著者
馬場 嘉信 富崎 理代 角田 ちぬよ 田中 淳子 秀 佳余子 津波古 充朝
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.42, no.12, pp.853-857, 1993-12-05
被引用文献数
4 1

DNAの高分解能分離を達成するために, キャピラリーゲル電気泳動におけるゲル組成が, DNAの分解能に与える影響について検討した.1本鎖DNAの分離においては, 非架橋ポリアクリルアミドのゲル濃度について検討し, 最適条件下では, オリゴマーから250塩基までの1本鎖DNAが60分以内に1塩基の違いのみでベースライン分離された.又, 2本鎖DNAの分離においては, 架橋ポリアクリルアミドゲルのゲル濃度及び架橋度を検討し, 最適条件下では, PCR生成物を含む100から12000塩基対の2本鎖DNAが, 40分以内に10塩基程度の違いで分離された.その際の理論段数は, 1m当たり数百万段であった.
著者
本水 昌二 大島 光子 胡 焔
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.667-672, 1993-11-05
被引用文献数
1

2,3,4位にアルキル基を持つN-アルキルピリジニウム塩(アルキル基 : CH_3-, C_2H_5-, C_3H_7-)26種を合成し, イオン会合抽出性について検討した.水-クロロホルム抽出系で, 対イオンとしてエチルオレンジのジクロロ誘導体(Cl_2-EO^-)を用いて抽出定数(log K_<ex>)を求めた.アルキル基の炭素数が増すと抽出性も増し, 抽出定数への寄与分は2,3,4位の置換基では平均0.59,N-置換基では平均0.54であった.アルキル基が同じ場合には, 抽出定数は4位>3位>2位置換体の順に小さくなる.2位置換体は隣接のN-置換基との重なり効果の結果, 3,4位置換体よりも小さくなる.基本骨格(C_5H_5N^+-)の抽出性の尺度(C : >N^+<を基準C=0とする)は約2.2となり, メチレン基の数から単純計算した値(0.59×5=2.95)よりも0.75小さい.これはベンゼン環(-C_6H_5)の単純計算値と実測値との差(0.64)とほぼ一致しており, 閉環効果による抽出性(疎水性)の減少分と見なされる.
著者
篠原 亮太 堀 悌二 古賀 実
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.27, no.7, pp.400-405, 1978-07-05
被引用文献数
2

環境中に残留する微量のo-,m-, p-ターフェニルの分析法を抽出,クリーンナップ,マスフラグメントグラフィー(MF)による分離について検討し,この分析法が実際試料に適用しうることを確認した.水からの抽出はn-ヘキサンによる液-液抽出法を用い,底質からはn-ヘキサンを抽出溶媒とした連続抽出法を用い,それぞれ定量的な回収率を得た.妨害物質の除去はn-ヘキサン;ベンゼン(4:1)を溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで行った.微量のターフェニル異性体のMFにおける分離は,1%OV-101に0.1% Bentone 34を混合したもの,2%OV-101に1% BMBTを混合した2種の液相が満足できる結果を与えた.MFにおける検出限界は,水(200ml)の場合o-, m-, p-はそれぞれ0.007ppb,0.025ppb,0.05ppbであり,底質(10g)の場合はそれぞれ0.14ppb,0.5ppb,1.0ppbであった.これらの分析法を用いて北九州地方の海水,河川水とその底質について検察した結果,水はすべて不検出,底質からはo-, m-, p-はそれぞれ(0.8〜390)ppb, (1.1〜210)ppb, (1.7〜180)ppbの範囲で検出された.
著者
森 定雄 西村 泰彦 高山 森 後藤 幸孝 永田 公俊 絹川 明男 宝崎 達也 矢部 政実 清田 光晴 高田 かな子 森 佳代 杉本 剛 葛谷 孝史 清水 優 長島 功 長谷川 昭 仙波 俊裕 大島 伸光 前川 敏彦 中野 治夫 杉谷 初雄 太田 恵理子 大関 博 加々美 菜穂美 上山 明美 中橋 計治 日比 清勝 佐々木 圭子 大谷 肇 石田 康行 中村 茂夫 杉浦 健児 福井 明美 田中 鍛 江尻 優子 荻原 誠司
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.497-504, 1995-06-05
被引用文献数
9 9

サイズ排除クロマトグラフィーによる分子量測定において, 異なる測定機関における分子量測定値がどれくらい異なるかを知る目的で, 傘下26測定機関で共同測定を行った.試料はポリスチレン(PS)3種, ポリメタクリル酸メチル(PMMA)2種で, 被検試料の測定条件と較正曲線作成条件は各測定機関で用いている要領で行った.その結果, 各測定機関での相対標準偏差は1〜3%と良好であったが、26測定機関による全平均値の相対標準偏差は13〜32%となった.測定データを吟味し, 望ましい測定条件からかけ離れているデータを除外した場合, PSのRSDは数平均分子量で13.6〜15.5%, 重量平均分子量で6.0〜9.4%となり.又PMMAではそれぞれ14.3〜16.0%, 7.8〜12.2%であった.
著者
山崎 裕康 桑田 一弘 宮本 弘子
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.317-321, 1978-06-05
被引用文献数
6 9

大量の大気を吸引できるポリウレタンフォームプラグ(PUFP)法を,ガラスファイバーフィルター(GF)を通過する環境大気中の多環芳香族炭化水素(PAH)の捕集に応用した.ハイボリュームエアーサンプラーにGF(20.3×25.4cm)と2個のPUFP(直径10cm × 5cm)を取り付けた.大気を(0.75〜0.8)m^3/min.24時間吸引し,GFとPUFP上に抽集されたPAHを水素炎イオン化検出器(FID)付きガスクロマトグラフで定量した.本方法の回収率はフェナントレンでフ9.2%,フェナントレン以外のPAHで90%以上であった.4環より少ない環を持つPAHはGFでは完全には捕集できず,これらのPAHを捕集するにはGFの後ろにPUFPを取り付ける必要がある.
著者
受田 浩之 中田 勇二 松本 清 筬島 豊
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.39, no.11, pp.723-727, 1990-11-05
被引用文献数
7 7

単一の酸素電極でワイン中のL-リンゴ酸とエタノールを同時定量するフロー型酵素センサーを開発した.L-リンゴ酸の定量にはリンゴ酸脱水素酵素(MDH), ジアホラーゼ(DI)及びメディエーターとしてビタミンK_3を, 又エタノールの定量にはアルコール酸化酵素(AOD)を用いて, 各反応で消費される酸素量を酸素電極で測定することにより, 各成分濃度を間接的に求めた.試料は並列に配置したMDH, DI固定化リアクター及びAOD固定化リアクターに同時に注入され, 各リアクターを通過した後, 合流され, 酸素電極を装着したフローセルに送液された.L-リンゴ酸定量用流路{ビタミンK_3飽和0.05Mピロリン酸塩緩衝液(pH9)}及びエタノール定量用流路{0.05Mリン酸塩緩衝液(pH8)}の流量を各々0.5及び1.0ml min^<-1>に設定したところ, 二つのピークが重なりなしに得られ, 定量範囲は各々0.09〜0.9mM, 18〜50mM, 分析速度は15検体/時であった.本法をワインの分析に適用したところ, F-Kit法及びHPLC法との良好な一致が認められた.
著者
森 定雄 高山 森 後藤 幸孝 永田 公俊 絹川 明男 宝崎 達也 矢部 政実 高田 かな子 清水 優 大島 伸光 杉谷 初雄 大関 博 中橋 計治 日比 清勝 中村 茂夫 杉浦 健児 田中 鍛 荻原 誠司
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.447-453, 1996-05-05
被引用文献数
7 2

較正曲線作成用標準試料の相違が平均分子量計算値にどのような影響を与えるかを比較し検討した.ここではポリスチレン(PS)試料の重量平均分子量(M_w)で, 示差屈折計で得られた値のみについて比較した.較正曲線作成に同一供給会社の標準試料を用いた場合(9測定機関)の第1回ラウンドロビンテスト(RR-1)(分子)と第2回テスト(RR-2)(分母)のM_wの比は平均値で1.03〜1.04となった.このうち最も大きい比は1.17,最も小さい比は0.95であった.高分子領域の標準試料濃度を低くし, 1溶液中の標準試料混合数は3〜4点とし, 同じけた数の分子量領域では標準試料使用数は少なくとも2点用い, 適切なカラム組み合わせのもとで測定することによりこの比は1.01〜1.03とすることができた.較正曲線作成用標準試料の供給元が異なっても, 測定点を通るスムーズな直線ないし三次式が求められる限り, 試料の分子量測定値に大きな差が認められないことが分かった.いいかえると, 同一標準試料を用いても, 測定点をスムーズに通らない較正曲線では分子量測定値に大きな差が認められた.比較検討の結果, 不適切なデータを除いたRR-1とRR-2の全平均値のRSDは約3.9%となり, このときの三つのPS試料のM_wは次のようになった.PS-1 3.98×10^5,PS-2 2.40×10^5,PS-3 1.66×10^5.これらの数値は標準試料の供給元の相違によらず, 現時点における適切な測定条件を考慮して得ることができる平均分子量値とRSDであると結論付けられる.
著者
西川 雅高 安部 喜也 溝口 次夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.34, no.11, pp.659-664, 1985-11-05
被引用文献数
6 5

誘導結合プラズマ発光分析法により,降水中の諸元素の分析を行う場合,直接測定できる元素は限られる.より多くの元素種を測定するためには試水の濃縮が必要である.試水の汚染と容器への吸着を防ぎ,しかも効率よく濃縮する方法として,ロータリーエバポレーターにテフロン製(FEP)容器を組み込んだ蒸発濃縮装置を開発し,従来のガラス製容器による方法と比較した.その結果,器壁からの元素の溶出や吸着などの誤差要因は無視してよいことが分かり,従来のガラス製容器を用いた方法では分析が困難であった降水中のホウ素,ケイ素も同時に分析が可能になった.実試料への応用として雨水及び南極の表層雪中の24元素の分析を行った.
著者
本水 昌二 桐栄 恭二
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.213-218, 1978
被引用文献数
5 9

第4級アンモニウムイオンと金属錯陰イオンとのイオン対の溶媒抽出系に適当な1価陰イオンを加えることにより,過剰の試薬を有機相から水相に移し,目的とする金属錯陰イオンのみを選択的に抽出することができる.これにより,今まで不可能であった波長での吸光光度定量も可能となり,又感度,再現性もよくなる.この原理により,2-ニトロソ-1-ナフトール-4-スルホン酸(ニトロソーNW酸)を用いる銅の吸光光度定量法を確立し,鉄鋼試料中の銅の定量に応用した.<BR>すなわち,鉄鋼試料を王水で溶解し,過剰の酸を加熱除去した後定容とし試料溶液とする.この一定量を抽出管に取り,アスコルビン酸で銅を還元し,塩化物イオンの存在下,ゼフィラミンークロロホルム溶液と振り混ぜて銅(I)-クロロ錯体を抽出する.有機相に希過酸化水素水とニトロソ-NW酸溶液を加え振り混ぜて銅(II)-ニトロソ-NW酸錯体を抽出する。有機相を0.35M塩化ナトウリム溶液(pH9)と振り混ぜ過剰の試薬を除去した後,307.5nmで吸光度を測定する.この波長におけるモル吸光係数は4.5×10<SUP>4</SUP>1mol<SUP>-1</SUP>cm<SUP>-1</SUP>である.この方法により,NBS鉄鋼標準試料中の(0.06~0.35)%程度の銅が定量された.
著者
太田 一徳 原田 浩幸 中嶋 重旗 田中 一彦
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.141-146, 1992-03-05
被引用文献数
6 1

市販のイオンクロマトグラフィー(IC)用陰イオン交換体より大きな交換容量を有するはん用のイオン交換体(シリカ系強塩基性陰イオン交換体)と大きな溶出力を有する芳香族トリカルポン酸(トリメリト酸)系溶離液の組み合わせから成る無機陰イオンの導電率検出ICを開発し, 酸性雨に関連する実際試料に対して適用した.その結果, 1.25mMトリメリト酸溶離液(pH 4.65)と内径4.6mm, 長さ100mmの分離カラムを用いることにより8種の陰イオン(PO_4^<3->, Cl^-, NO_2^-, NO_3^-, I^-, SO_4^<2->, SCN^-及びS_2O_3^<2->)を25分以内で良好に分離, 導電率を検出することが可能であった.最適IC条件下の検量線は, 一価陰イオンにおいて, 0.3mMまで, 二価陰イオンにおいて0.2mMまで各々直線であり, これらの検出限界(S/N=3)は, 10ng/mlオーダー(Cl^- 10ng/ml, NO_3^- 25ng/ml及びSO_4^<2-> 28ng/ml)であった.本法を酸性雨及び酸性雨による土壌(黒ぼく土及び赤ぼく土)溶出(抽出)水中の無機陰イオン分析に適用したところ, その中に含まれるCl^-, NO_3^-及びSO_4^<2->を良好に分離定量することが可能であった.その結果, 土壌のSO_4^<2->吸着量は, 雨水中の全陰イオン濃度及びpHに依存することが明らかとなった.
著者
佐々木 与志実
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.237-241, 1978-04-05
被引用文献数
2

鉛(II)のエチルキサントゲン酸錯体{Pb(EtX)_2と略記}を作成し,これのクロロホルム溶液を滴定剤とする銀(I)と銅(II)の抽出滴定法を作成した.銀(I){(0.2〜8.8)mg}と銅(II){(0.1〜2.2)mg}を含む水溶液を分液漏斗に採り,酢酸塩緩衝溶液を加えてpHを3〜5にする.滴定剤を加えて振り混ぜ,有機相を捨てる.この操作を,有機相が黄白色{Ag(EtX)の色}から,かっ色{Cu(EtX)_2}になるまで繰り返す{銅(II)の終点}.更に抽出滴定を続け,かっ色から無色{Pb(Etx)_2}になるまで繰り返す{銅(II)の終点}.初めの振り混ぜで抽出定数の大きい銀(I)が鉛(II)と交換抽出され,次に銅(II)が鉛(II)と交換抽出される.銀ろう及び合金中の銀と銅を本法で定量できた.
著者
下山 進 野田 裕子 勝原 伸也
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.93-100, 1998-02-05
被引用文献数
7 7

日本古来の浮世絵は, 最も広く世界に行き渡った絵画形式であり, 西洋文化に対する芸術的衝撃, 特に多くの印象派の画家たちに与えた影響は"ジャポニズム"と言われる文化現象として知られている. 1823年ごろに刷られた葛飾北斎の浮世絵"四日市"の赤色の着色料(R1〜R3)と黄色の着色料(Y1〜Y3), そして1821年ごろに刷られた五渡亭国貞の浮世絵"木母寺暮雪"の青色の着色料(B1〜B3)について, それらの非破壊分析を光ファイバーを用いる三次元スペクトル法によって実施した. 色刷り標準試料のそれぞれと三次元蛍光スペクトルの等高線図を比較した結果, 赤色の着色料はベニバナの花弁から得られた染料"サフラワー", 黄色の着色料はウコンの根から得られた染料"ターメリック", そして青色の染料は藍の葉から得られた染料"インジゴチン"であることが明らかとなった.
著者
溝田 隆之 中村 徹也 岩崎 廉
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.41, no.9, pp.425-431, 1992-09-05
被引用文献数
9 7

グロー放電質量分析法により高純度モリブデン中のppb〜ppmレベルの微量37元素を迅速定量した.約3時間にわたる繰り返し測定の結果から, 王水で洗浄した試料について更に表面汚染を除くために約30分, 特に超微量の炭素, 酸素, 塩素の定量では2時間の予備放電が必要なこと, 大部分の元素についての再現性は相対標準偏差で3%以下であることが分かった.又ICP-AESなど他法による分析結果との比較ができたナトリウム, アルミニウム, 鉄など10元素については, 一方の分析結果が他方の2倍を超えることがなく, ここで使用したVG社推奨の相対感度係数が実用上満足すべきものであることが分かった.なお, チタンはモリブデンの二価イオンの妨害のため定量困難であり, 亜鉛, 銀についても何らかの妨害が予想された.
著者
岡田 往子 平井 昭司
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.249-254, 1993-04-05
被引用文献数
6 3

半導体構成材料として広く利用されている高純度Al中のUとThを陰イオン交換分離法とLaF_3共沈分離法を伴う放射化学中性子放射化分析法(RNAA)を用いて定量した.次に試料溶液を陰イオン交換樹脂に流して, U及びThの分析目的核種である^<239>Np及び^<233>Paを吸着させ, 主な不純物を選択的に分離した.次に9MHCl-5MHFて^<239>Np及び^<233>Paを溶離した後, LaF_3共沈で^<239>Npと^<233>Paとを沈殿させ, わずかな不純物からの分離を行った.その後, 濾紙に捕集した沈殿物のγ線測定をした.より低レベルの分析を可能にするために, 試料重量の増加を現在放射化分析ではん用されている原子炉の中央実験管のカプセルに入る最大10g程度まで行い、それに伴う自己遮へい効果及び自己吸収効果の検討を行った.結果として, 試料重量の増加による照射時の自己遮へい効果はなかった.測定時の自己吸収効果は機器中性子放射化分析(INAA)では試料重量による補正が必要となった.10g程度の試料でRNAA法で定量し, Uで2〜9ppt, Thで9〜14ppt程度の分析が可能となった.
著者
村北 宏之 林 守正 三上 博久 石田 泰夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.236-240, 1986-03-05
被引用文献数
1 6

高速液体クロマトグラフィーによる血中薬物の分析において,カラムスイッチング法を用いた前処理の自動化を試みた.目的成分を前処理用カラムに保持させた後,流路切り換えにより分析用カラムに導入して定量する方法を採用した.前処理用カラムとしては,テトラメチロールメタントリアクリレート系樹脂を充てん剤とする逆相クロマトグラフィー用カラムを用いた.分析用カラムには,オクタデシル基化学結合シリカを用いた.前処理用カラムに対する血清中のタンパク及び薬物の溶離挙動を調べ,前処理用移動相,前処理用カラム洗浄液,分析用移動相,更に流路切り換えのタイミングを設定した.抗けいれん薬,テオフィリン,リドカインを対象とし,血清直接注入により良好な再現性が得られた.相対標準偏差値は,保持時間に対し0.3%以下,ピーク面積に対し1.2%以下であった.
著者
渡辺 邦洋 六川 和宏 板垣 昌幸
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.933-938, 1995-11-05
被引用文献数
5 4

過酸化水素存在下での2,3-ジヒドロキシナフタレンの酸化反応は超微量マンガン(II)により促進され, その生成物とエチレンジアミンの脱水縮合反応により, 発蛍光性の中間体を経てキノキサリン誘導体を生成する.この反応を利用する接触分析法を検討し, 10ppt以上のマンガンの定量法を確立した.本法は溶存酸素の影響を受けず再現性に優れていた.蛍光強度測定は過酸化水素添加後30℃で5分間放置し, 励起波長400nm, 蛍光波長500nmで行った.指示反応試薬であるエチレンジアミンはマスキング剤としても働き, 選択性は極めて優れていた.2,3-ナフトキノンとエチレンジアミンからなる中間体は400nmと450nmにピークを有する2成分であることが明らかになり, これらの中間体を経て最終生成物に至る反応スキームが検討された.
著者
井上 嘉則 伊達 由紀子
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.365-370, 1994-05-05
被引用文献数
5 5

1-(サリチリデンアミノ)-8-ヒドロキシナフタレン-3,6-ジスルホン酸(アゾメチンH)をポストカラム誘導体化試薬として用いた水試料中のホウ素の定量法について検討を行った.イオン排除クロマトグラフィー(IEC)で分離後, アゾメチンH溶液と混合・反応させ420nmで検出を行った.反応溶液のpH, 反応温度, 反応コイル, 反応溶液の流量, アゾメチンH濃度等の反応条件の最適化を行った.分離カラムにH^+型のスルホン化ポリスチレンゲル(イオン交換容量 : 3.5 meq g^<-1>・dry)を充てんしたIECカラム(150mm×7.8mm i.d.)を, 移動相に1×10^<-3>mol dm^<-3>の硫酸を1.0cm^3 min^<-1>で用いた場合, 反応コイルは5m×0.5mm i.d., アゾメチンH濃度は0.5%, 反応溶液のpHは6.6,流量は0.8cm^3 min^<-1>, 反応温度は40℃で最適な検出が可能であった.本法の検出限界(S/N=3)は7.9×10^<-3>mg dm^<-3>(ホウ素換算)であった.直線性は10^3以上あり, 0.01〜10 mg dm^<-3>(ホウ素換算)の範囲で定量可能であった.0.02 mg dm^<-3>のホウ素溶液で求めた再現性は5.5%(n=10)であった.本法を用いて河川水, 地下水及び水道水中のホウ素の定量を行い, 誘導結合プラズマ質量分析法による定量値と比較したところ, 相関係数で0.921(n=50)と良好な相関を示した.
著者
小濱 純 斉藤 貢一 坂本 裕則 岩崎 雄介 伊藤 里恵 堀江 正一 中澤 裕之
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1019-1024, 2007 (Released:2008-01-29)
参考文献数
21
被引用文献数
3 5

食品添加物として使用されているL-プロリンをキラル分離・定量するために,オルトフタルアルデヒド(OPA)と9-フルオレニルメチルクロロホルメート(FMOC-Cl)を使用した選択的な前処理法を検討し,液体クロマトグラフィー/質量分析法によるプロリンの高感度かつ選択的な測定法の構築を試みた.夾雑成分の1級アミノ酸をOPA試薬により誘導体化し,固相抽出カートリッジを用いて2級アミノ酸であるプロリン及びヒドロキシプロリンとの分離を行い,続いて2級アミノ酸をFMOC誘導体とした.この2ステップ誘導体化法により試料のクリーンアップが効果的に行われ,2級アミノ酸に選択的な前処理が可能となった.また,β-シクロデキストリン系のキラルカラムを極性有機相モードで用いることにより,プロリンの良好な光学異性体分離が達成された.清涼飲料水,粉ミルク及び食酢を試料として添加回収試験を行った結果,平均回収率は80∼104% 以内と良好であった.本法は液状食品中のプロリンを光学分離,測定することが可能であり,食品添加物として使用されるプロリンの安全性を確保するための有効な分析法の一つになるものと期待される.
著者
石井 恵一郎 岩本 武治 山西 一彦
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.140-142, 1975-02-10
被引用文献数
1

The spectrophotometric determination of pyruvic acid with cinnamaldehyde derivatives, such as ρ-diethylaminocinnamaldehyde (DEAC), ρ-morpholhocinnamaldehyde (MC), ρ-nitrocinnamaldehyde, 3,4-dimethoxycinnamaldehyde, and 2-franacrolein, was studied. Pyruvic acid was found to react with DEAC and MC to give a red color in aqueoous ethanol solution in the presence of strong alkali. It was noticed that DEAC gave higher sensitivity and deeper coloration. The colored product with pyruvic acid showed a bathochromic shift with increasing sodium hydroxide concentration and reaction time, and a hypsochromic shift with increasing reaction temperaturre. The calibration curve followed Beer's law in the range of (0〜0.4)mM pyruvic acid. The coefficient of variation is about 2.2% at 0.2 mM pyruvic acid. To 1 ml of sample, 1 ml of 10 N sodium hydroxide solution and 3 ml of 0.4w/v% DEAC-ethanol solution were added. The mixture was kept for 25minutes in a water bath at 40℃. After cooling in water, the absorbance was measured at 495nm agaist a reagent blank. The effects of α-ketoglutaric acid and dl-alanine on the absorbance were examined. The procedure is useful for the assay of enzymes which are concerned with pyruvic acid.
著者
池竹 英人 山田 明文
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.1123-1127, 1999-12-05
参考文献数
7
被引用文献数
5 10

フローインジェクション分析用の固体電極セルを試作し, 残留塩素を電気化学的に測定する方法の検討を行った. 固体電極セルは, 交換可能な作用極, 対極 (白金線) 及び参照極 (飽和カロメル電極) からなるものを作製した. セルの評価はヘキサシアノ鉄(II) 酸カリウムで行った. 作用極に金電極を用いたとき, ヘキサシアノ鉄(II) 酸カリウム2×10^<-7>〜2×10^<-4>Mで検量線が直線となり, 各濃度での相対標準偏差 (n=10) はいずれも 1%以下であった. 次亜塩素酸の電気化学的挙動は, サイクリックポルタンメトリーで測定した. 種々の固体電極の中で金電極が最も単純な波を示し, 作用極として適当であった. フローインジェクション分析における次亜塩素酸の検量線は, 0.05〜2.5 mg l^<-1>で直線性を示し, 1mg l^<-1>での相対標準偏差 (n=10) は2.1%であった. 本法を水道水中の残留塩素の定量に適用したところ, オルトトリジン吸光光度法と良い一致を示した.