- 著者
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渡邉 修
- 出版者
- 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
- 雑誌
- 高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
- 巻号頁・発行日
- vol.36, no.2, pp.177-182, 2016-06-30 (Released:2017-07-03)
- 参考文献数
- 19
東京都の高次脳機能障害者実態調査 (平成 20 年) によると, 高次脳機能障害の内訳として, 社会的行動障害, 注意障害, 遂行機能障害など, 前頭葉損傷に起因する症候が極めて多い。本稿では, これらのリハビリテーションについて論述する。(1) 注意障害に対する机上の注意訓練は, strategy training として有効である。また, タイムプレッシャーマネージメントも効果が高い。(2) 遂行機能障害に対し, 自己の能力を自覚したうえで, 動作を選択していく Metacognitive strategy training や意図した行動が実現するように, 「計画し, 構造化」できるように訓練を行うGoal management training は効果が高い。(3) 易怒性に対しては, その原因を明らかにし軽減するための環境調整や行動変容療法, 認知行動療法, 薬物療法に効果がある。(4) 病識低下に対し教示, 体験学習, 体験学習などが有効である。前頭葉損傷は重篤例であっても時間をかけて適応し回復していく。「社会脳」の再学習には, 地域をベースとした連携体制のうえでのリハビリテーションが必要となる。