著者
木原 理絵 山岡 俊樹
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.80, 2011

近年,サービスの現場でGUIの使用が増えているが,サービス内容と異なるイメージのGUIがよく見られる.従って本研究では提供サービスに相応しいGUIをデザインするための指標の提案を行った.はじめに,先行研究で定義されたサービスの3分類の各分類が提供すべきサービスに対応するGUIを3つに定義した.これを「画面におけるサービスの3分類」とした.この定義から各分類のGUIに求められる機能をそれぞれ定めた.その機能から公共の場で使用されているGUIを3つにグルーピングし,各グループの特性からデザイン要素を抽出した.次に,造形コンセプト用語(山岡,2010)とUIデザイン項目(山岡,2002)を分類ごとに分けた.抽出したデザイン要素と各分類に分けた造形コンセプト用語・UIデザイン項目を認知言語学のカテゴリー階層を参考に重要度別にまとめ,「サービス提供画面のためのGUIデザイン指標」として定めた.また,この指標を活用したデザインがユーザに想定したイメージを与えるかについて,活用したデザインと活用しなかったデザインを3つのアンケートで比較することにより検証した.
著者
坂本 和子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.153, 2008

本研究ではデザインの効力を2つの視点から明らかにする。一つは製品デザインに落とし込まれた和テイストがどのようなイメージで規定され、態度や購入意向にどう影響するのかということ。そしてもう一つはそこに異文化コミュニケーションが反映されているのかということである。ここでとりあげる和テイストとは日本の独自性を感じられるイメージ、風合いと解釈し、テイストの具現化したものを色やデザインとして捉えることとする。調査においては現地の学生ではなく国内に在住する留学生と日本人学生を比較することで、異文化適応による原産国テイスト(和テイスト)への評価とデザインの嗜好や購入意向に及ぼす影響、つまり日本人学生との同化傾向がみられるのではないかという仮定により、調査分析を行った。特筆すべきことは留学生と日本人学生が、携帯電話のデザインへの嗜好性や購入意向も同じ傾向であったにもかかわらず、和テイストを感じさせる製品が全く異なっていたことである。
著者
中嶋 猛夫
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.F19, 2007

今回の東西の山岳寺院における境内構成研究では、ユーラシア大陸の東端の島国の日本と西端のスペインという気候も文化、歴史も宗教も異なる土地にある山岳寺院において類似の要素、空間構成などが認められた。 同様のパターンの幾つかは各国の山岳寺院に共通するものであり、これは仏教、キリスト教以前からの人類の原始的な山岳信仰から続くものなのか偶然の類似性なのか、今後も調査事例を重ねて研究を続ける予定である。
著者
中嶋 猛夫
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.46, pp.136-137, 1999

This study elucidate landscape relation between the town of Kyoto and the Kiyomizu-dera. Kiyomizu's three-storied Pagoda is the Landmark of town. The view of town is the important element of Kiyomizu's religious experience.
著者
橋本 隆志 濱田 郷子 羽渕 琢哉 杉山 和雄 古屋 繁
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.61, 2014

本研究ではサービスを増幅させるための、5つの方法を考えた。<br>サービス工学の分野において、サービスの増幅方法は「強化」と「増殖」の2パターンが存在すると定義されている。<br>「強化」では、プロダクトライフサイクルにおける、様々なサービスを複合的に組み合わせて提供する方法を"サービスのカプセル化"と定義し、製品を持続させる10個の提供方法を考えた。<br>また、既存のサービスを発展させる"ホリスティックサービス"では、周囲の環境を利用して、共有サービスの本来の価値を高めることがわかった。<br>「増殖」では、使い手を増殖させるサービスを"カスタマイゼーション"と定義し、個別サービスのレベルを3段階に分けた。<br>ニーズに合った提供方法でサービス増殖させる"機器の目的"では、委託,代役,適応の3つの拡大方法を示した。<br>情報の窓口を増殖させる"ポータルサービス"では、既存の共有サービスのwebサイトを解析し、再分類をおこなった。
著者
玉井 泰子 加藤 久晶 山内 陸平
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.47, pp.188-189, 2000

The purpose of this study is to identify the individual images of the areas on five private railroad lines in Kansai; Hankyu. Hanshin, keihan, Nankai, Kintetsu. The aim of this paper is to clarify it in terms of the word-image associated with each area, focusing on three types of image-analyses. First, an attempt will be made to explain the structural significance of the individual images that five private railroad line areas have. Secondly, a comparison will be made between subjective images of those people who living along the railroad lines and objective images of those who do not. Finally, the factors forming the individual images of those areas will be shown to be affected by the ' good impressions ' made to people by each image.
著者
大鋸 智 渡邊 広範 樋口 孝之 植田 憲 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.100, 2006

本研究は山形県飯豊町中津川地域をフィールドとして、草木活用の知恵を活かして自然と共生する山里の姿を現地調査および文献調査に基づき明らかにすることを目的とした。草木活用の知恵はいずれも草木を採取し、加工、利用、さらに転用、修理していくところに表れていた。利用した後は、自然に還元され、再度採取可能な一連の資源循環型の生活を表している。これは自然と共生するための一つの重要な要素である。調査より、草木を活用する知恵には、資源を上手に活用する知恵と自然に対するこころづかいを育む知恵があり、互いにしっかりと結びついたときに初めて自然との共生した生活が形成されたといえる。「こころ」や「活用の知恵」が代々、親から子へ伝わり受け継がれ、自然に対する一定の作法をつくりあげた。そして、草木活用の知恵を全て利用し、困難を乗り越え、ときには楽しみである行事が行われていた。現在、私たちの生活では簡単に見過ごされてしまっている「豊かさ」が、中津川地域ではっきりと確認することができた。今研究では、人と自然が一体となった草木活用文化を明らかにし、中津川地域の草木活用文化が生み出す「豊かさ」を提示ですることができた。
著者
和久田 里咲 木下 哲人 鈴木 希日良
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.62, 2015

2014年7月~11月にかけて、『結び』というテーマのもと、現在30歳前後の独身女性たちをターゲットとした商品開発とイベント企画を木下研究室と資生堂が運営しているWebページ&ldquo;Beauty&co&rdquo;&ldquo;カメヤマキャンドルハウス&rdquo;が協力して進めた。カメヤマキャンドルハウスにて発売されている&ldquo;LUMINARA&rdquo;というLEDキャンドルにスワロフスキー200粒程度を装飾し商品化する。これを限定100個の商品とし、12月初旬の発売を目指した。以降、当プロジェクトの活動を報告する。
著者
寺田 直和
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.166, 2005

今日、PCは記録メディアの入れ替えなしに手軽に扱える音楽再生ツールとして定着するようになった。HDDに大量のライブラリを抱えるユーザが増えており、大量のライブラリを抱えることで音楽の聴き方も変化している。主なものには、BGMとして常に音楽をかけておくような聴き方や、プレイリストで自分なりのコンピレーションを作成する聴き方、再生曲を無作為に選曲するランダム再生による聴き方などがあげられる。しかし、既存のプレーヤアプリケーションでは、音楽ファイルの管理と視聴行為自体が分離されているため、実際のリスニング時にユーザが発想する柔軟な聴き方を実現しづらいというのが現状である。調査によって、ランダム再生によるBGM的な視聴の時にもユーザには嗜好性があることや、その嗜好性は視聴を続ける間に変化していくものだということが分かった。よって本研究は、全く無作為で目に見えないランダム選曲ではなく、視覚的に把握し調整できる選曲システムを構築することで、選曲自体に直接楽曲管理操作を加え、ユーザの移り行く嗜好性にも柔軟に対応することが可能なプレーヤアプリケーション"neut"を提案する。
著者
宮田 悟志
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.122, 2013 (Released:2013-06-20)

創発は,自明で局所的な法則から非自明な構造や特徴が生成される現象であり,近年様々な関心を集めている.たとえば, 建築デザインにおいては, 従来の構造形態に替わる新たな形態の創成に利用する例が見られる. これらは,形態要素をアルゴリズムにもとづいて空間的に複合的に展開することにより,既存の方法論から得られるデザイン解を超えて,斬新で有機的なデザイン解を得ようとするものである. そして,このためアルゴリズムとして, セルラ・オートマタやL-System, 遺伝的アルゴリズムなどが使用される. ところで, これらの創発デザイン法においてデザイン対象の様態を実現する方法,つまり人工物の動きや変形などを実現する方法, は通常の解析的方法である.つまり, 対象を微分方程式の初期値-境界値問題に還元して扱う方法であり,典型的な非創発的方法である.本論では,この現象実現の部分もまた創発により行いうることを示し, 創発的アプローチの可能性を, 仮想現実実現の点から論じる.
著者
内山 隆啓 佐藤 弘喜
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.266, 2012 (Released:2012-06-11)

プロダクトデザインにおいて書体は重要な要素である。本研究の目的は書体の印象と製品の印象の関係を明らかにしてその要因を探ることである。まず、書体の印象評価実験を行った。33種類の欧文書体と12組の評価項目を選定し26人の被験者に評価させた。因子分析により3つの因子が抽出され、それぞれの書体の印象が明らかになった。次に、書体と製品のイメージの相性を調べる実験を行った。被験者には製品のイメージと書体のイメージがどの程度合うかを5段階で評価させた。今回は10種類のイスと15種類の書体をサンプルとして選定した。結果、コレスポンデンス分析によりいくつかの傾向が見られた。
著者
小出 真理子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.63, 2016

本稿では16世紀頃を中心に、風流踊装束の詳細を時系列にして変遷を追った。その際、近世初期風俗画における風流踊装束の詳細を考察した。天文年間を過ぎるころには、特に囃子方の装束に半臂が現れ始めるようになる。この装束については天文期以降の風流踊、囃子方特有のものと考えられた。その後、永禄初年頃には精細に装束表現がなされ、多彩な変化が見られた。囃子方と中踊の装束については、東博模本に現れた半臂などは本図でも見受けられた。また、笠などの頭頂についた飾り物がより明確に表現されていた。このころから、風流踊装束は、日常着の延長として着用されていたものから当該期特有の装束へと変化してきたといえる。その後、踊衆装束の様相は、より色彩も華やかに、意匠も精細に表現されるようになってきた。囃子方の装束では、やはり半臂を着用している様子が見られ、この様相から囃子方の装束の定型ではないかと思われる。半臂とは礼服の一種であるが、風流踊により近い芸能装束では舞楽の常装束で用いられる半臂を彷彿させ、文献においても、舞楽と風流とのとの関連についての記述が見られることから、本図は、舞楽と関連する風流が描かれていると指摘した。
著者
田中 薫里 上田 エジウソン 寺内 文雄
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.284, 2014 (Released:2014-07-04)

本研究は,アトピー性皮膚炎患者では皮膚防御機能が著しく低い点に着目し,衣服の刺激によるかゆみの問題を,繊維の種類や織構造によって解決することを目的とした。まずアトピー患者を対象として,その症状について聞き取り調査を行った。これにより首や肘,膝の裏などといった汗のたまりやすい部位に症状が出やすく,同時にそれらの部位が人目につきやすいために気になっていることが確認できた。そこで7種類の異なる繊維を用い,これらをそれぞれ経糸と緯糸とした布サンプル計49種類を作成した。そしてこれらに5種類の既製品を加えた計54サンプルを対象として,被験者実験を実施した。これにより,竹レーヨンや絹などといったやわらかい糸を用いたサンプルの触り心地の評価が高いことが確認できた。さらに繊維の組み合わせや織り構造も,皮膚への刺激の程度を大きな影響を及ぼしていることが明らかになった。そこで,これらの糸を組み合わせた布によって,症状が出やすい首や肘などの部位に着用するくるみ布を制作した.また糸を天然染料によって染めることによって治療の印象を低減させることを意図した。これらをアトピー患者に着用してもらい意見を収集したところ,触り心地の良さだけでなく,色や柄の美しさについても高い評価を得ることができた。
著者
川合 康央 池田 岳史 益岡 了
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.64, 2017

本研究は,地域の歴史的文化を伝えるための街並み景観シミュレーションシステムを開発するものである.対象地区として,旧東海道における藤澤宿(現在の神奈川県藤沢市)を選定し,開発環境としてゲームエンジンであるUnreal Engineを採用した.建築物や都市施設などの空間構成要素のモデルデータを3DCG制作環境で作成するとともに,会話可能なキャラクターも再現することとした.宿場町を自由に行動可能なようなインタラクションとして,直感的な動作可能なようゲームパッドによる操作を実装した.本システムは,藤沢市ふじさわ宿交流館において,2016年5月より常設展示され,これまでに3回のシステム更新を行っている.本研究は,江戸時代後期の旧東海道「藤澤宿」を市民に分かりやすく伝え,地域の歴史文化に興味関心を持たせることで,地域の文化継承を支援するシステムを開発することであり,およそ当初の目的を達成したと考えられる.今後,他の宿場町でも自由に再現可能なプラットフォーム化を計画している.
著者
安部 容輔 小出 昌二
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.86, 2006 (Released:2006-08-10)

印刷技術が開発されてから今日まで、印刷物は幅広く生活の中に取り入れられてきた。複製という目的からみても、印刷は「指示されたものをいかに再現するか」が最優先される行為であり、よって印刷時に起こるミスはタブーと捉えられる。本研究では、このタブーとされる印刷ミスも観点を変えれば様々な表現要素がそこには隠されていることに着目し、表現方法としての可能を探ったものである。 はじめに印刷方法と印刷プロセスによるミスの種類とその発生原因等を調査し、その関係を体系化した。次にグラフィックソフト上や実際にインキを用いての再現を試みた後、偶発的な表現効果をコントロールし表現の可能性を検証した。応用例、およびポスター数点を制作することにより、偶発的な印刷ミスを用いた新しい表現提案ができた。
著者
伊豆 裕一 佐藤 浩一郎 加藤 健郎 松岡 由幸
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.61, 2014

プロダクトデザインにおいて,スケッチには,新たなデザイン解の導出を促す効果のあることが多く指摘されている.しかしながら,従来の研究では,それらの効果に対する透視図法や展開技法などのスケッチスキルの影響については明らかにされていない.筆者らは,プロダクトデザインにおけるスケッチスキルの効果の解明を目的に,スケッチ教育におけるスケッチスキルの習得度の差異を分析することで,各スケッチスキルの関係性を表すスケッチスキルの構造モデルを提示した.本稿では,本モデルを用いて,デザインにおいてイメージの創出を狙いとしたラフスケッチと,形状,構造,および仕様の導出を狙いとしたアイディアスケッチの両スケッチに影響するスケッチスキルを分析した.その結果,ラフスケッチにおいて形状の特徴表現,アイディアスケッチにおいて形状の正確・的確な表現に関わるスケッチスキルが,それぞれに強く影響することを明らかにした.<br>
著者
谷 尚樹 内山 俊朗
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.60, 2013

子どもによる描画表現の特徴は、様々な学問領域で研究が行われており、デザインの分野にも関連する命題である。今日では、親子参加型のワークショップなど、子どもの描画表現をデザイン分野に取り入れる動きもある。更に、描画表現を積極的にデザイン領域へ組み込む事例として、子どもの絵を立体化するサービスが挙げられる。しかし、これらサービスにおける立体物は、原画のスケッチに比べ違和感や異なる印象、つまり「ずれ」が生じているものがある。そこで本研究では、このずれの原因と傾向を明らかにする。実験では、スケッチとそれを元に作った立体を比較、自由記述で相違点を明らかにした他、別の被験者に立体制作とインタビューを実施することで、制作における作者の意図を考察した。加えて、完成した立体の順位付けを行い、どういった立体が高評価を得るのかを調査した。結果、立体ではサイズ感や比率にずれが生じやすいことが分かった。また、比較実験からは、原画に忠実であるものが高い評価を得ることが明らかになった。インタビューからは、大人が自分の持つ知識や経験を当てはめる・モチーフを想像することがずれの原因であることが分かった。
著者
伊豆 裕一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.62, 2015

1955 年、東京芝浦電気(現株式会社東芝)より発売された自動式電気釜ER-5(以下:ER-5)は、米と水を入れてスイッチを入れればおいしいご飯が炊けるという、今ではごく当たり前となったことを実現した商品であった。日本国内で急速に普及率を伸ばした炊飯器は、その後、世界各国に輸出され、米食を身近なものとしてきた本研究では、日本における炊飯器のデザインの変遷から、この商品と技術や住環境との関係について述べる。さらに、同じく米を主食とする韓国との比較を行うことで、地域の食文化との関係を考察する。
著者
郭 暁蘇 植田 憲
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.212, 2013 (Released:2013-06-20)

中国吉林省査干湖周辺地域では、長い歴史のなかで、当該地域特有の漁撈文化が構築されてきた。しかしながら、今日の高度経済成長とともに、自然の管理や漁撈道具の変化、人びとが創出・継承してきた伝統的文化が消失しつつある。  本研究は、中国吉林省西山外村における、最も重要な漁撈活動として冬に行われる「冬捕」を取り上げ、自然との共生に基づいて構築されてきた特質を把握するとともに、今後の当該地域の生活づくりのあり方を導出することを目的としたものである。  文献調査ならびに西山外村における高齢者を中心して、昔の「冬捕」を主として聞き取り調査を踏まえ、次の諸点を明らかにした。  1)身の回りの自然物を適度に採取し道具をつくり、周りの自然環境を理解して、自然の利活用の知恵を生み出した。  2)時に分業・協働をして、漁撈をして、人と人を繋がって、共同体的な行動規範が存立した  3)漁撈に関する習俗と信仰を継承して、精神構造を共有して、特有な生活文化の秩序を構築した。