著者
宗森 信 山本 勇麓 日色 和夫 田中 孝 熊丸 尚宏 林 康久 都甲 仁
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.T19-T23, 1978-05-05

2種類の合成試料水中のヒ素の分析に関する共同実験を行った.参加分析所は12箇所,分析方法はJISK0102-1974に規定されたジエチルジチオカルパミン酸銀-吸光光度法を用い,各分析所では1口2回ずつ3日間で計6回の分析を実施した.試料Aではヒ素含有量の標準値0.0220ppmに対し定量値の総平均値が0.0222ppm,試料Bでは0.0250ppmに対し0.0255ppmであった.試料Aでは定量結果は正確であったが,分析所間のばらつきが比較的大きく,又3箇所の分析所では分析所内平均値が管理限界を越えていた.一方,共存物質が存在する試料Bでは分析所内及び所間のばらつきは小さかったが,量結果に偏りがあった.
著者
日色 和夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.T9-T12, 1979-02-05
被引用文献数
4 2

環境分析技術協議会会員42分析機関による工場排水中の全クロム定量の共同実験を行った.合成排水試料は3種,分析法はJIS K 0102-1974に示されているジフェニルカルバジド吸光光度法によった.まず試料Iを分析機関に配布して74個のデータを集めた.その結果,クロムの平均定量値は1.92mg/l,標準偏差パーセントは14.0%であった.次に試料IIを分析した.この場合は硝酸-硫酸又は硝酸-過塩素酸による有機物の分解操作及びクベロン-クロロホルム抽出法による除鉄操作を採用することにした.試料中に多くの共存物質を含んでいたために,結果の標準偏差パーセントは22.2%であった.試料吸光度が0.4より高い場合には底値が得られた.更に試料IIIを分析した.この場合,分析操作法を詳細に定めたところ,標準偏差パーセントは19.5%であった.以上の結果から,JIS K 0102-1974で示されているジフェニルカルバジド吸光光度法で排水中の全クロムを分析する場合,組成の複雑な試料では標準偏差パーセントを20%以下にすることはかなり困難であるという結論を得た.
著者
杉山 雅人
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.667-675, 1996-07-05
被引用文献数
6 14

自然水中の懸濁物質に含まれる主要から微量に至るまでの各種元素の同時分析法を検討した.懸濁物質を捕集したニュクリボアーフィルターをねじふた付きのテフロン瓶に入れ, 濃アンモニア水を加え一定時間放置後, 加熱して乾固した.残留物に過塩素酸・硝酸・フッ化水素酸の混合物を加えて加熱分解した.分解物を蒸発乾固した後, 過塩素酸及び硝酸を加え再び乾固した.残留物を硝酸溶液に溶解し, ICP-AESに供試した.本法によって4種類の標準物質を分析し, Al, Ba, Ca, Cr, Cu, Fe, Mg, Mn, Ni, P, Sr, Ti, V, Znの14元素について, 良好な結果を得た.原子吸光法を用いると, 同一の試料でKとNaが定量できた.本法は水中懸濁物質に限らず, たい積物, 岩石, 生物試料, エアロゾルの分析にも広く有用である.
著者
小沢 昭夫 高柳 香都子 藤田 孝夫 平井 愛山 浜崎 智仁 寺野 隆 田村 泰 熊谷 朗
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.87-91, 1982-02-05
被引用文献数
8 25

エスキモー人の疫学調査により魚脂中に多く含まれるω-3の高級多価不飽和脂肪酸の抗血栓,抗動脈硬化作用が注目されている.ヒト血しょう総譜質中の高級脂肪酸を精度よく測定するためにキャピラリーカラムを装着したガスクロマトグラフを用い血しょうよりFolchらの方法で抽出しBF_<-3>メタノールでエステル化した試料を分離分析したところ良好な成績が得られた.本法での抽出操作を含めた再現性はアラキドン酸,エイコサペンタエン酸,ドコサヘキサエン酸のいずれについても5%以下と良好で各各のメチルエステルを用いて得られた添加回収率もほぽ100%と良好な値を示した.又検量線もいずれの脂肪酸について良好な成績が得られ,又実際の実験食投与の健常人においても有意の脂肪酸の変動が認められたことから本法は血しょう総脂質中の高級脂肪酸の定量法の一つとして有用と考えられる.
著者
斎藤 寛 田中 順 尾堂 順一 田中 善正
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.385-389, 1980-06-05
被引用文献数
3

従来,アルミニウムの定量のみに用いられていたAl^<3+>-クロムアズロールS-界面活性剤系と類似の三成分系を高級脂肪族アミンの定量に利用することを試みた.その結果,三成分系の沈殿をエタノールを用いて可溶化すれば,試薬空試験液を対照に極大吸収波長640nmにおいて測定することによって,感度よく簡便にオクタデシルアミソなどの高級脂肪族アミンを定量できることが分かった.オクタデシルアミンの場合検量線は(2.5〜10)μg/mlまで原点を通る良好な直線となり,10回繰り返しによる変動係数は0.86%であった.本法は陰イオンの影響を比較的強く受けるが,酢酸酸性下高級脂肪族アミンを抽出すれば妨害を受けない.
著者
渡辺 邦洋 小川 裕作 板垣 昌幸 常盤 和靖
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.163-169, 2006-03-05

必要試料量がnlレベルであるキャピラリー電気泳動法により,高温酸化物超伝導体中のTlの価数分析法を開発した.四ホウ酸ナトリウム十水和物を泳動液に用い,アコイオン自体に紫外吸収を示すTl(I)はTl^+として印加電圧25.0kVで泳動させ,波長215nmでUV法により直接検出した.塩酸に溶解させているTl(III)はTlCl_6^<3->として印加電圧-30.0kVで泳動させ,波長242nmで直接検出した.共存イオンはイミダゾールを用い,間接紫外吸光法により定量した.実試料は,Tl系高温酸化物超伝導体0.20mgを0.01MのHClに溶解させて用いた.測定した2種類の試料はともに97%がTl(III)という結果になった.本法を用いることで従来の方法よりも必要とする試料量を約20分の1に下げることができた.
著者
網田 孝司 岩本 一優 一瀬 光之尉 小島 次雄
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.37, no.8, pp.389-394, 1988-08-05

流れ分析系においてマルチチャンネルで連続測定された紫外吸収スペクトルの有効利用を目的にして,スペクトルのデータ圧縮の効果と,圧縮データの,高速検索,及びスペクトルの重なった多成分系の連続リアルタイム同時分析への利用の可能性とについて検討した.アダマール変換による圧縮を行い256点の原スペクトルデータに対して圧縮比0.08〜0.16程度が最良の識別確度を与えることを示すと共に,達成した検索速度により,リアルタイム検索の可能性について検討した.又圧縮データの,多成分同時分析への利用については最小二乗法による方法を示すと共に,この方法で0.08s間隔でのリアルタイム出力が可能になることを明らかにした.
著者
山崎 幸治
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.309-314, 1982-06-05
被引用文献数
3

これまでの平衡型つり下げ静止水銀滴電極(BHMDE)をガス圧縮形式のBHMDEに改造した.水銀滴下間隔(τ)が138秒,水銀流出量(m))0.1922mg/s のキャピラリーを用い,窒素の圧力490mmHgで30秒間水銀を押し出したときの電極面積は0.0274cm^2であった.この電極の水銀滴再現性をカドミウム{5×10^<-5>M Cd(II)ion in 0.1 M HCl}のカソーデイック・オッシロポーラログラムの繰り返し測定(10回)から求めた.水銀滴つり下げ直後に測定した波高の偏差値は0.76及び水銀滴を30分間平衡状態に放置した後の測定からは0.78が得られた.前報の0.40と0.62及び0.60よりわずかに増加した.本電極を用い.数種のビール,酒,ワイン,ブランデーを低温灰化又は酸分解した後,アノーディック・ストリッピング法により微量の重金属を測定した結果,これら酒類中に合まれる金属の濃度範囲は銅(0.009〜1.6)ppm,鉛(0.008〜0.13)ppm,カドミウム(0.0013〜0.0018)ppm,亜鉛(0.019〜1.13)ppmで低温灰化時における鉛,カドミウムの損失は認められなかった.
著者
多賀 光彦 田中 俊逸 吉田 仁志
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.400-405, 1980-06-05
被引用文献数
3

つり下げ式水銀滴電極中に電解された銅が2.5×10^<-5>mol dm^<-3>のヨウ化物イオンを含む溶液中に溶出されるとき,銅の溶出波は約4倍に増大し,ヨウ化物イオンによる増感効果が認められた.波高は電位掃引速度によって影響を受け2mVs^<-1>のとき最大値を示した.検量線は前電解時間を5minとしたとき(5×10^<-8>〜7×10^<-7>)mol dm^<-3>の範囲で直線となり,1×10^<-7>mol dm^<-3>のときの5回の測定による相対標準偏差値は約3%であった.検出限界は前電解時間を10minとしたとき0.2ppbであった.ヨウ化物イオンによる増感効果を利用する本法は,塩化物イオン中の銅の定量を容易にした.銅の溶出波は1×10^<-2>mol dm^<-3>の塩化物イオンの共存により不明りょうとなり,波高と濃度との比例性も悪くなるが,ヨウ化物イオンの添加によって溶出波は明りょうとなり,比例性も回復した.
著者
本水 昌二
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.31-36, 1984-01-05
被引用文献数
9 16

ホークロロホルム系でのイオン会合抽出におけるイオンの抽出性の相対的尺度として,陽イオンに対しC直,陰イオンに対しA直を割り当てた.これらの値の算出の際の基準にはアルキル鎖及び水素原子を全く持たない仮想的な陽イオン[-N-]^^^<|+>___|をとった.C直,A値と抽出定数(1ogD_<ex>)の関係は,logK_<ex>=C+Aで表される.陽イオンとして14種の第四級アンモニウムイオン,テトラフェニルホスホニウム(アルンニウム)イオン,5種のアゾ系染料陽イオン,7種のトリフェニルメタン系染料陽イオン及びメチレンブルーのC直を決めた.又π値(置換基の寄与)を用いるC値の計算方法についても考察した.C値を用い,無機,有機陰イオンのA値も決定した.得られたC値及びA値を用いて約150種のイオン会合体の抽出定数を推定し,既報の実測値との比較をしたところ,±0.3log単位程度の誤差であった.又著者以外により報告されている抽出定数との一致も良好であった.
著者
東海林 敦 柳田 顕郎 神藤 平三郎 渋沢 庸一
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.953-958, 2004-09-05
被引用文献数
1 4

11種類のカテキン類について,オクタデシルシリル化シリカ(ODS)モノリスカラムを用いる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と,1-ブチルメチルエーテル/アセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸(2:2:3)の二相溶媒系を用いる高速向流クロマトグラフィー(HSCCC)による逆相分配クロマトグラフィー分離をそれぞれ行った.実験に供したカテキン類の中でも,エピカテキンの三量体であるプロシアニジンC1(PC1)は,オクタノール/水二相溶媒系における分配係数P及びlog P値が最も小さな親水性化合物であるにもかかわらず,逆相HPLCのODSカラムに強く保持された.一方,逆相HSCCCにおけるカテキン類の溶出順序は,各化合物のlog P値によく対応し,log P値が減少するほどクロマトグラム上の保持時間も短くなった.すなわち,PC1のような最も親水的なオリゴマー成分は,逆相HSCCCのカラムから一番最初に溶出することが確認できた.
著者
西山 尚秀 陳 子林 中釜 達朗 内山 一美 保母 敏行
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1005-1009, 2003-11-05
被引用文献数
3 5

L-リシンアミドをキラルセレクターとし,配位子交換原理を利用した光学異性体分離用のモノリスカラムを開発したL-リシンアミドは2つのアミノ基を有するアミノ酸アミドであり,従来配位子交換のキラルセレクターとして用いられていない.本研究では分析対象試料にダンシルアミノ酸を用い,キャピラリー電気クロマトグラフィー(CEC)及びマイクロHPLC(μ-HPLC)での分離を検討した.CEC分離では,電気浸透流(EOF)が陰極から陽極に流れ,移動相のpHを小さくすると,従来のフェニルアラニンアミド等のキラルセレクターで修飾したカラムよりもEOFの速度が速くなることを見いだした.CECではμ-HPLCの約5倍の理論段数が得られ,その特性から高分離能であった.一方,μ-HPLCでは低圧力負荷で分離することが可能であった.本研究で開発したL-リシンアミドキラルモノリスカラムは光学異性体の分離において既報告のセレクターとは異なるEOFの性能を示すことを明らかにした.
著者
宮木 美典 吉岡 濶江 長谷川 圀彦
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.T163-T167, 1990-12-05

放射平衡にある^<125>Sb(V)-^<125m>Te塩酸溶液系からの^<125m>Teの分離を検討した.分離法にはマイクロスケールによるイオン交換樹脂バッチ法を用いた.基礎実験の結果を基にトレーサー用^<125m>Teのマイクロスケール調製法を試みた.共栓付きマイクロチューブ(1.5ml用, ポリプロピレン製)に濃塩酸で処理したCl^-形の陰イオン交換樹脂100μl(約0.03g)を入れる.これに試料溶液[(^<125>Sb(V)-^<125m>Te)/9M塩酸溶液(5%vol.臭素水を含む)]100μlを加え10分間振り混ぜる.遠心分離後, ^<125m>Te(VI)を含む上澄み液を採取し, 再び5%vol.臭素水を含む9M塩酸溶液を加え上記の操作を繰り返し, ^<125m>Te(VI)を採取する.次に希塩酸又は脱イオン水1mlを加え, 溶離液の塩酸濃度を1Mとし, 再び10分間振り混ぜる.遠心分離後, ^<125m>Te(IV)を含む上澄み液を採取する.^<125m>Te(IV)の収率は, 最初の溶離液1mlで75%, 2回繰り返し溶離で97%, 3回の繰り返しで約100%であった.又^<125>Sh(V)の溶離率(汚染率)は0.5〜1%であった.本法の特徴を従来のマクロスケールのカラム法と比較した.その結果, 本法は溶離液が少量ですむために, 放射能濃度の高い溶液を得ることができるということが分かった.
著者
平田 静子
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.T64-T68, 1984-08-05
被引用文献数
4 2

誘導結合プラズマ発光分析法による標準岩石試料(地質調査所JG-1,TB-1,JA-1,JB-2)及び標準たい積物試料(NBS SRM 1645, 1646)中の13元素の同時定量法を検討した.高周波電力1.6kW,プラズマ内測光位置をコイル上16mmとし,ネブライザーはガラス同軸型噴霧器を用いた.検出限界は鉄0.004,マンガン 0.002,リン0.090,銅0.002,ニッケル0.007,クロム0.004,モリブデン0.004,チタン0.001,バナジウム0.003,アルミュウム0.005,コバルト0.001,マグネシウム0.009,亜鉛0.004 ppmであった.分析精度は標準岩石及び標準たい積物試料中の鉄,マンガン,チタン,アルミニウム,マグネシウムについては±1%以下,リン,銅,ニッケル,クロム,モリブデン,バナジウム,コバルト,亜鉛のほとんどについては±5%以下の分析精度で定量できたが,一部JG-1の銅,ニッケル,モリブデンについては存在量が微量であるために分析精度は悪くなった.正確さは共存する主要成分の分光干渉,溶液の粘性の影響を受け,JB-1,JA-1,JB-2では補正を行ってもモリブデンの定量は困難であった.
著者
武者 宗一郎 高橋 芳久
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.365-370, 1975-06-10
被引用文献数
1 7

大豆たんぱく質がカルシウムやマグネシウムなどの塩類もしくは、酸類などの添加により凝固すること、及び一般にたんぱく質が重金属イオンと錯体形成する性質を利用し、水中の微量金属を捕集濃縮することを目的として発光分光分析の技法を用いて検討した。試料水に捕集剤として一定量の豆乳及び凝固剤として所定量の δ-グルコノラクトンを加えて加熱したんぱく質を凝固させた。この凝固物 (豆腐) に捕集濃縮された金属を発光分光分析した。その結果、用いた大豆中に検出されない金属元素のうち、金、銀、水銀、白金、ベリリウム、バリウム、カドミウム、ガリウム、セリウム、イットリウム、ランタン、インジウム、パラジウム、アンチモン、トリウム、ジルコニウムなどの捕集濃縮に応用しうることを明らかにした。
著者
武者 宗一郎 高橋 芳久
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.24, no.7, pp.395-399, 1975
被引用文献数
1

大豆たんぱく質が酸などの添加により凝固する性質及び重金属イオンと錯体形成する性質を利用して,水中の微量の金を捕集濃縮することを検討した.試料水に一定量{(10~30)ml}の豆乳(6.34%)及び凝固剤δ-グルコノラクトン(δ-GLと略記)の所定量を加えて加熱し,たんぱく質を凝固させ金を捕集する.凝固物(豆腐)を低温灰化後,原子吸光又は発光分光分析法により金を定量した.金の捕集率はたんぱく質の凝固が最もよく起こるpH4.4~5.0付近になるように適量のδ-GLを加えた場合,99%以上の最大値を示した.本法を水,人工海水,食塩水及び食塩中の超微量の金の定量に応用し満足すべき結果を得るとともに,分析の実行に伴う環境汚染問題に関し,写真操作を除いて全く問題がない点を確認した.
著者
善木 道雄 伊藤 利之 桐栄 恭二
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.T89-T92, 1990-06-05
被引用文献数
1 5

市販のリンゴ酸及びアップル飲料中に含まれるフマル酸についてUV検出器を使用したHPLCで定量する方法について検討した.分離カラムとしてTSK-gel, ODS120Aを使用し, 移動相としては0.1M過塩素酸ナトリウム, 0.01Mリン酸二水素メトリウム(pH2.6)を用い, 210nmで検出した.フマル酸5.0×10^-7〜2.0×10^-5Mの範囲で検量線は直線を示し, 4.0×10^-6,1.0×10^-5Mの5回繰り返しによる相対標準偏差は, それぞれ0.35,0.19%であった.又この方法によるフマル酸の定量限界(S/N=2)は2.0×10^-7M程度であり, リンゴ酸及びアップル飲料の回収率は98.2〜104.5%であった.本法を市販リンゴ酸及びアップル飲料18種の定量に応用した.
著者
高山 透 村田 勝夫 池田 重良
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.34, no.12, pp.781-785, 1985-12-05
被引用文献数
2 2

減圧下誘電放電による窒素アフターグロー生成法を用いた発光分析装置を試作した.タンタル板製の加熱型アトマイザー上で減圧乾燥した溶液試料を加熱によって5Torrの気相に放出し,誘電放電路を流れてきた窒素と混合する.このとき,試料は三重項準安定励起窒素分子N_2(A^3Σ^+_u)からエネルギーを受け取り発光する.この装置を用いて,亜鉛,カドミウム,水銀の各溶液についてそれぞれの元素の中性原子線の発光を観測したが,その検出限界はそれぞれ5ng (472.2 nm), 0.1ng (326.1 nm), 0.03ng (253.7nm)であった.陰イオンの影響を調べるために,塩化物,硝酸塩,硫酸塩の各溶液について検量線を比較し,又,酸の濃度変化による金属の発光強度変化についても検討した.
著者
鷹野 浩之 板橋 豊
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.437-442, 2002-06-05
被引用文献数
3 14

抗肥満作用を有する 1,3-ジアシルグリセロール (1,3-DG) の分子種を正確に求める方法を確立した.食用油(エコナクッキングオイル)中の 1,3-DG を 3,5-ジニトロフェニルウレタン (DNPU) 誘導体に変換した後,高速液体クロマトグラフィー (HPLC) と質量分析法 (MS) を用いて分析した.その結果,C30 カラム (25 cm×4.6 mm i.d.) を装備した逆相 HPLC により 1,3-DG を構成する種々の分子種が 60 分以内に明りょうに分離された.また,HPLC/エレクトロスプレーイオン化 (ESI)-MS 分析では,分離された各成分について顕著な [M-H]^-イオンが得られた.このイオンを利用して,各分子種を同定した.本法は,種々の食用油に存在する 1,3-DG の分子種分析に適用できる.
著者
伊藤 彰英 岩田 浩介 紀 杉 薮谷 智規 木全 千泉 猿渡 英之 原口 紘〓
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.109-117, 1998-02-05
被引用文献数
21 28

誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)及び誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES)を, 日本分析化学会より頒布されている河川水標準物質(JAC 0031, JAC 0032)中の微量元素の多元素定量に適用した. ICP-MS及びICP-AESによる多元素分析においては, 河川水試料の直接導入法とともに微量元素に対してキレート樹脂濃縮法を併用することにより, 河川水標準物質中の37元素の定量を行うことができた. Caの12300からTmの0.00012μgl^<-1>まで9けたに及ぶ広い濃度範囲の定量値が得られた. 認証値が求められている元素については, おおむね認証値と一致した結果であった. 又, 希土類元素についても, すべて定量することができ, 頁岩中濃度で規格化した希土パターンでは重希土類元素の相対存在度が高く, Ceの負の異常がある天然水特有のパターンが得られた.