著者
白木 仁 田淵 健一 児玉 啓路 宮川 俊平 上牧 裕 天貝 均
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, 1983-12-01

陸上競技における走、跳、投の種目別のスポーツ障害の特徴を明らかにし、実際の障害予防を行なう上での基礎的資料を得るために・筑波大学陸上競技部男子部員114名に対しアンケート調査を行った結果、次のことが明らかになった。短距離では、大腿後面の肉離れが半数を占め、中・長距離では、下腿の腱鞘炎、腱炎、骨膜炎、疲労骨折などの過労性の障害が半数を占めていた。跳躍では、大腿部の肉離れと足関節捻挫が同様の頻度(22.8%)で上位を占め、投てきでは、肘の疼痛と腰部の障害が7割を占めていた。
著者
井上 恵子 西川 〓八 木村 直人 広田 公一
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.156-165, 1992-04-01
被引用文献数
2 2

日常継続的な運動を行っていない6名の男子学生(23〜25才)に対し, 主に上腕二頭節がコンセントリックおよびエクセントリック収縮となるような重量負荷運動を課した. 運動強度は20%MVCであった. そしてその運動の3週間後に同一運動(2nd Ex.)を再負荷し, 筋痛と血清CK活性値, および白血球数におよぼす影響について検討し, 以下の結果を得た. 1. 血中乳酸値は, 1st, 2nd Ex.とも運動直後に有意(p<0.01)な上昇を示し, 運動終了6時間後には安静レベルに戻った. 血中乳酸値は, 両運動間ではとんど差はみられなかった. 2. 白血球数は1st Ex.および2nd Ex.ともに運動終了直後から6時間後まで一過性に増加し, その後安静レベルに戻ったが, 運動終了7日後に再び上昇を示した. 1st Ex.の運動終了6時間後と7日後に, 5%レベルで安静値より有意な上昇が認められた. 3. 血清CKは, 1st Ex.において5名に安静値からの著しい上昇(266〜763%)がみられ, 上昇のピークは運動終了3〜4日後と遅延した上昇を示した. これに対し2nd Ex.のCKは僅かな変動しか示さなかった. 血清CK値の両運動間には有意(p<0.01)な差が認められた. 4. 1st Ex.の運動後, 3〜7日間に亘って被検者全員に筋痛が認められ, そのピークは運動終了2日後であった. しかし2nd Ex.においては, 筋痛の程度は軽く, 消失も早くなる傾向が認められた. 5. 2nd Ex.において, 1st Ex.と同程度の筋痛が見られた被検者YIについては, CKについても1st Ex.と同様の上昇が認められた. しかしその値は, CK上昇が見られた5名中最も低い値であった. 以上のことから, 1st Ex.により, 新組織に損傷を与え筋痛を引き起こしたものと思われるが, 2nd Ex.で認められた筋痛と白血球数およびCK逸脱の低減は, 筋組織の損傷後修復過程が進行し, 3週間後の運動負荷に対し耐えうる準備ができたことによると推察された. また, 1st Ex.においてCK上昇の程度が低かった者には2nd Ex.においても筋痛とCKの低減が認められず, 筋組織に適応を引き起こす閾値が存在することが推測された.
著者
岩川 孝志 中村 好男 村岡 功
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.491-499, 2001-08-01
被引用文献数
1 2

本研究では自転車ペダリング運動中の活動筋における筋酸素化動態を自転車競技選と一般学生とで比較した.被験者として大学自転車部員6名 (サイクリスト群) と一般学生5名 (非サイクリスト群) を用いた.被験者には自転車エルゴメータ上で2分間の安静を保たせた後, 50 Wattでのウォーミングアップを2分間, 引き続いて150 Wattでの本運動を5分間行わせた.ただし, 本運動でのペダル回転数は40, 60, 90, および120 rpmの4種類とし, それぞれを1試行ずつ計4試行を行った.また, どの試行においてもウォーミングアップ時のペダル回転数は60 rpmとした.安静時から運動終了まで左脚外側広筋部の筋酸素化動態を近赤外空間分解法によって測定した.<BR>Oxy-Hb/Mbはサイクリスト群で非サイクリスト群と比較して有意に高い値を示したが, 群とペダル回転数による有意な交互作用は観察されなかった.従って, ペダル回転数の変化に対する筋酸素化動態の応答には, 両群で違いがないことが示唆された.<BR>またペダリング頻度の増大に伴って全身の酸素消費量は増大し, エネルギー効率が低下する一方で, Oxy-Hb/Mbはペダル回転数が毎分90回転までは有意な変化がなく, 毎分120回転に達すると安静時, および他のどのペダル回転数と比較しても有意に低値を示した.さらに, Deoxy-Hb/Mbも同様にペダル回転数が毎分90回転に達するまでは有意な変化はなく, 毎分120回転に達すると安静時, および他のペダル回転数と比較して有意に増大した.<BR>このことから, 毎分120回転では外側広筋部において脱酸素化が亢進したものと考えられ, 毎分120回転では外側広筋において酸素消費が, 低い回転数と比較して急増したことが示唆された.このことは逆に, 毎分120回転前後にペダル回転数を増大させると, 外側広筋での効率が大きく低下する可能性を示しており, 外側広筋での効率を急に低下させない最も高いペダル回転数は毎分90回転前後で発現すると思われる.
著者
平野 弘之 渡辺 好博 大貫 義人
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.485-493, 1996-10-01
被引用文献数
1 1 1

国民体育大会出場レベルの男子水球選手で15から16才 (平均年齢15.6±0.7才) に整形外科的メディカルチェックを6カ月のあいだ3回にわたり, 身長, 体重, 視力, 外傷歴, 手術歴およびスポーツ歴の総合6項目と身体各部位の整形外科的診察50項目について追跡調査し, 以下の結果を得た.<BR>1.中学2年生次にスポーツ外傷が多い.<BR>2.プールサイドでの不注意や悪ふざけに起因する不慮の事故への注意と指導が必要である.<BR>3.体脂肪率, 体格指数および除脂肪体重は選手間で均一の値を示した.<BR>4.腸脛靱帯炎と鵞足筋腱炎はメディカルチェック時の指導で予防可能であった.<BR>5.国体レベルの水球競技に経時的な整形外科的メディカルチェックは有意義であった.
著者
山本 正嘉 山本 利春
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.82-92, 1993-02-01
被引用文献数
9 2 7

自転車エルゴメーターを用い, 5秒間の全力駆動を8セット反復するという激運動を行い, 33分間の休憩後に同じ運動を繰り返した.休憩中10分間にわたり, ストレッチング, スポーツマッサージ, 軽運動 (被検者の無酸素性作業閾値の80%相当の強度) , ホットパックの4種類の回復手段を実施し, これを実施しないで安静にして回復した場合と比較検討した.疲労回復の指標として作業能力および血中乳酸濃度 (La) の回復をみた.被検者は各回復手段について12名ずつとした.結果は以下のとおりである.<BR>1.ストレッチングとスポーツマッサージは, Laの回復には有意な効果をもたらさなかったが, 作業能力の回復には有意な効果をもたらした.<BR>2.軽運動は, Laの回復には有意な効果をもたらしたが, 作業能力の回復には有意な効果をもたらさなかった.しかし, 作業能力の回復が悪かった被検者の多くは, 軽運動の運動強度が強すぎたと訴えていたことから, これらの被検者には運動強度をさらに低く設定することによって作業能力の回復にも有意な効果がもたらされる可能性がある.<BR>3.ホットパックは, Laの回復にも, 作業能力の回復にも有意な効果をもたらさなかった.<BR>4.1~3の結果から, 激運動後に作業能力の回復を促進する手段として, ストレッチングとスポーツマッサージは有効であると考えられる.軽運動については, 運動強度が適切に処方されるならば有効と考えられるが, さもないと逆効果となる可能性もある.<BR>5.Laの回復率と作業能力の回復率との間には, 有意な相関関係は認められなかった.したがって, 作業能力の回復を規定するのはLa以外の要因であることが示唆された.また, Laを作業能力の回復を表す指標とすることには問題があることが示唆された.
著者
齋藤 義信 岩井 一師 中里 浩一 入江 一憲 水野 増彦 中嶋 寛之
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.99-108, 2009-02-01
被引用文献数
1 1

The purpose of this study was to clarify physical characteristics related to low back pain (LBP) in collegiate track and field athletes. We particularly focused on the nature of the track and field. The subjects were 21 male collegiate track and field athletes including only sprinters, hurdlers, long jumpers and triple jumpers. The examined parameters were physical characteristics, isokinetic flexor and extensor strength in the knee and trunk regions. The evaluation of LBP was estimated by a questionnaire test and orthopedic surgeons' diagnosis. According to these evaluations, we divided all track and field athletes into two groups ; LBP group (n=11, 52.4%) and no LBP group (n=10, 47.6%). As a result, a take-off leg of knee flexor/extensor strength ratio in the LBP group was significantly lower than that in the no LBP group (P<0.05). The LBP group showed a significant difference between a take-off leg and a lead leg in knee flexor strength compared with the no LBP group (P<0.05). The LBP group has been short engaged in the track and field than the no LBP group (P<0.05). In the trunk flexor and extensor strength, there was no significant difference between the LBP and the no LBP group in this study. These results suggest that the imbalanced knee muscle strength may be one of some factors related to chronic low back pain in collegiate track and field athletes.
著者
寺尾 保 三好 基治 成澤 三雄 吉岡 利忠 中野 昭一
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.235-244, 1984-10-01
被引用文献数
1

長期間にわたって持久的トレーニングを行ってきている長距離ランナーと,日常,運動習慣を有していない者を被験者として,それぞれの安静時,運動中,運動終了後のリポ蛋白代謝について検討した.被験者には,毎週150km以上走行している大学陸上部長距離ランナー5名,ならびに非運動群として文学部学生5名の計10名を選んだ.なお,これらの被験者は,すべて肥満,高脂血症,喫煙,加齢,疾病などを有していない.実験方法は,60%V^^・o_2maxの運動強度で30分間固定負荷法による自転車エルゴメーター運動を行わせた.その結果を示すと次のごとくである.1)安静時における長距離ランナー群は,非運動群に比べて,VLDL中のCho.,TG,PLが低く1%水準で有意な差を認め,一方,HDL中のCho.,PLが逆に増加し,5%水準で有意の差を認めた.2)安静時におけるVLDL-TGとHDL-Cho.,VLDL-TGとHDL-PLの関係は、それぞれ1%,0.1%水準で有意な負の相関を認めた.HDL-Cho.とHDL-PLの関係は,0.1%水準で有意な正の相関を認めた.3)最大下運動を行った場合,長距離ランナー群では,運動開始とともにVLDL中のTGが低下し,運動終了直後約12%の減少を示した.しかし,非運動群では,ほとんど変化がみられず,長距離ランナー群とは異なっていた.また,両群ともしDLおよびHDL中のPL,Cho.に変化がみられなかった.以上の成績から,運動に対応するエネルギー産生に際し,長距離ランナー群は,非運動群に比較して脂質を利用する割合が多く,今回行った最大下運動においても運動中VLDL中のTGが分解してエネルギーを供給していたことが考えられた.しかし,LDLおよびHDL中のPL,Cho.に変化がみられなかったことから、一過性の運動においてはVLDL中のCho.,PLが他のリポ蛋白へ転送される可能性の少ないことを示していた.しかし,安静時において両群間を比較すると,VLDLとHDL中の脂質組成に有意な差や相関が認められたことから,長期間にわたる持久的な運動の積み重ねによって体内リポ蛋白代謝過程に微妙な変化をきたさせ,VLDL中のPL,Cho.が徐々にHDLへ転送されていることが考えられた.