入にあたり指導救命士による教育指導体制の構築にはどのような活動を行い,役割を担っていくべきかが検討課題となった。そのため「教育」,「事後検証」,「学術活動」の指導体制の現状と,指導救命士による今後の活動予定について県内27消防本部に対してアンケート調査を実施した。アンケート結果では県内で統一した救急隊員の教育指導にかかわるガイドライン作成の要望が寄せられた。県MC協議会は新たに指導救命士部会を設置し,プロトコール研修会と事後検証を実施するための県内で統一したガイドラインを作成し各地域メディカルコントロール協議会(以下,地域MC協議会と略す)へ通知した。作成にかかわった指導救命士部会のメンバーとして,埼玉県の指導救命士による教育指導体制の構築へ向けた取り組みと今後の展望を報告する。
著者
外山 元 大松 健太郎 安達 哲浩 高橋 司 竹井 豊
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.592-600, 2023-10-31 (Released:2023-10-31)
参考文献数
12

目的:本研究では救急救命処置の実施や救急隊による医療機関選定にかかる時間が救急現場活動時間の延長に影響を及ぼすのかを疫学的に検証することを目的とした。方法:2019年中の全国救急搬送データのうち,転院搬送,軽症例,医師関与例,欠損データを除外した2,575,738件を分析対象データとして,救急現場活動時間の延長に影響を与える因子を最小二乗法による多変量線形回帰によって分析した。結果:すべての因子を考慮した救急現場活動時間の推定値は15.84分であった。多変量解析において,搬送先医療機関決定までの連絡回数が複数回の例(20.96分),関東地方での発生例(19.12分),高齢傷病者(18.77分),非急病事案 (16.54分)は救急現場活動時間を延長させ,心肺蘇生実施例(14.49分)は救急現場活動時間を短縮させる要因であることが示された。結論:搬送先医療機関決定のために行う複数回に及ぶ病院連絡は救急現場活動時間を延長させる主たる要因であった。救急現場活動時間には地域差があり,救急需要と医療リソースの不均衡による連鎖が課題であることが示唆された。
著者
浅香 葉子 渥美 生弘 川上 大祐 是永 章 有吉 孝一
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.720-724, 2016-12-31 (Released:2016-12-31)
参考文献数
13
被引用文献数
1

背景・目的:心停止蘇生後患者の6カ月以上の長期予後はあまりわかっていない。とくに本邦における長期予後はほとんどわかっていないため,当院における心停止蘇生後患者の長期予後を調査した。方法:2011年7月〜2013年3月に当院に入院した病院内・病院外心停止蘇生後患者の12カ月以上の長期予後を,電話などでの問い合わせにより後ろ向きに調査した。結果:期間中に心拍再開した病院内・病院外心停止患者は65例であった。生存退院症例が39例で,退院時Cerebral Performance Category(以下CPC)1-2が19例あった。心停止蘇生1年後の生存者は19例,長期CPC1-2が11例で,退院後に社会復帰できた者は9例であった。結論:当院に入院した病院内・病院外心停止蘇生後患者の生存退院率は60%と比較的良好であったが,1年生存率はその約半数であった。また神経学的予後良好者でも高次脳機能障害,ADL低下などから社会復帰が困難な例が認められた。蘇生後管理の影響や早期のリハビリの効果を検討すべきである。
著者
北村 浩一 米川 力
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.632-635, 2020-08-31 (Released:2020-08-31)
参考文献数
8

目的:外傷患者出場事案のうちSMRを行う対象に変更があったJPTECガイドライン改訂前後で全身固定の実施状況および現場活動に変化がみられたかを調査し,今後の病院前救急活動について検討する。方法:スクープストレッチャーでの固定を含むバックボードで全身固定またはSMRを実施した外傷患者293症例を対象とし,そのうち固定理由,現場活動時間および病院照会回数をJPTECガイドライン改訂前後で調査した。結果:現場活動平均時間は,改訂前後でそれぞれLoad and Go(L&G)が15分,10分,非L&Gが22分,24分。病院照会平均回数は,改訂前後でそれぞれL&Gが1.05回,1.00回,非L&Gが1.53回,1.74回であった。SMRを行い実際に脊髄損傷があった症例は,改訂前後で4.7%,10.3%。明らかにSMRが必要ない症例は,改訂前後で27%,21%であった。結論:JPTECガイドライン改訂前後とも適応外とされる全身固定が実施されており,現場活動時間短縮と傷病者予後のために救急隊員に対して継続的な教育・訓練が必要である。
著者
安田 康晴 佐々木 広一 坂口 英児 山本 弘二 吉川 孝次 友安 陽子 上杉 香鈴 二宮 伸治
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.806-815, 2022-10-31 (Released:2022-10-31)
参考文献数
20

背景:救急現場で使用されている眼球保護具の形状はさまざまであり,それら形状別の飛沫防御効果を検証する必要がある。目的:救急活動時に使用されている眼球保護具の形状による飛沫防御効果を検証し,適切な眼球感染防御対策について検討すること。対象:ゴーグルなど着用なし,眼鏡,全周カバー付きゴーグル,スポーツタイプゴーグル,シールドグラス,フェイスシールド,シールド付きヘルメット。方法:模擬飛沫発生装置により,救急活動での傷病者と救急隊員の距離・水平角・方位角別の眼球部の模擬飛沫付着を比較・検討した。結果:模擬飛沫の付着は本研究で用いたフェイスシールドでは認められなかったが,他の眼球保護具では認められ,眼鏡やスポーツタイプのゴーグル単体より,シールドグラスなどを併用することにより飛沫防御効果が高まった。まとめ:顔面全体を覆うフェイスシールドの着用や眼鏡やゴーグルにシールドグラスなどを併用することにより眼球への飛沫曝露リスクを軽減させることが示唆された。
著者
都能 和俊 松田 恵治
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.1-10, 2022-02-28 (Released:2022-02-28)
参考文献数
14

目的:頭部外傷CT検査における2D画像と3D画像の頭蓋骨骨折に対する診断能および読影時間の比較を行い,それぞれの画像の有用性を検証する。方法:頭部外傷で外傷性頭蓋内出血ありとCTで診断された104症例を対象とした。厚さ2mmのaxial像とcoronal像を2D画像として作成し,VR,SMIP,ray-summationを3D画像として作成した。診療放射線技師3名と放射線科医師1名による読影を行い,2D画像と3D画像の感度,特異度,読影時間,骨折の変位量を算出した。結果:2D画像と比較して3D画像は感度に関しては向上,特異度に関しては個人差が生じたが,診断能に有意差はなかった。2D画像,3D画像で見逃された骨折は変位量が少ない傾向にあったが,同一症例で2D画像と3D画像を使用すれば骨折を見逃すことはなかった。3D画像は2D画像と比較して有意に読影時間が短縮した。結論:2D画像と3D画像で見逃される骨折は異なり,高い診断能を得るには両方の画像を使用する必要がある。