著者
大坪 牧人
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.50, pp.12, 2003

「身につける」という日本語に象徴されるように、人は知識や道具などの使い方を「身体化」する。「身体化」することのできる道具は、とりあえず「使用可能」な道具だといえるだろう。これまでユーザーインターフェイス、ユーザビリティーといったデザインの課題領域において、「わかりやすさ」という基準は盛んに語られてきたが、「身につきやすさ」という基準については明示的に語られることがなかった。この指摘の背景には、「使いやすさ」「わかりやすさ」という基準だけでは「身につきやすさ」という条件を、必ずしもカバーしきれないという前提がある。たとえば、自転車のような道具を取り上げてみるだけでも「わかりやすさ」という基準を適用しにくいことがわかる。しかし、われわれは自転車の乗り方を「身につける」ことができるのだ。本研究では、認知科学の動向が、生命理論と交差するような領域-暗黙知理論、オートポイエーシス論、エナクティビズムなど-の知見を探索しながら「道具身体化現象」の解釈を試み、道具デザイン、ユーザーインターフェイス研究の基礎的研究領域構築を目指す 。
著者
宮島 佐輔 佐藤 弘喜
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.61, 2014

現在「かわいい」という言葉は日本のみならず、世界各国で「kawaii」として使われている。しかし、「kawaii」とは英語で言う「cute」、「beautiful」、あるいは「pritty」とはまた違った意味で使われている。さらに日本での「かわいい」という言葉は元々容姿などに用いられていたのだが、外見だけでなく、行動や雰囲気、物に対して以外にも使われるようになってきている。現代の女子高生やOLが普段使っている「かわいい」というのはどのような感覚なのか、概念なのか、明確な記述もなければ詳細な定義も存在しない。<br> 本研究では、現在日本で使われている「かわいい」とは何なのかをを明らかにすることが目的である。製品やファッション、いろいろなものを「かわいい」という女子高生や、クールジャパンとして、海外に「かわいい」を輸出している現代で、何がかわいいか明らかにすることができれば、プロダクトデザインの分野でかわいいものを作為的に作れるのではないかと考える。また、「かわいい」の中心である原宿、渋谷などがある日本発という「made in japan」ブランドの確立にも役立つのではないかと考えた。<br>
著者
上平 崇仁 鈴木 望果 星野 好晃
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.66, 2019

<p>デザインにおいて、問題解決の前に、問題自体を問うことは、既にある価値観や信念に対して疑いの目を向け、思考の枠組みを切り替えるための重要であるが、あまり学習の中では重視されていない。本稿では、学校や企業などのデザイン学習者を主対象とした、多角的な視点から「問い」を生成するための発想ツールについて報告する。研究の目的は、前提を乗り越えるための問い方の技法に関しての検討を行い、誰でも使えるようなツールのデザインを行うこと、及び、そのツールの評価を行い、有用な知見を見出すことである。先行事例としてのHow might we Question、弁証法、ロールプレイイング法を組み合わせて、問いの発想ツール「委員長とギャル」の開発を行った。当該ツールの試験運用を行った結果、ロールプレイを行ったことで通常の発想法では生まれない突飛な発言が自然に生まれていたこと、一旦否定をはさむことで暗黙の前提を破壊することができたこと、この2点から参加者が楽しみながら発想に利用することができることを確認した。</p>
著者
片倉 葵 菊竹 雪 楠見 清
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.66, 2019

<p>近年,市場におけるパッケージデザインは話題性に着目し,流行を取り入れながら日々新しいものへと変わっているが,発売当初から変わらないパッケージデザインを使用し続けている菓子や食品が存在する.平成時代に入ってから急速にインターネットが普及し,パッケージデザインのヴィジュアルによる話題性が売り上げを左右する消費動向が見られるなか,どのようにしてロングセラー商品のパッケージデザインは当時のデザインを現代まで継承し続けているのか.<br/>時代や年月が経過しても変わらず多くの人に受け入れられている商品がロングセラー商品となるためには味やその商品が持っているバックグラウンドなど様々な要素が存在するが,そのうちの一つとして本研究では色の面積比率を取り上げ,数学的観点から普遍的なパッケージデザインのグラフィックに使用されている色の占有面積をグラフとして可視化する事によりデザインに潜む法則性を現代まで伝承する手法として確立しているのではないかという仮説を立てた.<br/>ロングセラー商品であり,世代を超えて認知度の高い「ボンタンアメ」を事例として取り上げて背景色とモチーフ色の色面積比率を算出した結果,箱の規格に関わらずある一定の面積比率を保っていることがわかった.また,発売当初のパッケージも同様に色面積比率を算出したところ,2018年現在販売されているパッケージと全く同じ色面積比であることがわかった.大正期に発売された他のロングセラーの食品も同様に検証し,グラフとして可視化した結果,メーカーによって違いはあるものの,一定の要素を継承する法則性が存在していることが証明された.<br/>話題性だけに捉われない視覚的要素の他に必要な要素に留意して,今後デザインの変更を行う事があった際に情勢や時代性に応じたマイナーチェンジやデザイン自体の大きな変更を行う,行わないという両方の選択肢の可能性を示すことを目指す.</p>
著者
片倉 葵 菊竹 雪
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.65, pp.54-55, 2018

近年、様々な種類のお菓子のパッケージデザインを駄菓子屋だけでなくコンビニエンスストアやスーパーマーケットなど近代の商業施設で目にすることができる。お菓子のパッケージデザインは真新しさや話題性、流行を取り入れながら日々新しいものへと変わっているが、その中でも販売当初から変わらないパッケージを使用しているお菓子が存在する。なぜ普遍的なパッケージデザインが長い間売れ続け、そのデザインが現代のデザインに淘汰されず残り続けているのかという疑問に対し、何か1つの法則を定めることでロングセラー商品として現代まで伝承されるデザイン手法が確立されているのではないかという仮説を立てた。ロングセラー商品であり世代を超えて認知度の高いボンタンアメを例に取り上げ、その背景色とモチーフであるボンタンの色面積比率を算出した結果、箱の規格に関わらずある一定の面積比率を保っていた。販売当初のパッケージと変わらぬ色の面積比率がロングセラー商品として残り続けている一種のデザイン手法なのではないかと考えられる。
著者
野宮 謙吾 越川 茂樹
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.227-227, 2006

岡山県総社市では、スポーツという文化を人々とともに親しみ育んでいくことで地域における文化をより深め、街づくりに貢献するために、「NPO法人吉備スポーツ王国」を設立した(以下、吉備スポーツ王国)。そして、岡山県立大学との共同研究により吉備スポーツ王国のミッション及びビジョンが策定された。これらは組織アイデンティティを確立するためのマインドアイデンティティ(MI)であり、言葉を手段とした意味訴求を目的とするものであるが、ビジュアルアイデンティティ(VI)は、視覚イメージによる感性訴求を目的とするものであり、シンボルマークやロゴタイプ等を代表とする視覚アイテムがその手段となる。VIはMIの意味情報を視覚的に抽出、解釈したものとも言えるが、感性に直接働きかけることができる特性により、組織のイメージづくりにおけるその役割は大きい。そこで、吉備スポーツ王国においても積極的に導入し戦略的活用を図ることとした。
著者
伊原 久裕
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.59, 2012

1950年に日本で翻訳出版されたアイソタイプ絵本『科学の絵本』シリーズ全5冊のうち、&ldquo;Visual history of mankind&rdquo;(邦訳名『絵とき人類史』)の3冊は、生前のオットー・ノイラートが携わっていた最後の仕事の1つであり、他の2冊 &ldquo;If you could see inside&rdquo;(邦訳名『ものの中がみえたなら』), &ldquo;I&rsquo;ll show you how it happens&rdquo;(邦訳名『それはいったいなぜでしょう』)は、オットーの死後アイソタイプ研究所を引き継いだマリー・ノイラートがその後継続して出版することになる一連の「科学絵本」シリーズ &ldquo;Wonders of the modern world&rdquo; の最初の作品であった。マリーの科学絵本シリーズのいくつかは1956年にドイツ語に翻訳されたが、&ldquo;Visual history of mankind&rdquo; は日本以外に翻訳紹介されておらず、アイソタイプの世界への影響を知るうえで、日本で出版されたことの意味を考えることは重要な課題であろう。しかし『科学の絵本』シリーズ出版の背景については、まだほとんど知られていない。本発表では、『科学の絵本』シリーズを企画出版した歴史学者、編集者、教育者の吉田悟郎の活動に焦点をあてて、出版に関わる状況を探る。
著者
近藤 菜緒 小宮 加容子 平尾 美唯 畠中 彩
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.66, 2019

<p>本稿では、2018年12月15日(土)に実施した「とどけよう!プレゼント」の活動報告と、その活動結果を通して行った遊びの導入と終わりの効果についての考察を述べる。今回実施した遊びは子どもたちに主体的に遊んでもらうことを目的に、「サンタさんのお手伝いをしてください」という課題を遊びに取り入れた。また、遊びの導入と終わりが遊びにもたらす効果についての考察を行なった。その結果、導入と終わりは子どもを遊びの世界に入り込ませ、気持ちよく終わらせるための重要なプロセスであることがわかった。</p>
著者
小宮 加容子 福田 大年 高橋 由衣 黒神 信実
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.61, 2014

本研究チームでは2011年8月実施をかわきりに、年間3~4回の遊びイベント開催や環境カルタ制作など、子どもや遊びに関するものづくりの活動を行っている。本報告では、2011年12月と2013年12月の2回、札幌市内で開催された子育て家族を対象にしたイベント「SORAこそだてフェスティバル(札幌コンベンションセンター)にて実施した「まねっこサンタさん」について遊びの紹介をする。さらにその成果として、各遊び場・内容での子どもの様子を、子どもの年齢、集団の構成、遊びの形態の視点から考察する。
著者
村井 貴行 山崎 和彦
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.189, 2014 (Released:2014-07-04)

本研究は「若者向け競馬アプリケーションの提案」というテーマで、これから競馬を始める初心者向けの競馬アプリケーションを提案する。本研究では対象とするユーザがアプリケーションを通して魅力的な競馬体験ができることを目標とする。本研究の背景は、競馬はイギリス発祥の紳士のスポーツであるが、日本の競馬は人気が落ちてきている。特に若い人の競馬離れが競馬の売り上げの減少に影響している。現在、競馬を行うにあたり使用するツールは主に競馬新聞で、これから競馬を始める競馬初心者も競馬経験者と同様に競馬新聞を使用するケースが多い。競馬新聞は競馬情報の多くを文字で表している。また、競馬新聞は内容の多くを競馬の専門用語で表している。このため競馬初心者は競馬新聞の内容を読み取ることができず、競馬を楽しむことができないことが現状である。競馬を始めることが難しいことが現在の若い人の競馬離れに繋がり、競馬の売り上げ減少の原因になっている。本研究の目的は競馬初心者の若者のための、競馬情報をわかりやすく視覚表現したアプリケーションを提案し、競馬初心者が競馬経験者と同様に競馬を楽しむことで多くの人に競馬の魅力を伝えることである。
著者
三河 美幸 田邉 里奈 大谷 義智 近藤 邦雄
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.199, 2013 (Released:2013-06-20)

デジタルメディアを介したコミュニケーションの多くはテキストコミュニケーションである。対面コミュニケーションや電話と異なり、テキストコミュニケーションは非言語の情報を伝えるということが難しく、対面コミュニケーションや音声会話でのコミュニケーションに比べて、相手の感情が読み取りにくいといえる。非言語の情報が無く、線の幅などが統一され、素っ気ない印象を与えがちなデジタルフォントにおいて、手書き文字のように書いた時の感情が留められているような表現を、デジタル媒体でもうまく表現する事はできないだろうかと考えた。 本研究では光のゆらぎと色を用いて新たな文字の表現をすることを目的とする。文字に光の点滅を加えた文字で印象評価調査を行い、色の要素を加えて書き手の視点と読み手の視点の両方からの感情表現方法について調査を行う。光の点滅速度と感情との関係性を明らかにし、文字自身が感情情報を持つようなテキストの表現方法を提案する。
著者
齋藤 美絵子 高野 裕子 嘉数 彰彦
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.B19, 2009

大型街頭ビジョンは、街の華やかさや賑わい、新しさを象徴する存在として人々に親しまれている。また、災害時の情報発信などの情報伝達メディアとして期待されている。しかしその効果が発揮されているのは、東京や大阪などの大都市の一部のビジョンにすぎない。地方都市では、大型街頭ビジョンをうまく活用することができず、効果が発揮できていないものが多いのが現状である。本研究では、地方都市のモデルケースとして、岡山市内の大型街頭ビジョンの現状を改善するため、通行者に注目させる方法を研究する。岡山市内の大型街頭ビジョンの調査から、一瞬目を向ける通行者はいるが長時間の視聴にはならず放映内容が意識に残るほど視聴されていないことが明らかになった。そこで、「焦点注目反応」と呼ばれる意識的な注目反応に着目し、既存のコンテンツとコンテンツとの間に通行者の興味をひく短い映像を挟みこむと効果的であるという仮説を導き出した。その効果を検証するため、注目反応を促す映像がある場合とない場合を比較する実験を行い、その結果から、注目反応がある場合の方が意識的に視聴していたということが明らかになった。
著者
齋藤 美絵子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.59, 2012

近年、屋外・店頭・公共空間・交通機関など、あらゆる場所で多様なディスプレイや表示機器が設置され、情報が提供されている。これまでの電子看板といえば、ビルの外壁に設置された大型街頭ビジョンが代表的であったが、近年、それとは対極といえる小さなディスプレイが活用の場を広げている。エレベーターや電車内では見慣れた存在となってきたが、自動販売機に組み入れられたり、トイレの中にまで設置されたり、事例は増加の一途を辿っている。 現在の小型ディスプレイの普及状況をみると圧倒的に広告分野での活用が多く、営利を目的とする情報発信が目立つが、実は広告以外のコンテンツの需要は多い。特に今後は、学校や病院などでの情報発信ツールや企業内の連絡ツールとして広がっていくことが考えられる。 そこで本研究では、小型ディスプレイの活用の場を教育機関に限定し、利用者自身が操作し閲覧できるタイプの小型ディスプレイの情報伝達能力や、楽しさといったエンターテイメント性についての評価を明らかにする。教育機関における情報伝達や情報サービスを視野にいれることは、本研究の特色といえる。
著者
赤松 明
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.26-26, 2006

技能五輪国際大会は,国際技能競技大会(World Skills Competition)のことである。1950年にスペインの職業青年団が提唱しポルトガルとの間で各12人の選手によって技能を競い合ったことが始まりである。年々参加国及び参加選手が増え,若い技能労働者の世界的な競技大会として発展し,38回を数えるようになった。この大会は,参加各国の職業訓練の振興と青年技能者の国際交流ならびに親善を図ることとを目的とし,国際職業訓練機構によって運営され,加盟各国から公式代表及び技術代表によって構成されている。そして,現在2年に1度(奇数年)開催されている。大会の参加資格は大会開催年に22歳以下であることとなっている。この世界大会に参加する選手は,国際大会が開催される前年の技能五輪全国大会の優勝者とされ,我国も第11回大会から参加している。そこで,技能五輪の現状(37回スイス大会・38回フィンランド大会を例として)について報告する。
著者
安田 創 小宮 加容子 柿山 浩一郎
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.63, 2016

下肢不自由者にとって、雪道を車いすで移動することはとても困難であり、移動の困難さ以外にも様々な不便を感じることがある。これまで、この問題を解決し快適に移動するための移動支援ツールの研究及びデザイン提案を行ってきた。しかし、これまでの研究やそれによる提案はデザイン案のレベルであり、特に走破性能についての検証と開発が足りていない。本研究ではこれまでの研究をもとに、実際の雪道での実働を意識した提案をする上での課題を明らかにするため、実験と考察を行った。これにより、雪道を走行するためには、モーターやギアボックスの出力を上げることと、スリップせずにスムーズに走るためのタイヤのレイアウトや形状の再検討が必要であることが明らかになった。 &nbsp;
著者
生田目 美紀 石川 重遠
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.47, pp.228-229, 2000

Owing to better circumstances for making new Japanese fonts through the computef, the number of Japanese fonts has increased, and also the number of categories into which Japanese fonts are classified has increased. But we have no methods of choosing suitable one according to imagery of them. So we have the research on the image of the shape of Japanese fonts. It is necessary to use suitable fonts for the design works. The results of this research show that the image of Japanese font can be classified with three points. They are Sex, Refinement, Power and Weight. We will be able to add some image keywords (or something) on a catalogue that can be used for choosing Japanese fonts, in the future.
著者
山本 佐恵
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.62, 2015

本研究の目的は、田中一光(1930-2002)のデザイン活動の初期にあたる1950年代に焦点をあて、田中における前衛美術の影響について考察することである。彼が青年期を過ごした関西では、 グラフィックデザイナーは美術家と活発に交流し、独自の美意識やデザイン感覚を発展させた。 事実、田中に強い影響を与えたのは早川良雄と吉原治良であることはよく知られている。<br> 50年代の田中の活動においては舞台美術も重要であり、吉原が舞台美術を担当した52年の国際ファッションショーでは助手を務め、また吉原が主宰した具体美術協会が57年に開催した「舞台を使用する具体美術」の大阪公演では演出助手を務めている。さらに注目すべきは、吉原によって前衛書道への開眼に導かれた点である。森田子龍が創刊した『墨美』を吉原から何度か借りたことで、田中は前衛書道に関心を持つようになる。前衛書道の造形は田中に刺激を与え、後に制作したシルクスクリーン作品やモリサワのポスターなどに興味深い類似性がみられる。前衛書道への開眼は、田中がグラフィックデザインにおけるカリグラフィやタイポグラフィの効果について研究する上で役立ったと推測される。
著者
岩崎 敏之 稲山 正弘 小野 泰 中里 想
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.66, 2019

<p>建築構造デザインの捉え方を示す図として、荷重と力学の関係性を「体」、材料&#8722;構法の関係性を「相」、建築そのものを「用」とし、それら3つのレベルの関係性を表した体・相・用&#8722;建築構造デザインモデルを提示している。筆者らは20年間に渡って実施された木造耐力壁ジャパンカップというイベントの運営に関わってきた。本稿では、このイベントが体・相・用&#8722;建築構造デザインモデルに示される構造の工学的原理を学ぶ機会を提供できていたことについて参加者へのアンケート調査の結果などを元に考察して示す。</p>
著者
鈴木 晴子 佐々 牧雄 永見 豊
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.63, 2016

インターネットが発達し、手紙が衰退しているので、若者に手紙の良さを再認識させ、手紙を書くためのきっかけをつくる。<br>手紙をかかない若者へ訴求するために広告に絞った。大学生を集めた座談会を開いた結果、手紙には温かみがあるという、手紙を書くタイミングがわからないということがあげられた。普段はテレビCMは目にしないということで、トレインチャンネル広告に絞った。<br> 手紙のあたたかみやぬくもりをテーマにした15秒のアニメーションと、ふみの日を伝えて手紙をかくきっかけをつくる30秒の動画を制作した。この動画を視聴することで若者たちは、手紙をかくきっかけをつくり興味を持つと期待できる。
著者
小室 友理奈 岡崎 あかね 髙野 ルリ子 大久保 紀子 桐谷 佳惠
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.93, 2014 (Released:2014-07-04)

メーキャップにおいて肌色と同系色のメーキャップの色が肌なじみがよいとされる。しかし肌色と反対色のメイクをすると肌色がきれいに見える場合がある。本研究の目的は,メーキャップを施すことによって女性の肌色が元の肌色とどのように違った色味に見えるのか標準刺激と比較刺激の肌色を比較してもらうことで検証することである。実験刺激は標準刺激の顔刺激21個,比較刺激は楕円27個を用いた。またアイシャドウを施していない状態の標準刺激の肌色の見えを測定した。実験は経時比較実験と同時比較実験を行い,実験参加者16人が選択した比較刺激をa*,b*,Lvで表しアイシャドウを施していない標準刺激から差分を求めた。経時比較実験において,黄肌かつアイシャドウ橙のとき,対比現象が起きていた。同時比較実験において,黄肌かつアイシャドウ紫の時,同化現象が起きていた。新提案のメーキャップで,肌色とアイシャドウの同化現象が特に起きている組み合わせは,経時比較実験の赤肌にアイシャドウ黄,黄肌にアイシャドウ赤だった。これらから経時比較実験と同時比較実験ともにアイシャドウを施すことによって肌色の見えが違ってみえるということがわかった。