著者
中田 敬吾 細野 義郎 細野 八郎 坂口 弘 細野 史郎
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.257-276, 1986-04-20 (Released:2010-12-13)
参考文献数
12

慢性膵炎患者62名に対する臨床調査を行った。本疾患に対する有効率は著効有効合せると38.8%であった。主訴では腹痛が最も多く, 次いで腹部ガスによる腹部膨満感, 排便異常 (主に下痢または軟便), 背部痛の順であった。投与処方は加減方を入れると52種にのぼったが, 最も多く用いられていたのは柴胡桂枝湯およびその加味方であった。次いで疎肝湯, 半夏瀉心湯, 延年半夏湯, 安中散加茯苓, 六君子湯および加味方, 他の順であった。すなわち柴胡剤と補脾の剤がその主体をなしていた。このことはすなわち, 本疾患の病態として脾虚証の存在とともに肝の失調があることを示唆している。本疾患の原因に胆石の存在, アルコールの摂取過剰などが報告されているが, 今回の調査ではこれが該当する例は少なく, むしろ元来消化器が虚弱で, 低蛋白, 低栄養に起因すると考えられる例が多くを占めていた。
著者
張 瓏英
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.231-237, 1984-04-20 (Released:2010-12-13)
参考文献数
6
著者
寺澤 捷年 土佐 寛順 檜山 幸孝 三浦 圭子 今田屋 章
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.1-10, 1987-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
11
被引用文献数
3 2

奔豚気病と考えられた5症例を報告した。第1例は19歳女性, 発作性の胸内苦悶感と動悸を主訴とし, 苓桂甘棗湯が著効を奏した。第2例は30歳主婦。交通事故を契機に発症した発作性の身体の熱感と動悸である。桂枝加竜骨牡蠣湯と苓桂朮甘本湯のエキス剤で完治した。第3例は63歳男性。息切れ, めまい感を主訴に来院した。苓桂味甘湯に加味逍遥散を兼用して好結果を得た。第4例は35歳主婦。右半身のシビレと筋肉のヒキツリを主訴に来院。良枳湯が一時奏効したが, 再発し, 小品奔豚湯により寛解している。第5例は47歳主婦で, 動悸発作を主訴に来院。苓桂甘棗湯で主要な症状は改善したが, 心下の痞鞭と熱候があり金匱奔豚湯で良好な経過である。文献的にみると奔豚湯は金匱, 肘後, 小品, 広済など数多く, その方意も異なっている。治験としては苓桂甘棗湯がもっとも多く, 良枳湯, 桂枝加竜骨牡蠣湯, 金匱奔豚湯, 肘後奔豚湯も数例ずつみられる。しかし苓桂味甘湯と小品奔豚湯の報告はなく, 本報告が近年においてははじめての記載である。浅田宗伯は奔豚気病の認識と関心が深く,「独嘯庵, 奔豚気必ずしも奔豚湯を用ひずと言はれたれど, 余の門にては, 奔豚湯必ずしも奔豚を治するのみならずとして, 活用するなり」と貴重な口訣を残している。
著者
中田 真司 南澤 潔
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.316-320, 2015 (Released:2016-02-09)
参考文献数
32

橘皮枳実生姜湯は金匱要略に胸痺に対する方剤として記載されている。今回,我々は咳嗽に対して本方を投与し奏効した7例を経験した。これらの症例は,咽喉の掻痒感,切れにくい喀痰,喉に乾燥感がない,肌は色白で瑞々しいなどが共通して認められた。橘皮枳実生姜湯は咽喉の掻痒感を伴う咳嗽に対して有用な方剤の1つである可能性が考えられた。
著者
松崎 茂
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.29-33, 2000-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
6

熱傷急性期の患者2名に漢方治療を試みた。症例1は足の熱傷で, 漢方治療前の連日の消炎鎮痛剤内服にもかかわらず, 患部の腫脹が悪化した。局所の高度な発赤, 腫脹, 熱感, 浸出液の他に口渇もあった。局所の証と津液不足から越婢加朮湯を投与し2日で局所所見は軽快した。症例2は顔面熱傷で, 受傷直後から漢方治療を施行した。水疱形成, 疼痛, 興奮には黄連解毒湯と桔梗石膏を投与した。発赤, 腫脹, 熱感が高度になってからは越婢加朮湯を投与した。3日程で, 落屑を残すのみとなった。熱傷治療では, 漢方薬を併用することにより, 短期間に自覚症状の軽減が得られると思われた。
著者
假野 隆司 土方 康世 清水 正彦 河田 佳代子 日笠 久美 後山 尚久
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.699-705, 2008 (Released:2009-04-30)
参考文献数
21
被引用文献数
2 2

妊娠12週以内の初期流産を3回以上繰り返した,ANA,抗カルジオリピン抗体(ACA IgG, IgM)陽性習慣流産87例に柴苓湯療法を行い,抗体価(量)の推移を検討した。この結果,妊娠例(49例)の流産阻止率は63.3%,ANA陽性例(32例)の流産阻止率は65.6%,ACA IgG, IgM(fetal calf serum使用ELISA法)陽性(29例)は65.5%,両抗体陽性例(12例)は75.0%であった。ANAに対しては有意な低下作用は認められなかったが,ACA IgMに対しては有意な低下作用が認められた。文献的に柴苓湯の有効作用はTh1/Th2サイトカインバランス調整作用による液性免疫の抑制作用によると推察された。しかし,ACAが低下しなかった二生児獲得例が存在する事実から,構成生薬の人参,茯苓による低用量アスピリン療法と同様な血小板凝集抑制作用,さらに茯苓,蒼朮,沢瀉,猪苓による利水作用なども流産を阻止に関与していると推察された。
著者
大野 泰一郎 永田 豊 長坂 和彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.8-17, 2019 (Released:2019-08-26)
参考文献数
19

煎じ薬を保管中に生じる生薬の色調変化は,服薬コンプライアンスを妨げる要因の一つとなる。滑石を含む煎じ薬に五苓散料を合方した後に,滑石が鮮やかな青色(鮮青色)を呈した例を経験し,気密容器を用いた原因生薬検討とTLC による成分分析を実施した。その結果,桂皮と白朮共存下,滑石は数時間で鮮青色を呈し,この呈色には,桂皮・白朮・滑石の3生薬に由来するcinnamaldehyde とatractylon,ケイ酸アルミニウムが関与していた。今回確認された桂皮と白朮共存下における滑石の鮮青色への呈色は,発色が顕著で数時間で生じる鋭敏な反応であり,服薬コンプライアンス維持の観点から,桂皮・白朮・滑石を含む煎じ薬投薬時には,滑石の呈色について患者に十分に説明し,呈色を避けるには滑石を別包とし他生薬と隔離保管,煎じる際に混合する方法が有効と考えられた。
著者
中永 士師明
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.15-18, 2010 (Released:2010-06-22)
参考文献数
16
被引用文献数
3 4

2種類のブシ末製剤を単独で服用した場合の酸化ストレス度と抗酸化力を測定し,経時変化について検討した。健常人34例を2群に分けて2種類のブシ末製剤(TJ‐3022,TJ‐3023)3g/日を3日間服用し,服用直前,服用90分後,服用72時間後に酸化ストレス度(d‐ROMsテスト)と抗酸化力(OXY吸着テスト)を測定した。TJ‐3022群では酸化ストレス度と抗酸化力の有意な経時的変化はみられなかった。TJ‐3023群でも酸化ストレス度と抗酸化力の有意な経時的変化はみられなかった。附子服用量3g/日では酸化ストレスに影響を及ぼさないことが示唆された。
著者
斉藤 晶 竹越 哲男
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.336-339, 2012
被引用文献数
3

耳管開放症はまれな病気でなく,全人口の5%に存在している可能性がある。自声強聴や耳閉感がよく見られる症状である。薬物治療,手術を含め種々の治療が行われているが,満足した結果が得られていない。漢方医学的には,気虚または血虚と考えることができる。耳管開放症の漢方治療は加味帰脾湯が良く知られていた。今回,補中益気湯を10症例に投与した結果を報告した。4例が改善,1例がやや改善,4例が不変であった。作用機序は,耳管の緊張の亢進,耳管周囲の脂肪組織の増加,精神面への影響を考えた。補中益気湯が耳管開放症の選択肢の1つとなることが期待される。
著者
東 一紀
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.267-270, 1996-09-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
6

約5ヵ月前に帯状疱疹が発症した77歳女子の, 右胸背部の疱疹後神経痛に対して, コタロー麻黄附子細辛湯エキスを投与して疼痛は著明に改善した。その後, ツムラ桂枝加朮附湯エキスを追加してやや改善し, さらにサンワ加工ブシ末を追加して疼痛はほとんど消退した。以上の臨床経過より, 上記の3薬剤に含まれる生薬のうちで最も鎮痛効果が大きかったのは3薬剤に共有される附子であろうと推測された。
著者
薗田 将樹 山本 昇伯 髙田 敦子 菊地 学 田宮 大介 遠藤 良二 伊藤 隆
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.155-160, 2018

<p>東洋医学的治療が有効であったうつ病の3症例を報告する。3症例とも同一職場(全17名)の職員。症例1は46 歳男性,勤続20年。主訴は抑うつ,不眠。症例2は28歳女性。勤続9年。主訴は嘔気,気分不良。症例3は41歳男性,勤続15年。主訴は焦燥感,不眠,抑うつ。3症例に対して抑肝散および抑肝散加陳皮半夏で加療し,症状の改善がみられた。今回,処方選択において3症例が同一の職場環境であることを考慮した。抑肝散には母子同服という服用法が伝えられている。また,精神神経分野にて情動伝染(Emotional Contagion)という情動の共有システムがHoffman(1984)により提唱されている。総合的に考えると母子同服は情動伝染を考慮した経験的治療法であり、同一職場のような同じコミュニティ内でも応用可能と考察した。本症例のように,同一職場内の情動伝染を考慮した職場内同服は有用である可能性がある。</p>
著者
佐藤 万代 山﨑 翼 矢野 忠 片山 憲史 今西 二郎
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.288-295, 2015 (Released:2016-02-09)
参考文献数
15

東洋医学では,顔面の皮膚色などから健康状態を評価する「顔面診」が用いられているが,その有用性についての基礎的な調査は少ない。そこで本研究では,顔面部および前腕部(尺膚)の皮膚色と,質問紙などで評価した健康状態との関連について調査を行い,顔面診の有用性を検討した。対象は22~55歳の健常成人30名(男13名,女17名)とし,顔面部,前腕部の皮膚色の測定と,健康状態に関する調査を行った。調査の結果,皮膚色と相関関係を認めた健康状態に関する調査項目は,総人数の解析では過去4週間の仕事パフォーマンス,陰虚スコア,男性のみの解析ではBMI,主観的健康感,過去4週間の仕事パフォーマンス,水滞スコア,女性のみの解析では年齢,過去1~2年間および過去4週間の仕事パフォーマンス,陰虚スコアであった。本結果より,皮膚色と健康状態の関連が上記の項目において示されたことから,顔面診の一部が有用である可能性が示唆された。
著者
寺澤 捷年
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.409-436, 1998-01-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
27
被引用文献数
7 7
著者
萬谷 直樹 後藤 博三 藤永 洋 嶋田 豊 寺澤 捷年
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.275-280, 1999-09-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
19

慢性便秘は一般に弛緩性便秘と痙攣性便秘に分類される。 痙攣性便秘には刺激性下剤は不向きであり, 長期の使用は原則として禁忌とされている。しかし実際には, 服用しなければ排便が得られないという理由で, 刺激性下剤が連用されていることも多い。今回, 加味逍遥散が奏功した慢性便秘の4例を経験した。症例1~3は痙攣性便秘であり, 症例1, 3, 4は刺激性下剤を常用していた。いずれも刺激性下剤や大黄含有方剤で, 腹部不快感や頻尿などの症状が出現する患者であった。加味逍遥散を使用し,良好な排便が得られるとともに, いらいら, のぼせ感, 肩こり, 倦怠感, 月経痛, 頻尿などの全身症状も改善された。刺激性下剤を連用していた3例は, その離脱が可能となった。慢性便秘の薬物治療においては, 刺激性下剤の長期連用を回避するために,加味逍遥散などの漢方方剤が果たす役割は大きいと考えられた。
著者
寺澤 捷年
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.331-339, 2016 (Released:2017-03-24)
参考文献数
10
被引用文献数
3 6

腹診における鼠径部の圧痛が当帰四逆加呉茱萸生姜湯証を指示することが知られている。この事実は1963年に大塚敬節により発見されたものである。そして彼はこれを足之厥陰肝経と関連する徴候と考えた。しかしこの徴候が発現する背景はいまだ明らかにされていない。最近,著者はこの鼠径部の徴候が痞根(ExB4)に置針することによって消失することを見いだした。この臨床的事実から,本方証が恒常性維持機構と関連するとの仮説を呈示した。すなわち,寒冷環境においては下肢からの放散熱を防ぐために総腸骨動脈に交感神経性促進信号がもたらされ,その結果,骨盤腔内臓器の血流が低下する。痞根に対する鍼施術の効果は腸腰肋筋の硬結と内腹斜筋の緊張を同時的に緩ませるものとのと推測される。当帰四逆加呉茱萸生姜湯は骨盤腔内臓器と交感神経節との間に形成されている悪循環を遮断し,骨盤腔の虚血に関連するさまざまな症状を改善するのである。
著者
実藤 隼人 水野 修一
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.337-341, 1992-01-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
14

1日10回以上の水瀉性血性下痢を主訴として来院した37歳男性の重症潰瘍性大腸炎患者に漢方療法を試み, 寛解に導入することができた。方剤の主体は人参湯であり, 出血を伴う場合には〓帰膠艾湯を加えた。漢方のみでは充分に症状の改善がみられなかった時期には, 短期間であるが, 少量のプレドニゾロン (総量265mg) を併用した。寛解に到達するまでの期間は, プレドニゾロンを主体とする従来の投薬方法に比較して遜色ないものであった。初診時より3年4ヵ月経過後も人参湯のみで再燃はみられず, 経過良好で通常通り就労している。便潜血反応 (+) の時には〓帰膠艾湯を併用している。この間サラゾピリンは全く投与されていない。人参湯のもつ抗炎症作用が潰瘍性大腸炎の再燃防止に奏効しているものと思われる。
著者
地野 充時 辻 正徳 隅越 誠 小林 亨 山本 昇伯 寺澤 捷年
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.152-156, 2017 (Released:2017-10-20)
参考文献数
9

中建中湯は便秘に使用されることが多いと報告されている方剤である。今回,下痢,軟便に有効であった症例を経験した。有効5症例のうち,便秘を呈さなかった症例は4例であった。中建中湯は下痢・軟便症例にも有効であり,便秘に拘る必要はない。有効例においては,(1)腹鳴・腹満,(2)腹直筋攣急,(3)冷え,が多く認められ,これらの臨床症状が本方を処方する時の目標になりうると考えられた。
著者
吉田 麻美 高松 順太 吉田 滋 北岡 治子 増井 義一 大澤 仲昭
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.249-256, 1998-09-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
20

肥満を伴うインスリン非依存性糖尿病 (NIDDM) 患者19例に対し, 運動療法が可能な9例では, 160Calorie/日の有酸素運動 (速歩) 療法を6ヵ月間施行, 実施困難な身体状況にある11例には, 防已黄耆湯を6ヵ月間投与した。運動療法は内臓脂肪型肥満に有効とされているが, 運動療法群では, 治療前後で, CTスキャンを用い測定した内臓脂肪面積と皮下脂肪面積の比 (V/S比) が0.77±0.26から0.65±0.30へ低下したが, 肥満度及び血糖, 脂質についても有意な改善をみなかった。一方, 防已黄耆湯投与群では, 血清コレステロール値が197±31mg/dlから180±19mg/dl(P<0.01)へ, またV/S比が0.84±0.56から0.64±0.30 (P<0.05) へと有意に改善, 血糖値も改善傾向であった。今回の結果から, 防已黄耆湯は内臓脂肪型肥満さらに動脈硬化予防に対し有用である可能性が示唆された。
著者
溝井 令一 植田 真一郎 田中 耕一郎 千葉 浩輝 奈良 和彦 山元 敏正
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.1-7, 2019 (Released:2019-08-26)
参考文献数
34

神経変性疾患の連続74例について気血水スコアを用い気虚,気鬱,気逆,血虚,瘀血,水滞の有無(証の病態6項目)を評価し,同年代のその他神経疾患の連続149例を比較対照として比較検討した。年齢,性別,重症度も共変量とした多変量解析の結果,神経変性疾患ではその他の神経疾患と比較して血虚,水滞,気鬱の順で関連性が高く,調整済みオッズ比(95%信頼区間)はそれぞれ3.02(1.43-6.48),2.37(1.13-5.11),2.33(1.01-5.44)だった。神経変性疾患と最も関連性が高い証は血虚であった。四物湯類(四物湯加減)の処方を考慮することは,患者の苦痛軽減に寄与できる可能性がある。自覚症状に加え脈候,舌候,腹候など東洋医学的な尺度を用いた治療効果の判定が必要である。