著者
安藤 雄一 石田 智洋 深井 穫博 大山 篤
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.41-52, 2012-01-30
被引用文献数
3

歯科医院への定期受診の全国的実態は必ずしも明らかとはいえないため,われわれは20〜60歳代の男女から成る調査会社のモニタ計3万人に対してWeb調査を行い全国の概況把握を試みた.質問項目は定期歯科受診の有無と最後の歯科受診時期とその診療内容で,対象者の属性として性・年齢・居住地区・職業の情報を用いた.定期受診者の割合は35.7%(男性31.5%,女性39.9%)であった.過去1年間における歯科受診ありの割合は50.3%(男性45.9%,女性54.7%)であった.定期受診の有無についてクロス集計とロジスティック回帰分析を男女別に行ったところ,年齢階級,職業,居住地区,診療内容が有意性を示した.定期受診者の割合は高齢層が高く(男女共通),東北地方(男女共通)と北海道・四国・九州地方(女性のみ)で低かった.最後に受けた診療内容が「歯周疾患」・「歯ならびやかみ合わせ」・「その他」だった人は定期受診者の割合が高く,「むし歯」,「抜けた歯の治療」だった人では低かった(男女共通).職業では,男性において自営業,パート・アルバイト,学生などが低率を示した.さらに性・年齢階級で層別したロジスティック回帰分析を行ったところ,若い年齢層ほど,また女性より男性において職業による差が顕著であった.本調査結果は全国を代表するものとは言えないものの,歯科定期受診の全国的な実態を示す記述疫学情報として有用と考えた.

2 0 0 0 OA 歯と栄養

著者
柳金 太郎
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.3-7, 1952-02-27 (Released:2010-10-27)
著者
安細 敏弘 粟野 秀慈 川崎 正人 嶋崎 義浩 邵 仁浩 宮崎 秀夫 竹原 直道
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.632-636, 1992-10-30 (Released:2010-10-27)
参考文献数
8
被引用文献数
1

The purpose of this study was to evaluate the oral health of Iranian workers in Japan and their general life conditions, 125 Iranian subjects aged 20-43 yr congregating in Yoyogi and Ueno Parks in Tokyo were examined. The mean decayed, missing, and filled teeth (DMFT=7.8) and filled teeth (FT=2.3) scores were lower than the Japanese national average. The mean decayed teeth (DT=3.4) and missing teeth (MT=2.2) scores were higher than the Japanese national average. Calculus was the predominant periodontal problem, and shallow pockets prevailed in persons aged 30-34 yr. 39.7% of the subjects had complaints about their oral health, but only 16.8% desired dental treatment in Japan. Most of the subjects could not undergo dental treatment because of the high cost. Analysis of the results showed poor dental health in this survey group and emphasizes the necessity of improving the (dental) health service programs for foreigners.
著者
佐藤 豊
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.203-212, 2002-07-30
被引用文献数
1

0歳児から2歳児までの47名(男児26名,女児21名)を対象とし,各種機能発達過程に関してコホート研究を実施した。原始反射の消失時期,体位保持機能,口腔周囲の運動機能,跳躍などの運動能力,言語機能の獲得時期,食事形式の変化と発達時期および歯の萌出時期の各項目について,早期獲得群と運期獲得群とを比較し,各機能の相互関連性を検討した。探索反射,吸綴反射,咬反射の消失時期の早い小児では,早期に首がすわり,座位をとり,這いずりができていた。また,早期に口を閉じて液体を飲み,口唇捕食や口唇および目角を複雑に動かし,下顎を上下運動させ,舌で食物を押しつぶして食べることができ,さらに手づかみで食べる機能獲得も早く,喃語の出現も早期に認められた(p<0.05)。しかし,走る,その場で跳躍する,片足で立つなどの機能との間に関係は認められなかった。早期に首がすわり,座位をとり,這いずりや歩行ができた小児では,口を閉じて液体を飲む口唇捕食,口唇の複雑な運動,口角の左右対称な運動,下顎上下運動,舌での押しつよし食べ,歯槽堤での咀嚼および手づかみで食べるなどの機能が早期に獲得されていた(p<0.05)。原始反射消失が早い小児では,体位保持機能,口腔周囲機能の獲得が早期にみられたが,食事形式,言語機能,運動機能については早期に獲得されていない領域も認められ,特に摂食機能や言諸機能については,発達段階に即した日常の育児のなかでの適切な学習プログラムが重要であると思われた。
著者
相田 潤 深井 穫博 古田 美智子 佐藤 遊洋 嶋﨑 義浩 安藤 雄一 宮﨑 秀夫 神原 正樹
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.270-275, 2017 (Released:2017-11-10)
参考文献数
15

健康格差の要因の一つに医療受診の格差がある.また歯科受診に現在歯数の関連が報告されている.日本の歯科の定期健診の格差に現在歯数を考慮し広い世代で調べた報告はみられない.そこで定期健診受診の有無について社会経済学的要因と現在歯数の点から,8020推進財団の2015年調査データによる横断研究で検討した.調査は郵送法の質問紙調査で,層化2段無作為抽出により全国の市町村から抽出された20-79歳の5,000人の内,2,465人(有効回収率49.3%)から回答が得られている.用いる変数に欠損値の存在しない2,161人のデータを用いた.性別,年齢,主観的経済状態,現在歯数と,定期健診受診の有無との関連をポアソン回帰分析で検討しprevalence ratio(PR)を算出した.回答者の平均年齢は52.4±15.5歳で性別は男性1,008人,女性1,153人であった.34.9%の者が過去に定期健診を受診した経験を有していた.経済状態が中の上以上の者で39.7%,中の者で36.4%,中の下以下の者で28.5%が定期健診の受診をしていた.多変量ポアソン回帰分析の結果,女性,高齢者(60-79歳)で受診が有意に多く,経済状態が悪い者,現在歯数が少ない者で有意に受診が少なかった.経済状態が中の上以上の者と比較した中の下以下の者の定期健診の受診のPR は0.74(95%信頼区間=0.62; 0.88)であった.定期健診の受診に健康格差が存在することが明らかになった.経済的状況に左右されずに定期健診が受けられるような施策が必要であると考えられる.
著者
森岡 俊夫 森田 恵美子 鈴木 和雄
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.437-441, 1982
被引用文献数
5

本研究はQ-スウィッチを付けたNd-YAGレーザーを用いることにより歯石・歯垢を含む歯面付着物や歯質着色が安全に, かつ容易に除去しうるかどうか研索したものである。これらの付着物や着色の除去は予防歯科学領域での関心事である。<BR>エネルギー密度1.2~2.7J/cm<SUP>2</SUP>/パルスのレーザー光を歯面着色, 歯質着色, 歯石・歯垢付着, 小窩裂溝内容物を有するヒトの抜去歯牙39歯のエナメル質に照射すると, 付着物や着色の部位や種類により除去の難易性に若干の差異はあるが, これらの物質は有機性窩溝内容物を含めいずれも除去された。また臼歯部の小窩裂溝についても, 有機性の窩溝内容物は除去され, 窩溝壁や深部が部分露出した。Q-スウィッチを使用しないノーマル発振の同レーザー光では, このような結果は得られなかった。除去後のエナメル質表面を光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で調べると, 歯面の照射部位にチョーク様のスポットやクレーターは認められなかった。これらの結果からQ-スウィッチを付けたNd-YAGレーザーを歯石・歯垢などの歯面付着物, 歯面・歯質着色および小窩裂溝内容物除去の目的に臨床的に用いうる可能性が示唆された。
著者
谷 宏
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.411-435, 1980
被引用文献数
4

近年の学童の齲蝕罹患の地域差を明らかにすることを目的として本研究を行なった。昭和52年から53年にかけ, 北海道4地区, 沖縄県2地区, 東京都世田谷区内の1地区に居住する小学校1年生から中学3年生まで, 8,672名について歯科検診を行なった。東京の小学校6年生と北海道の小学校6年生, および北海道の中学生については質問紙により, 清涼飲料の摂取頻度と歯ぶらしによる刷掃頻度についても調査した。その結果, 東京の学童は北海道や沖縄の学童に比べ, 歯科保健状態ははるかに良好であり, 北海道辺地の学童が最も悪かった。北海道の学童は齲歯数が多いばかりではなく, 東京や沖縄の学童に比べ, 前歯部に齲歯を持つ者の率がはるかに高く, 比較的齲蝕罹患性の低い前歯部の唇面齲蝕も多く, 中学2年生で約20%の生徒に唇面齲蝕がみられた。前歯唇面齲蝕は隣接面や舌面齲蝕とは異なり, 前歯部に齲蝕を持つ者の率が約20%程度蔓延すると, その地区で唇面齲蝕が発生するようになることが示唆された。<BR>北海道の学童では毎日清涼飲料を摂取する者が多く, 清涼飲料を毎日摂取する者は齲歯数も多く, 前歯に齲蝕を持つ者が多い傾向がみられた。北海道の学童では毎日歯をみがく者の率は全国平均に比べて高いが, 日常の刷掃頻度と齲蝕罹患性との間に明瞭な関係はみられなかった。<BR>市販の清涼飲料10種について糖量を分析した結果, sucrose量は8.3~14.1g/dl, glucose量は0.13~3.429/dl含まれていた。pHは2.5~3.5であった。また清涼飲料を毎日摂取している者とほとんど摂取しない者各々20名の歯垢を調べた結果, 前者は後者に比べ歯垢中の総生菌数に対するStr. mutansの存在比は極めて高かった。<BR>国民栄養調査の結果からも, 北海道の人々は他地域の人々に比べ清涼飲料をよく飲むようであり, 北海道の学童における齲歯の多発, 前歯の齲蝕発生は清涼飲料の摂取頻度の高いことと関連があると考えられた。
著者
西 真紀子 熊谷 崇 ウェルトン ヘレン
出版者
一般社団法人 日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.399-407, 2016 (Released:2016-08-03)
参考文献数
14

リスク評価(CRA)に基づき,患者個人にカスタマイズドしたう蝕予防,つまりパーソナライズド・カリエス予防(PCP)は日本人にまだ新しい医療サービスである.Rogersのイノベーション普及理論によると,普及の初期段階のキーパーソンは,イノベーションについての知識が高いとされている.われわれは,PCPプログラムへのアクセス困難が,この新しいプログラムの普及を妨げていると仮定した.アンケート調査による本横断研究の目的は,う蝕と歯周病のリスク評価を促進することを目的としたあるNPO 法人(PSAP)を通した成人(20 歳以上)を対象に,(1)PCP 利用者の割合を調べ,(2)PCPプログラムを受けていない理由をまとめ,(3)カリエスリスクについての知識がPCPへのアクセスと関係しているかを決定することにより,この仮定を調査することである.被験者はPSAPの初期の賛同歯科医院会員の患者(グループA:N=389),新規の賛同歯科医院会員の患者(グループB:N=78),新規一般会員(グループC:N=68)とした.主要なアウトカム変数は,患者によるPCPプログラムの利用,PCPプログラムを受けていない理由,選ばれたカリエスリスクファクター/インディケータの合計と,8つのリスクファクター/インディケータを選んだ回答者の割合である. グループAはPCPプログラムの利用率が最も高く(83.0%, 99% CI: 71.4–94.7),グループB (59.0%, 99% CI: 21.8–96.1),グループC (27.9%, 99% CI: 13.4–42.5)と続いた.グループAとCには,統計学的有意差があった(p<0.01).PCPプログラムを受けていない最も多い理由は,グループAB(グループAとBの混合)で"それについて知らなかった"(68.4%),グループCで"かかりつけ歯科医がしてくれない"(53.1%)だった.彼らはグループABのPCP非利用者よりカリエスリスクの知識が高く,リスクファクター/インディケータの中にはグループABのPCP利用者よりもよく知っているものもあった.これらの知見を一般化すると日本における潜在的なPCP利用者は,彼らの歯科医師がこのサービスを提供していないためにPCPプログラムへアクセスする機会がないのだろう. 結論として,PCPプログラムへのアクセスは,歯科医師が提供しているサービスに決定され,患者の知識はPCPへのアクセスに関係なかった.日本において社会決定要因へのアプローチを通してPCPプログラムの利用可能性を高めるために更なる努力が必要である.
著者
葭原 明弘 安藤 雄一 池田 恵 小林 清吾 小黒 章 石上 和男 永瀬 吉彦 澤村 恵美子 瀧口 徹
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.339-345, 1996-07-30
被引用文献数
24

1984年より行政事業として成人歯科健診事業を実施してきた地区において,成人歯科健診事業の受診経験が喪失歯数およびう蝕処置状況に及ぼす影響について調査した。調査対象者数は,1994年の歯科健診事業受診者1,311人である。1993年以前に実施された歯科健診事業を1回でも受診したことのある者を「過去受診群」(309人),1994年の歯科健診初診者を「過去未受診群」(1,002人)とした。1994年における「過去受診群」と「過去未受診群」との横断分析のみならず「過去受診群」におけるベースラインデータと1994年との縦断分析も加えて評価を行った。その結果,一人平均喪失歯数については歯科健診事業の受診経験による改善傾向は認められなかった。う蝕処置完了者率については,歯科健診事業受診経験者に経年的な向上を認めた。しかし,これは歯科健診事業の受診によることよりも日常的に歯科医院を受診し易くなったという社会的要因に負うものが大きいと推察された。したがって,成人歯科保健事業については,今後歯科保健教育および適切な事後の予防管理を主体とする方向に可能性を見いだすべきであると考えた。
著者
川崎 浩二 飯島 洋一 高木 興氏 小林 清吾
出版者
一般社団法人 日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.676-683, 1991-10-30 (Released:2010-10-27)
参考文献数
15

The progression rate of newly occurred pit and fissure incipient caries of first molars was investigated every 6 months for 24 months. The subjects were 93 1st and 2nd grade elementary school children who did not perform school-based fluoride mouthrinsing. The progression rate after 12 months was approximately 60%, and the non-progression rate was approximately 40%. Cumulative progression rates after 12 months were approximately 60% for the 1st grade, and 40% for the 2nd grade, and the same rates after 24 months were 70% for the 1st grade, and 60% for the 2nd grade. These data were compared with our previous data derived from the same grade of elementary school children who performed school-based fluoride mouthrinsing. There was no statistical difference in the progression of incipient caries between these two schools. This lack of difference may be explained in terms of the complicated form of pits and fissures, or it may be that the fluoride mouthrinsing period was too short to be effective against caries progression.
著者
笹原 妃佐子 河村 誠 清水 由紀子
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.196-207, 2004-07-30
参考文献数
14
被引用文献数
15

選挙人名簿抄本から無作為に抽出した広島市住民に対して,郵送による質問紙調査を行った.質問紙では,性別や年齢などの属性,健康状態や歯科への受診行動について尋ねた.郵送した1,200名のうち,635名より返送があり,「定期的に歯科健診を受けていますか」の質問に回答のあった611名分について,定期的な歯科健康診断を支える要因を検討した.その結果,5つの要因が抽出された.Logistic回帰分析を行ったところ,この5つの要因のうち,最も定期歯科健診への影響力が大きかったのは『歯の健康に対する関心の因子』であり,学校や地域における歯科保健教育の重要性が示唆された.2番目に影響力が大きかったのは『歯科治療に対する感情の因子』であり,歯科診療時の麻酔薬や麻酔方法,切削器具等の改良により,歯科治療を受ける者の疼痛や不快感を減じる不断の努力が望まれた.3番目の要因は『地域密着性の因子』であり,歯科医が患者の信頼を受けるにたる治療を行い,定期歯科健診の必要性をアピールすることが必要であると考えられた.4,5番目の要因はそれぞれ『医師信頼性の因子』,『経済面の因子』であった.
著者
八木 稔 佐久間 汐子 宮崎 秀夫
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.375-381, 2000-07-30
被引用文献数
2

フッ化物洗口は,歯のフッ素症のリスクになるかもしれないとして,6歳未満の子どもたちには用いるべきではないとされる場合がある。しかし,日本のようなフッ化物の全身応用がなされていない地域において,そのようなフッ化物洗ロプログラムが歯のフッ素症のリスク要因であるという疫学的な報告はみあたらない。そこで,(1)フッ化物洗口群(非フッ素地区において4歳児からフッ化物洗ロプログラムに参加),(2)天然フッ素群(天然にフッ化物添加された約0.8mg F/lの水を飲用,フッ化物洗口プログラムない,および(3)非フッ素群(非フッ素地区,フッ化物洗ロプログラムない,それぞれの小学校5,6年生を対象に,2〜6歳の間に形成されるエナメル質の歯面領域(Fluorosis Risk IndexのClassification II)におけるエナメル斑の発現について疫学的調査を行った。フッ素性とみなされたエナメル斑の発現については,フッ化物洗口群では,非フッ素群よりも少ない傾向にあったが(オッズ比0.358),統計学的に有意ではなかった。同じエナメル斑の発現は,天然フッ素群では,非フッ素群に比較して有意に多かった(オッズ比3.112)。また,非フッ素性とみなされたエナメル斑の発現は,フッ化物洗口群および天然フッ素群ともに,非フッ素群と比較して少ない傾向がみられたが,統計学的に有意ではなかった。よって,非フッ素地区における就学前4歳児からのフッ化物洗ロプログラムが,歯のフッ素症のリスク要因となるとはいえなかった。
著者
広瀬 弥奈 村田 幸枝 福田 敦史 村井 雄司 大岡 令 八幡 祥子 水谷 博幸 五十嵐 清治
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.301-309, 2011-07-30

本学近隣の小児や保護者にフッ化物によるう蝕予防法をこれまで以上に普及させるためには今後どのような対策を講じていけば良いかを明らかにする目的で,北海道石狩郡新篠津村立小・中学校の保護者を対象にう蝕予防に関する意識調査を行った.その結果,う蝕予防で最も重要(問4)なのは「歯磨き」と回答した保護者が94.6%と最も多く,「フッ素」と回答した保護者は皆無であった.フッ化物によるう蝕予防は効果が高い(問13)と答えた保護者は62.8%で最も多かった.フッ化物配合歯磨剤の認知度(問15)は91.6%とかなり多かったが,フッ化物洗口法を知っていると答えた保護者は36.6%と少なく(問14),水道水フッ化物添加法においては18.5%とかなり少なかった(問20).一方,フッ化物配合歯磨剤の使用率は高かったものの,フッ化物配合歯磨剤を使用しないブラッシングにも予防効果があると答えた保護者が半数以上認められた.また,フッ化物に不安を抱いている保護者はフッ化物の応用に消極的であった.以上のことから,保護者のフッ化物によるう蝕予防に関する正確な知識が乏しいことが明らかとなった.今後,フッ化物の効果と安全性,応用法などに関する正しい知識を普及させるための啓発活動の必要性が認められた.
著者
森田 一三 中垣 晴男 村上 多恵子 加藤 一夫 水野 照久 坪井 信二 加藤 尚一 水谷 雄樹 太田 重正 小澤 晃 瀧川 融 粂野 千代 井上 千恵子 井上 好平 相武 卓樹 飯島 英文 佐藤 和子 大野 知子
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.241-247, 1996-07-30
被引用文献数
22

80歳で20歯以上保持する者(8020者)と19歯以下の者(対照者)について,栄養および食事摂取状況を比較検討した。その結果8020者はエネルギー充足率が有意に低かった。また,糖質摂取量が低い傾向が見られた。食品の摂取品目は8020者の方が多かった。以上より8020者はエネルギー摂取量は少なめで,多くの種類の食品を摂ると結論された。
著者
深井 穫博
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.120-142, 1998-01-30
参考文献数
91
被引用文献数
34

わが国の歯科保健医療の実態を行動科学的に捉える1つの方法として,成人を対象とし,職域を1つに限定し,全国規模として北から南にかけて9地域を選定した。調査対象者は,人口10万人以下の9市の市役所に勤務する成人1,418名である。統計的な検定は,x^2検定と多重ロジスティック回帰分析を用いた。歯科治療に対して強い不安をもつ者の割合は,33.1〜56.6%の範囲であり,25〜34歳および55〜64歳の年齢層で,女性が有意に高い割合であった。過去1年間に歯科を「受診しなかった」者は,男性が38.9〜51.2%の範囲であり,女性では32.3〜43.9%であった。北海道,中部,関東,近畿,中国および九州の9地域を比較した結果,就寝前の歯みがき習慣のある者は63.5〜81.2%の範囲であり,かかりつけの歯科医師をもつ者は59.4〜80.7%であった。口腔保健への促進因子と阻害因子について,35〜44歳の年齢層で解析した結果,就寝前の口腔清掃行動に有意に働く因子は口腔保健に関する知識であり,かかりつけの歯科医師の有無では,(1)家族数(三世代)と(2)症状を自覚した際に歯科医院へすぐ行く態度が選択された。定期歯科健診の受診では,(1)「年収」と(2)「歯科治療への恐怖心」が関連していた。以上の結果から,成人の口腔保健に関する認知度および歯科医療の受容度には,性差,年齢が明らかに影響を及ぼしており,地域性との関連も認められた。口腔保健行動には,「知識」,「歯科医療機関へのアクセシビリティー」,「歯科治療に対する不安」,「周囲からの働きかけ」,「経済性」などが関与していることが示された。
著者
田中 景子 飯島 洋一 高木 興氏
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.215-221, 1999-04-30
被引用文献数
2

エナメル質ならびに象牙質の脱灰病変に,重炭酸イオンを作用させることによって,再石灰化の過程にどのような影響を及ぼすかをin vitroで検討した。試料には50歳代の健全小臼歯を用いた。脱灰は0.1M乳酸緩衝液(Ca 3.0mM, P 1.8mM, pH 5.0)で7日間行い,続いて再石灰化溶液(Ca 3.0mM, P 1.8mM, F 2ppm,pH 7.0)に7日間浸漬した。この再石灰化期間中,8時間ごとに再石灰化溶液から取り出し,30分間,4種の異なった重炭酸イオン溶液(0.0, 0.5, 5.0, 5O.OmM)に浸漬した。薄切平行切片を作成し,マイクロラジオグラフによってミネラルの沈着を評価した。エナメル質では重炭酸イオン濃度の増加に伴って,病変内部に再石灰化が発現する傾向が認められたが,統計学的な有意差はなかった(p=0.09)。一方,象牙質では表層に限局した再石灰化が認められた。特に5.0mM群では著明であったが,エナメル質と同様,統計学的な有意差は認められなかった(p=0.08)。エナメル質と象牙質で異なる再石灰化の所見が発現した理由は,重炭酸イオンの浸透性の違いによるものであると推察される。
著者
林 祐行 冨田 耕治 大塚 千亜紀 大和 香奈子 一宮 斉子 吉岡 昌美 和田 明人 中村 亮
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.734-744, 1996-10-30
参考文献数
10
被引用文献数
20

小学校6年生児童116名を対象とし,永久歯齲蝕発病と3歳児健康診査における乳歯齲蝕罹患状況との関係を調査した。統計学的分析は,永久歯齲蝕に関与すると考えられる生活習慣および3歳児乳歯齲蝕罹患型の9項目を説明変量,DMFを目的変量とした数量化I類によって行った。この結果,最も関与の大きい項目は乳歯齲蝕罹患型であり(偏相関係数=0.181,順位1位),乳歯齲蝕罹患型を説明変量に加えることで,重相関係数は0.287から0.355に上昇した。また乳歯齲蝕罹患と他の説明変量として使用した生活習慣の間に内部相関は認められなかった。このことから,乳歯齲蝕の罹患状況が永久歯齲蝕発病に比較的大きな影響を与えていると考えられ,乳幼児期における健康指導・教育の重要性が示唆された。
著者
大石 憲一 北川 恵美子 森田 学 渡邊 達夫 松浦 孝正 伊藤 基一郎
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.57-62, 2001-01-30
参考文献数
23
被引用文献数
13

岡山県歯科医師会会員および準会員1,046名を対象に,平成10年7月6日から19日までの2週間,郵便調査法による抜歯の理由調査を行った。回収率は38.1%(399名)で,以下の結果を得た。1. 抜歯総数は4,594本であった。回答者1人あたりの週平均抜歯本数は5.76本であった。2. 理由別にみた割合は,歯周病によるものが46.1%,う蝕によるものが42.1%であった。3. 抜歯された患者の平均喪失年齢は,う蝕によるものが53.3歳,歯周病によるものが58.8歳であった。また歯種別では,第三大臼歯を除くと,上顎第一小臼歯,上顎第二大臼歯,下顎第二大臼歯の順で平均喪失年齢が低かった。4. 年齢層別の抜歯理由は,45歳までの年齢層では,う蝕による抜歯の割合が男女とも第1位であった。しかし,46歳以上の中・高年齢層では,歯周病による抜歯の割合がう蝕による抜歯の割合とほぼ同じか,それを上回った。5. 昭和61年度の調査と比較して,う蝕から歯周病への抜歯の主な理由の変遷,抜歯された患者の平均年齢の上昇,および歯科医師1人あたりの抜歯本数の減少がみられた。
著者
森田 一三
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.688-706, 1996-10-30
参考文献数
34
被引用文献数
16

80,70,60歳世代の者について保有歯数に影響を及ぼす過去の食事・生活習慣や口腔の状況について世代別に調査検討を行った。80歳世代については愛知県常滑市における8020調査,70,60歳世代については岐阜県山岡町における住民歯科健康診査の合計319名を調査対象とした。その結果,80,70および60歳世代のいずれも共通して影響するものと,世代ごとに影響が異なる因子に分けられた。すなわち80,70,60歳世代に共通して保有歯数に影響していたものは,男性の小学生時の「母親のしつけ」,20歳時の「甘味嗜好」,40歳時の「歯肉出血」,60歳時の「歯肉腫脹」,「歯磨回数」,女性の40歳時の「歯肉腫脹」,60歳時の「歯肉腫脹」であった。一方,世代で変化するものとして,男性では20歳時の「歯肉出血」,40歳時の「間食回数」,「かかりつけの歯科医院」が80歳世代に比べ70,60歳世代への影響が大きく,40歳時の「歯磨回数」が60歳世代に比べ80,70歳世代への影響が大きかった。また,女性では小学生時の「歯磨回数」が60歳世代に比べ80,70歳世代への影響が大きく,60歳時の「甘味嗜好」が80歳世代に比べ70,60歳世代への影響が大きくなっていた。