著者
野﨑 秀正 川瀬 隆千 立元 真 後藤 大士 岩切 祥子 坂邉 夕子 岡本 憲和 Hidemasa NOSAKI Takayuki KAWASE Sin TATSUMOTO Hiroshi GOTO Shoko IWAKIRI Yuko SAKABE Norikazu OKAMOTO 宮崎公立大学人文学部 宮崎公立大学人文学部 宮崎大学 都城新生病院 いわきりこころのクリニック 細見クリニック カリタスの園 Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities Miyazaki University Miyakonojo Shinsei Hospital Iwakiri Mental Care Clinic Hosomi Clinic
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.105-120, 2021-03-10

本研究では、子育て支援サービスを提供する公的相談機関に対する母親の援助要請に焦点を当て、母親の育児に対する感情(育児感情)と信念(母性愛信奉)が、援助要請態度を媒介して援助要請意図に影響を及ぼす一連のプロセスを示した仮説モデルを検証することを目的とした。宮崎市内及びその近郊にて就学前の幼児(3 歳以上)の育児に携わる母親1000名に調査協力を依頼した。質問紙が返送され、かつ回答に不備のなかった470 名の回答を分析対象とした。仮説モデルに従い共分散構造分析を行った結果、育児感情及び母性愛信奉から3 つの援助要請態度を媒介して援助要請意図に影響を及ぼすいくつかのプロセスが明らかになった。このうち、利益とコストの態度を媒介したプロセスについては、いずれも子どもにとっての利益とコストを媒介したパスが有意であり、母親自身にとっての利益とコストの態度を媒介したパスはいずれも有意ではなかった。これらの結果より、子育ての悩みに関する母親の公的相談機関に対する援助要請については、母親の精神状態の解決に動機づけられているというよりも、その原因となっている子どもの問題を解決させることに動機づけられていることが明らかになった。こうした結果は、公的相談機関に対する母親の援助要請促進を促すには、援助要請が子どもにもたらすポジティブな影響を強調することや子どもと担当職員間の良好な関係づくりなど、子どもに焦点を当てたアプローチが有効になることを示唆した。
著者
永松 敦 Atsushi NAGAMATSU 宮崎公立大学人文学部 Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.221-265, 2021-03-10

コロナ禍による大学の遠隔授業は、現在、社会問題化している。教員と学生、そして、学生同士が対面することがないまま2020 年度の前期授業は終了した。後期となり、やや対面授業の兆しが見えたものの、まだ全面的な解禁にはほど遠い状況である。こうした状況下で、オンラインによる教育・研究効果は得られないものか、を探るために、日本・中国・韓国と結びオンライン・シンポジウムを実施した。この発想はゼミ生による韓国、蔚山大学校の学生との交流から生まれたものだった。そこに、日中韓の研究者が集まり、壮大な「十五夜シンポジウム」へと発展していった。コロナ禍がなければ、到底、誕生しえないシンポジウムであり、将来の国際間の共同研究への道も開拓された。 現在、文部科学省が、対面授業が5 割未満の大学を公表する方針を打ち出していることが話題となっている。果たして、遠隔授業は、対面授業よりも効果は低いのだろうか。遠隔授業には対面授業にはない可能性を秘めているのではないのか、こうした視点から研究ノートとして実践例を書きとどめておくことにした。
著者
野﨑 秀正 川瀬 隆千 立元 真 後藤 大士 岩切 祥子 坂邉 夕子 岡本 憲和 Hidemasa NOSAKI Takayuki KAWASE Sin TATSUMOTO Hiroshi GOTO Shoko IWAKIRI Yuko SAKABE Norikazu OKAMOTO 宮崎公立大学人文学部 宮崎公立大学人文学部 宮崎大学 都城新生病院 いわきりこころのクリニック 細見クリニック カリタスの園 Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities Miyazaki University Miyakonojo Shinsei Hospital Iwakiri Mental Care Clinic Hosomi Clinic
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.105-120, 2021-03-10

本研究では、子育て支援サービスを提供する公的相談機関に対する母親の援助要請に焦点を当て、母親の育児に対する感情(育児感情)と信念(母性愛信奉)が、援助要請態度を媒介して援助要請意図に影響を及ぼす一連のプロセスを示した仮説モデルを検証することを目的とした。宮崎市内及びその近郊にて就学前の幼児(3 歳以上)の育児に携わる母親1000名に調査協力を依頼した。質問紙が返送され、かつ回答に不備のなかった470 名の回答を分析対象とした。仮説モデルに従い共分散構造分析を行った結果、育児感情及び母性愛信奉から3 つの援助要請態度を媒介して援助要請意図に影響を及ぼすいくつかのプロセスが明らかになった。このうち、利益とコストの態度を媒介したプロセスについては、いずれも子どもにとっての利益とコストを媒介したパスが有意であり、母親自身にとっての利益とコストの態度を媒介したパスはいずれも有意ではなかった。これらの結果より、子育ての悩みに関する母親の公的相談機関に対する援助要請については、母親の精神状態の解決に動機づけられているというよりも、その原因となっている子どもの問題を解決させることに動機づけられていることが明らかになった。こうした結果は、公的相談機関に対する母親の援助要請促進を促すには、援助要請が子どもにもたらすポジティブな影響を強調することや子どもと担当職員間の良好な関係づくりなど、子どもに焦点を当てたアプローチが有効になることを示唆した。
著者
福田 稔 Minoru FUKUDA
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.185-196, 2017-03-10

『中学校学習指導要領解説 外国語編』における辞書指導に関する記述によると、英語学習において辞書は不可欠であり、3年間を通して常に英語学習のために使用することが求められている。しかし、3社の中学校英語教科書における辞書指導の記述を調べてみると、教科書によって大きな違いがあることが分かる。また、大学生への辞書使用に関するアンケート調査から、英語の辞書の使い方を知りたいと感じている割合が多いことが判明した。共通した問題として、辞書使用に関する学びの場が不足していることが挙げられる。この問題を解消するために、本稿ではICTを利用した辞書活用のための補助教材の提供を提案する。
著者
新井 克弥 Katsuya ARAI
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.1-15, 2004-03-20

大平健著『やさしさの精神病理』(岩波新書、95)のテクスト・クリティーク。精神科医、大平は、患者との対応の中から、70年代以降、新しい意味を持ったやさしさ=ヤサシサが出現したと指摘する。70年代、やさしさはモノや人個々の性質をあらわす用語から、他者との連帯を志向することばとなったのである。当初、それは、ことばを介した他者介入型の「やさしさ」として出現するが、80年代に入り、”沈黙”を原則とする相互非介入型の”やさしさ”へと転じていく。すなわち、相手の気持ちを察し、相手と同じ気持ちになってメッセージを共有するスタイルから、相手の領域に入り込まないように気づかい、空間を共有するスタイルへの変容である。本稿ではこのような大平の指摘する新しい”やさしさ”を、情報化社会・グローバル化社会におけるコミュニケーションの新しいスタイルと捉え、その可能性について、中野収のカプセル人間論、およびN.ルーマンのダブル・コンティンジェンシー理論を援用しながら考察。その社会的適応性を評価し、解り合えないことを了解し合うコミュニケーション、および共鳴・共振だけで結ばれるコミュニケーションの重要性を説いた。
著者
大賀 郁夫 Ikuo OHGA 宮崎公立大学人文学部 Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1-34, 2020-03-06

長州戦争とは、元治元年から慶応二年まで、幕府が二次にわたって「朝敵」となった長州藩の征討を試み、幕府軍の敗北に終わった内戦である。日向延岡藩は譜代藩としてこの長州戦争に二度とも出陣しており、藩政および藩財政に与えた影響は極めて大きいものがある。 本稿では藩主内藤政挙が出陣した第二次征長をとりあげ、旗本後備の拝命から大坂出陣・滞坂、広島出陣について「御用部屋日記」から検討を加えた。滞坂中の下陣や巡邏出役のあり方、続出する病死人への対処、長引く滞在で風紀紊乱に陥った家臣・人夫たちをどのように統制したかなどを明らかにした。 また慶応二年六月、延岡藩は芸州口討手応援を命じられるが、広島に到着したのは大幅に遅れた七月である。その背景には病人の増加と在所から登坂する人夫不足があった。小倉城自焼の知らせを受けた藩は、幕命より自領守衛を優先し、着芸わずか一週間で大半の兵士・人夫を帰国させる。延岡藩にとって長州戦争は、莫大な財政支出と多数の病死人を招いただけであったが、延岡藩はこの後も鳥羽伏見戦争まで、譜代藩として幕府との封建的主従関係を維持することになる。
著者
森津 千尋 Chihiro MORITSU 宮崎公立大学人文学部 Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.233-243, 2020-03-06

本稿では、婦人雑誌における新婚旅行記事を資料として、大正から昭和初期にかけての新中間層における新婚旅行の普及について検討を行った。新中間層が主な読者層とされる婦人雑誌においては、まず理念的な新婚旅行の提唱や検討から始まり、次第に実践を前提とした具体的なアドバイスや携帯品の紹介等の実用記事へと内容が変化していく。そして著名人や読者の新婚旅行体験記が掲載されるようになり、新婚旅行はいくつかの誤解や失敗がありつつも「よい思い出」として語られることで、肯定的に再生産されていく。このように婦人雑誌で取り上げられるようになり、明治後期にはまだ「憧れ」であった新婚旅行は、大正末期から昭和初期にかけて新中間層の間で普及し、婚礼儀式の一部として実践されていく。そしてその結果、この時期には、同じ場所へ同じスタイルの新婚旅行夫婦を運ぶ「新婚列車」が登場し、新婚旅行の大衆化・画一化がさらに進んでいく。
著者
永松 敦 足立 泰二 陳 蘭庄 篠原 久枝 宮崎公立大学民俗学演習 Atsushi NAGAMATSU Taiji ADACHI Lanzhuan CHEN Hisae SHINOHARA SEMINAR-MMU FOLKLORE 宮崎公立大学人文学部 宮崎大学 南九州大学 宮崎大学 宮崎公立大学人文学部 Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities Miyazaki University Minami Kyushu University Miyazaki University Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.121-200, 2020-03-06

現在、伝統野菜・在来野菜のブームが地域創生との関連で湧き上がっている。特定の地域に根差した食材としての野菜を地域づくりに活用する試みが、全国各地で展開している。ただ、伝統野菜・在来野菜の定義が曖昧なまま広範囲に利用だけが促進されると、逆に、地域文化の改変、及び、損失につながりかねない状況も起こりうる危険性も孕んでいる。本稿では、従来の見解を一度、整理しなおし、宮崎、鹿児島(種子島)の事例を中心に、理想的な伝統野菜・在来野菜利用のあるべき姿を探ってみたい。 末尾に、在来野菜に関する助成事業の報告書3種を添付する。
著者
寺町 晋哉 Shinya TERAMACHI 宮崎公立大学人文学部 Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.77-101, 2020-03-06

本稿では、教職に就く予定の学生がもつ友人関係の経験に着目し、それらの経験が彼(女)らの教職観をいかに規定するのかを明らかにする。そのことで、彼(女)らが教師となり教育実践を続けていきながら、彼(女)らの固有の経験が職業的社会化といかなる関係を築いていくのかを明らかにしていくための出発点として本稿を位置づける。 分析の結果、以下のことが明らかとなった。第一に、彼(女)らの友人関係の経験や学級経験は、彼(女)らの生徒指導観や学級経営観を支える重要なものとなる可能性が示唆された。職業的社会化と教師個人の側面との関係性を考える上で、こうした友人関係の経験を重要な変数として考えていく必要がある。教師として生徒指導や学級経営の実践を行なっていく中で、関係性の経験が再解釈されたり、その経験に強く規定されることで、職業的社会化と教師個人との関係を明らかにすることができるだろう。 第二に、彼(女)らの関係性への認識はジェンダー化されているという点である。しかし、協力者たちがジェンダー・ステレオタイプを有していると批判することが目的ではない。従来の「ジェンダーと教育」研究が明らかにしたように、学校教育経験はありとあらゆる場面で、ジェンダー化されたているため、彼(女)らもまた、ジェンダー化された存在であり、関係性に対するジェンダー化された認識というのは、現状の学校教育を考えると当然の帰結だと考えられる。ジェンダー化された関係性への認識と学校現場との相互作用を描いていくために、教職課程学生がジェンダー化された関係性への認識をもっていることと、それをもつに至った経験を本稿では明らかにした。
著者
大賀 郁夫 Ikuo OHGA
出版者
宮崎公立大学
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-24, 2014

「交代寄合」は旗本身分のひとつで、かつては「三千石以上の無役の旗本で参勤する寄合」と定義され、幕末期には三三家があった。米良氏は米良山を領する交代寄合であったが「無高」で、参府はするものの江戸屋敷も持たず人吉藩江戸屋敷に寄居した。本稿では交代寄合である米良氏について、その系譜を整理・検討し、人吉藩との関係から人吉藩支配米良山の成立過程、米良氏の家督相続、参府状況、領主仕置権の観点から検討を加えた。そこで確認できたのは、米良氏の家督相続や参府額・暇願など、対幕府関係のほとんどすべてが人吉藩を通して行われていたこと、さらに米良氏の領内で起きた逃散などの事件でも、米良氏が独自に刑罰を科すことはできず、幕府や諸藩との交渉を含め人吉藩が主体となって処理がなされていたことである。また米良氏は「無高」とされ、米良山に設定された鷹巣山の管理が唯一の「役」であった。五年に一度参府をしたが、参府中は人吉藩江戸屋敷を仮住居とし、幕府の諸儀礼にも参列せずに一~二ヶ月で帰山したことなどを明らかにした。
著者
中別府 温和 Harukazu NAKABEPPU
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.221-240, 2001-03-21

人間は、感性が与える素材を、カテゴリーにもとづいて構成する。そのカテゴリーのなかで、特に重要な位置をしめているのが時間と空間である。現実には文化統合として存在している宗教が保ちつづける意味は、特定の時間と空間において与えられている。では、宗教現象の理解のために、時間と空間を具体的にとりだすためには、どのような分析視点からどのような作業仮説がたてられるべきなのであろうか。 アウグスティヌスによると、時間は、「現在(praesens)」としてある。過去は、その像を「想起し物語る」ときにあり、未来は、その像を「見られうるもの」にして「心のうちに想像し予見する」ときにある。「現在の精神のはたらき(intentio)」あるいは「心の向かい(tendere)」によって、「ある」から「ない」への移りとして変化がとらえられるのである。 ここに、宗教の理解との関連で、個人の心を場とする時間を、心理学的方法によってとりだすことの意義を見出すことができる。個人の心の中に共有され分有されている時間のあり方を、過去、現在、未来の方面においてとらえることである。その場合、individual integrationの視点から、ウェーバー,M.の宗教的資質(religiose Qualifikation : Charisma)および担い手(trager)の考え方、モースの全体的事実(fait social total)の考え方、フロイト,S.の不安(Angst)の考え方を導入することが検討にあたいする。 時間感覚は、集団の断面でもとりだされなければならない。集団の断面における時間の分析のために、リーチ,E.が提示した時間についての見解を主要な材料にして、三つの仮説を構成した。 ①宗教は二つの異なる時間系列をそなえもっている。その場合に、人々による把握の仕方としては、それらのうち聖なる時間系列が俗なる時間系列に対して質的に優位である、と位置づけられる。②宗教現象における時間感覚は長い、と考えられる。祭儀を無限に繰り返すことによって、過去の深さの方向にも未来の方向にも長く延びている、からである。しかも、その繰り返しは2つの異質の時間系列を含んでいるのであるから、宗教現象における時間幅は広いとも考えられる。③二つの異質の時間系列による繰り返しは、将来による自己実現と考えることができる。現在の自己や社会のあり方を否定して、それらを超えてなりたつものを実現しようとする営みである。 一つの社会における時間体系あるいは時間感覚を具体的にとりだす場合には、エヴァンズ=プリチャードが提示するように、生態学的時間と構造的時間の視点が不可欠である。これらの時間体系を、時間の長さ、速度、幅の視角から具体的にとらえていく仕方は非常に重要である。
著者
四方 由美 大谷 奈緒子 北出 真紀恵 小川 祐喜子 福田 朋実 Yumi SHKATA Naoko OTANI Makie KITADE Yukiko OGAWA Tomomi FUKUDA 宮崎公立大学人文学部 東洋大学 東海学園大学 東洋大学 宮崎公立大学 Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities Toyo University Tokai Gakuen University Toyo University Miyazaki Municipal University
出版者
宮崎公立大学人文学部
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.63-80, 2017

本稿は、女性が被疑者・被害者とされる事件の報道を分析し、ジェンダーの視点から犯罪報道を考察したものである。新聞報道を対象にKH コーダーを用いて頻出語句を抽出した上で、共起ネットワーク分析を行い、事件報道において何がどのように関連付けて伝えられているのか、数量的かつ体系的にとらえることを試みた。その結果、犯罪事件の新聞報道における女性被疑者、および女性被害者の伝えられ方について、いくつかの特徴をみることができた。
著者
田中 薫 Kaoru TANAKA
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.139-164, 2003-03-20

2001(平成13)年度宮崎学術振興財団の助成による研究報告として私は2002(平成14)年4月,『宮崎公立大学716田中薫研究室所蔵雑誌創刊号目録-創刊号に見る戦後日本の雑誌』と題する報告書をまとめた。これは,私の研究室に所蔵されている約370冊の創刊号を,学生をはじめ多くの人々が有機的に活用できるようにするため,その目録を作成したものである。そして,その中に1946 (昭和21)年のものが70冊含まれていることがわかった。第二次大戦の終戦は1945 (昭20年)年8月15日。それから12月までの約4か月間はまだ日本中が混乱のさなかにあり,この時期に創刊された雑誌はきわめて少ない。しかし,翌昭和21年になると激増する。そうした混乱と新しい時代の夜明けともいうべき,この時代の出版界の状況を,この70冊の手持ちの資料を分析することで,どのような時代状況にあったかをあきらかにしてみたいと考えた。これらの雑誌は,基本的なスタイルは雑誌の形式(条件)を備えてはいるものの,あらゆる物的な面で,現在のものとは大きく異なっている。紙も,印刷も,製本も,その背景にある国の事情も。あれから約60年,すでに21世紀を迎え,日本の国力も,経済力も,社会的な事象も,風景,風土までが大きく変わった.それに伴って,出版状況も大きく変っている.しかし,そこには今日の繁栄につながる原点となった時代の姿がある。そこでその状況比較を試み,これらの70冊の資料分析から読み取れることを確認してみたい。
著者
中山 本文 Motofumi NAKAYAMA
出版者
宮崎公立大学
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.35-52, 2015

Probably it is at the writing of The Rainbow that Lawrence began to have more critical conception of mechanism, materialism, and idealism. Here exists the reason why he split The Wedding Ring into the two works: The Rainbow and Women in Love. The tragedies of Skrebensky, Gerald, and Clifford mirror the author's irritation against those living unconcernedly in society imbued with established mechanism. That is why we the reader sometimes have a stronger impression in existence from Gerald and Clifford rather than from Birkin and Mellors. Such restiveness of his led him to the creation of the so-called leardership novels: Aaron's Rod, Kangaroo, and The Plumed Serpent. Although his sense of helplessness was intensified against the serious situation under which our life is put, the visit to the Etruscan places inspired him to have a vision of life inherent in us human beings. The life portrayed on pots, urns, vases, or walls of the tombs were filled with vividness and life warmth.The research efforts here are directed to scrutinizing anew how pessimistically Lawrence looked upon the reality of society and tracing how "tenderness" is described through the characterization of Birkin, Mellors, and Connie.
著者
李 善愛 山下 藍 Sunae II Ai YAMASHITA
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.19-34, 2014-03-07

本論では、受講学生の動機づけと学習効果向上のためゲーミフィケーションに着目し、「ポイント付与」と「スコア表示」に焦点を当て、学習効果と動機づけにおける影響について明らかにした。現在使われている韓国語教材は、本学の教育環境や学習目標等が十分に考慮されていないため、受講学生のモチベーションを維持し、学習効果を向上させるには限界がある。そこで授業活動での検証結果を基に、ゲーミフィケーション要素を見直し、今後、授業活動を支える新たな韓国語教材を開発する上での留意点について論じる。
著者
大賀 郁夫 Ikuo OHGA
出版者
宮崎公立大学
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1-21, 2015

近世において地域社会は自権断を保持し、自力解決は制限を加えながらも温存されていた。小稿では日向国延岡藩領を対象に、地域秩序を乱した場合、また乱すと見なされた「徒者」に対して、地域社会がどのような方策を取ったかについて検討した。常日頃から住民相互による「人品」監察が行われており、「人品不宜」者や「徒者」は、村替えや村からの追放が行われた。身内に「徒者」がいる場合は、本人はもとより親類・五人組・村役人たちの障りになる前に、親・親類から勘当・帳外れの申請がなされた。村が主体となって「徒者」を村外に追放した例も少なくなかった。治安を乱しかねない地域外からの往来者については、その宿泊を制限するなど厳しく対処された。藩は領内での行き倒れ人への処理・埋葬法などを細かく定め、後難を蒙らないよう細心の注意を払った。追放となった者も悪事をしていないことを確認し、旦那寺からの歎願という形を取って帰村が認められた。この場合、領主権力と地域社会の間に位置する旦那寺の存在はきわめて大きい。また大赦も帰村の口実が利用された。こうした「ムラ社会」は近代以降も生き続けることになる。
著者
倉 真一 Shinichi KURA
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.67-87, 2003-03-20

本稿は1990年代の日本における入国(移民)管理政策を,「非行性」の産出という観点から概観したものである。最初に1990年代の入国管理政策を画した1989年と99年の二度の入管法改正をめぐって,前者においては非正規外国人の存在が争点であったこと。しかし非正規外国人という存在が入国管理政策によって作り出されているために,非正規外国人の排除という政策意図は失敗したことを確認した。後者においては非正規外国人による外国人犯罪が焦点となり,入国管理政策を正当化する論拠としての「治安対策」が浮上してきたことを確認した。ついで上記の正当化とそれを支える外国人犯罪の否定的イメージそのものが,実は非正規外国人に対する排除の「意図せざる結果」として形成されたことが明らかになった。「違法性」を纏った「法律違反者」である非正規外国人を,その違法性を理由に排除していく末に産み出されていくのが,「非行性」とその所持者としての「非行者」-すなわち「外国人犯罪者」のイメージなのである。要するにフーコーが「監獄の失敗」にみたように,入国管理制度は自分の存在する根拠(=非行性)を,自らの効果として産出するという自己準拠的な構造を有すといえるだろう。 1989年改正入管法の失敗にもかかわらず,あるいは失敗ゆえに99年改正入管法と現在の入国管理制度は存続の根拠(正当性)を「治安対策」として,自らの産み出した「非正規外国人」と「外国人犯罪者」のうえに求めることができるのである。
著者
森津 千尋 Chihiro MORITSU
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.197-208, 2017-03-10

日本で「新婚旅行」という言葉が使われるようになったのは明治20年以降であり、最初は英語 honeymoon の訳語として登場した。「新婚旅行」に限らず、この時期には西洋からもたらされた物や概念を指す訳語が作りだされ、「恋愛」「家庭」といった言葉もこの時期に誕生した。そして知識人の間では、理想としての「恋愛結婚(当時は自由結婚)」また夫婦や親子が愛情で結びついた「家庭(ホーム)」が論じられ、それら概念を背景に「新婚旅行」は語られるようになっていく。またこの時期には上流階級を中心にレジャー文化が拡がり、多様化する旅の一形態としても「新婚旅行」は受け入れられていく。当時「新婚旅行」に行けたのは限られた一部の上流階級のみであったが、新聞や家庭小説などで「新婚旅行」が取り上げられることで、実際には「新婚旅行」に行けない人々にも「新婚旅行」のイメージが認知されていったことが考えられる。
著者
有馬 晋作 Shinsaku ARIMA
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1-14, 2008-03-07

2007年1月、宮崎県は官製談合事件の出直し選挙により元タレントの東国原知事が誕生した。保守王国宮崎で、無党派層の多くの支持を得た新知事は、全国的な注目を集めた。当選直後、議会はオール野党であり、行政手腕も未知数で県政運営を不安視する声もあった。だが、知事の県外への高い発信能力によって観光面の成果も現れはじめ、県民の高い支持も得ている。その行政運営は、選挙で掲げたマニフェストを用いたマネジメントを導入しようとしている。そこで本稿は、東国原県政の半年間の特色を、マニフェストをキーワードに分析する。
著者
川瀬 和也 Kazuya KAWASE
出版者
宮崎公立大学人文学部
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1-15, 2016

本稿は、M.ブラットマンによって展開された、現代行為論における事前の意図に関する理論が抱える存在論的な問題を指摘するとともに、この問題を解決するための指針を、『精神現象学』におけるヘーゲルの行為論の中に探るものである。これにより、事前の意図を時空間的な連続性によって個別化可能な心的出来事の一種として理解する存在論への対案を提示するとともに、行為に関するヘーゲルの考案に新たな光を当てることを目指す。