著者
松尾 智仁 瀧本 充輝 前川 鈴世 二村 綾美 嶋寺 光 近藤 明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00129, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
24

建材に使用されたアスベストは解体時等に大気中に飛散することが懸念されるため,行政等によるモニタリングが行われている.漏洩時の迅速な対応のためには,まず迅速なアスベスト検出手法が必要であるが,従来の方法には,技術者が顕微鏡観察によってアスベストを計数するため時間がかかるという課題がある.そこで本研究では,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いた位相差顕微鏡画像からのアスベスト検出手法および同手法をベースにしたアスベスト計数手法を提案する.CNNの学習には解体現場等から採取された試料および実験室で作成した試料を用いた.学習したモデルは検証データに対して,検出精度では適合率と再現率で定義されるF値が0.83,計数精度では相対誤差が11%という好成績を示した.
著者
津田 悠人 吉田 郁政 中瀬 仁
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00159, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
18

被害想定には大きな不確定性があり確定的に評価することは困難であるため,確率論的リスク評価が有効である.本研究では,落石対策のリスク評価に基づいた防護工の最適配置の意思決定のための支援手法の提案及びモデル地点の費用便益分析の例を示した.リスクは限界状態超過確率と影響度の積で定義した.実規模斜面落石実験より得られた到達位匿を対象に質点系解析による落石挙動の再現解析を実施し入力パラメタを決定し,落石の道路到達時のエネルギーに基づいた確率論的危険度評価を行った.防護工の初期建設費の総和に対する予算制約を設け,トータルコスト最小化に基づいた最適配置を示した.最後に,費用便益分析を行い,トータルコストが最小となる防護工の最適配置を示すだけではなく,予算制約内でリスク削減量を最大にする対策案を提示した.
著者
木下 尚宜 迫 美乃 福島 邦治 原 幹夫 吉武 勇
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00122, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
9

ポストテンション方式PC橋におけるグラウト充填調査手法の一つとして広帯域超音波法(WUT)がしばしば用いられている.本研究ではWUTによるグラウト充填調査の精度向上のため,コンクリート中を伝播する弾性波の基礎的な特性を調べた.探触子から発信される波動の指向性を調べるため,三角柱状の供試体を用いて各種の実験を行った.その結果,指向角が20~45°の範囲では透過波が明瞭に確認されたが,45~90°の範囲では低減することがわかった.また,反射波のスペクトルピークは約60~90kHzであった.WUTによるグラウト充填調査に有意な反射波をとらえるためには,弾性波の基礎的伝播特性を踏まえ,指向角が45°以内となるような探触子間隔とする必要があることがわかった.
著者
藤田 素弘 篠原 将太
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00050, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
11

本研究では,人口増加と人口減少が同時に進行している愛知県西部地域の名古屋市 20km 圏内のさまざまな都市において,子育て世代が満足する居住環境要因や必要とされる施策を検討するために,子育て世代を対象としたアンケート調査を行った.集計での満足度と重要度の分析では歩道の安全性が最も強い改善課題として挙げられた.重回帰分析の総合評価モデルからは地域の治安,歩道・公園の安全などが,地域の評判モデルからは街の景観が,転居意向モデルからは学校の教育レベル等の影響が大きいことがわかった.また人口指標や各評価項目の満足度による地域間比較では,社会増加率は満足度の交通利便性の項目と相関が高いが,出生率は自然の豊かさとの相関が高かった.以上のことはこの地域の今後の施策において配慮すべき事項として考えられた.
著者
清原 雄康 風間 基樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00303, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
23

火山灰質土であるしらすからなる野外盛土を2004年に作製してから2021年で18年が経過した.この間降雨時における体積含水率やサクションの変化,草木本類の有無が浸透挙動に及ぼす影響,貯留率や水分特性曲線による保水性の経年変化などを定量的に把握した.盛土表層付近では細粒分が顕著に減少,間隙比が増加し,内部でも植物根の侵入が生じていた.木本類が有る時の方が無い時より体積含水率は低めに推移し,降り始めから体積含水率が最大になるまでや表面流下が生じ始めるまでの所要時間,連続雨量は増加傾向で,葉面貯留の影響が生じた.断続的な降雨では表面流下に至るまでに時間を要した.盛土内部の貯留率は2018年以降で最大60%と2004年の最大80%より約20%低下し,水分特性曲線の履歴も保水性が低下する傾向に変化した.
著者
大場 雄登 松岡 馨 中西 克佳 岩波 基
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00286, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
20

都市部を中心に狭隘地での急速施工が要求される橋脚基礎工事があるが,従来工法では専有面積や工期の観点から実施が難しいのが現状である.そこで,上記に適した立坑構築技術の鋼製セグメント圧入工法を活用し,RC基礎を構築する工法に着目した.しかし,既存の鋼製セグメントは仮設地下壁の部材で,別途内部に本設RC基礎を構築する必要があり,合理化が望まれる構造であった.筆者らは,鋼製セグメントを本設RC基礎の本体構造における帯筋部材として評価する合成構造基礎とし,狭隘地に急速に基礎を構築する合理的な工法を提案した.本研究では,構造の具体化および,従来工法のRC基礎と提案した合成構造基礎の縮尺試験体を用いた正負交番載荷試験を実施し,従来工法のRC基礎と同等以上の耐震性能を合成構造基礎が有することを確認した.
著者
森河 由紀弘 佐藤 智範 前田 健一 篠田 裕重
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00208, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
41

今日まで多くの粘土瓦が使用されてきたが,近い将来には寿命を迎えた大量の廃棄瓦が発生する.また,粘土瓦を製造する際には不良品となる規格外瓦が一定量発生するが,これらの不要粘土瓦の再生原料以外のリサイクルはあまり進んでいない.そこで,本研究では規格外瓦を砕いたリサイクル材料である破砕瓦の構造物の裏込め材や裏埋め材としての適用性について,室内模型試験や実物大の現場試験により検討を行った.破砕瓦は軽量性や摩擦性が高いため,構造物に作用する水平土圧の低減効果を期待できることや,無補強でも高い支持力が期待できること,繊維補強材による支持力補強効果も期待できること,上載荷重の影響範囲は山砂とほぼ同様であることが明らかとなり,破砕瓦は裏込め材や裏埋め材として適用可能であることが分かった.
著者
向井 厚志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00152, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
7

福山港泊地において約2か月間の潮位観測を実施し,潮位変化に及ぼす局地気象学的な影響を調査した.福山港泊地は,瀬戸内海沿岸から内陸部に向けて約8.5km入り込んだ細長い水路である.この泊地では,局地気象学的な影響として,気圧変化に伴う吸い上げ効果の他,泊地奥方向の東風による吹き寄せ効果が観測された.台風接近時のような極端な気象条件の場合,これらの効果によって1mを超える海面上昇が生じる可能性がある.また,泊地では常時,周期42分程度の副振動が現れており,2021年9月の台風接近時には副振動によって約0.4mの海面上昇が生じた.これらのことから,満潮時に台風が接近する際には吸い上げ効果と吹き寄せ効果に加え,副振動による海面上昇が加わることで,平均海水面より潮位が3m以上上昇する可能性がある.
著者
相馬 悠人 車谷 麻緒
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00256, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
25

本論文では,既往の研究で著者らが構築した鉄筋コンクリートの破壊シミュレーション手法の妥当性および適用性を検証するため,鉄筋とコンクリート間の付着挙動を対象とし,実験結果と解析結果を比較した.付着性能の異なる丸鋼と異形鉄筋の引抜き試験を実施し,実験結果と解析結果を比較した結果,構成モデルや材料パラメータを変えることなく,鉄筋の幾何形状のモデル化を変えるだけで,それぞれの付着挙動を精度よく再現できることを示した.さらに,軸方向鉄筋に丸鋼および異形鉄筋を用いたRCはりの4点曲げ試験を実施し,実験結果と解析結果を比較することで,せん断破壊と曲げ破壊の異なる破壊モードを再現できることや,鉄筋周りの応力状態が異なる試験条件下においても鉄筋の付着挙動を再現できることを示した.
著者
横関 耕一 横山 薫 冨永 知徳 三木 千壽
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00248, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
24

実働交通荷重下で生じる最も疲労に厳しい条件下での各種鋼床版の疲労耐久性を明らかにし,比較することを目的とし,FEAを用いて試験条件を検討したうえで定点載荷疲労試験を実施した.疲労試験の荷重位置は縦リブと横リブとの交差部に大きなホットスポット応力を発生させる位置とし,試験荷重範囲は実働交通荷重下でのホットスポット応力範囲を再現できるように割り増した.試験結果から,縦リブと横リブとの交差部で横リブにスリットを設けない交差部は疲労耐久性が高く,特に縦リブに平リブを用いた構造は,設計荷重の1.0×107回載荷以上に相当する疲労耐久性が得られることがわかった.
著者
立崎 理久 樊 柚岑 山川 優樹 河井 正 溝江 弘樹 室井 亮
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00228, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
29

強風等の過大荷重による部材変形や,地盤変状に起因する基礎の変位(脚部不同変位)により,送電鉄塔に損傷が生じる事例が確認されている.本研究では有限要素解析により,こうした外的作用による鉄塔の損傷挙動と損傷後の耐荷力低下程度を評価した.さらに,損傷を受けた鉄塔について部材交換や脚部不同変位除去等の修繕を模擬した解析を行い,修繕による耐荷力の回復程度を評価した.その結果,損傷形態や修繕方法によって修繕効果に顕著な相違が確認された.このことから,効果的な修繕を行うためには,損傷形態に応じて適切な修繕方法を選択することの重要性が示唆された.異なる方法で修繕を行った鉄塔に対して再載荷したときの部材力の発生様態を比較することにより,損傷形態や修繕方法によって修繕効果に違いがみられる要因を考察した.
著者
秀熊 佑哉 宮下 剛 髙森 敦也 奥山 雄介 大垣 賀津雄 長谷 俊彦 原田 拓也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.22-00136, 2023 (Released:2023-05-20)
参考文献数
20

本研究では,鋼トラス橋の斜材や弦材に適用されている溶接箱形断面に着目し,溶接近傍の腐食が圧縮耐荷力低下に及ぼす影響の検討と,炭素繊維シート接着による圧縮耐荷力回復を目的とし,局部座屈先行の短柱と全体座屈先行の長柱を用いて圧縮試験を行った.その結果,溶接近傍の腐食であっても溶接ビードが残っていれば耐荷力は大きく低下しないものの,溶接切れを起こした場合は著しく耐荷力低下を起こすことが明らかとなった.しかし,溶接近傍の腐食および溶接切れを起こした場合であっても,軸方向に炭素繊維シート,周方向にアラミド繊維シートを貼り付けることにより,健全時に近い耐荷力まで回復することができた.また,溶接近傍の減厚や溶接切れ,補修後の耐荷力の評価方法について検討を行った.
著者
中澤 高師 Trencher Gregory 辰巳 智行 長谷川 公一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.22-00254, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
22

本稿の目的は,日本における二酸化炭素排出実質ゼロ宣言の波及過程を明らかにし,気候変動政策の転換を引き起こしたメカニズムの一端を解明することである.政策波及研究の知見に基づき,国と自治体の双方向の垂直的な影響,自治体間の水平的な波及過程,国際都市ネットワークからの波及,その他の促進/阻害要因を,日本政府を含む全国的な波及過程研究と神奈川県の事例研究から明らかにする.半構造化インタビューと文献資料調査の結果,まず国際都市ネットワークに繋がる先進的自治体が宣言し,それに注目した国が自治体へ宣言を呼びかけ,宣言自治体の増加が国によるゼロ宣言の一因となり,自治体の宣言がさらに促進されていくという,垂直的波及と水平的波及の連鎖過程が明らかになった.
著者
剣持 三平 小泉 淳
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.F5-0093, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
66

価値という言葉はさまざまな使い方をされており,その意味するところは必ずしも同じものとはなっていない.本研究は土木事業の合理的な整備のために,土木構造物のもつさまざまな価値を明らかにすることを目的としている.まず,土木構造物の現状を整理するとともに,一般的に考えられている価値を分類して,その中から土木構造物にとくに関係が深いと思われる価値を抽出した.つぎに,それらを実例とともに示し,土木構造物の価値構造を提示した.最後に,土木構造物の価値向上に向けた土木技術者の取組みについて言及したものである.
著者
貝戸 清之 竹末 直樹 水谷 大二郎 小林 潔司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.22-00255, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
43

近年,包括的民間委託による下水処理施設の管理事例が増加している.下水処理施設のアセットマネジメントの継続的改善を目指す場合,包括的民間委託による維持管理費用の低減や管理の効率化の効果を定量的に評価するとともに,ベストプラクティスを抽出し,管理・運営方法を改善することが重要となる.そこで本研究では,費用効率性に基づき下水処理施設の包括的民間委託導入効果を定量的に評価する.具体的には,確率的費用フロンティアモデルを用いて推定した費用効率性パラメータの分布をノンパラメトリック検定により比較することにより,包括的民間委託導入効果を定量化する方法論を提案する.当該方法論を全国の下水処理施設の維持管理費用や処理水量で構成されるデータベースに適用し,実際の包括的民間委託の導入効果を定量化する.
著者
平野 誠志 加賀谷 悦子 宮里 心一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.22-00238, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
7

著者が所属する道路関連会社において,2020年4月から5月にかけて20名の新型コロナウイルス感染者が発生し,クラスターと呼ばれる感染者の集団が発生した.本研究では,事前に策定された既存の感染症BCPに基づき実施した対策について,レジリエンスによる再評価を実施した.すなわち,感染症リスクを低減し感染拡大から回復する力を「レジリエンスの大きさ」,実際の感染者や濃厚接触者,自宅待機者などが通常業務に及ぼす影響を「損害の大きさ」と定義し,両者を比較した「総合評価」を用いて対策の妥当性の再評価を行った.さらに,再評価結果および既存の感染症BCPの準用結果を用いて,新型コロナウイルス感染症を対象にしたBCPに反映すべき対策の提案を行った.
著者
西澤 辰男 寺田 剛 藪 雅行 小梁川 雅 竹内 康
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.22-00309, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
25

FWD試験によってコンクリート舗装の荷重支持性能を評価するための逆解析法において,重錘落下によるFWD荷重の動的効果が構造評価に及ぼす影響について調べた.土木研究所円形走行路にコンクリート舗装を建設し,49kN換算輪数520万輪を走行させながら定期的にFWD試験を行った.このFWD試験結果を静的逆解析法と本研究で新たに開発した動的逆解析法によって解析し,劣化Stage,層弾性係数,曲げ応力を求めた.中央部の劣化Stageはほぼ同様の評価となった.目地部においては動的逆解析法による方がやや厳しい判定となったが,劣化が進んだ場合はほぼ同様であった.曲げ応力については,動的逆解析法による方がやや大きな値となった.層弾性係数についてはばらつきが大きく両者に明確な相関は得られなかった.
著者
青木 宏明 高橋 秀明 田邉 成 前川 宏一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.22-00225, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
21

塩分を含む地下水の流入による地中RC構造物の鉄筋腐食が報告されている.地中構造には地盤沈下等の外荷重が作用する場合もあり,塩害劣化の影響が重畳した場合の予測は重要性を増してきている.本研究では鋼材腐食させたRC中空円形試験体の8割を地中に埋設した載荷実験を行い,地中拘束下における外荷重の影響を調べた.その結果,地中円形トンネル構造の変形能と耐力は鉄筋腐食の影響はあまり顕著ではないが,先行曲げひび割れに沿って断面を貫通するせん断破壊が生じる場合があることを示した.このせん断破壊形態は,鉄筋の腐食域に非対称性があると,腐食域以外の健全部で起こり得ることを示した.さらに,曲げひび割れに沿う後続のせん断破壊のせん断耐力は,先行の耐力式を下回る場合があり,維持管理における留意点を明らかにした.
著者
韓 旖睿 白 琳 孫 氷玉 湯淺 かさね 池邊 このみ
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.D1-0112, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
68

雪形は「山腹の雪の消え具合によってできる形」として定義されているもので,かつては農事暦として利用されてきたが,農耕の進歩などにより各地で伝承が消えつつある.2005年の『農林水産業に関連する文化的景観の保護に関する調査研究報告書(文化庁)』では,「独特の気象によって現れる景観」と「複合景観」にて6座の山の雪形を文化的景観候補として選出されたが,文化的景観の条件との整合性から,まだ認定されているものはない.本研究では,a)全国の雪形とその分布の特徴の把握,b)雪形データベースの構築及び評価項目の設定,c)全国の雪形の景観特性の分析と類型化,d)雪形に関する産業・文化特性と景観特性の相関性の明確化,以上4つの目的を通して雪形の価値評価について検討したものである.
著者
杉本 達哉 高田 観月 高山 雄貴 髙木 朗義
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.22-00115, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
34

近年,空間経済学に基づく理論の計量分析への応用が進められている.しかし,その分析枠組は,我が国の長期的な人口分布変化の傾向1)(e.g., 大都市の人口増加)とは真逆の“地域間輸送改善は必ず地方都市の人口を増加(大都市の人口を減少)させる”という結果しか出力しない2).これは,輸送改善の影響の適切な予測が不可能であることを意味する重要な課題である.本研究は,企業間の価格競争を考慮できる独占的競争理論3)を応用することで,この課題を解決する計量分析手法を開発する.そして,日本を対象とした計量分析により,本手法が“地域間輸送改善が大都市の人口を増加させる”という結果を出力できることを示す.