著者
木内 亮太 杉浦 禎一 岡村 行泰 水野 隆史 金本 秀行 前平 博充 絹笠 祐介 坂東 悦郎 寺島 雅典 上坂 克彦
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.34-41, 2014-01-01 (Released:2014-01-21)
参考文献数
21
被引用文献数
1 3

症例は75歳の男性で,検診の採血で肝機能異常を指摘され,前医で左肝管原発の肝門部胆管癌と診断されたため,当院紹介受診となった.造影CTでは,左肝管から左右肝管合流部にかけて造影効果を伴う壁肥厚と,左葉の肝内胆管の拡張を認めた.内視鏡的逆行性胆管造影では,左右肝管合流部に陰影欠損を認めた.肝門部胆管癌と術前診断し,肝左葉・尾状葉切除,肝外胆管切除再建術を施行した.切除標本では,左肝管から左右肝管合流部に発育する21 mm大の乳頭状腫瘍を認めた.組織学的には,一部扁平上皮癌成分を伴う腺癌成分と,紡錘形細胞の増殖および骨形成を認める肉腫成分が混在していた.免疫組織学的に,肉腫領域は上皮系マーカーであるAE1/AE3が陰性,間葉系マーカーであるvimentinが陽性であった.以上より,左肝管原発の真の癌肉腫と診断した.術後1年経過した現在,無再発生存中である.
著者
阪本 一次 雪本 清隆 林部 章 田中 肇 鬼頭 秀樹 樽谷 英二 柳 善佑 十倉 寛治 浅田 健蔵 竹林 淳
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.746-750, 1996-03-01
参考文献数
14
被引用文献数
3

症例は74歳の女性.平成6年4月中旬より繰り返す心窩部不快感を主訴として来院.腹部エコー,腹部CTにて胆嚢結石および胆嚢壁肥厚とそれに接した肝内に腫瘤様病変を認め,腹部血管造影では胆嚢動脈に途絶,屈曲がみられ,右前区域枝を栄養血管とする腫瘤濃染を認めた.肝直接浸潤を伴った胆嚢癌と診断.平成6年6月7日拡大胆嚢摘出術を施行した.病理学的には悪性線維性組織球腫であった.術後照射40Gray施行し,平成7年12月現在再発の兆候なく外来にて経過観察中である.胆嚢原発の悪性線維性組織球腫は非常にまれで,本邦報告例は自験例を含めいまだ8例を数えるのみであった.
著者
名取 志保 長田 俊一 亀田 久仁郎 久保 章 竹川 義則 嶋田 紘
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.34-39, 2003-01-01
被引用文献数
5

症例は73歳の男性.2001年12月25日左側腹部痛を主訴に当院内科を受診した.来院時左側腹部に,圧痛と腹膜刺激症状を認め,左側結腸憩室炎の疑いで外科に入院した.入院時の腹部CTで左側腹部に腸管壁の肥厚像と周囲のけば立ちを認めた.絶飲食,抗生物質による治療で炎症所見は改善したが,間歇的な腹痛発作が遷延し,CT所見で腫瘤性病変を認めたため,2002年1月8日手術を行った.術中所見で,Treitz靭帯より50cmの空腸に6cm大の腫瘤性病変と,その腸間膜側に径4cm大のリンパ節を認め小腸部分切除術を行った.空腸の腫瘍は3型で,深達度se,リンパ節転移を伴うカルチノイド腫瘍と診断された.術後早期に,リンパ節再発によると考えられる間歇的な腹痛発作が再燃し,全身状態が衰弱して4月27日死亡した.空腸原発のカルチノイドは本邦ではまれであり,文献的考察を加え報告した.
著者
松山 隆生 角 泰廣 山田 卓也 村瀬 勝俊 吉田 直優 尾関 豊
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.329-333, 2004-03-01
被引用文献数
4

Crohn病に合併した回腸癌の1例を経験したので報告する.症例は59歳の男性で,1999年6月20日に腹痛で前医を受診した.イレウスの診断でイレウス管造影を施行しCrohn病と診断された.その後もイレウス症状が再燃し改善しないため12月23日に回盲弁から30cmの狭窄部を切除された.切除標本の病理検査結果は中分化腺癌で断端,剥離面に癌陽性であった.追加切除目的で2000年2月14日当科に転院した.Crohn病に合併した回腸癌と診断士2月18日結腸右半切除術,膀胱壁合併切除術を施行した.初回手術の吻合部の近傍に辺縁が不明瞭な隆起性の病変を認め,病理検査結果は中分化腺癌で,治癒過程にあるCrohn病が背景粘膜に認められた.Crohn病の高度の狭窄病変に対しては腫瘍の可能性も念頭においた精査,治療が必要であると考えられた.
著者
板橋 幸弘 馬場 俊明 加藤 智 佐々木 睦男
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.108-111, 2005-01-01
被引用文献数
9

症例は36歳の女性で,間欠的な強い腹痛で近医を受診し,右上腹部に径10cm大の腫瘤を指摘されたが原因不明のまま退院した.再度腹痛が出現したため当院救急外来を受診した.腹部超音波およびCTで右上腹部の可動性のない腫瘤に一致して腸管重積像を認めた.翌朝より血便を伴い,血清CPK値1,003IU/Lと著明に上昇したため緊急手術となった.回腸末端を先進部とし,横行結腸中央付近に達する回盲部型腸重積症で,Hutchingson手技で重積を解除したが,重積されていた右側結腸全体の腸管壁が著明に硬く肥厚しており結腸右半切除術を施行した.盲腸から上行結腸にかけて後腹膜に固定されていないことが腸重積の誘因と思われた.切除標本で重積の原因となりうる器質的変化を認めず,特発性腸重積症と診断した,重積腸管が広範囲で,長時間経過している場合には腸管壁の不可逆的な変化が強く,重積を解除しても腸切除は必要と思われた.
著者
首藤 太一 広橋 一裕 久保 正二 田中 宏 山本 隆嗣 竹村 茂一 大場 一輝 上西 崇弘 井上 清俊 木下 博明
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.9, pp.1387-1394, 2001-09-01
被引用文献数
3

肝細胞癌(肝癌)切除後の他臓器転移(Distant metastasis:DM)例が増加し, 対応に苦慮することも多い.今回DM例の再発後生存率(R-SR)に関与する臨床病理学的因子の解析を行い, DM例に対する治療のあり方を検討した.対象と方法:1999年12月までの10年間に教室で初回肝切除の施された肝癌386例中227例が再発した.このうちDM例は61例(27%)であったが, DM例のR-SRに関与する臨床病理学的因子の単変量, 多変量解析を行った.結果:残肝単独再発166例およびDM例の再発後1, 3, 5年生存率はそれぞれ77, 48, 19%および61, 31, 15%(p=0.0042)であった.DM61例中43例に残肝再発が併存したが, DMの内訳は骨28例, 肺20例, リンパ節11例, 脳7例, 副腎7例, 胸腹壁4例, 腹膜3例であった.今回検討した因子中単変量解析でR-SRに関与する因子は初回肝切除時AFP陰性(n=39), Stage III以下(n=53), 再発時若齢(n=32), 残肝再発治療(n=34), DM巣切除(n=14)の5因子であった.多変量解析ではstage III以下, 残肝再発治療, DM巣切除が独立因子であり, 再発時肝機能因子や初回治療因子は関与しなかった.結語:DM例のR-SRは不良であるが, 残肝再発が治療可能な場合にはDM巣切除がR-SR向上に関与する可能性があるため, 切除も含めた他臓器転移の治療を継続すべきであると思われた.
著者
奥山 裕照 岩田 辰吾 小浜 和貴 田中 仁 橋田 裕毅 中村 吉昭 牧 淳彦 高林 有道
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.31, no.12, pp.2364-2368, 1998-12-01
被引用文献数
2

回腸腸間膜静脈瘤を原因として消化管出血を来したWilson病の1例を経験した.症例は28歳の女性.19歳時よりWilson病と診断され, 小康状態であった.ところが平成8年12月13日より突然下血を繰り返したため, 平成8年12月16日, 精査目的に入院となった.血管造影(上腸間膜静脈相)にて右卵巣静脈とシャントを形成する回腸腸間膜静脈瘤を認め, その部位からの出血と診断し, 腸間膜静脈瘤を含む回腸部分切除術を施行した.既往歴に虫垂切除術があり, 腸間膜静脈瘤の発生に関与したと考えた.Wilson病を基礎疾患とする異所性静脈瘤の報告例は本邦初でまれであり報告した.
著者
片岡 正文 岡林 孝弘 中島 明 中谷 紳 上平 裕樹 武田 晃 折田 薫三 能見 貴人 金澤 浩
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.71-77, 1994-01-01
被引用文献数
9

大腸癌,胃癌,肺癌の手術切除例において,p53蛋白の発現異常を免疫組織学的に検討し,さらにその結果が遺伝し変異をどの程度反映しているかを検討するために,reverse transcription-polymerase chain reaction-single strand conformation polymorphism (RT-PCR-SSCP)法および直接シーケンスにて点突然異変の検出を行った.免疫組織染色は,マイクロウェーブ固定標本を使用し,抗p53蛋白モノクローナル抗体(PAb1801)を用いて行った.大腸癌13例中9例(69.2%),胃癌8例中5例(62.5%),肺癌5例中4例(80.0%)に陽性所見が認められたが,臨床病理所見との相関関係は認められなかった.RT-PCR-SSCP法では大腸癌13例中6例に異常を認め,両方法間の一致率は84.6%であり,点突然変異が免疫組織所見によく反映された.p53蛋白の発現異常は60%以上の陽性率を示し,幅広い腫瘍マーカーとしての可能性が示唆された.また,RT-PCR-SSCP法により点突然変異の検出が簡便に行えた.
著者
清水 哲朗 加藤 博 山下 巌 斎藤 智裕 竹森 繁 中村 潔 穂苅 市郎 山田 明 島崎 邦彦 小田切 治世 坂本 隆 唐木 芳昭 田沢 賢次 藤巻 雅夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.753-757, 1990-03-01
被引用文献数
6

食道の小細胞型未分化癌に対し,温熱療法を併用した集学的治療を施行し,約9か月の生存を得られた症例を経験したので報告する.症例は75歳男性.昭和62年7月より嗄声,嚥下困難が出現,近医にて食道癌と診断され,11月16日当科入院となった.入院後の諸検査により,ImEiIuにわたる切除不能食道癌で,生検により小細胞型未分化癌と診断された.11月30日より放射線療法計47Gy,免疫・化学療法として,BLM計65mg,CDDP計150mg,5FU計4,500mg,VP-16計180mg,OK432計57.2KE,PSK99gを投与し,これらに局所温熱療法9回を加えた集学的治療により,症状はもちろん,食道造影上も,腫瘍陰影が消失した.しかし,昭和63年7月になり,多発性肝転移により再入院,8月6日死亡した.放射線・温熱併用療法の局所に対する効果は期待されるが,より有効な化学療法の検討が必要であると考えられた.
著者
岡島 一雄
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.700-711, 1997-03-01
被引用文献数
2

胃癌患者の予後因子を, 国立がんセンターで切除した6,540例を対象に単変量解析(累積生存率)と多変量解析(Cox比例ハザードモデル)で検討した. 選択した23因子は性を除き5年生存率で有意差を示し, 重要な予後因子と考えられた. しかし, Spearman相関係数による独立性の検討, stepwise法による多変量解析の妥当性の検討により11因子が除外された. 残った年齢, 性, 深達度, リンパ節転移, 肝・腹膜転移, 最大腫瘍径, 占居部位, INF, リンパ管侵襲, 静脈侵襲, リンパ節郭清, 切除断端の12因子の多変量解析で, 最も重要な予後因子は深達度(ハザード比: 4.62)で, 2位リンパ節転移(3.63), 3位年齢(2.07), 4位肝・腹膜転移(1.91), 5位リンパ節郭清(1.58)であった. 30年間の予後因子の順位変動では, 1位深達度, 2位リンパ節転移は不動で, 肝・腹膜転移は3位から4位に順位が下がり, 年齢とリンパ節郭清は順位を上げていた.
著者
阿久津 泰典 遠藤 正人 星野 敏彦 久保嶋 麻里 加賀谷 曉子 角田 洋三 落合 武徳
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.36, no.11, pp.1514-1519, 2003-11-01
被引用文献数
12

症例は55歳の男性.タール便,全身倦怠感を主訴に来院した.胃内視鏡検査および上部消化管造影X線検査にて胃体部小彎中心に3型進行胃癌を認めた.術前の白血球数が18,610/mm^3, G-CSF 76pg/ml と高値であった.多発肝転移を認めたため,根治切除は困難と診断され化学療法を施行した.腫瘍より出血を認め止血困難のため2002年11月6日胃全摘術を施行した.進行度はT3N3P0H3, stage IV であった.病理組織学的診断はtub2, se, pm(-), dm(-), ly3, v3, n3, stage IV であった.術後,肝転移巣は増大し.G-CSF値も250pg/mlまで上昇し,術後91病日に肝不全で死亡した.本邦でのG-CSF産生胃癌は自験例が21例目であり,まれであった.また通常型胃癌とは特徴が異なり,本邦報告例の文献的考察を加え報告する.
著者
遠野 千尋 川村 秀司
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.1900-1904, 2004-12-01
被引用文献数
7

今回われわれは嵌頓鼠径ヘルニアの整復後に小腸狭窄をきたした症例を経験したので報告する.症例は72歳の男性で,2003年10月1日,鼠径ヘルニア嵌頓から腸閉塞をきたし,当院を受診した.嵌頓鼠径ヘルニアによる腸閉塞の診断で入院し,嵌頓を整復した.その後腸閉塞は改善し10月8日(整復から7日後)にヘルニア根治術を施行し,退院した.しかし11月4日(術後27日)に腸閉塞を再発し入院した.諸検査にて小腸の狭窄を認めた.保存的に加療したが狭窄の改善はなく,11月18日(術後41日)開腹手術を施行した.中部小腸に2か所の狭窄部を認め13cmの小腸部分切除術を施行した.術後の病理組織学的検査では虚血性小腸炎と診断された.嵌頓鼠径ヘルニアの症例に対して,整復後にも虚血性小腸炎からの小腸狭窄が遅発性にありえることから,慎重な経過観察が必要であると考えられた.
著者
相本 隆幸 吉田 初雄 湖山 信篤 二瓶 光博 左近司 光明 恩田 昌彦
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.30, no.10, pp.2004-2008, 1997-10-01
参考文献数
16
被引用文献数
18

症例は55歳の男性. 食欲不振を主訴に来院. 入院時検査で白血球増多(21,200/mm^3)を示した. 胃透視および胃内視鏡検査で幽門前庭部に2型進行胃癌を認め, 1995年10月30日幽門側胃切除術(D_2)を施行した. 手術的進行程度はT_2, N_2, P_0, H_0, Stage IIIaで, 腫瘍径は110×90mm, 肉眼分類は5T_2であった. また, 病理組織学的にはpap, ss, ly_3, v_3, n_2であった. 術後の白血球数は第3病日の19,200/mm^3から第28病日の7,200/mm^3まで低下し, 血中G-CSF値も第3病日の195pg/mlより第28病日の60pg/mlまで下降した. 術後経過は良好で, 1996年1月20日軽快退院した. 一方, 抗G-CSF抗体を用いた免疫組織染色では腫瘍の細胞質が陽性を示した. 以上よりG-CSF産生胃癌と診断した. 本邦でのG-CSF産生胃癌の報告は自験例を含め7例にすぎない. 今回, 極めてまれなG-CSF産生胃癌の1例を経験したので本邦報告例の検討を含め報告する.
著者
山田 英貴 金井 道夫 中村 從之 大場 泰洋 濱口 桂 小松 俊一郎 鷲津 潤爾 桐山 真典 矢野 孝 杉浦 浩
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.51-56, 2004-01-01
参考文献数
14
被引用文献数
7

症例は80歳の男性.2001年10月24日から食欲不振と尿濃染を自覚し,近医を受診.CTで肝内胆管の拡張と総胆管内の腫瘤像を認め,当院へ紹介.ERCP,MRCP,PTBDチューブからの胆管造影で中部胆管に境界明瞭な乳頭状の腫瘍を認め,PTCS直視下生検で低分化腺癌と診断.以上より中部胆管の乳頭型胆管癌と診断し胆管切除術・リンパ節郭清を行った.病理組織学的には核/細胞比が高い小型の細胞がシート状,充実性に増殖する腫瘍であり,chromogranin A染色陽性で,small cell carcinoma (pure type)と診断した.術後合併症なく,第19病日に退院したが,術後9か月目の2002年9月,肝転移のため再発死亡した.胆管小細胞癌の報告例は欧米などの報告を含め11例と極めてまれである.しかし,術前の画像診断で乳頭型の胆管癌を認め,生検で低分化腺癌を認めた場合には本症を考慮する必要があると思われた.
著者
吉田 秀明 高田 智明 塚田 守雄 加藤 紘之
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.408-412, 2002-04-01
被引用文献数
9

症例は54歳の男性.数年前から胃潰瘍と診断されていたが放置していた.2000年10月24日突然出現した腹部激痛を主訴に当院を受診した.左下腹部に強い圧痛を伴う腫瘤を触知し,超音波検査では内部に高輝度エコーを有する低吸収性腫瘤が描出された.腹部X線CTでは,胃角小彎側前壁の肥厚とそれに接した,内部にfat densityの層状構造を伴うlow density massを認めた.また,少量の腹水を認め,胃潰瘍穿孔,膿瘍形成と診断し,緊急開腹術を施行した.術中所見で大網の右側自由縁が捻転・飜転し壊死に陥り胃角前壁に炎症性に癒着したものと判明した.壊死部大網と癒着していた胃壁の一部を切除した.特発性大網捻転症は,圧痛点が最初から限局している,消化器症状に乏しい,痛みに比べ発熱と白血球数増加の程度が軽いという特徴があり,腹部X線CT検査で術前確定診断が可能な急性腹症の一疾患である.
著者
米山 泰生 貝沼 修 谷口 徹志 中島 光一 渡辺 良之 原 壮
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.214-218, 2002-02-01
参考文献数
17
被引用文献数
20

症例は67歳の女性.1993年に直腸癌にて低位前方切除術行い, その後2回の肝転移および肺転移の切除術を受けた.2000年5月腹部CTにて主膵管拡張と膵頭部に不均一に造影される腫瘍を認め, MRCP, ERCPにて膵頭部主膵管に途絶を認めた.膵転移もしくは腫瘤形成性膵炎を疑い, エコー下膵生検を行い, 直腸癌膵転移の診断にて7月19日膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的にも高〜中分化型腺癌で, 原発巣および肝・肺転移巣と類似の所見であった.直腸癌膵転移は極めてまれであり, 本邦報告例では異時性に他臓器転移をきたし, 複数回の転移巣切除術が行われていることが多いが, 長期生存例も報告されており, 膵転移も根治性が得られれば積極的に手術をすべきと考えられた.