著者
建部 民雄
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.86-88, 1951-06-30 (Released:2008-12-19)
参考文献数
7
被引用文献数
1
著者
斎藤 規夫 本多 利雄 立澤 文見 星野 敦 阿部 幸穎 市村 美千代 横井 政人 土岐 健次郎 森田 裕将 飯田 滋
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.452-460, 2011
被引用文献数
14

アサガオ(<i>Ipomoea nil</i> または,<i>Pharbitis nil</i>)の <i>speckled</i> 変異により淡黄色花を咲かせる 54Y 系統と <i>c-1</i> 変異により白花を持つ 78WW<i>c-1</i> 系統の F<sub>1</sub> 並びに F<sub>2</sub> 植物について,花弁に含まれるアントシアニンとその関連化合物を解析した.<i>speckled</i> 変異が優性の遺伝因子である <i>speckled-activator</i> と共存すると,花弁に吹掛絞が現れる.<i>Speckled</i> と <i>C-1</i> 遺伝子座は強く連鎖しており,78WW<i>c-1</i> 系統にのみ <i>speckled-activator</i> が存在する.このため,F<sub>1</sub> 植物は赤紫花を咲かせ,F<sub>2</sub> では赤紫花,白花,吹掛絞(淡黄色地に赤紫の斑点模様)の花,淡黄色花の植物が 8 : 4 : 3 : 1 の割合で分離する.解析の結果,F<sub>1</sub> と F<sub>2</sub> の赤紫花,さらに吹掛絞の斑点部分には同じアントシアニンが含まれていた.いずれもウェディングベルアントシアニン(WBA)が主要な色素であり,その前駆体など 9 種のアントシアニン(ペラルゴニジン誘導体)も蓄積していた.一方,54Y と淡黄色花の F<sub>2</sub>,さらに吹掛絞の淡黄の地色部分では,カルコノナリンゲニン 2'-グルコシドが主要なフラボノイドとして検出されたほか,少量のカフェ酸とオーロシジン 4-グルコシドやクロロゲン酸もみいだされた.また,78WW<i>c-1</i> と白花の F<sub>2</sub> には,クロロゲン酸とカフェ酸が存在した.これらの結果から,<i>speckled</i> 変異と <i>c-1</i> 変異を持つアサガオでは,それぞれカルコン異性化酵素(CHI)とカルコン合成酵素(CHS)が触媒する反応過程でアントシアニン色素生合成が遮断されていることが強く示唆された.また,吹掛絞の斑点部分では,完全に色素生合成系が活性化していると思われた.さらに,F<sub>2</sub> の赤紫花と吹掛絞の斑点部分に含まれるアントシアニン構成が個体毎に異なることから,これまで報告されていない未知の遺伝的背景が WBA の生合成を制御している可能性が高い.<br>
著者
三浦 周行 山崎 博子 西島 隆明
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.513-517, 1997-12-15
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

ツルムラサキ (Bassela alba L.) 種子を, 低水分レベルに調節した市販の培養土中で処理することにより,出芽を促進できるかどうかを検討した. 培養土 (「新健苗くん140タイプ」, 大塚産業) 500gに水16, 52および100gを加えた. その培養土をセルトレイに詰め, 各セルに1粒ずつ播種し, 培養土の水分レベルを維持した条件下で15あるいは25&deg;Cに異なった期間置いた後, 十分灌水して出芽室 (明期8時間:30&deg;C, 暗期16時間:20&deg;C) に移し, 出芽率を調査した.<BR>15&deg;Cで2~10日間処理した結果, 10日間&bull;水52g区で最も出芽が促進され, 出芽室に移した後2日に出芽が開始し, 5日には63~70%の出芽率に達した. 一方, 無処理区の出芽は5~6日に始まった後, 徐々に増加し, 20日に23~24%となった. 25&deg;Cで3~5日間処理の結果, 5日間&bull;水52g区の出芽率が勝った.15&deg;C&bull;10日間&bull;水52g区と25&deg;C&bull;5日間&bull;水52g区との効果を比較したところ, 前者で出芽速度が速く,20日における芽生えの胚軸長の変異が小さかった.従って, 本実験の範囲ではツルムラサキ種子の出芽促進には, 水52g区 (水分41~45%) の培養土に播種して, 15&deg;Cで10日間処理するのが最適と考えられた.
著者
清水 弘子 市村 一雄
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.449-451, 2002-05-15
参考文献数
10
被引用文献数
3 5

トルコギキュウ13品種の切り花を供試し, 柱頭からやくまでの距離を指標とした受粉のしやすさが, 花持ちに影響しているのか検討した.受粉が花持ちに及ぼす影響について調査したところ, 一部の品種を除いて受粉により花持ちが有意に短縮した.また, 柱頭からやくまでの距離が短い品種ほど, 受粉花の割合が高い傾向がみられた(相関係数 : -0.86).以上の結果より, トルコギキュウの多くの品種において, 柱頭からやくまでの距離により表される受粉のしやすさは, 切り花の花持ちに影響する要因の一つであると考えられた.
著者
本村 敏明 日高 哲志 秋濱 友也 片木 新作 BERFOW Mark a. 森口 卓哉 大村 三男
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.685-692, 1997-03-01
参考文献数
25
被引用文献数
6

カンキツ類縁種には病害虫抵抗性等の有用遺伝子を有するものが多く,育種素材としての活用が期待されている.しかし,カンキツとの類縁関係が遠くなると交雑は困難となる.これを克服する手段として細胞融合が考えられる.ここでは細胞融合法の適用限界を知るために,カンキッとカンツ類縁種の電気融合を行い,融合後の胚様体の発育について調査を行った.<BR>材料には,ミカン亜科カンキッ連のトリファシァ亜連,カンキツ亜連(カンキツを含む),バルサモシトラス亜連およびワンピ連のワンピ亜連とメリリア亜連内の種を用いた.<BR>一般的にカンキッと分類的に近縁な組合わせにおいて雑種個体の作出が容易であった.カンキッ連カンキッ亜連内のカンキッと他の種との電気融合では,多くの組合わせで融合後の胚様体形成,シュートの再分化,発根が容易であった.カンキツとカンキツ連バルサモシトラス亜連の電気融合では,比較的シュートの形成は容易であった.しかしながら,その発根は困難なために,接ぎ木したところ,一部は植物体にまで生長したが,奇形葉を呈するものも多かった.ワンピ連との組合わせの電気融合では,個体再生は極めて困難で,分化しても異常な個体しか得られなかった.カンキッとカンキッ連トリファシア亜連との電気融合では,カンキツとワンピ連よりも類縁関係が近いにもかかわらず個体再生は困難であり,体細胞雑種作出の可能性は低かった.
著者
酒井 昭
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.294-301, 1983
被引用文献数
1

ツツジ属植物の約75種の原種と栽培品種を用いて, これらの冬の耐寒性を調べ, ツツジ属植物の耐寒性の特性を明らかにした.<br>1. 耐寒性の低いツツジ属植物では, 葉, 花芽, 栄養芽, 靱皮組織, 木部の間の耐寒性の差は少なかったが, 耐寒性の高いツツジ属植物では, これらの間に著しい差が認められた. 葉, 栄養芽, 茎の靱皮組織の耐寒性は花芽や木部より著しく高く, -60&deg;Cの凍結にも耐えるものがあった. しかし花芽の小花は-35&deg;C以下の温度に耐えるものはなかった.<br>2. シャクナゲのなかで耐寒性が特に高かったのは, 日本のハクサンシャクナゲ, エゾムラサキツツジ, 合衆国の<i>R. catawbiense</i> で, それらの花芽は-30&deg;Cの温度に耐えた. 花芽が-25&deg;Cまたはそれ以下の凍結に耐えるシャクナゲの大部分はポンティクム系に属する. また, 耐寒性の高い栽培種の大部分は<i>R. catawbiense</i>か<i>R. carolinianum</i> のいずれかを片親とする交雑種である. アザレア系では, 北米の東部に自生する<i>R. viscosum</i>, <i>R. arborescens</i> や中国東北区から朝鮮半島に分布するクロフネツツジの耐寒性が特に高かった. 日本に自生するツツジ類の多くは-20~-25&deg;Cの低温に耐えた.<br>3. ツツジ属植物の氷点下の温度に対する適応戦略は, 組織, 器官によって異なり, 葉, 栄養芽, 茎の靱皮組織など細胞外凍結, 花芽の小花はおもに器官外凍結,木部の放射組織は過冷却で氷点下の温度を耐える.<br>4. ツツジ属植物の耐寒性は, 年温度差が大きく, しかも冬の寒さが厳しいところに自生しているものほど耐寒性が高い. それに対して年温度差が少なく, 冬の寒さが厳しくない, 東ヒマラヤ, 雲南西北高地のシャクナゲの耐寒性は低い.
著者
寺分 元一
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.245-250, 1970

材料には短日下で育苗した貝塚早生の3~5葉の苗を使用して実験を行なつた。<br>1. タマネギ苗の底盤下部より生長点を摘除し, 短日下で川砂中で培養し, 20日以上経過すると, 葉しよう基部は肥厚したが, これは葉しよう柔細胞の大きさが増したためで, 糖の蓄積の結果ではなかつた。<br>2. 底盤部より切り離された各葉は川砂中に葉ざしし, 短日下で20日培養すると, 葉しよう基部は著しく肥厚したが, 若い葉での肥厚は劣つていた。このような肥厚は葉しよう柔細胞の容積が増加したためで, 糖の蓄積は認められなかつた。<br>また暗黒下での葉ざし, または葉身を2/3切除して葉ざしを行なつた場合, 葉しようは肥厚しなかつた。<br>3. 生長点摘除と日長処理とを組み合した場合, 長日では短日の場合よりさらに肥厚が著しかつた。<br>また長日, 短日両条件下で葉身の伸長は生長点摘除によつてほとんど行なわれなかつた。
著者
水野 進 谷口 保
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.207-214, 1972 (Released:2007-07-05)
参考文献数
16
被引用文献数
1

11月27日の収穫果を, 関係湿度80~90%のもとで, 20°, 10°, 6°および2°Cの各温度において, 貯蔵中ならびに出庫後の呼吸, 成分の変化につき検討した.1. 腐敗は20°C, 60日(2月上旬), 10°, 6°C, 120日(4月上旬), 2°C, 160日(5月中旬) 頃より急激に増加する. また20°, 10°Cでは果皮の乾燥がはげしく, 腐敗病も6°C以下と異なり, 果軸周辺部に軸ぐされ病の現われるものが多かつた.2. 貯蔵中の呼吸量は, 低温ほど少なく, しかも入庫1日間 (20°Cでは3日間) に急減し, その後腐敗果の増加期まで一定していた.3. 6°C以下の低温では, ビタミンCの消耗が非常に少なく, ついで糖, 減少の多いのは酸であつた. また腐敗率の高い20°C, 81日, および10°C, 150日では健全果でも, ビタミンC量, 糖量も著しく減少していた.4. 2°Cに貯蔵した場合, 4月中旬より低温障害の兆候のある果実が目立ち, アルコール系揮発物質の発生とこれに伴うCO2発生量が増加した.5. 各温度より20°Cに移した場合, 7~12時間で呼吸上昇のピークに達し, また低温ほどピーク量は大であつたが, 86日程度の貯蔵であれば, 2°Cという低温でも3日後には呼吸量が正常に復していた. これに対し, 150日貯蔵の各区の呼吸量は, 出庫1日目に86日貯蔵の約2倍の高い呼吸量を示すとともに, その後減少を続けるのみであつた.6. 温度較差の高い, すなわち貯蔵温度が低いほど, 出庫後の果汁成分の消耗ははげしく, とくにビタミンC, 酸の減少は著しかつた.7. 果実温を徐々に上昇させるじゆん化を行なうと, 呼吸の急上昇を起こらず, 腐敗率, 果汁各成分の減少率とも小さかつた.
著者
小林 省蔵 大河原 敏文 斉藤 渉 中村 ゆり 大村 三男
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.453-458, 1997-12-15
参考文献数
21
被引用文献数
2 20

細胞融合により3倍体を作出する目的で, '十万'ウンシュウ, '大三島'ネーブルオレンジおよび'トロビタ'スイートオレンジの珠心起源カルスのプロトプラストとクレメンティンの半数体 (No. 1およびNo. 2)の葉肉起源のプロトプラストを, 3組合せ (ウンシュウ+半数体No. 1, ネーブルオレンジ+半数体No. 2およびスイートオレンジ+半数体No. 1) で電気的に融合させた.得られた植物体の根端細胞の染色体数調査を行ったところ, 2倍体 (2n=18) と3倍体 (2n=27) が混在したが, いずれの組合せにおいても3倍体が存在した. これら植物体についてRAPD法により雑種性を調査したところ, 3倍体はいずれも両親に特異的なバンドの両方を含んでおり, 体細胞雑種個体であることが確認された.
著者
郭 信子 上田 悦範 黒岡 浩 山中 博之
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.453-459, 1992 (Released:2008-05-15)
参考文献数
9
被引用文献数
2

ウンシュウミカンをポリエチレン包装し, エチレンあるいはCO2処理, エチレン除去剤あるいはCO2除去剤封入処理を行い, 20°, 8°, 1°C貯蔵中における異臭および異味の生成を調べた. 対照区として有孔ポリエチレン包装を行った.1.食用時に感じる異臭は有孔区について官能検査により測定したところ, 20°Cでは15日, 8°Cでは1か月後に感じられた.2.異臭の原因物質であるdimethyl sulfide(DMS) の果実空隙中の濃度は20°Cにおいてすべての貯蔵区で15日貯蔵後最高値になった。8°Cでは有孔区とCO2吸収区において徐々に増加した. 1°Cではどの処理区もDMS濃度は低かった.3.CO2吸収剤を封入すると, 20°および8°CではDMS濃度は有孔区ならびに他の密封区に比べて大きくなった. 1°Cではその効果はあまりみられなかった.過マンガン酸カリウム系エチレン吸収剤を封入すると,20°CではDMSも吸収し, 空隙中のDMS濃度を低くした.4.貯蔵開始時に100%CO2処理すると各温度区とも食味の劣化が速く, 腐敗も速く起こった. エチレン処理区もやや食味の劣化と腐敗果の発生を促進した.他の処理区では果実貯蔵中食味は徐々に劣化した. 果汁のエタノール濃度はCO2処理区およびエチレン処理区で急増した.
著者
吉田 義雄 土屋 七郎 定盛 昌助
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.96-102, 1963 (Released:2007-05-31)
参考文献数
14

1959~61年の3か年にわたつて, リンゴ20品種および31 F1実生を交配親として, 167組み合わせの交配を行なつたところ, 結実不良の組み合わせが認められた。また交配組み合わせにより3枚子葉を有する実生の発現が異なるのがみられた。1. Golden Delicious とYellow Newtown のF1であるG. Y-53, G. Y-44 の戻し交配では偏父性不親和を示し, さらに相互不結実であつた。2. M. W-107×M. W-30, J. W-50×J. W-32, J. G-84×J. G-51, R. D-329×R. D-125の如く両親の同じF1実生同志の交配において不結実を示す組み合わせがあつた。3. Red Gold (G. D)×J. G-51, 恵 (R. J)×J. G-51の如く, 片親の同じF1実生同志の交配においても, 不結実を示す組み合わせが認められた。4. 両親の異なるF1実生あるいは品種の交配では, いずれも結実が良好で交配不親和性は認められなかつたが, R. J-259×Red Gold (G. D) は2年連続結実不良であつた。5. Early Red Bird は♀の場合いずれの組み合わせでも結実が悪く, 〓の場合はいずれも結実が良好であり, 交配不親和とはおもむきが異なつた。6. 実生幼植物時代に3枚の子葉をもつ個体の発生割合は, 組み合わせによつて異なり, とくに王鈴が♀の場合に高かつた。
著者
井上 弘明 高橋 文次郎
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.487-501, 1990
被引用文献数
11

1980~&prime;88年にわたり, 静岡県沼津市西浦久連の山田寿太郎氏園に栽培されている&lsquo;Zutano&rsquo;, &lsquo;Bacon&rsquo;およびFuerte&prime;を用いて, 結実習性や収量構成要因について調査した.<br>1. 果実は3品種とも6月下旬から8月中旬にかけて急速に肥大し, その後は8月中旬よりゆるやかとなるS字型生長曲線を示した. 種子の生長は6~10月までみられ, 11月以降は緩慢となった.<br>2. 落花(果)には3品種ともに二つの波相がみられた. 第1次波は大部分が花で落下し, 5月上旬から6月上旬まで, 第2次波は幼果で落下し, 5月下旬から7月下旬であった. 花に比べて幼果の落下数は少なかった.<br>3. 枝の伸長は1番枝, 2番枝ともに5月中旬から急速に行われ, 6月下旬以降は緩慢となった.<br>4. 落葉波相には二つの山がみられ, 第1次波は5月中旬から6月中旬に, 第2次波は8月中旬から9月下旬であった.<br>5. 花房は無限花序と有限花序に分かれ, その比率は&lsquo;Zutano&rsquo;では無限花序が高く, &lsquo;Bacon&rsquo;や&lsquo;Fuerte&rsquo;では隔年または2年ごとにそれらが交互に変化した.<br>6. 結果部位を8型に分類した. 3品種とも発育枝に生ずる枝と着花枝に生ずる枝は, 隔年ごとに交互に入れ代わって結実を繰り返した. 枝の種類では夏枝や1番枝の結実分布比率が高く, 結果母枝では頂芽や第2節の比率が高かった.<br>7. 全開花数に対する結実比率は0.038%以下であったが, &lsquo;Fuerte&rsquo;, &lsquo;Zutano&rsquo;, &lsquo;Bacon&rsquo;の順に高かった. 収量は隔年ごとに異なり, とくに, 低温の年は結実数および収量が少なく, 果実も小さかった.<br>8. 花芽は1~2月の最低気温(-2.5&deg;~-3.5&deg;C)の遭遇時間が長くなるほど枯死するものが多かった.<br>9. わが国のアボカド栽培の障害は, 厳寒期の最低気温と開花時の低温であり, その対策としては栽培地の選択, 耐寒性品種と台木の選抜&bull;育成が重要と考えられる.
著者
上野 敬一郎 野添 博昭 坂田 祐介 有隅 健一
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.409-417, 1994 (Released:2008-05-15)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

鹿児島県下で, 新しい系統と思われる2種類のLycorisが見出された. これら両系統は著者らの諸特性調査により, 同一起源の雑種, つまりL. traubiiとL. sanguineaの交雑により生じたものであると推定されている. 本報はこれら両系統の成立を実証するため,人為的な交雑を行い, 両親種とこの2系統のLycoris(L. sp. AおよびB) ならびに得られた交雑実生にっいて形態学的, 細胞学的な観察から比較検討を行うとともに, 両種の分布ならびに開花期の調査も併せて行った.L. traubii×L. sanguineaおよびL. sanguinea×L. traubiiの交雑における結実率は, それぞれ7.3%および30.1%であった. 正逆双方の交雑で得られた実生の形態は, 両親種の中間的形質を示し, 実生の出葉期,葉の光沢, 葉先の形および葉長/葉幅比などの形態的特性は, L. sp. AおよびBとそれぞれ一致していた.また, 交雑実生の染色体数ならびに核型は, 異数体や部分的に染色体欠失を生じた個体も存在したが, 基本的にはL. sp. AおよびBとそれぞれ一致する5V+12R型と4V+14R型であった.L. sanguineaおよびL. traubiiの分布ならびに開花期を調査した結果, 九州の中~南部にかけて秋咲き性のL, sanguineaが存在することを見出し, 特にL. sp. AおよびBが濃密に分布する鹿児島県山川町成川で,開花期が完全に一致するL. sanguineaとL. trattbiiが同所的に分布する事実をつきとめた.以上の結果からこの2系統のLycorisは, 秋咲きのL. sanguineaと9V+4R型のL. traubiiとの自然交雑により, 鹿児島県薩摩半島南部, おそらくは山川町成川で誕生したものであろうと推断した.
著者
小机 ゑつ子 水野 進
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.719-722, 1989
被引用文献数
4

孟宗竹のタケノコを用いて, HGA含量に及ぼす収穫時期, 大きさ, 栽培地ならびに貯蔵の影響について調べた.<br>1. 収穫時期別の調査では, 1987年3月25日の初収穫から約2週間の間に収穫されたタケノコにHGA含量が多く (111.2~248.0&mu;g/100gFW), 最盛期以後のタケノコでは低い値 (36.8~12.3&mu;g/100gFW) であった.<br>2. 重量別ではL級 (900g程度) タケノコのHGA量は73.5&mu;gであったが, 小さくなるほど増加し, 特にSS級では114.2&mu;gと最も多かった.<br>3. 貯蔵中の変化については, 1&deg;C貯蔵では経時的に減少し, 当初の75.5&mu;gから9日後には32.2&mu;gになった. 20&deg;C貯蔵では2日後まではほとんど変化せず, その後は減少した.<br>4. 産地間の比較では, 含量にかなりの差異が認められた.
著者
兵藤 宏 池田 典代 長谷 彰 田中 邦明
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.196-199, 1983 (Released:2007-07-05)
参考文献数
14
被引用文献数
3 5

バナナ果肉中のアルコール脱水素酵素の活性は, 追熟に伴って, エチレンの生成や呼吸の増大と共に, 著しく増大した. それに遅れて果肉中のエタノール含量は顕著に増加した. バナナ果肉のアルコール脱水素酵素の最適pHはアセトアルデヒドのNADHによる還元では7.5,一方エタノールのNAD+による酸化は9.5であった.またpH 7.0では, アセトアルデヒドの還元の速度がエタノールの酸化の速度より15倍も速かった. これらのことはバナナ果肉中では, アルコール脱水素酵素はエタノール生成の方向に有利に働いていると考えられる.バナナ果肉は, 追熟に伴い, 解糖系による糖の分解が促進される. 特にフルクトース1, 6-二リン酸の増加が著しい. ピルビン酸デカルボキシラーゼの活性はほとんど変化はみられなかった. したがって追熟に伴う果肉中のエタノールの増加は, アルコール脱水素酔素の活性増大が大きな起因をなしていると考えられる.
著者
田村 美穂子 田尾 龍太郎 米森 敬三 宇都宮 直樹 杉浦 明
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.306-312, 1998-05-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
24
被引用文献数
24 41

カキ属(Diospyros)のカルスを用いてゲノムサイズおよび倍数性を決定した.カキ(D. kaki Thunb.)9品種およびカキ以外の12種のカキ属(Diospyros)植物の葉原基由来カルスの核DNA含量をフローサイトメーターを用いて測定した.核DNA含量が既知のニワトリ赤血球およびタバコと比較することで6倍体のカキ品種のゲノムサイズは5.00-5.24 pg/2Cであり, 9倍体品種は7.51-8.12 pg/2Cであることが明らかとなった.また6倍体のD. virginianaのゲノムサイズは5.12 pg/2Cであり, 4倍体のD. rhombifoliaは3.76 pg/2Cであった.他の2倍体の種のゲノムサイズはD. montanaを除いて1.57-2.31pg/2Cであった.D. montanaは2倍体であるが, そのゲノムサイズは4倍体と同程度の3.48 pg/2Cであった.D. montanaを除くカキ属植物の倍数性とゲノムサイズの間には強い一次相関が認められ, ゲノムサイズより倍数性の推定が可能であるものと考えられた.本研究ではカルス細胞を用いた染色体観察法も検討し, カキ'宮崎無核'の染色体数は2n=9x=135, '次郎'とD. virginianaの染色体数は2n=6x=90, D. rhombifoliaは2n=4x=60, その他のカキ属植物の染色体数は, 倍数性が未知の4種を含めて2n=2x=30の2倍体であることを示した.この倍数性は, D. montanaを除いてフローサイトメトリーから推定した倍数性と一致した.
著者
江口 庸雄 市川 秀男
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.13-56, 1940 (Released:2007-05-31)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1
著者
山家 芳子 堀 裕 竹能 清俊
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.383-387, 1992
被引用文献数
10

栽培バラ, 品種インスピレーションとノイバラの種子発芽阻害におけるアブシジン酸 (ABA) の関与を調べた. 25&deg;C, 連続白色光照射下で, 果皮に包まれた種子 (単果) はまつたく発芽しなかったが, 単果から摘出した種子は高い発芽率を示した. 一度分離した果皮を一緒におくと摘出種子の発芽率は低下した. このとき, 単果, 種子, 種子+果皮から発芽床の水に溶出したABAを酵素イムノアッセイで定量したところ, ABA含量は単果で最も高く, 種子で最も低かった. 底部に多数の穴を開けた発泡スチロール製の平底容器に単果を並べ, 容器をビーカー中の蒸留水の表面に浮かべ,スターラーで水を攪拌して, 好気的な条件の下で単果を水洗したところ, 単果の発芽率は著しく高まった.このとき, 水に活性炭を加えると発芽率はさらに高まったが, poly-N-vinylpyrrolidone (ポリクラーAT) を加えても効果はなかった. このような活性炭を使ったリーチングによる単果の発芽率の改善は, 5&deg;Cで行ったときに顕著であった. これらの結果から, バラ単果の発芽は果皮に存在するABAによって阻害されており,活性炭を使ったリーチングは, 果皮からABAを効率よく溶出することによって発芽を促進したものと考えられる.
著者
早田 保義 田部 敏子 近藤 悟 井上 興一
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.759-766, 1998-09-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
19
被引用文献数
7 13

土壌水分の異なる処理区を設け, 土壌水分の違いがミニトマトの生育, 特に果実の糖集積に及ぼす影響と糖集積の要因について調査した.灌水量を強く控えた強乾燥区(pF2.9)では, 葉や果実の水分含量が低下するとともに, 1株当たりの全乾物重が減少した.1株当たりの器官別乾物重の割合は, 強乾燥区で, 葉や根の割合が低下し, 果実の割合が高まる傾向がみられた.果実の糖含量は, 土壌水分を低下させるに従い増加した.組成別では, 全処理区でブドウ糖および果糖の割合が高く, ショ糖の割合が低かった.果実の水分含量は強乾燥区で低下するものの, その割合は小さく, 果実糖度上昇における濃縮効果の影響は, ミニトマトでは少ないと判断された.果実の全窒素および水溶性タンパク態窒素含量は多湿区が高く, 強乾燥区では低い値であり, 糖含量とは逆のパターンとなった.果実のデンプン含量は強乾燥区と多湿区で蓄積量に差はなく, 果実糖度の上昇との関連性が薄いと判断された.果実の食味を示す糖/酸比は, 土壌水分の抑制が強まるに従い, 高くなる傾向を示した.
著者
井上 興一 横田 弘司 牧田 勝〓
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.779-785, 1995 (Released:2008-05-15)
参考文献数
14
被引用文献数
3 2

外生アスコルビン酸ナトリウムの導入によるL-アスコルビン酸 (AsA) 含量の豊富な葉菜類生産を目的とし, 実用化への基礎資料を得るために本研究を行った. 水耕法で栽培されたサラダナを収穫直前に採取し,高濃度のL-アスコルビン酸ナトリウム (NaAs) 溶液の入ったフラスコで浸漬処理をすることにより, サラダナ葉部のAsA含量を増加させることが可能であるかを検討した. 得られた結果は, 以下のとおりである.1. 処理液のNaAs濃度が上昇するに伴い, 根の吸水力が低下し, NaAs-2000ppm区のサラダナに明らかな萎凋が認められた.2. 高濃度のNaAs浸漬処理によって, 葉部ではNaAs-1000ppm区において対照区の約3.5倍の,NaAs-2000ppm区においては約4.7倍のAsA含量がそれぞれ認められた.3. 5°Cで3日間貯蔵後の両NaAs処理区のサラダナの外観的様相は, 対照区と同様であった. また, この両処理区のAsA含量は収穫当日の場合に比べ, 大きな低下は認められなかった.4. NaAs-1000ppm, NaAs-2000ppm両処理区とも葉部のK, Ca, Mg含量は, 対照区と同様であった.このことから, 24時間の高濃度のNaAs浸漬処理によって, 葉部のミネラル成分が低下することはないと判断された.以上のことから, この処理法によってAsAを豊富に含むサラダナの生産の可能性が示されたが, 実用化にあたっては, さらにAsAの効率的導入法を検討する必要があると考えられた.