著者
深井 誠一 辻 恵太
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.447-452, 2004-09-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
19
被引用文献数
5 5

四種のアジア原産トランペットユリ(Liliumcentifolium centifolium, L. sargentiae, L. wallichianum, and L. regale 'Album')をシンテッポウユリ(L. × formolongi)品種ホワイトランサーに花柱切断法で交配した.子房胚珠培養法と胚培養を行い雑種植物体の獲得数を比較した.いずれの交配組合せでも子房胚珠培養法でより多くの交雑植物が得られた. rDNAのPCR-RFLP分析により,幼植物の雑種性が確認された.得られた交雑植物は,いずれも白色トランペット型の花をつけ,花粉稔性は低かった.
著者
林 公彦 牛島 孝策 千々和 浩幸 姫野 周二
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.346-353, 2004-07-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
35
被引用文献数
7 7

To reduce labor costs in the cultivation of Japanese persimmon which is prone to be too vigorous, a horizontal trellis training system was attempted as a practical method for lowering the tree height. The frameworks of an open center, 3.6 m high 'Matsumotowase-Fuyu' Japanese persimmon trees were altered to a horizontal frame at 1.8 m height on February 1992 by cutting back secondary scaffold branches at 1.5. to 1.6 m above ground level. The tree growth, yields and fruit quality of the altered trees were compared with the open-center free-standing trees control. One year after altering the framework, the canopy area on horizontally trellised trees expanded vigorously, compared with the control group. After pruning, the trees with altered the framework were left with twenty percent more lateral branches than the open center free-standing trees. Two years after altering, the number of shoots per canopy area was greater in the treated trees than in the control, but the number of shoots per lateral branches and mean shoot length did not significantly differ from the control group. Annual fruit yield was 300 kg/a higher in the horizontal trellis system than that of the unaltered free standing system group, and the number of fruits per canopy area exceeded 10 fruits/m2. Over 4-year period, the horizontally trellised trees produced more flowers per lateral branch than did the open center free-standing ones. Physiological fruit drop rates were lower in horizontally trellised trees than in those of the control. Fruit on the former was significantly heavier than that on the letter. The percentage of fruit weighing more than 260 g accounted for 61.2% of the total yield in horizontally trellised trees. During the period of 80 days after blossoming to harvest, fruit diameter increased significantly faster on horizontally trellised trees than that on the free standing trees. Similarly, the commencement of fruit skin coloring and harvest time was advanced in the treated trees compared with those of the control. In conclusion, by lowering tree height the horizontal trellis training system achieves the following: decreased harvest and pruning costs, increased yield and fruit weight, improved fruit quality, and advanced maturation. These advantages indicate that this system has a strong potential as a training system that will be used extensively in the near future.
著者
文室 政彦
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3-4, pp.459-465, 1997 (Released:2008-05-15)
参考文献数
29
被引用文献数
5 4

西村早生わい性系統の果実生産力が高い原因を明らかにするために, 29年生および30年生樹を供試し,乾物生産と分配を検討した.1.強勢系統の地上部新鮮重および地下部新鮮重は, それぞれわい性系統より, 5.9倍, 5.3倍高かった. 材葉比およびT-R率は系統間に差がなかった.2.単位樹冠占有面積当たり収量は系統間に差がなかったが, 単位葉面積当たりおよび単位幹断面積当たり収量はわい性系統が強勢系統より高かった.3.着果樹の1樹当たり年間の乾物生産量は, 強勢系統がわい性系統より4.7倍高かった. 単位葉乾物重当たりおよび単位葉面積当たりの乾物生産量は系統間に差異はなかった. わい性系統は強勢系統より果実への乾物分配率が高く, 新梢および旧枝への分配率は低かった.4.適正着果樹は全摘果樹より, 1樹当たり年間の乾物生産量が強勢系統で1.3倍, わい性系統で2.2倍高く, 単位葉乾物重当たりおよび単位葉面積当たり乾物生産量は強勢系統で1.3倍, わい性系統で1.5倍高かった.以上の結果, '西村早生'わい性系統の果実生産力が強勢系統より高いのは, 葉の乾物生産力が高いのではなく, 果実への乾物分配率が高いためであることが明らかになった. また, わい性系統は葉量が顕著に少ないために樹体の全乾物生産量が低く, 加えて果実への乾物分配率が高いために新梢および旧枝への乾物分配率が低下し, 樹体をわい化させるものと考えられる.
著者
川俣 昌大 小原 均 大川 克哉 村田 義宏 高橋 英吉 松井 弘之
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.68-73, 2002-01-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
15
被引用文献数
1 2

養液栽培によるイチジクの周年生産のための基礎的資料を得ることを目的に二期作栽培を試みた.養液栽培イチジクの4年生樹を早期加温して得られた一番枝を用いた一作目と, 夏季の摘心後または切り戻しせん定後に再発芽した二番枝を用いた二作目における収量および果実の品質を調査した.なお, 培養液は園試処方の1/2単位(EC値1.5dS・m-1に相当)とし, 約2週間に1度全量交換した.1. 1月10日に切り戻しせん定を行い, 加温(最低温度15℃)を開始すると, 一番枝は1月29日に萌芽し, 果実は6月7日から9月30日まで収穫できた.また, 一番枝当たりの総収量は約1.5kg(15.0個), 平均果実重は104gとなり, 平均糖度は14%であった.2. 6月14日に一番枝を約200cm(約30節)の部位で摘心後, 最上位節から発生した二番枝は6月30日に萌芽し, 果実は11月24日から2月14日まで収穫できた.また, 二番枝当たりの総収量は約1.3kg(15.8個), 平均果実重は80g, 平均糖度は16%であったが, 12∿22節位の着果率が低かった.3. 7月26日に一番枝すべてを切り戻しせん定すると, 二番枝は8月5日に萌芽し, 果実は12月6日から2月14日まで収穫できた.また, 二番枝当たりの総収量は約1.0kg(12.5個), 平均果実重は72g, 平均糖度は16%であった.以上の結果より, 養液栽培によるイチジク4年生樹の二期作では, これまで明らかにされている土耕による早期加温栽培と比較して, 一作目の早期収穫が可能となり, 高品質・高収量の果実が得られた.また, 二期作目の果実はやや小さくなるものの糖度が一作目より高くなることから, 養液栽培によるイチジク果実の周年供給が十分可能と考えられた.
著者
堀内 昭作 湯田 英二 中川 昌一 森本 純平 我藤 雄
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.225-235, 1990 (Released:2007-07-05)
参考文献数
10
被引用文献数
3 2

‘ハヤシ系ウンシュウ’に‘セキトウユ’, ‘バレンシアオレンジ’, ‘ダンカン’グレープフルーツ, ポンカン, ‘セミノール’の5種•品種を交配し, 得られた種子の形状の差異により, 発芽可能な受精胚を含む種子を識別する方法を確立した.受精胚を含む種子の形状の特徴は, 扁平で凸凹が少なく, 比較的大きく充実していた. 胚の特徴は1種子内に1~数個存在しており, 種皮の縫線と2枚の子葉の合一する線とが一致し, 珠心胚の子葉とは異なる色を呈するものが多い, などである.どの五つの交配組み合わせにおいても, この特徴を持つ種子が存在した. また, 胚数には花粉親の影響が認められ, とくに, ‘セキトウユ’にその影響が強かった.これらの種子より生じた実生の葉の形状を珠心胚実生の葉と比較検討したところ, 明らかな差異が認められ, 交雑実生であることが確認できた.‘バレンシア’オレンジを母本に同様に5種•品種を交配した場合には, この特徴を持つ種子は出現しなかった.さらに, 32種•品種の自然受粉した種子について, 同様の特徴のある単胚種子の出現を調査したところ, 種•品種により大きな差異が認められたので, これらの品種をA型(単胚率10%以上), B型(単胚率0~10%), C型(単胚率0%)の3型に分類した.AおよびB型の種•品種は, 本研究で開発した種子の形状による受精胚を含む種子の選抜法を利用すれば母本として育種親に用いることが可能である.ウンシュウミカンを母本に用いた本実験では, この方法を用いることにより, 5交配組み合わせの種子662個から119個の交雑実生を得ることができた.
著者
細見 彰洋 内山 知二
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.44-50, 1998-01-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
16
被引用文献数
7 8

ネコブセンチュウが生息し, かつ生育障害の発生している大阪府下のイチジク栽培圃場から土壌を採取し, これを接種していや地を起こさせた圃場の土をいや地土壌として実験に供した.いや地土壌, あるいはこれを添加した用土でのポット試験では, 挿し木イチジクの萌芽や発根が阻害されて活着率が低下し, 活着した個体の生育も著しく劣った.いや地土壌を予め60℃で2時間湯煎し, いや地土壌に含まれるネコブセンチュウを死滅させた場合, このような生育阻害は軽減されたが, 対照土壌に比べると活着率が低く, 活着しても新梢や根の生育が劣った.ネコブセンチュウ幼虫を, ポットで生育中の挿し木イチジクの用土に添加すると, 新梢や根の生育が抑制された.しかし, この抑制程度は, ほぼ同数のネコブセンチュウ幼虫を含むいや地土壌を添加した場合に比べてはるかに軽微であった.静止液法による養液栽培で生育中のイチジクに対し, 培養液にいや地土壌の懸濁液を添加すると, 根部へのセンチュウの寄生がなくても新梢や根の生育が著しく抑えられた.この生育抑制は懸濁液をメンブレンフィルターで濾過したり電子レンジで2分間の加熱処理することで消滅した.以上から, 本実験で使用したいや地土壌には, センチュウ以外の強い生育阻害要因が存在すると考えられた.この要因が単一のものかどうか不明だが, 生育阻害が, いや地土壌やその懸濁液を熱処理することによって軽減もしくは消滅したり, メンブレンフィルターによる濾過で消滅することから, この要因は微生物に由来する可能性が高い.
著者
矢羽田 第二郎 野方 仁
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.72-77, 2001-01-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
15

イチジク'桝井ドーフィン'を用い, 結果枝内の第7節以下のすべての果実を横径が約4mmに達した結果期に摘果して, 第8節と第13節の果実の形質と糖集積に及ぼす影響を調査した.1. 第8節と第13節の果実が結果から成熟までに要した日数は73∿74日で, 摘果区と無処理区との間に差はなかった.結果後の果実肥大において, 第8節の果実では摘果処理の影響が小さかったが, 第13節では果径が肥大初期から大きくなる傾向が認められた.2. 無処理区の収穫果実は, 第8節と第13節の果実は第3節の果実に比べ横径と果実重が著しく小さく, 肥大が劣った.第8節, 第13節の果実は, 第3節に比べて果皮色のE値が高く着色が劣り, 小果, 果托の糖度も低かった.果実の硬度は, 節位間に差がみられなかった.3. 摘果区では, 第13節の収穫果実の横径と果実重が無処理区より大きくなり, 果肉内では小果よりも果托の重量が増加した.果皮色のE値は, 第8節では摘果区が無処理区より低くなって着色が優れ, 第13節でも摘果区が低下傾向となった.果実の硬度は, 第8節, 第13節の両節位とも処理区間に差がなかった.4. 摘果区では, 第8節, 第13節の小果および果托で無処理区に比べ単位重量当たりの果糖, ブドウ糖含量が増加した.また, 部位ごとの重量から換算した糖の総量も無処理区より多くなり, 特に, 重量増加が顕著であった第13節の果托で糖の集積が促進された.
著者
平井 重三 平田 尚美 多田 英喜
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.354-360, 1966 (Released:2007-07-05)
参考文献数
7
被引用文献数
6 3

油処理によるイチジク果実の成熟促進について, 果実の発育と処理時期の関係および油の種類による効果の相違について, マスイドーフィンの第2期果を材料として実験を行なつた。1. 果実生長の第II期の末ごろ, 果径が約34.0mmに達した時, 果皮が緑色から黄緑色に変わり, 果頂部の目の部分が多少隆起して, 淡桃色から赤桃色に変わり, かつ花托内の小果が淡桃色から赤桃色に変つたころが, 油処理を行なつて成熟促進に効果のある時期であると判定された。2. 各種の植物油処理では, その沃素価の大小にかかわらず, 同様の促進効果が認められ処理後6日で成熟した。油処理された成熟果の大きさ, 糖, 酸含量および着色度など, 自然成熟果と差異がなかつた。3. 動物油処理は植物油よりも効果はやや劣つたが処理後8日で成熟し効果が認められた。4. 鉱物油処理は成熟促進効果は著しく劣り, その効果も不均一であつた。また流動パラフィンの効果はほとんど認められなかつた。
著者
矢羽田 第二郎 野方 仁
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.987-992, 1999-09-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
17
被引用文献数
6 6

イチジク果実の糖含量と糖組成比について, 秋果および夏果の品種間差異, 果実の部位, 結果節位による相違を検討し, 以下の結果を得た.1. 供試した普通型10品種の秋果と, サンペドロ型3品種および普通型1品種の夏果のすべてで, 小果の全糖含量に占める果糖, ブドウ糖の合計値の割合が90∿95%以上に達し, ショ糖の割合は低かった.しかし, 糖組成比の品種間差異はショ糖で顕著に認められた.2. '桝井ドーフィン'と'蓬莱柿'の秋果では, 成熟期に小果, 果托の果糖, ブドウ糖含量が急増するとともに, 全糖含量に占めるブドウ糖の割合が低下して果糖の割合が高まった.収穫期における糖組成比は, 両品種とも小果, 果托の間に有意な差がなかった.3. 小果, 果托の重量は, 収穫前の約2週間で急激に増加し, その際, '桝井ドーフィン'は果托, '蓬莱柿'は小果の重量が大きくなった.小果, 果托の重量から換算した部位別の糖含量は成熟期に急増し, とくに小果の重量が大きくなった'蓬莱柿'では, 小果の各組成糖の含量が果托に比べて顕著に多くなった.4. '桝井ドーフィン'と'蓬莱柿'の秋果では, 結果節位が高い果実で, 小果の全糖に占めるショ糖の割合が高くなった.結果節位の上昇に伴う糖組成比の変化には, 秋季の気温低下が影響していると考えられた.
著者
黒田 治之 千葉 和彦
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.544-552, 2002-07-15
被引用文献数
5 4

主幹形の11年生M.26台木利用'スターキング・デリシャス'リンゴ樹を供試し, 栽植密度が生産構造と光環境に及ぼす影響について検討した.1. 453&acd;623樹・ha^<-1>区における低密度域の個体群は, 円錐形をした樹の集まりで, 樹冠層は凹凸状態であった.しかし, 栽植密度の増加に伴って樹冠のうっ閉が進むと, 樹は円筒形に変化し, 樹冠が完全にうっ閉した高密度域では, あたかも一つの個体のような形態を示した.2. 623樹・ha^<-1>区の生産構造は針葉樹型であったが, 栽植密度の増加に伴って広葉樹型に移行した.3. 生産構造の果実重と葉重は, 対応した分布を示した.果実生産量は623樹・ha^<-1>区が最も高く, 針葉樹型生産構造が高い果実生産性を有することが示された.4. 果実生産量(Yd)と葉の果実生産能率(Yd/F)の関係は, 式(1)のYd=1.348+3.109(Yd/F)で表され, 針葉樹型生産構造の高い果実生産性が葉の高い果実生産能率に依存していることが示された.5. 吸光係数(K)は栽植密度の増加に伴って低下した.すなわち, 果実生産はKの低下に伴って減少し, Kに対して物質生産と相反した関係にあることが示された.6. 果実生産量(Yd)と光捕捉率(LI)の関係は, 定義域69.9%≦LI≦92.2%を条件として, 式(2)のYd=-150.42+4.175(LI)-0.0273(LI)^2で近似できた.果実生産量が最大になる最適光捕捉率(LI_<opt>)は76.5%であった.7. LI_<opt>における栽植密度とLAIは, それぞれ既報(黒田・千葉, 1999)の最適栽植密度と最適LAIに一致した.8. LI_<opt>における個体群構造の特性は, 個体群内の空間, 樹冠層の凹凸および針葉樹型生産構造であった.9. 式(1)と(2)から導いた葉の果実生産能率(Yd/F)と光捕捉率(LI)の関係式, Yd/F=48.816+1.343(LI)-0.009(LI)^2は, 定義域69.9%≦LI≦92.2%を条件として, 実測値とよく一致し, 葉の果実生産能率が光捕捉率に依存していることが示された.以上の結果から, 果実生産性の高いわい性台木利用リンゴ園はLI_<opt>を示すLAIを維持することにより構築できることが示唆された.このような園は針葉樹型生産構造であるため, 光の利用効率が高く, 結果として葉の果実生産能率が高まって, 果実生産性が高まるものと考えられる.
著者
曽根 一純 望月 龍也 野口 裕司
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.1007-1014, 1999-09-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
22
被引用文献数
7 7

国内外から導入した幅広い特性を有するイチゴ品種について, 促成および露地栽培におけるビタミンC含量を調査した.1995年には293品種を用いて5回の収穫時期で, また1996年には149品種を用いて7回の収穫時期で調査した.これをもとにビタミンC含量の品種・収穫時期間における変動を明らかにするとともに, ビタミンC含量と平均果重, 果皮色, 糖および有機酸の含量・組成等の果実品質関連形質との関係を検討した.1) 1995年作における収穫期間を通じた各品種のビタミンC含量の平均値は, 15.9mg/100g&acd;114.8mg/100gの範囲に分布し, 供試した293品種の総平均は59.1mg/100gであった.ビタミンC含量およびその時期的安定性には幅広い品種間差がみられた.Finlay・Wilkinson (1963)の方法による回帰係数を用いて環境変動に対する安定性を検討したところ, 高いビタミンC含量の品種ほど環境変動に敏感な傾向がみられた.しかし, '静紅', 'あかしゃのみつこ', 'さちのか'等は高いビタミンC含量を有し, かつ環境変動に対して比較的鈍感であり, 安定して高いビタミンC含量の品種を育成するための育種母本として有望と考えられた.2) ビタミンC含量の品種間差は収穫時期間の安定性が高く, 品種特性としてのビタミンC含量を評価するに当たっては, 大まかなスクリーニングのための調査を収穫期間中に数回行ない特性を把握し, より詳細な環境変動に対する調査が必要な場合には収穫期全体を通じた評価を行うことにより, 合理的な評価が可能と考えられた.3) ビタミンC含量と全糖含量および全糖含量に対するスクロースの割合(スクロース比率)との間には, 有意な正の相関がみられたが, 有機酸含量および有機酸含量に対するリンゴ酸の割合との間には有意な相関が認められなかった.また, ビタミンC含量の収穫期間を通じた変動係数は, スクロース比率およびグルコース/フルクトース比率の変動係数との間に正の相関を示した.従って, ビタミンC含量の安定して高い品種を育成するに当たっては, 糖含量が高く, かつ糖組成の安定性の高い素材の利用が可能であり, これらを用いることにより食味とのバランスが取れた安定して高いビタミンC含量を有する品種の育成が可能と考えられた.
著者
太田 和子 香川 彰
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.327-332, 1996 (Released:2008-05-15)
参考文献数
22
被引用文献数
13 11

ホウレンソウ(Spinacia oleraceaL.)F1品種'松緑'のシュウ酸含量を低下させることを目的にジ硝酸態窒素の濃度と硝酸態窒素対アンモニア態窒素の比率の影響について検討した.植物体は,0~100ppmのNO3-を含む養液で生育させたところ,窒素濃度が10ppmより低いとき,シュウ酸含量は低下したが,生育も不良となった.さらに,葉中の全窒素含量も低くなった.次に,硝酸態窒素とアンモニア態窒素の混合割合を変えて栽培した.アンモニア態窒素の割合が高くなるほど総シュウ酸,水溶性シュウ酸ともに含量が低下した.生育は季節により変動があったが,アンモニア態窒素が75%以上の高比率の区では低下した.しかし,混合区でもアンモニア態窒素の割合が25%より低いと,生重が低下しない区もみられ,生育を落とさずにシュウ酸含量を低下させられる可能性がみいだされた.
著者
庵原 遜
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.405-412, 1966 (Released:2007-07-05)
参考文献数
16

(1) 前年枝を使つたカエデの枝接が活着しにくい原因を明らかにするために, 1964年から′65年の間に, イロハモミジを材料としてカルス形成と環境温度との関係を調べ, 更にイロハモミジにノムラを接木したものについて, 同じく環境温度と接木のゆ合組織発達との関係を調べた。(2) 6日間の観察では, カルスは15°C以下ではほとんど形成されない。20°C以上になると温度の上昇とともに形成量が増加し, 30°Cでは急激に増大した。接木のゆ合組織の発達も, 30°Cでヵビのために阻害されたのを除いて, これと全く同じ傾向を示した。(3) カルスは組織が若いほどよく形成された。しかし前年生の組織でも, 接木活着に重大な影響をおよぼすほど少なくはなかつた。(4) カルスは, 休眠期に多く形成され, 生育伸長期にやや少ない傾向はあるが, 年間を通じてつねによく形成された。接木も環境条件を調節すれば, 季節による活着率の差はあるが年間を通じてよく活着した。(5) 以上の結果は, 接木のゆ合組織の発達がカルスの発達と同じ要因の影響をうけることを示す。また, これまで前年枝を使つたカエデの枝接が活着困難であつたのは, 環境温度の不足によるものであろうと推定される。すなわち, 接木親和性のある樹種において, 接木活着に影響する最大の要因は接木時の環境条件特に環境温度であると考えられた。
著者
宮崎 丈史 都築 和香子 鈴木 建夫
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.217-224, 1991 (Released:2008-05-15)
参考文献数
11
被引用文献数
9 11

サツマイモの表皮色はその市場評価を高めるうえでの重要な品質要因となっている. 表皮の鮮やかな赤色はアントシアニンによるものとされているが, これについての研究はきわめて少なく, その化学構造についても一部が明らかにされているにすぎない. Imbertら(4) は, サツマイモの茎の赤色色素について調査し, その主要成分をジカフェオイル-シアニジン-3-ジグルコシド-5-グルコシドおよびジカフェオイル-ペオニジン-3-ジグルコシド-5-グルコシドと報告している. 一方,塊根内部が紫色のサツマイモは, 一部の品種についてその主要なアントシアニン ('Yen217':カフェオイル-フェルロイル-シアニジン-3-スクロシド-5-キシロシド) が同定されている (9).アントシアニンは, 近年, 天然の着色料として食品への利用が急速に増加しているだけでなく, 抗酸化能などを有する機能性物質としての検討も開始されている (10). そこで著者らは, 高品質なサツマイモの生産,貯蔵に関する研究およびアントシアニンの利用に関する研究の一環として, わが国における青果用サツマイモの主要品種である'紅赤'と'ベニアズマ'の表皮を用い,これらの表皮色を構成している色素であるアントシアニンの構造の同定を試みた. 本報告では, その結果とともに, 紫サツマイモの代表的な品種である'山川紫'と'種子島紫'の塊根のアントシアニン組成についても述べる.
著者
福嶋 忠昭 北村 利夫 村山 秀樹 吉田 敏幸
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.685-694, 1991 (Released:2008-05-15)
参考文献数
19
被引用文献数
10 12

渋ガキ'平核無'を用い, エタノールによる脱渋機作を種々の観点から検討した. 結果は以下のとおりである.1. デシケータ内に果実を入れ, ふたをずらして開口部を設けて35%エタノールまたは5%アセトアルデヒド処理を施したところ, 両処理区とも果実内のアセトアルデヒド含量は4日目まで同じような値を示したにもかかわらず, エタノール処理の方がアセトアルデヒド処理より早く脱渋した。2. 乾熱果または煮沸果を種々の濃度のアセトアルデヒド溶液に2日間さらし, 果肉内のアセトアルデヒド含量と脱渋量の関係式を求めた. これをエタノール処理中の果実に適用すると, アセトアルデヒドの非酵素的作用だけで脱渋するには, 果実内に存在するアセトアルデヒドの量が著しく少なかった.3. エタノール処理の果肉組織の浸透圧と水不溶性物質の保水能は増加する傾向があった. その程度は脱渋速度が大きい処理2~4日で著しかった.4. 煮沸果を90°C下で乾燥すると, 目減りが増加するとともに浸透圧が増加し, 可溶性タンニン含量が減少し, 12時間後にはアセトアルデヒドの発生が認められなくても完全に脱渋した.5. エセホンやIAAを組織切片に与えても脱渋が認められ, IAAをへたに浸潰し放置して置くと果実は完全に脱渋した.以上の実験を踏まえて考察した結果, エタノールによる脱渋は, 処理によって生ずるアセトアルデヒドの非酵素的作用による水溶性タンニンの不溶化によるのみならず, エタノールによって誘導される細胞壁多糖類の分解がタンニン細胞周辺組織の浸透圧の上昇を招き, その結果タンニン細胞中の水が脱水され, 接近したタンニン分子が水素結合や疎水結合により巨大分子となって脱渋するものも相当あると推察された.
著者
中川 昌一 ブコバック M. J. 平田 尚美 黒岡 浩
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.9-19, 1968 (Released:2007-07-05)
参考文献数
16
被引用文献数
8 11

1. リンゴ Wealthy および日本ナシ新世紀の有種子果, ならびにGA7およびGA4処理による単為結実果について, その形態学的差異を調査した。ジベレリン処理果は有種子果にくらべて縦径は大きくなるが, 横径は変わりがないかあるいは小さかつた。有種子果における皮層組織の厚さは, 果実の基部が頂部および中央部より大きかつたが, ジベレリンによる単為結実果では逆に頂部が中央部および基部より大であつた。有種子果の基部における皮層の増加は, その組織の細胞数と関係があつた。リンゴの単為結実果の頂部組織には, 中央部および基部組織より細胞数が多く, また, 細胞も大きかつたが, 日本ナシの単為結実果では頂部組織により大きな細胞がみられた。有種子果とジベレリン処理による単為結実果の皮層組織における細胞分裂は, リンゴ果実では開花後3週から4週の間に, 日本ナシ果実では開花後4週から5週の間に停止した。2. リンゴと日本ナシの有種子果および単為結実果へ開花後2週間めに果実の側面にジベレリンを処理すると変形果を生じた。このリンゴおよび日本ナシの変形果では, ジベレリンを処理しない側の組織にくらべて処理した側の組織で細胞数は増加し, 細胞も大であつた。この傾向は, 有種子果より単為結実果において顕著であつた。日本ナシにおいては, 開花後4, 6および8週間めにGA7を処理したが, いずれの場合も処理しない側にくらべて細胞数も細胞の大きさも増加し, その結果, 皮層組織の厚さは著しく増大した。日本ナシにGA3を処理した場合は, 処理時期のいかんにかかわらず変形果を誘起することはできなかつた。
著者
志佐 誠 高野 泰吉
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.140-146, 1964 (Released:2007-05-31)
参考文献数
20
被引用文献数
21 20

バラの花色発現に及ぼす温度ならびに光の影響を花弁の解剖学的観察, 色彩論的測色ならびに色素分析によつて明らかにした。クリムソングローリーの花弁における表皮細胞のタテ/ヨコ比は低温において大きくビロード感がよくあらわれるが高温ではこの比が小さく, ビロード感がなくなる。花色は低温で濃赤色を呈し, 高温では桃ないし白色を呈する。色彩論的には高温においては固有の赤色に対して紫味を帯びた色相になる。明度は濃淡と逆の関係にある。アントシアニン含量は30°Cにおいて0.063% (対新鮮重), 23°Cにおいて0.155%で, 低温の側で色素形成量が多い。マスケラードの色変りは黄-桃-赤-濃赤の経過をたどるが, 花に着色セロフアンを被覆すると赤色を発現しない。したがつて, マスケラードにおけるアントシアニンの形成は光の影響によるものと思われる。花の齢の進行に伴ないアントシアニンは増加するが, とくに開花後7~10日ごろに著しく増加する。その色素成分はシアニン, クリサンテミンからなるが, とくにクリサンテミンの著しい増加がみとめられる。
著者
垣渕 和正 藤目 幸擾
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.385-392, 1994 (Released:2008-05-15)
参考文献数
11

キャベッ, カイラン, コールラビ, ケール, コウサイタイ, パクチョイ, サイシン, ダイコンを供試し,花芽の発育過程, とくに花弁原基の分化と発育について走査型電子顕微鏡を用いて観察した.1.供試したすべての種類において, 花芽発育段階は, 未分化期, 膨大期, 花芽原基分化期, がく片分化期, 雄ずい•雌ずい分化期, 花弁伸長前期, 花弁伸長後期の7段階に分けられた.2.すべての種類について, 花弁原基は雄ずい原基とほぼ同時に分化することが確認された. 特にサイシンの花弁と外輪雄ずいは内輪雄ずいより早い時期に分化していた.3.分化直後の花弁原基は他の花葉原基に比べて極めて小さく, 分化後の発育がしばらくの間停止しており, その発育開始は雄ずいと雌ずいよ•り遅れていた.4.以上の結果, 供試した8種•20品種のアブラナ科蔬菜の花芽では外輪から, がく片, 花弁および雄ずい, 雌ずいの順に分化していると判断された.