著者
國方 淳 十河 智昭 谷川 雅俊 横井 英人
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.319-329, 2020-06-26 (Released:2021-07-28)
参考文献数
13

近年,多くのサービスやアプリケーションにおいて,それらの機能を外部から利用する際にWeb APIが用いられている.Web APIは汎用的なHTTPプロトコルによってリクエストした結果をJSONなどの処理しやすい形のレスポンスデータとして返すことにより,柔軟なデータ処理を可能としている.この仕組みは電子カルテからのデータの取得においても有用であり,HL7 FHIRやopenEHRなどの標準規格においてもデータの送受信のインターフェースとして採用されている.しかし,当院の電子カルテシステム上ではこれらの標準規格のAPIを利用できる状況になく,また比較的単純なシステム連携を行う上ではこれらの標準規格の仕様は過大であり,個々の医療機関が独自に実装するのは現実的ではない. そこで,今回われわれは当院の電子カルテからデータを取得するためのシンプルな構成のWeb APIの構築を試みた.その結果,Webサーバ上にAPIを構築することで,電子カルテシステム本体には改修を加えることなく電子カルテのデータを汎用的なHTTPリクエストで取得することが可能となり,また実証実験ではいくつかのWebアプリケーションと連携し実運用で利用することができた.Web APIはデータ交換のインターフェースとして非常に有用であり,今後の電子カルテには標準規格のWeb APIの実装とともに,ユーザの裁量でWeb APIで取得するデータを指定できる機能の提供が望まれる.
著者
佐藤 康仁 吉田 雅博 山口 直人
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.39-46, 2008 (Released:2015-03-20)
参考文献数
5
被引用文献数
5

Minds(Medical Information Network Distribution Service)は,診療ガイドラインおよび関連する医療情報を提供するWeb上のデータベースシステムである.Mindsを定期的に利用している者の特徴を明らかにすることで,診療ガイドライン等の医療情報を提供するWebデータベースシステムに求められる要件を明らかにすることができると考える. 方法:対象はMindsのユーザ登録者とした.調査は2006年3月から4月にかけて実施した.アンケート調査への協力のお願いは電子メールで送信し,Webサイトにて調査を実施した.解析では,はじめに,定期的アクセスに関連する因子の探索をカイ二乗検定で行った.続いて有意差のみられた因子と定期的アクセスとの関連をロジスティック回帰モデルで分析した. 結果:コメディカルでは「患者・家族への説明のため(Odds ratio=2.05)」「Webサイトの使いやすさの満足度(OR=3.07)」に定期的アクセスと有意な関連が観察された.医師・歯科医師では「患者・家族への説明のため(OR=2.13)」「最新情報取得のため(OR=1.72)」「Mindsを診療に利用している(OR=2.88)」「Webサイトのコンテンツの満足度(OR=2.31)」に定期的アクセスと有意な関連が観察された. 結論:定期的にMindsを利用する者は,診療の現場において利用している者が多いことが明らかとなった.一方で,診療の現場ではインターネットへの接続が難しい場合が多い.今後は,インターネットに接続しない状態で情報提供を行う仕組みについても考慮する必要がある.
著者
佐藤 康仁 畠山 洋輔 奥村 晃子 清原 康介 小島原 典子 吉田 雅博 山口 直人
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.35-43, 2014 (Released:2016-04-20)
参考文献数
24
被引用文献数
3

Mindsサイトは,診療ガイドラインを中心とした医療情報を2002年より継続してインターネット上に提供している.本研究は,Mindsユーザを対象に実施したユーザ満足度に関するアンケート調査結果を分析することで,Mindsサイトの今後の課題を明らかにすることを目的として実施した.調査方法は,インターネット上の自記式アンケート調査とした.調査対象は,Mindsサイトにユーザ登録をしている者とした.アンケートへの回答者は2,940名(回答率8.2%)であった.「利用目的は達成されたか」について,達成できた割合が高かったのは,医療系学生の「学習や知識習得のため23名(53.5%)」,コメディカルの「診療のため82名(50.0%)」となっていた.利用目的を達成できた者は,利用したことがあるコンテンツの種類が多く,それぞれのコンテンツが役に立ったとする割合が高くなっていた.本研究により明らかとなったMindsサイトの課題は,システムや運用における対応を実施することで順次改善していきたい.
著者
津久間 秀彦 名田 信之 森本 徳明 天野 秀昭 田中 武志 岩田 則和 野村 祐仁 片山 文善 石川 澄
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.127-135, 2002 (Released:2017-08-14)
参考文献数
2
被引用文献数
1

地域に開かれた病院を目指して,地域医療機関に役立つ支援と,患者に対する直接的な支援を両立させることは,医療情報システムが果たすべき今後の一つの方向性として重要である. この観点から,従来の手作業での院外処方せんのFAX送信サービスのあり方を見直し,患者の利便性向上のためのナビゲーションシステムと,保険薬局での調剤の安全性向上のための院外処方情報の自動FAX送信システムを開発した.本論文では,まずシステムの開発目的と機能の概要を説明する.更に2001年10月より広島大学医学部附属病院で開始した運用の実績に基づいて,本システムの有用性を示す.
著者
黒田 知宏 佐藤 純三 矢崎 晴俊 竹村 匡正 長瀬 啓介 加藤 康之 吉原 博幸
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.157-164, 2010

電子カルテ上で定型データの入力を行う際のツールとして,テンプレート機能が広く利用されている.テンプレート上で入力された情報をカラムに切り分けしてデータベースに蓄積すれば,電子カルテ利用の向上と臨床研究の効率改善に寄与することが期待される.<br/> 京都大学病院では,電子カルテ導入時に,電子カルテ上にテンプレートを用いて入力された情報をデータベース化する仕組みの導入を行った.導入の結果,がん登録や臨床研究データ入力などに加え,医事会計算定のための情報検索など広くテンプレートが利用され,多くの情報が蓄積された.一方,臨床研究などのための出力作業は,人手による情報出力サービスを提供していることなどもあり,広く利用されるには至らなかった.今後,利用を拡大するためには,各研究者が有する既存のデータベースとの相互接続性を高めたり,アクセスを容易にしたりするなどの工夫が必要であることが示唆された.
著者
大原 達美 成清 哲也 松村 一
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.233-239, 2010

本院医療情報室では,2009年7月に「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第4版」を参考に,新型インフルエンザ(influenza A : H1N1)パンデミックに備えた業務継続計画(以下BCP)を策定した.同年11月に病院情報システム(HIS)と接続された1部門システムが故障し,1週間部門システムが使用できなくなる経験をしたことから,HISに接続される部門システム全体を視野に入れたBCPの見直しを図った.<br/> 具体的には部門システムのBCP策定に向けて,①部門システムの範囲・機能調査,脆弱性調査,②フェーズ別対策の検討,③ケース別BCPへの展開,に分けて課題の抽出を行った.<br/> この結果,HISと部門システムとの情報システム全体のBCPの策定に際しては,①部門システムが設定する業務再開目標時間(RTO)にはビジネス・インパクト分析(BIA)を実施した上で明確にする,②フェーズ別対策では,システム脆弱性対策チェックシートを使用して共有認識を図る,③ケース別対策については,中長期的対策を視野に入れて策定を進める,との結論に至った.
著者
花田 英輔 工藤 孝人 高杉 紳一郎 加納 隆
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.239-247, 2005 (Released:2015-07-17)
参考文献数
20

携帯電話は高い普及率を示しているが,一方で一律に電源断を求めている医療機関もまだ多い.患者や訪問者は医用電子機器,特に人工心臓ペースメーカに対する影響に関する情報が広く知られていることからそれに従っているが,中長期にわたって入院する患者にとっては通信手段の途絶を意味することから患者の心理面での負担になっている場合も見受けられる. 本稿では,患者サービスの面から要望が強いが,これまでその安全性に関する情報不足から医療機関における使用の是非の判断が行われてこなかった携帯電話について,具体的な解禁例およびこれまでに得られた知見から,安全な導入に向けた注意点と手法を示す.
著者
宇都 由美子 熊本 一朗 村永 文学 宇宿 功市郎
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.119-123, 2001 (Released:2017-08-21)
参考文献数
6
被引用文献数
1

鹿児島大学医学部附属病院においては,2001年1月より病院情報システムのレベルアップを行ったが,医療事故防止活動の一環として,患者に安全な診療や看護を提供するためのリスクマネジメント支援機能としてのシステム開発を行った.本院で既に開発した物流システムや手術オーダリングシステムのバーコードをスキャナーで読み取るという実施入力の経験を活かし,新しいリスクマネジメント支援システムについても迅速,簡便で正確なバーコード入力を利用して開発した.新システム稼働後,輸血製剤の実施入力を開始したため,本稿においては,その運用概要と評価について報告する.また,今後開発予定の他のリスクマネジメント支援機能についても述べる.
著者
赤羽 智幸 保坂 良資 室橋 高男
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.15-25, 2013 (Released:2014-10-10)
参考文献数
25
被引用文献数
1

病院内では,小型の輸液ポンプやシリンジポンプなどが随所で稼働している.これらの小型ME機器は病院のMEセンターで周期的に検査され安全性が維持されている.しかしながら,病棟が多忙な際などにはそれらが行方不明となることがある.もしもこれらの機器の検査が不十分であった場合,患者は危険な状況に置かれる可能性がある.そのため,これらの機器がMEセンターで定期的に管理されることが重要といえる.本論文では,これらの機器の所在管理に,UHF帯パッシブRFIDタグシステムを提案する.このシステムにより,医療職者の業務負担を増大させることなく,小型ME機器の所在管理が可能となる.本研究では,このシステムの実用性の確認のため,札幌医科大学附属病院で検証実験を行った.病院での応用を前提とした実験結果から,UHF帯パッシブRFIDタグを付した輸液ポンプが,院内で簡便かつ確実に定位できることがわかった.
著者
香川 正幸 吉田 悠鳥 鈴木 哲 栗田 明 松井 岳巳
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.85-94, 2010

電波防護指針に準拠した小電力24 GHzマイクロ波レーダーを使用して,高齢者を対象とした非接触の呼吸・心拍見守りシステムを開発した.寝具用マットレスの下部にレーダー装置を設置し,呼吸・心拍に伴う体表面の微振動を計測するシステムであり,精度を向上するため2つのレーダー出力信号を組み合わせる特徴をもつ.最大の課題は,目的とする微弱な呼吸・心拍信号を四肢などの不規則な体動信号から分離抽出することであった.呼吸信号最大値および心拍信号最大値を事前に設定し,その最大値より大きい信号を体動ノイズと判定し振幅減少するAutomatic Gain Control方式をFFT周波数解析の前処理として導入した.また,レーダー信号の出力電力強度から体動の継続を判定し,体動が継続していない時間帯の呼吸・心拍数をより信頼性の高い情報として区別することにより,全体として体動に強い高精度計測が可能となった.本システムを実際に特別養護老人ホームで評価し,非接触見守りシステムの有用性を確認した.高齢者の介護では,在宅の場合も施設介護の場合も高齢者の状態変化の早期検出と介護者の身体的精神的負荷の軽減が求められており,本システムは高齢者安否確認システムの新しい方法として期待される.
著者
奥田 益美 安田 晃 津本 周作
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.169-177, 2017 (Released:2018-08-31)
参考文献数
29
被引用文献数
1

米国患者満足度調査のHCAHPS調査項目を基に,距離を使う解析により患者満足度の構造のモデル化に必要な解析を試みた.外傷を扱う高度急性期医療提供病院では,コミュニケーション2項目と全体的な評価2項目,「疼痛管理」「清潔さ」の高評価クラスタと,「静かさ」「薬剤情報説明」「スタッフ対応の早さ」の低評価クラスタを示した.その他の病院はコミュニケーション2項目の高評価クラスタとその他項目の低評価クラスタを示した.属性に関わらず対応分析,MDSではコミュニケーション項目は高評価,「静かさ」は中評価,「薬剤情報説明」は低評価が多く,他項目との非類似性を示した.患者満足度の構造は提供医療の特徴により異なっていた.患者満足度研究の多くは全体的な評価への影響要因に焦点を当てているが,項目間の類似性に注目すれば,病院サービスを包括的に捉えることでより患者に近い視点での分析が可能となり,患者中心の医療に繋がると考える.
著者
横井 遥 福田 里砂
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.49-59, 2013

近年,急速にインターネットの利用が普及し,患者・家族が病気や治療に関する情報を入手する機会が増えているが,その情報の信頼性は不明である.そこで,体験した事例をもとに,術後疼痛に関する情報を掲載しているサイトの信頼性を検討した.<br/> 調査は,開腹手術後の術後疼痛についての情報を掲載している75サイトを対象に,eヘルス倫理コード2.0の4つの大項目(基本情報の開示,コンテンツ,コミュニケーション,プライバシー)について,3段階で評価し,サイト種(一般サイト,個人サイト,ブログ,掲示板)ごとに単純集計を行った.<br/> 基本情報に関しては,掲示板ではほとんどのサイトで開示されていたが,その他の種類のサイトでは開示が不十分であった.また,コンテンツ,コミュニケーションの提供者に関する基本的な情報の開示は,すべての種類のサイトで5割に満たなかった.情報の客観性・正確性,医学情報の水準の妥当性が確保されているサイトは,一般サイトで45.0%であったが,その他の種類のサイトではほとんどなかった.個人情報の取得者,管理者は,一般サイト,ブログでは5割以上のサイトで記載されていたが,掲示板では1割に満たなかった.
著者
品川 佳満 橋本 勇人
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.311-319, 2013 (Released:2014-12-19)
参考文献数
13

本研究は,電子媒体(インターネットを含む)が関係した医療機関における患者の個人情報に関する事故の現状を明らかにすることを目的とした.そのため,2008年から2012年に報道・公表された事故について,情報セキュリティサイトや新聞記事データベースから記事を収集し分析した.結果として,186件の報道記事等が収集され,その内容から以下の現状が明らかになった. 1) 事故の起きた媒体は,USBメモリが47.0%ともっとも多かった. 2) 原因は,紛失と盗難で84.4%と大半を占めていた. 3) 事故は,院外・院内のあらゆる場所で発生し,媒体の院外への持ち出し理由は主に「研究・学習」,「業務継続」であった. 4) 医師を中心に,退職者を含むすべての職種が事故を起こしていた. 5) 漏えい(流出)につながっていた事故は10.8%と少ないが,媒体の19.0%にしかセキュリティが施されていなかった. 6) 病名が含まれていたケース,100人以上の個人情報が含まれていたケースが半数以上あった. 7) 47.3%の事故で病院のルールに対する違反が確認された.
著者
柏木 聖代 水流 聡子 柏木 公一 美代 賢吾 西亀 正之
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.169-178, 2002 (Released:2017-08-14)
参考文献数
11

本研究の目的は,看護記録が電子化され,看護サマリー作成システムが導入された際,「看護サマリーデータ項目セット」を病院情報システムに適用できるかを明らかにすることである.そこで,今回は,看護サマリーネットワーク研究会が作成した「看護サマリーデータ項目セット」を用い,そのデータ項目の情報が病院の記録に記載されているかについて,大学病院と大学病院以外の病棟管理者295名に対し,自記式質問紙調査を実施した.243名から回答を得たうち,有効回答であった171名を分析対象とした.その結果,患者属性・診療情報に分類されるデータ項目の情報は80~90%記録に記載されていた.逆に,患者・家族への指導,福祉サービス等,在宅ケアを意識した情報の記載率は40%前後であった.さらに,大学病院群と大学病院以外の病院群にわけ,記載率との関連をみた結果,28項目に有意な差が認められ,すべて大学病院以外の病院群の記載率が高かった.
著者
田中 雅幸 鶴見 由美子 打谷 和記 池嶋 孝広 村中 達也 大植 謙一 廣田 育彦 仲野 俊成 今村 洋二
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.119-127, 2010 (Released:2015-02-20)
参考文献数
9

われわれは処方チェックシステムの精度向上とともに,医薬品マスタメンテナンス作業の省力化が可能なオーダリングシステムの構築に取り組み,ほぼ目標に到達しえたと判断したことから,今回その稼働状況の評価を行った. 電子カルテと薬剤サブシステム間の医薬品マスタの一元管理により,マスタの整合性保持が実現した.また独自の処方チェック用データベースを作成し,処方チェックを電子カルテ側とサブシステム側の二段階に振り分けた.さらに処方監査に必要な検査値や薬歴などを処方せんに出力させる機能を搭載した.その結果,レスポンス低下を招くことなく,監査支援を強化することができた. 電子カルテは安全管理に有用なツールであるが,安易なシステム導入は医療事故を誘発しかねない.医療従事者がシステムを理解した上で完成度の高いシステム構築に参画する必要がある.われわれは今後もシステム改善に取り組み,医療安全に貢献していきたい.
著者
松村 泰志 中野 裕彦 楠岡 英雄 朴 勤植 松岡 正己 大嶋 比呂志 早川 正人 武田 裕
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.19-26, 2002 (Released:2017-08-14)
参考文献数
13
被引用文献数
2

ネットワークを利用した医療機関の連携を実現するために,ADSLによる地域IP網上にPKIをのせたネットワークインフラの上に,電子診療情報提供書システムとASP型の電子カルテシステムを稼動させ評価した.電子診療情報提供書システムは,センターのメッセージ交換サーバを中心に,18診療所と4病院の間を結び,診療情報提供書情報(J-MIXのXMLフォーマット)を交換するシステムである.病院側では地域医療連絡室を中継点として,各診察室との間で,配信・収集を行う方式とした.77人の患者を本システムで紹介したが,医師,患者ともに高い評価を得た.ASP型電子カルテシステムは,センターにサーバ,診療所に端末を置く構成で,病院用に開発されたシステムを診療所用に応用するものである.本システムは,message queuの非同期通信を基本とし,端末側にも患者データベースを置く構成であり,遅いネットワークででも,患者データの送受信については,応答速度を遅延させる要因とならなかった.画面等の設定データの受信に負荷がかかるなど,いくつかの改良すべき点が明らかとなったが,技術的には解決可能であり,この方式の電子カルテシステムが実現可能であると考えられた.
著者
瀬戸 僚馬 若林 進 石神 久美子 瀬戸 加奈子 池田 俊也 武藤 正樹 開原 成允
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.31-36, 2009 (Released:2015-03-06)
参考文献数
6

医師と医療関係職種等との役割分担を推進するための処方オーダリングシステムの代行入力について現状を概観するため,質問紙調査を行った.調査票は,2009年4月1日時点でDPCが適用されている1,052病院の薬剤部長あてに送付した.回答が得られた457病院のうち,処方オーダを導入率している404病院を分析対象とした. 医師が入力する処方オーダに関して,代行入力は一切行っていないと回答したのは260病院(64.6%)であり,何らかの方法で代行入力を行っている病院が144病院(35.4%)にのぼった.代行入力者は,薬剤師・看護師のような医療関係職種の場合も,事務職員の場合もみられた.代行入力には,口頭や書面による医師の指示をそのまま入力するものと,医療関係職種の臨床判断を必要とする事例がみられた. これらの代行入力内容は事務職員と医療関係職種とで混在しており,役割分担通知の趣旨を踏まえて再整理する必要性が示唆された.
著者
香川 正幸 吉田 悠鳥 久保田 将之 栗田 明 松井 岳巳
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.25-36, 2011 (Released:2015-02-13)
参考文献数
23

2台の24 GHzマイクロ波レーダーを寝具用マットレスの下部に設置し,就寝中高齢者の呼吸・心拍を非接触に計測するシステムにおいて,被験者体位が絶えず変化する環境下で定常的に精度高く計測することを目的とする.レーダー計測における3つの課題,すなわちNull detection point問題,高調波・相互変調波による干渉,そして脈波振動面とアンテナの対向性問題に対処するため,2台のレーダー装置のそれぞれが有する直交I/Qチャネルにより構成される合計4チャネル出力から,ターゲット信号を最も的確に捕らえているチャネルを動的に選択する新方式を提案する.この際,チャネル選択の指標には各出力のFFTスペクトル形状,すなわち突出ピーク数とピーク値間比率との組み合わせからなるSpectrum Shape Analysis(SSA)の考えを導入した.試作システムを特別養護老人ホームにおいて高齢者を対象に評価し,頻繁な体位変更にも係わらず,就寝中8時間のホルター心電図との比較で高い相関係数(r=0.61~0.73)を確認した.また,従来方式と比較して有意な改善効果が認められた.本システムは,介護要員の需給ギャップが今後ますます大きくなる高齢社会において就寝中高齢者に負荷の少ない新しい呼吸心拍計測システムとして期待される.
著者
竹内 昭博 土橋 かおり 島澤 謹江 五十嵐 久佳 坂井 文彦 白鷹 増男 池田 憲昭
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.319-326, 2000 (Released:2017-08-21)
参考文献数
7

慢性頭痛の自覚症状を把握するために「頭痛日記」が臨床現場で用いられている.「頭痛日記」に記載されたグラフ(頭痛曲線)の面積(頭痛の強さの積分値)を頭痛量と定義し,その計測を画像解析の技術を用いて自動的に行うシステムを開発した.同時に,頭痛曲線の特徴を表すパラメータ(頭痛の最大強度や持続時間,発作回数,日差変動等)を計測・算出した.本システムは,MS-Windows NT/98/95のインターネットエクスプローラ(IE4.1以降)上で稼働する.システムは,頭痛日記画像ファイルの入力や計測結果の集計・提示を担うHTMLファイル(HTML+VBScript,TKS.HTM 20 KB)と,WWWブラウザから画像ファイル名と輪郭線のRGB値を受取り,画像の二値化・抽出・計測を行うActive Xコントロール(TKS.OCX 100 kB,Microsoft VC++6.0)とから構成されている.自動計測した頭痛量は病状をよく反映しており,頭痛を定量的に把握するための一指標として,頭痛量が有用と考える.なお,本システムは,http://info.ahs.kitasato-u.ac.jp/tks/tkssetup.htmからダウンロード可能である.