- 著者
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高野 正博
- 出版者
- The Japan Society of Coloproctology
- 雑誌
- 日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.10, pp.889-894, 2007-10-15
- 被引用文献数
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2
1
直腸肛門機能障害はこれまでsymptom-based criteriaであったが, ROME IIIで身体・検査所見が加わった.<br>F1. Functional fecal incontinenceは, 4歳以上の神経や形態障害が無いもので, 漏れはstainig, soiling, seepageなどに分かれ, urgeとpassive incontinenceがあり, 前者は便に行きたい感じが強いが, 随意圧は低下, 後者は便に行きたい感覚, 静止圧が共に低下する. 内圧, 肛門エコー, MRIなども有用で, 治療は薬剤で調節し, バイオフィードバック (BF) 療法が有効である.<br>Functional anorectal painは, F2a. Chronic prctalgiaとF2b. Prctalgia fugaxに分け, さらにF2a1. Levator ani syndromeとF2a2. Unspecified functional anorectal painに分ける. F2a. は慢性・再発性の痛みで, F2a1. Levator ani syndromeでは肛門挙筋の牽引で疼痛を訴える. しかし私の症例では, 該当は4/116例で, この定義に疑問がある.<br>F2b. Proctalgia fugaxは短い痛みで, 原因は不明だが, 私の症例ではよく診ると仙骨神経に沿って圧痛ある硬結を触れる. 効果ある治療法も無いとあるが, 私は神経ブロックで治癒せしめている.<br>F3. Functional defecation disordersはF3a. Dyssynergic defecationとF3b. Inadequate defecatory propulsionに分ける. 前者は骨盤底筋の奇異性収縮か不十分な弛緩, 後者は押出す力が不十分で, 治療はF3aにBF, F3bに排便促進療法が有効である.