著者
渡邊 誠三
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.248-265, 1939

1. 本報告は昭和12年度に引續き施行したる大根子葉の形状と根部形質との關係に關する研究調査成績である。<br>2. 練馬大根に於ては子葉の型正, 丸, 長, 角の4型中正最も優り之を母本としたる第2代は一層純度の増加することを確め得た。<br>3. 斯かる子葉對根形關係は多くの品體に就いても明らかにすべき要あるを痛感し昭和13~14年可及的多數の品種を蒐集し其の鑑別を試みた。<br>4. 其の實驗の結果宮重, みの早生, 龜戸等に於ては練馬大根に類似し根形に於ては正型の根形常に最優位にあり, 又品種の特徴を具備し收量に於ても他型を凌駕することを認め得た。特にみの早生に於ては正を選ぶことにより根形肥大生長前の抽薹を少なからしめ得るにより栽培者の最も困難を感じつゝある「鬆入の現象」に對し幾分かの解決が爲し得らるもので一擧兩得の感があつた。<br>5. 二年子大根の子葉は正及び長が多く發現する。其の2型の根形を見るに正は太く長く長は細く長く整ひ何れも特長ある2系統なるを知る。而してこの何れが優るかは地方的の嗜好により定む可きものと思考せらるるが2系の中何れか收量多き方に淘汰を加へ經濟的優良種の育成に努む可きではないかと思ふ。<br>6. 二十日大根中の圓形種なるアーリストラウンドブオーシング種に就いては正及び丸の二型が夫々特長を有し正は圓形大, 丸は扁圓小である。小形なるを貴ぶ場合は丸を可とするも丸は地上部の莖葉, 地下部の根形共に著しく正に劣るが如きにより一般的には正を選ぶ可きであると思ふ。<br>7. 報告中各成績に對する考察並びに檢討に就ては各部面より詳細緻密に行ふ可きであるが茲には累年の結果を述ぶることのみに止め追つて全般的に再檢討を爲さんとする心算である。
著者
林 真二 脇坂 聿雄
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.59-68, 1956
被引用文献数
3

In the present paper, the results of the experi-ments on the relation between oxidation-reduction potentials, Fe<sup>..</sup> and H<sub>2</sub>5 contents in soils, and the submersion tolerance or excess-moisture injury of the fruit-tree roots are reported with special reference to fig, peach, pear, apple, persimmon and grape. The results are summarized as follows.<br> 1. The growth of fruit-tree shoots were stopped by excess-moisture or water-lodging in the soils having following values of Eh<sub>6</sub><br> Fig 360_??_370m. v.<br> Peach 330_??_350m. v.<br> Pear and Apple 260_??_280m. v.<br> Persimmon 200m. v.<br> Grape 170_??_180m. v.<br> Shoot growths of pear, apple, persimmon and grape were inhibited gradually from the neigh-bourhood of ca. 300m. v.<br> 2. Fe<sup>..</sup>-formation in soils increased as the oxi-dation-reduction potentials failed, and the amount of Fe<sup>..</sup> extracted by HCl (pH 3) solution was ca. 20mg at 300m. v., ca. 30mg at 200m. v. and 60_??_70mg at 100m. v., per 100g. dry soil. There-fore, the root system of fig or peach was impeded mainly by oxygen-deficiency before Fe<sup>..</sup> was formed abundantly in soil. On the other hand, the impediment of root system in the case of pear or apple was derived from a large amount of Fe<sup>..</sup> formed by remarkable reduction in soils, and moreover, when approximately 30 mg Fe<sup>..</sup><br>was formed in soils on persimmon or grape.<br> 3. When the soils were water-lodged, the higher organic matter content in soil, the more rapid Eh falling and more the amounts of Fe<sup>..</sup> and HsS formed. Accordingly, the more high organic matter content in soil, the more remarkable the injury of root system of fruittree caused by excess-moisture.<br> 4. Fig and peach were susceptible, pear was middle and grape and persimmon were resistant. Parallelism between resistance of root system to Fe<sup>..</sup> and H<sub>2</sub>S, and submersion tolerance of root was found. And it was suggested that the differ-ence of resistance to excess-moisture injury was caused by the difference of oxidation power of root towards the exterior.
著者
プラノーム ヤンカンマン 深井 誠一 市村 一雄
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.337-341, 2005
被引用文献数
7

STS無処理または処理のカーネーション (品種エクセリア) の切り花を用い, 24℃または32℃で品質保持とエチレン生成を比較した. 24℃では, STS処理によりカーネーションの品質保持期間は延長され, STS無処理のカーネーションでは, 処理9日後から花弁のin-rollingが観察された. 32℃ではSTS無処理のカーネーションにおいても, 処理14日後でもなお花弁のin-rollingが認められず, STS処理した区と同等の品質保持期間を示した. STS無処理のカーネーションでは, 24℃では処理8-9日後にエチレン生成のピークが認められたが, 32℃ではごく微量のエチレン生成にとどまった. 32℃に1日置きその後24℃に移した区では, 24℃一定の区と同様のエチレン生成のピークが認められた. 一方, 24℃に1~5日おき, その後32℃に移した区ではエチレン生成はごく微量であった. 以上の結果より, カーネーションの切り花は, 32℃におかれた場合, エチレン生成が抑えられることが明らかとなった.
著者
平 智 大場 節子 渡部 俊三
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.437-443, 1992
被引用文献数
3 7

エタノールと炭酸ガスを併用した渋ガキの脱渋に関する基礎的なデータを得るため, '平核無'果実を供試してデシケータを用いた脱渋実験と, 約10tの果実を一度に処理できる大型施設脱渋における果実の品質調査を行った.<BR>大型デシケータを用いた脱渋実験の結果, エタノールと炭酸ガスの脱渋剤を同時に処理すると脱渋はわずかに速まるが, 脱渋効果のほとんどは炭酸ガスの作用によることが明らかであった. ただし, 脱渋中の果肉にはエタノール, アセトアルデヒドとも, 炭酸ガス単用の果実よりも多く蓄積した. エタノール処理と炭酸ガス処理を連続して施した場合も脱渋は主に炭酸ガスの作用によって進行した. この場合, 炭酸ガス単用の場合に比べて果肉硬度の低下を若干促進する効果が認められた.<BR>大型施設でエタノール•炭酸ガス併用脱渋における果実の品質を調査した結果, 脱渋は主に炭酸ガスの作用によっており, デシケータを用いた脱渋実験で得られた結果と同様にエタノールを併用することで果肉硬度の低下が若干促進されるものと思われた.
著者
李 玉花 崎山 亮三 丸山 浩史 河鰭 実之
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.28-32, 2001-01-15
参考文献数
16
被引用文献数
12

イチゴ'女峰'における果実の発達にともなうアントシアニン合成経路遺伝子の発現を調べた.果実の色は開花3週間後に薄い緑色から白色に変わり, その後成熟期までアントシアニンの蓄積は続いた.また, この時期から全糖含量が増加を始めた.スクロース含量が成熟期まで上昇し続けたのに対し, グルコースとフルクトース含量は成熟に伴ってほとんど変化しなかった.フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)とカルコンシンターゼ(CHS)遺伝子の発現は果実の発育を通して大きな変化を示さなかった.カルコンイソメラーゼ(CHI)とジヒドロフラボノール4-還元酵素(DFR)遺伝子の発現は, 若い果実では高かったが, 白熟期に著しく低下したのち着色に伴って再び増加した.2回目のCHIとDFRの発現の上昇はこれらの酵素の発現が成熟期のアントシアニンの合成調節に関与することを示唆した.
著者
ウディン A. F. M. ジャマル 橋本 文雄 西本 慎一 清水 圭一 坂田 祐介
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.40-47, 2002-01-15
被引用文献数
2 9

開花前後の生育過程におけるトルコギキョウ[Eustoma grandiflorum (Raf.) Shinn.]花弁中のフラボノイド色素と花色変化について調査した.供試品種は, 'ブライダルバイオレット', 'あすかの朝', 'あずまの粧', 'ミッキーローズ'の4品種であり, 高速液体クロマトグラフによる色素分析から, 前二者はデルフィニジン主体型, 'あずまの粧'はペラルゴニジン主体型, 'ミッキーローズ'はシアニジン主体型であった.また, これらのアントシアニジンに加え, ペオニジンやマルビジンなどのメチル化アントシアニジンも含まれていることが明らかとなった.4栽培品種において, 花弁アントシアニンの生成は開花前に始まり, 開花後その総含量は増加していく傾向が認められ, 花弁フラボノール含量は, 開花前には最高値に達することが確認された.また, 開花日には, 開花前のアントシアニジン組成に加え, 他のアントシアニジンが新たに加わることが観察された.開花後は, アントシアニジンの比率はほぼ一定に留まり花色は変化しなかった.'ミッキーローズ'は, シアニジンを花弁中の優勢色素とする品種として確認された初めての例である.なお, 本研究に供試したトルコギキョウ品種では, 花弁フラボノイド色素間のコピグメント効果は発現していないものと推察された.
著者
板村 裕之
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.89-98, 1986
被引用文献数
19 20

1. 発育段階の異なるカキ'平核無'果実を用いて,果実の生理活性の指標となる呼吸量, エチレン生成量を,採取後無処理のものと, 30%アルコール脱渋処理をしたものの2区について測定し, あわせて果実のヘタ脱落や軟化についても観察した.<br>2. 果実はその最大横径の推移からみて, 6月上旬から8月末ごろまでがステージI, 8月末ごろから9月20日ごろまでがステージII, 9月20日ごろから11月初めまでがステージIII, それ以降がステージIVの各発育段階に分けられた. 樹上における果実の果肉硬度は, ステージIIまで漸減した後, ステージIII以降やや低下速度が速くなった. ステージIV以降の果実では樹上で急速に軟化が進行し, 12月初めには熟柿の状態となった. 9月20日ごろより果実の着色が始まり, その後急速に着色が進行した.<br>3. 採取後, 20°C定温室にて果実を貯蔵したとき, 未熟果は完熟果に比べて呼吸量が高く推移し, エチレン生成のピークが早く現れると同時に, そのピーク値もかなり高い値を示した. それと平行して, ヘタの脱落が認められ, 果実の軟化も急速に進行した.<br>4. 採取後, 果実に30%アルコール蒸気による脱渋処理を行うと, 無処理の果実に比べて呼吸量が高く推移するとともに, 処理後2~3日でエチレン生成のピークが形成された. それと平行して軟化速度も早くなり, 未熟果においてはエチレン生成のピーク付近において, 果実の急速な軟化とヘタの脱落が認められた. このことより, アルコール処理は, 採取後無処理の果実に起こる種々の生理的変化を促進する役割を果たすと思われた.<br>5. 採取後, 果実に30%アルコール処理を行うことによって, 熟度の異なる果実の呼吸活性やエチレン生成能 (生理活性) と, 果実の生理的変化を調査した. その結果, ステージIIの未熟果は生理活性が高く, アルコール処理によってヘタの脱落と急速な果実の軟化が起こった. 着色開始期のステージIIからステージIIIにかけての果実 (9月中旬ごろ) は, 個々の果実間で生理活性が大きく異なり, 果実の軟化やヘタの脱落の有無などにもかなり大きな変異が認められた. ステージIIIに入った9月下旬ごろより急速に果実の生理活性が低下し, それと平行してヘタの脱落が認められなくなり, 果実の軟化もかなり緩慢となった. その後, 熟度が進むに従って果実の生理活性が低下し, アルコール脱渋後の貯蔵性は完熟期において最高となった. 落葉期以後, 樹上で果実が軟化するに従って果実の貯蔵性も低下した.<br>6. アルコール脱渋後, 急速に軟化する果実が混入する危険性がなくなる時期は, 山形県庄内地方においては満開後120日ごろの10月10日ごろであると思われた.
著者
小森 貞男 副島 淳一 伊藤 祐司 別所 英男 阿部 和幸 古藤田 信博
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.917-926, 1998-11-15
参考文献数
20
被引用文献数
4 2

'金星'と'レッドゴールド'および'千秋'と'いわかみ'の不和合性を手がかりとして,'デリシャス','ふじ','ゴールデン・デリシャス','はつあき','紅玉','国光','千秋','東光'とそれらの交雑実生を用いて主要栽培品種のS遺伝子型解析を試みた.その結果6つのS複対立遺伝子と7つのS遺伝子型の存在が示唆され,9品種のS遺伝子型を以下のように決定した.(S_Ja, S_Jb)='ゴールデン・デリシャス'(S_Ja, S_Jd)='東光'(S_Jc, S_Jd)='紅玉','ひめかみ'(S_Jc, S_Je)='デリシャス'(S_Jc, S_Jf)='ふじ'(S_Jd, S_Jf)='千秋','いわかみ'(S_Je, S_Jf)='国光'また'東光'のS_Jd因子は'印度'に由来していることが明らかになった.さらに'金星'と'レッドゴールド'のS遺伝子型は(S_Ja, S_Je)または(S_Jb, S_Je)のいずれかであり,'はつあき'のS遺伝子型は(S_Ja, S_Jc)または(S_Jb, S_Jc)と考えられる.
著者
前川 進 寺分 元一 中村 直彦
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.251-259, 1980
被引用文献数
3 9

開花後濃色化する変色型バラ品種′絵日傘′(F1.)の花色素生成に及ぼす光の影響を調べるために, 鉢植え個体の花蕾及び単離花弁への種々の光処理を行った.<br>20°C下での単離花弁の培養において, 10~20%しょ糖培地で多くのアントシアニンの生成が得られ, 置床後3日間はその生成量も多かった.<br>暗黒及び可視光のみの照射のもとでアントシアニンは生成されず, 330nmより短いUVを含む光の照射によってはじめて生成が認められた.<br>UVの強さや照射時間が増すにつれて, 色素量は増加するが, 強いUVを短時間照射するよりも弱くても長時間与えた方が同じエネルギー量で効果が大きかった.<br>一方, 可視光はUV照射の前かあるいは同時に照射された場合, アントシアニンの生成に促進的に働き, UVのみの照射と比べて著しく色素含量を増加した. 更に, その可視光の強さが増すとともにアントシアニンも比例して多く生成された.<br>可視光とUVを交互に照射したとき, その周期が短いほど生成されるアントシアニン量は多かった.<br>栽培中のバラに対して, UVを夜間より日中に照射した場合, より多くのアントシアニンが生成された.
著者
山内 直樹 南出 隆久
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.265-271, 1985
被引用文献数
10 30

本研究は, パセリーにおけるペルオキシダーゼによるクロロフィルの分解について追究した. パセリー葉身のエタノール抽出物にペルオキシダーゼ並びに過酸化水素を添加すると, クロロフィルの分解が認められた. しかしながら, 精製したクロロフィルはペルオキシダーゼ•過酸化水素系で分解されなかった. この結果から, パセリーのエタノール抽出物中に含有される未知物質がペルオキシダーゼ•過酸化水素系によって酸化され, その酸化生成物がクロロフィルを分解しているものと思われたので, 以下未知物質の検討を行った.<br>未知物質は溶媒分画並びにカラムクロマトグラフィーによって分離され, 紫外部吸収極大位置からアピゲニン配糖体であると推定した. さらに, 塩酸による加水分解によりアグリコンを抽出し, 薄層クロマトグラフィーでのRf値並びにスペクトル特性の検討により, 未知物質はパセリーの主要フラボノイドのアピゲニンであることを同定した.<br>以上の結果から, パセリーにおけるクロロフィルの分解は, ペルオキシダーゼがアピゲニンを酸化し, 生成したアピゲニンの酸化物がクロロフィルを分解することを認め, 収穫後におけるパセリーの黄化にペルオキシダーゼが関与しているものと推察した.
著者
土屋 宣明 吉田 清志 臼井 冨太 塚田 元尚
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.429-434, 2004-09-15
参考文献数
15
被引用文献数
3 7

最近レタス根腐病が,日本におけるレタスの主産地である長野県において深刻な問題になっている.一方レタス根腐病に抵抗性を有し,夏における栽培に適した玉レタス品種は存在しなかった.我々はレタス根腐病レース1に抵抗性を有し,夏の栽培に適した玉レタス品種'シナノホープ'を育成した.'シナノホープ'は晩抽性を有する玉レタス選抜系統とレタス根腐病レース1に抵抗性を示す玉レタス育成系統の交雑後代から育成された.'シナノホープ'のレタス根腐病レース1に対する抵抗性は父本と同程度であり,長野県内産地で盛夏期に栽培されたレタス品種に比べ高かった.'シナノホープ'の葉色は緑色で,葉の光沢は多かった.黄緑の切れ込みはやや浅く,黄緑の波打ちはやや少であった.収極球の外観品質は,優れる〜かなり優れるであった.また'パトリオット'と同程度の早晩性を示し,抽だい性も盛夏期栽培に必要な晩抽性を具備していた.
著者
山本 隆儀 渡部 俊三 阿部 豊
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.297-305, 1981
被引用文献数
1

ナシ樹, 特にセイヨウナシの水ストレスの激化の原因として, 過度の葉面蒸散ばかりでなく, 根の水吸収の能率の低さからもたらされる樹体水収支の不均衡が考えられるが, この面の調査はこれまで行われていない. 本実験では, 2年生のバートレット, レッド•バートレット及び二十世紀 (いずれもヤマナシ台) を用いて, ガラス室内で, 自動かん水器法, Impens らの着生葉の蒸散測定法及び heat pulse 法を組み合わせて, 樹体の水吸収速度及び蒸散速度の日変化ならびに季節的変化を測定し, 水収支及びこれらに及ぼす気象要因の影響などを調査した.<br>(1) 日吸水量と日蒸散量の値は共に, レッド•バートレット, バートレット, 二十世紀の順に大きく, 両者の比は3品種ともほとんど等しい変化を示した. 両者とも日平均<i>VPD</i>との間に, 気象要因の中で最も高い相関関係が見られ, 日平均<i>VPD</i>が約9mmHg, 総日射量が約400cal cm<sup>-2</sup>day<sup>-1</sup>を超えると, 日蒸散量が日吸水量を上回った. またそれら限界日平均<i>VPD</i>, 総日射量での日蒸散量 (=日吸水量) は, バートレットで約12g dm<sup>-2</sup>day<sup>-1</sup>, レッド•バートレットで約13.5g dm<sup>-2</sup>day<sup>-1</sup>及び二十世紀で約10.5gdm<sup>-2</sup>day<sup>-1</sup>であった.<br>(2) 5日間の日変化の調査では, いずれの日も朝から昼にかけて蒸散が吸水を上回り, 特に梅雨明けの晴天日にはその傾向が著しかった. 午後から夜を通して逆に吸水が蒸散を上回り, 午前に生じた水の不足分を補なっていた. 7月上旬や8月上旬に比べて, 8月下旬では. 昼間の蒸散速度に対して吸水速度が相対的により大きかった. このような傾向は3品種に共通して見られたものの, バートレットでは, 昼間の一時期に, 吸水と蒸散の両速度の較差がより広がることが見られた. 主幹部のheat pulse の移動速度の日変化曲線の形は, 上記両曲線の中間的な形を示したが, 若干ながら蒸散速度のそれに似ていた.<br>(3) 以上の結果, 蒸散と吸水との間に複雑な相互作用が認められたが, 昼間の水ストレスには, 本来的に根の水吸収能率が低く, 吸水が蒸散に追いつけないことが大きく関与するものと推察された. 更に, 実際のほ場栽植樹では, 根圏土壌の乾燥, 浅根化, 根腐れ及び根の生理的活性の低下などが併発することによって, 一層水ストレスが顕著になるであろう.
著者
尾形 凡生 植田 栄仁 塩崎 修志 堀内 昭作 河瀬 憲次
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.251-259, 1995-09-15
被引用文献数
3 10

数種類のジベレリン生合成阻害物質がウンシュウミカンの着花促進に及ぼす効果について調査した.<BR>1. パクロブトラゾール, ウニコナゾール-P, プロヘキサジオン-CaおよびCCCを秋期 (1986年10月末~12月末) に3回散布したところ, パクロブトラゾールおよびウニコナゾールーP処理が翌春の着花数を有意に増加させた.<BR>2. パクロブトラゾール, ウニコナゾール-P, プロヘキサジオン-CaおよびGA<SUB>3</SUB>を冬期 (1992年12月19日~1993年3月10日) に散布処理した. パクロブトラゾールでは, 1月10日および1月30日, ウニコナゾール-Pでは1月30日, プロヘキサジオン-Caでは, 12月20日~1月30日の処理によって有意な花数増加が得られた. GA3は各処理時期とも着花を著しく抑制し, とくに1月10日処理における着花抑制効果が高かった.<BR>3. 1993年1月30日にパクロブトラゾール, ウニコナゾール-Pおよびプロヘキサジオン-Caの100,300,1,000および3,000ppm溶液を散布したところ,パクロブトラゾールでは100~1,000ppm, ウニコナゾール-Pでは100ppm, プロヘキサジオン-Caでは300~1,000ppm処理で花数の増加効果が認められたが, このうちパクロブトラゾールの100ppm処理区では着蕾後の落花 (果) が発生した.<BR>4. パクロブトラゾール, ウニコナゾール-Pおよびプロヘキサジオン-Caの1,000ppm溶液を1993年1月10日~2月20日に1~3回散布したところ, いずれの薬剤でも3回処理が最も効果的で, 1,2回処理でも花数は増加する傾向にあった.<BR>
著者
伊東 明子 羽山 裕子 樫村 芳記
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.253-261, 2003-07-15
参考文献数
26
被引用文献数
5

花芽形成における糖および糖代謝の影響を明らかにするため,ニホンナシ'幸水'の短果枝頂芽に対し,5月24日から9月2日にかけ,時期をずらして3週間ごとに遮光処理(光透過率24%)を行い,芽における炭水化物含量(フラクトース,グルコース,ソルビトール,スクロース,デンプン)およびソルビトール異化酵素[NAD依存型ソルビトール脱水素酵素(NAD-SDH),NADP依存型ソルビトール脱水素酵素(NADP-SDH)]とスクロース異化酵素[スクロース合成酵素(SS),酸性インベルターゼ(AI)]の活性を測定した.5月24日から7月28日にかけて行った遮光は,芽におけるフラクトース,グルコースおよびソルビトールの含量を低下させると同時に,遮光期間中の芽の新鮮重増加を抑制したが,それ以降の時期(7月28日から9月2日)の遮光は,糖含量・芽の重量のいずれにも影響しなかった.また,遮光時期により,NAD-SDH,NADP-SDH,AI(遊離型)およびSSの活性が増加した一方,AI(膜結合型)活性の減少が認められた.芽の成長速度は,芽のフラクトース,グルコース,ソルビトール含量とそれぞれ正の相関を示した.また,ソルビトール含量は全SDH(NAD-SDH+NADP-SDH)活性およびAI(遊離型)と,グルコース含量はNADP-SDH活性とそれぞれ負の相関が認められた.以上より,炭水化物の供給が制限されている状態では,糖含量が芽の成長の制限要因になると考えられた.また,遮光により芽の糖異化活性が増加したのは,これにより,芽が同化産物を取り込む力(シンク力)を増加させるためでないかと考えられた.糖含量の低下がシグナルとなり,芽における糖異化活性の増加を誘導している可能性が示唆された.
著者
勝川 健三 森 源治郎 松浦 広味 今西 英雄
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.900-902, 1999-07-15

Nerine 7種を用いた24通りの種間交雑組み合わせのうち, 12組み合わせで植物体を得ることができた.Nerine 3種を種子親に用い, 数種のヒガンバナ科植物を花粉親にして交雑を行ったところ, 19の交雑組み合わせのうち6組み合わせで植物体を得ることができた.
著者
有賀 豊彦 熊谷 日登美 吉川 雅清 川上 肇 関 泰一郎 櫻井 英敏 長谷川 功 衛藤 威臣 住吉 博道 恒吉 唯充 角 眞一郎 岩井 和夫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.362-369, 2002-05-15
被引用文献数
4 16

天然無臭ニンニクといわれているネギ属植物について, 植物学的, 生化学的分析を行い, その種の同定を試みた.この植物は, 草丈, 鱗茎ともに通常のニンニクより大きく, 鱗片は花茎に密着して鱗茎を形成する大型のものと, 鱗茎の辺縁に付着する小型のものがあり, これらの数は20に及ぶ.花器はよく発達するが, ニンニクにみられる花序での珠芽形成はない.染色体は2n=32でリーキと同数であり, にんにくの2倍であった.そのDNAの制限断片長多型(RFLP)は, リーキに似ており, ニンニク, エレファントガーリックなどとは異なっていた.アイソザイム分析においてはリーキと最も似たパターンを示した.鱗茎細胞内でのアリイナーゼ(C-Sリアーゼ)mRNAの発現は, 他種に比べ少なかったが, 大きさは等しく, 1.9 kbであった.この植物のアリイナーゼのN末端25アミノ酸残基の配列はリーキのそれと一致し, ニンニクとは2残基相違した.以上の結果から, この植物は, リーキと極めて近縁の植物であり, Allium ampeloprasum L.の中に分類することができると考えられる.
著者
三浦 洋 萩沼 之孝 水田 昂
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.27-36, 1963 (Released:2007-05-31)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

洋ナシ (バートレット種) は産地別に生育中ならびに追熟過程における生果および罐詰製品について, 和ナシは平塚産の適熟果の5品種について, ペクチンの性状を水溶性(W-S), ヘキサメタ燐酸ナトリウム可溶性 (P-S), 塩酸可溶性(H-S)の3つの可溶性区にわけ, ペクチン含量(%), 粘度 (inherent viscosity) および, この両者を総合したペクチンユニットについて検討した。1. 洋ナシ (1) 生育中のペクチン含量について, W-Sは成熟につれて減少するが, 中熟以降はその割合は少なく, 適熟果で約0.2%を示し, P-S, H-Sは成熟に伴う変化は少なく, P-Sで約0.1%, H-Sで約0.5%を示す。このことから追熟を行なわないかぎり, プロトペクチンは減少せず, 水溶性ペクチンも増加しないため, 肉質に洋ナシ特有の粘稠性をもつた食感を与えられないことは明らかである。また3可溶性成分の比率がW-S 20%, P-S 10~15%, H-S 65~70%のときが適熟果と考えられる。生育中のペクチンの粘度は成熟に伴つて増加し, 適熟果で最大の9前後を示し, 過熟になるとやや減少する。このことから, 質的には中熟以後かなり高分子のペクチンが含まれることが推察できる。生育中の全ペクチンユニットはあまり変化がなく, W-S, H-Sのペクチンユニットがその大きな要因となるが, 未熟果ではW-S, 成熟果ではH-Sがより大きく品質を左右するものと考えられる。(2) 追熟中のペクチン含量(%)ではW-Sは増加し, 罐詰の加工適期で0.3~0.4%を示し, H-Sは逆に追熟に伴つて減少し, 加工適期で0.1~0.2%を示すが, P-Sは追熟中ほとんど変らず, 約0.1%と少ない。したがつて加工適期では全ペクチン中W-Sが50~60%をしめる。追熟中の粘度の挙動については, 3可溶性ペクチンとも追熟の進むにしたがつて減少するが, H-Sの減少率は少なく, 加工適期でH-SはW-Sの約倍の4前後を示す。追熟中全ペクチンユニットは減少するが, 加工適期ではW-SとH-Sのユニットはほぼ同じ程度を示し, 全ペクチンユニット0.8~1.0で, W-S>H-Sの場合が品質はよいようである。(3) 洋ナシ罐詰製品中の果肉のペクチン含量(%)は生果の場合と異なり, W-Sは追熟によつてもそれほど増加せず, H-Sは減少するが, その割合は生果に比して少ない。加工適期の試料で各可溶性ペクチンの含量比率はW-S 55%, H-S 15%を示す。粘度は追熟度の進んだものは生果に比していちじるしく低下する。全ペクチンユニット中ではW-Sの方がH-Sのユニットよりもその比率は大きい。2. 和ナシ 和ナシの適熟果は洋ナシに比して全ペクチン含量低く, 0.1~0.2%で, H-Sは0.05%を示すが, W-Sは品種によつてかなり差があり, 多いもので0.12%, 少ないもので0.03%を示す。P-Sは0.01%と非常に少ない。したがつてH-Sは全ペクチン含量中35~55%を占め, 洋ナシの追熟果に比してその比率の大きいことが目立つ。粘度は洋ナシの追熟果に比してかなり高く, とくにP-Sの粘度の高いこと, W-SがH-Sよりも高いことが目立つ。このことから, 和ナシのペクチンは質的には洋ナシより高分子のものが含まれているといえよう。しかし, ペクチン含量が少ないので, 全ペクチンユニットはかなり低い。品種間では長十郎がもつとも高い数値を示している。
著者
中村 怜之輔
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.73-76, 1961-03-31 (Released:2008-12-25)
参考文献数
13
被引用文献数
4 3

1.渋ガキ果実の脱渋に対する凍結貯蔵の影響の有無をみるために,京大付属農場から採取した13品種の果実について,-12°Cおよび-25°Cの凍結貯蔵を10~90日間続け,その間における可溶性タンニン含量の変化を観察した。 2.その結果,凍結後すぐには脱渋しないが,貯蔵日数の経つに従つて可溶性タンニンが漸減し,一定期間後には確実に脱渋した。その場合の品種による脱渋の難易は,炭酸ガス法による脱渋の難易とよく一致した。 3.凍結貯蔵温度が-20~-30°Cまでは低いほど脱渋が速やかにおこるが,それ以下の極低温になるとかえつて脱渋が遅くなる傾向がみられた。 4.脱渋の機構につき2, 3考察を試みたが,その結果従来の脱渋機構とは性質を異にするようである。すなわち,凍結によりタンニン物質そのものは変化しないがそれを包含する膠質物質の不可逆的変性,特に脱水変性に密接に関係するものと思われる。
著者
熊沢 三郎 阿部 定夫
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.69-84, 1955-09-30 (Released:2008-12-19)
参考文献数
14
被引用文献数
3 5

Mustards, Brassicas which have 18 pairs of chro-mosomes, are important vegetables in the Orient. In Japan, though they are of relatively minor impor-tance, there are many local varieties and rather wide variations of characteristics in the mustards grown there. The authors have collected and cultivated about 200 varieties from Japan, China, Formosa and Nepal since 1946, and have investigated their characters. According to their plant size, root forms, tillering ability, and leaf characters, the authors classified them into eight classes and 25 groups, as shown in the table. (1) Brown mustard This oil mustard is of world-wide importance and is generally grown for its oil and for flour. It is little grown in Japan, mostly confined in the north-ern part. (2) Tuberous rooted mustard Cultivation of this curious vegetable is confined in North China, Manchuria and Mongolia, where the winter is severe (Fig. 1 and 5). (3) Chinese curled mustard It is grown in Central China and differs from the curled mustard (5) in respect to its fasciculate growth (Fig. 5). (4) Narrow leaf mustard Although resembling to some types of the former (3), it is distinguished in muilified leaves and has been grown in the same region (Fig. 7). (5) Curled mustard Possibly of South Asiatic origin. It is frequently grown for a salad in Europe and America, and its several varieties have established themselves in Japan (Fig. 8). (6) Broad leaf mustard In China its distribution ranges from the middle to more or less southern parts. It was possibly introduced early into Japan, and has been locally grown in the middle and southern parts (Fig. 9). (7) Cabbage mustard It has widely been cultivated in the South-east Asia, especially in South China and Himalaya and has been the most important vegetable for salting, because of the lack of Chinese cabbage and radish production there. Its quality is excellant. In Japan it was introduced from Szechwan, China, about fifty years ago, and has been acclimatized through hybridization with the Japanese varieties. It is becoming important for commercial growing in this country (Fig. 10). (8) Tuberous stemmed mustard A wonderful type grown in South China, especi-ally Szechwan Province and Formosa. Its salted products are very delicious, being regarded as the best pickle in Asia (Fig. 1). All classes except the brown mustard which is considered as the basic type, can be summed up into the following four group based on their characters and distribution. 1. The tuberous rooted mustard which is distrib-uted in the northern part of the Chinese Continent. 2. The Chinese curled mustard and narrow leaf mustard in Central China. 3. The broad leaf mustard, cabbage mustard and tuberous stemmed mustard in South-east Asia. 4 The curled mustard of probably South Asiatic origin. These four groups would have probably been main stems in the evolution of varieties from the brown mustard. It may be concluded as follows: The species of Brassica juncea is a native of Cen-tral Asia, and the variation in the characteristics of mustards occurred in the region from the south to north-east of it's native area. Various forms cultivated at first in this native place have evolved and differentiated into the polymorphic and valuable variations in China.