著者
小林 大介 宮田 裕光
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PM-022, 2021 (Released:2022-03-30)

アーユルヴェーダはインド発祥の補完代替医療であり,体質ごとに異なる心理的特徴を呈することが伝統的に示されている。体質(プラクリティ)や体調(ヴィクリティ)の判断には,ヴァータ・ピッタ・カパの3 要素が用いられ,それらはトリドーシャ理論と総称されている。本研究では,トリドーシャ理論と,性格特性(Big Five尺度),気分状態(POMS-2 成人用短縮版),およびマインドフルネス(5因子マインドフルネス質問紙)との関連を,オンライン質問調査により検討した。大学生23名が,上記の心理学上の質問紙に加え,プラクリティとヴィクリティを判定する問診票に回答した。その結果,プラクリティにおいては,ピッタのみ情緒不安定性およびネガティブな気分状態と有意な正の相関を示し,調和性と有意な負の相関を示した。ヴィクリティにおいては,ヴァータがより多くのネガティブな気分状態と有意な正の相関を示し,カパのみマインドフルネスと有意な負の相関を示した。これらの結果は,アーユルヴェーダの体質論が,現代の心理学上の質問紙とも一定程度の関連があることを示唆しており,トリドーシャ理論に関する心理学的研究の実現可能性が示唆された。
著者
林 幹也
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PC-122, 2021 (Released:2022-03-30)

一般的に言って,組織には,判断力に優れた人,洞察力に富んだ人が存在すると考えられており,重大な問題が発生したときには彼らの助言や判断が尊重される。このような判断力は学歴や学識とはあまり関係がないように思われる。本研究は,日常的に単独行動を忌避しない人々が判断力に優れた人々であるとの仮説を提示した。集団で行動する場合,人は他の人々の総意や権威者の意向に従うことが多いが,単独で行動する場合には,様々な判断をすべて個人的に行わねばならないからである。本研究のオンライン調査(N=416)では,社会問題や,日常生活における様々な状況における判断の的確さを問う質問項目を作成した。また,日常生活の様々な行動を単独で行う場合に,どの程度の躊躇を感じると予想するかを測定した。その結果,一般的に単独で行うことの多い行動(銀行口座を開設する等)に対して,単独行動を躊躇する傾向が強ければ強いほど,社会的判断の的確さが低くなるという相関関係が見いだされた。因果関係は明らかにはならなかったが,以上の結果をもとに,単独行動を志向することによって判断力を涵養することが可能かを議論した。
著者
伏島 あゆみ 内山 伊知郎 原井 宏明 大矢 幸弘 漆原 宏次 坂上 貴之 村井 佳比子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.SS-001, 2021 (Released:2022-03-30)

古典的条件づけの発見が学習理論と行動療法に与えた影響の大きさは繰り返すまでもない。一方,古典に過ぎず,その影響は認知心理学などの新たな発見に置き換えられたと思っている人がいるかもしれない。そうではない。不安や強迫,アレルギーのようにありふれた病気の治療においても条件づけの概念は新しい示唆を与えてくれている。このシンポジウムではアレルギー疾患の専門家,不安や強迫の専門家,学習理論の専門家を招き,行動科学学会のミッションである基礎と臨床をつなぐことを目指す。アレルギーの予防や克服にはアレルゲンを回避するのではなく,早くからエクスポージャー(食べること)を通じて免疫寛容を誘導した方が良い(潜在制止)や,強迫に対するエクスポージャーと儀式妨害(ERP)において一般的な不安階層表に従った段階的な刺激ではなく,期待違反効果を狙った予想外の刺激を使う方が効果が高いことなどを示す。パブロフが残した影響は条件づけだけではない。ドグマに毒されず,事実だけを重視することを若手に説き続け,科学者をスターリンから守ろうとした。科学することはどういうことなのか? もこのシンポジウムの中で取り上げれれば幸いである。
著者
古村 健太郎 松井 豊
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第84回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PC-006, 2020-09-08 (Released:2021-12-08)

本研究の目的は,マッチングアプリ利用の心理的背景を検討することであった。調査対象は,インターネットパネルから抽出された390名であった。男女別に人口統計学的変数(恋人の有無,職業の有無)や心理変数(自尊心,賞賛獲得欲求,拒否回避欲求,孤独感,ぬくもり希求)が,リスクのある性行為への願望と関連し,アプリ利用と関連するという過程を想定し,構造方程式モデリングによる分析を実施した。その結果,3つの主たる結果が得られた。第1に,男女ともに,恋人がいない人や有職者のアプリ利用経験が多かった。第2に,男性において,自尊心や賞賛獲得欲求,拒否回避欲求はリスクのある性行為願望と関連するが,アプリ利用との直接的な関連は示さなかった。これらの心理変数の中でも,賞賛獲得欲求については,リスクのある性行為への願望と関連し,アプリ利用と関連する有意な媒介効果が示された。第3に,女性において,拒否回避欲求の低さやぬくもり希求の高さは,アプリ利用と直接的な関連を示した。以上の結果から,男女ともに,主に社会人が異性との出会いの場としてマッチングアプリを利用していることや,男女でアプリ利用の背景が異なる可能性が示された。
著者
宮崎 聖人
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PA-012, 2021 (Released:2022-03-30)

強化学習モデルとは,ヒトの行動選択の過程を数理的に表現するモデルであり,代表的なものにQ学習モデルがある。強化学習モデルを考える利点の一つは,主体が採用している学習メカニズムの情報を得られることである。しかし,これまで強化学習モデルは人間の手で作られてきたため,実際のメカニズムを反映したモデルを見落としている可能性がある。そこで本研究では,遺伝的プログラミングを用いて強化学習モデルを探索するAIを開発し,研究者のモデル構築をサポートすることを目指す。ところで,AIが強化学習モデルを探索できると一口に言っても,それがどのような条件下で可能かによって,実用性は大きく異なる。本研究では,AIの開発可能性を高めるために,「パラメータが特定の値をとり,選択されなかった行動の価値は更新されない」という特殊な条件下でのモデル探索を目指す。具体的には,Q学習モデルから人工的にデータを生成し,そのデータからAIが正しくQ学習モデルを探索できるか否かを検討する。開発したAIでモデル探索を行った結果,AIは正しくQ学習モデルを探索できた。今後は,より一般的なモデルを探索できるようAIを改良する予定である。